インタビュー
コーエーの名作をモバイル化した「三國志曹操伝 Online」
オンライン非同期対戦で、日韓のユーザーが天下統一を目指す
(2015/11/15 00:00)
NEXONは、韓国釜山で開催されているゲームショウG-STAR 2015に、Android/iOS用の「三國志曹操伝 Online」をプレイアブルで出展していた。「三國志曹操伝」といえば、コーエー(現:コーエーテクモゲームズ)が1998年にWindows用に発売したシミュレーションRPGのタイトル。行動の選択肢でストーリーが変化するマルチエンディングのスタンドアローンゲームで、知られざる名作として今でも根強いファンを持つ。
G-STAR 2015の会期中に、「三國志曹操伝 Online」を開発しているThingsoftのディレクター イ・ドゥッキュ氏の合同インタビューが行なわれた。イ氏は「テイルズウィーバー」をはじめとした2DMMORPGを長年開発してきた人物で、その中で培ったドット絵の技術を使って「三國志曹操伝 Online」の懐かしい雰囲気をそのまま活かした形で開発を進めている。本作はAndroidとiOS用として、日本と韓国で2015年内にサービスされる予定だ。
マルチプレイの「攻城戦」や新システム「系譜」や「連合」を紹介
まずは今回の取材で分かったゲームの内容について説明しよう。ゲームには原作のシナリオを100%生かした「演義編」と、本作からの新要素としてオンラインマルチプレイを楽しめる「戦略編」の2つのモードがある。「演義編」は複数の難易度があり、1度クリアした後はさらに高難易度でプレイすることができる。プレイの中で戦闘の中でアイテムやユニットが手に入るので、それを求めて繰り返しプレイするようなスタイルが想定されている。
「戦略編」には色々なコンテンツがあるが、その中でもメインとなるのが天下統一を目指す「攻城戦」だ。ゲームの中には17の州と70の城がある。この城を攻めて州を統一し、天下制覇を目指していく。戦う相手は同じプレーヤー同士。自動マッチングで同じレベル帯のユーザーとマッチングされ、非同期のバトルを繰り広げることになる。PvPを好まないユーザーには、NPCとプレイをするモードも用意されている。攻城戦で城を手に入れた後は「模擬戦」というプレイもできる。「攻城戦」では資源を奪われるが、「模擬戦」は単にプレーヤー同士が力試しをするためのコンテンツになっている。
また「事件」という名前のインスタンスダンジョンがあり、デイリーでランダムなダンジョンが開かれる。インスタンスダンジョンの中では武将ユニットなど様々な報酬を獲得することができる。インスタンスダンジョンで武将を入手すると、その武将にまつわる新たなストーリーも楽しむことができる。インスタンスダンジョンは600種類ほどが提供される予定。攻城戦に参加せず、ずっとインスタンスダンジョンを楽しむようなプレイも可能だ。
「連合」という名前のギルドシステムは、一般的なMMOにあるギルドと基本的には同じもの。ギルド対ギルドで戦ったり、お互いの資源を奪い合ったり、ギルドを成長させてバフを受けたりする。モバイル版から新しく入る新システムとして「系譜」システムというものもある。「三國志曹操伝」では戦闘を通じて相手のユニットを捕虜にしたり、州を占領してそこにいる武将を登用する。しかしこの方式では、必ず欲しいユニットを仲間にできるとは限らない。「三國志曹操伝 Online」では武将の獲得からランダム要素を排除して確実に好きな武将を手に入れるために、キャラクターの獲得がツリー構造になっている。誰もが欲しい呂布や関羽や曹操を得るためには、関連のあるユニットを順次入手していくことで確実に有名武将を手に入れることができる。課金していなくても時間をかければすべての武将が入手可能で、課金するとそのための時間が短縮される。
インタビューの会場には、日本語ローカライズバージョンが用意されており、曹操が天下を志し、まだ一介の兵士だった劉備たち三兄弟と出会う「演義編」序盤のエピソードをプレイすることができた。「演義編」のローカライズはほぼ終わっており、現在「マルチプレイ戦略編」のローカライズを進めているところだそうだ。ローカライズはまずは韓国で日本語への1次翻訳を行ない、それを日本のネクソンで検証、その後コーエーの監修を受けるという、かなり念入りな方式が取られている。そのため、プレイしてみた範囲内では、海外産のゲームに時々見かけるおかしな日本語には一切出会わなかった。
「三國志曹操伝」を選んだ理由は社長が大ファンだから
――このシリーズは他にも「英傑伝」や「孔明伝」がありますが、なぜ「曹操伝」をオンラインゲームにしようと思ったのですか?
イ氏: こちらで「曹操伝」を契約する前にいくつか検討しました。
「英傑伝」の最後なのでシステムの面で非常に完成度が高いと思いました。日本と違って、17年経った今も韓国と中国にはいまでも「曹操伝」のマニアがかなりたくさんいる。中国市場を考えた時、「曹操伝」がよりアピールできるのではないかと考えました。弊社の代表が曹操伝の大ファンなので、それも影響しています。
――このタイトルは最初PC版で開発されていたように記憶しているのですが、PC版はなくなったのですか?
イ氏: 契約自体はPCとモバイル両方の契約が結ばれています。しかし最近はモバイルが主流になっていることから、モバイルを先にサービスすることになりました。
――将来、PC版もサービスする予定がありますか?
イ氏: まずはモバイルゲームを配信した後、PC版をサービスするのか、モバイル版に注力するのかは内部の調整が必要になると思います。
――SRPGというジャンルのゲームは韓国には少ないように見えますが、このジャンルの人気は韓国ではどうなのですか?
イ氏: 韓国でSRPGが非常に盛んだったのは1990年の後半から2000年の初頭でした。そのころはメインジャンルとして非常に人気があったのですが、その後オンラインゲームの人気が高くなり、SRPGは見かけなくなりました。私たちがSRPGの「三國志曹操伝 Online」を開発しようと決めたのは、タブレットやモバイルにはタッチインターフェイスがあるからです。モバイルはコントロールに制約がありますが、タッチインターフェイスを使えばSRPGを気楽にプレイしていただけるのではないかと思いました。
もちろん、今韓国ではSRPGはそれほど人気のあるジャンルだとは言えません。しかしタッチインターフェイスを活用すれば、十分SRPGならではの面白さを皆さんにアピールできると思いました。「テイルズウィーバー」を開発した時もそうだったのですが、人と違うものを作ってこそ意味があると思うのです。似ているものであれば、誰でも作れますので、今回独特なこういうゲームを開発しようと思いました。
――プロモーショントレーラーがコーエーテクモゲームス(以下、コーエー) さんが作るものに似ていますが、IP契約以外に一緒に協業していることはありますか?
イ氏: まず、「三國志」の30周年の時に、このプロモーションビデオをコーエーの方でも流しましたが、作ったのは私たちです。IPを使っているわけですから、コーエーの内部基準に沿って監修を受けた結果がゲームの中に反映される形です。企画やゲームデザイン、アートなどはすべてコーエーから監修を受けています。
――どういうシステムになっているのですか?
イ氏: 「三國志曹操伝 Online」には原作のシナリオをそのまま搭載している「演義編」と、オンラインマルチプレイができる「戦略編」があります。「演義編」では原作のバトルをそのままお楽しみいただけます。「戦略編」ではさまざまなシナリオを楽しむことができます。例えば劉備や張飛を獲得しようと思ったら、そのためのイベントや、諸葛亮なら「三顧の礼」イベントも楽しむことができます。「テイルズウィーバー」では色々なチャプターがあって、複数のユーザーがパーティを組んでストーリーテリングを行なうようになっています。そこから着想を得ました。本作はもちろんシングルプレイにフォーカスを置いているのですが、マルチモードに入ればそこで三國志の色々なコンテンツを楽しむことができるかと思います。
――原作では3本のシナリオがありましたが、本作のために新シナリオが追加されたりはしないのですか?
イ氏: 「演義編」の一部に新シナリオが入る予定ですが、その分量をどのくらいにするのかを内部で調整している段階です。ただ「演義編」のシナリオを増やすより「戦略編」のシナリオを拡充させていきたいと考えています。
――マルチモードは何人くらいで遊べるのですか?
イ氏: 特に何人と決めているわけではありません。マッチメイキングシステムですので、相手はプレーヤー全体になります。勝率が近いユーザーをオートマッチングするようになります。戦闘自体は1対1の非同期のバトルを考えています。もちろん多人数が同時に戦闘することも考慮はしているのですが、基本は1対1の非同期バトルになります。
――マルチプレイは1対1のみですか? それとも複数対複数でも対戦できるのでしょうか?
イ氏: 一般の戦闘では1対1を基本としています。ギルド戦では1対1の戦闘の累積結果によって決まります。非同期にするのでなるべくほかのユーザーの影響を少なくしようと考えているのですが、内部でテストをしているのはリアルタイムPvPもテストはしています。それをライブフィーチャーの形でアップグレードする予定はあります。
――ドット絵のキャラクターもすべて新しく書き起こしたものなのですか?
イ氏: 新しく作業して入れたものです。「テイルズウィーバー」と「トキメキファンタジーラテール」のゲームアーティストが参加して作業しました。
――チャットはできるのですか?
イ氏: 今はチャットの機能を切り離していますが、最終的にはいつでもチャットができるようになっています。今は国別のチャットサーバーになっていますが、ユーザーが希望すればグローバルのサーバーに入ることもできます。
――ビジネスモデルを教えてください。
イ氏: Free to Play(F2P)の形を基本にしています。課金は、ゲーム内で消耗される資源の不足分を補うためのものになっています。そのほかにも有料コンテンツを追加する予定ですが、有料コンテンツがなければプレイできないわけではありませんが、有料コンテンツを使うとプレイが楽になったり時間の節約ができるようになっています。
――日本でのサービススケジュールを教えてください。
イ氏: もちろん日本でもサービス予定です。いまNEXONとコーエー側でCBTの日程を調整しております。それが確定次第CBTを行なう予定です。正式サービスに関してですが、日本と韓国が統合サーバーで運営される予定です。CBTのスケジュールは異なっていても、正式サービスは同時配信の形になると思います。