【特別企画】

「記憶幻想」がついにお披露目! 「FINAL FANTASY XIV Orchestra Concert 2025」レポート

「FFXIV」オケコンも黄金世代へ。吉田P「来年は新しい冒険と体験をお届けしていく」

【Eorzean Symphony FINAL FANTASY XIV Orchestra Concert 2025】
12月27日、28日開催
会場:東京国際フォーラムAホール

 まさに圧巻、光の戦士なら誰もが満足し、涙を禁じ得ないコンサートだったのではないか。「ファイナルファンタジーXIV」のフルオーケストラコンサート「Eorzean Symphony FINAL FANTASY XIV Orchestra Concert 2025」が、12月27日、28日の両日、東京国際フォーラムAホールにおいて開催された。当日の公式フォトを中心にコンサートの模様をお届けしたい。

【ロビー】
【東京国際フォーラムAホール】

2019年、2022年以来となるフルオーケストラコンサート「Eorzean Symphony」

 実に3年ぶり、「黄金のレガシー」世代としては初となるオーケストラコンサート。前回2022年に日本で開催されてから、2023年や2024年は欧米や中国で開催され、ようやく再び日本に番が回ってきた。筆者も万難を排して参加してきたが、関係者席も見知った顔が多く、多くの光の戦士たちが開催を楽しみにしていたことがうかがえた。

 ここ数年は祖堅正慶氏率いるTHE PRIMALSの積極的な活動により、「FFXIV」のライブを楽しめる機会は増えているが、フルオケによるコンサートは、スクウェア・エニックスの伝統であり、光の戦士たちも待ちに待ったというところだろう。

 演奏は東京フィルハーモニー交響楽団、コーラスはGLORY CHORUS TOKYO、指揮は栗田博文氏と、前回2022年とまったく同じ陣容。ゲストボーカルとして、Amanda Achenさん、Jason Charles Millerさんも招かれ、MCは「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏、サウンドディレクターの祖堅氏が務めるなど、まさにフルメンバーでのコンサートとなった。

【栗田博文氏】
【MCを務める吉田氏と祖堅氏】
【Amanda Achenさん】
【Jason Charles Millerさん】

 ちなみに「FFXIV」のライブでは、毎回ペンライトに工夫が凝らされ、過去には大型のペンライトや、ブレスレット、フラワーライトなどが存在したが、今回は光るクリスタルだった。手にずっしり収まるサイズで、光量もかなり強く、手元にあるとまぶしいほどだった。曲に合わせて色が変化し、前回のエルピスの花とも異なる存在感のある輝きを会場全域に放っていた。

【クリスタル】

「新生エオルゼア」から「黄金のレガシー」まで全20曲

 コンサートは2部構成で、アンコールを含めて全20曲。従来のオケコン同様、「新生エオルゼア」から最新の拡張パックまでを選りすぐりの名曲とプロジェクターに映し出された名場面と共に順番に振り返っていく内容になっている。

 光の戦士としては、新米冒険者として三国に降り立った時からこれまでの記憶を、美しい旋律と共に、緻密に計算された映像で振り返られるようになっており、THE PRIMALSの賑やかでド派手なロックコンサートと比較すると、かなり泣かせる内容となっている点が大きな違いだろう。

【1、そして世界へ】
【2、天より降りし力】
【3、希望の都】
【4、究極幻想】

 東京フィルと栗田氏という、ゲームミュージック界ではお馴染みの名コンビに加えて、声楽曲の多い祖堅氏の楽曲の演出には欠かせないGLORY CHORUS TOKYOのコーラス陣の存在、そして何と言っても演奏中に流されるトレーラー、カットシーン、インゲーム映像などを組み合わせた映像は非常にクオリティが高く、筆者自身が光の戦士であるという点を差し引いても、総合エンターテインメントとして突出して完成度が高い。

 それでいて、吉田氏と祖堅氏による、吉田氏が言うところの“茶番”や、「メビウス ~機工城アレキサンダー:天動編~」におけるチンドン屋のような愉快な演出、あるいは、一見厳格な指揮者に見える栗田氏から繰り出される大げさなジェスチャーによる露骨なブラボー要請といった演出もあり、単に「凄かった!」、「良かった!」だけでなく、「愉しかった!」という感慨に浸れるのが「FFXIV」コンサートの素晴らしいところだと改めて感じた。

【5、彩られし山麓~高地ドラヴァニア:昼~】
【6、Dragonsong】
【7、メビウス ~機工城アレキサンダー:天動編~】

FINAL FANTASY XIV Orchestra Concert 2025セットリスト

【第1部】
1、そして世界へ
2、天より降りし力
3、希望の都
4、究極幻想
5、彩られし山麓~高地ドラヴァニア:昼~
6、Dragonsong
7、メビウス ~機工城アレキサンダー:天動編~
8、塩と苦難の歌 ~ギラバニア湖畔地帯:昼~
9、月読命之唄
10、鬨の声

【第2部】
11、Shadowbringers
12、Tomorrow and Tomorrow
13、To the Edge
14、Close in the Distance
15、Flow
16、山峡の涼風~オルコ・パチャ:昼~
17、Give it All ~至天の座アルカディア:ライトヘビー級~
18、Smile

【アンコール】
19、終焉の戦い
20、記憶幻想~遠き日々のメドレー~

トリを飾ったのは「黄金」屈指の名曲「記憶幻想~遠き日々のメドレー~」

 セットリストをご覧になればわかるように、1拡張パックにつき3曲ずつ採用されており、選りすぐりの楽曲ばかりだ。驚かされるのは、東京フィル、栗田博文、GLORY CHORUS TOKYOという組み合わせにもかかわらず、「英傑 ~ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦~」や「Heavensward」(共に蒼天のイシュガルド)が落選するという密度の高さだ。「FF」シリーズコンポーザーの植松伸夫氏は、自ら作曲した楽曲の多さ、対象となる作品の多さが故に、コンサートの曲目選びの難しさを語っていたことがあるが、祖堅氏が手がけた「FFXIV」シリーズの楽曲も、同じ領域に到達しつつあることを感じる。

【8、塩と苦難の歌 ~ギラバニア湖畔地帯:昼~】
【9、月読命之唄】
【10、鬨の声】

 さて、今回個人的に注目していたのは、現行の拡張パック「黄金のレガシー」の楽曲がどれぐらい採用されるかだ。事前に公表された楽曲は「山峡の涼風~オルコ・パチャ:昼~」、「Give it All ~至天の座アルカディア:ライトヘビー級~」、「Smile」の3曲。いずれも12月17日に発売されたばかりのオーケストラアレンジアルバム「FINAL FANTASY XIV Orchestral Arrangement Album Vol. 4」に収録されている楽曲ばかりだ。本アルバムの目玉である「記憶幻想~遠き日々のメドレー~」は? という疑問を抱きながらコンサートに参加してきた。

【11、Shadowbringers】
【12、Tomorrow and Tomorrow】
【13、To the Edge】

 「FFXIV」オケコンは、光の戦士たちのこれまでの冒険の軌跡を振り返る最良の場だ。ミンフィリア、オルシュファン、ヨツユ、アルバート、エメトセルク、そしてスフェーン。楽曲の演奏を通じてそれぞれの節目で強烈な印象を残したキャラクターたちとの美しい再会を果たすことができる。人間の記憶は曖昧なもので、古い記憶ほど美化される。「希望の都」(新生エオルゼア)の楽曲を聞くと、「この吹き上がるような躍動感、満ち満ちたエネルギー、やはり新生は最高だ」と思うが、もの悲しい「彩られし山麓~高地ドラヴァニア:昼~」(蒼天のイシュガルド)からの「Dragonsong」(蒼天のイシュガルド)に入ると、バイオリンによる導入に確かな植松伸夫節を感じ、アマンダさんのさらに深化した圧倒的な声量に「これぞFF、蒼天は絶対外せない作品だ」という具合になる。

 結局、各拡張パックの演奏が終わる度に「最高」が塗り替えられ続けるのは、ゲーマーとして非常に楽しい時間だ。それぞれに忘れがたいストーリーがあり、嬉しい出来事と悲しい別れがある。美しく奏でられるクラシックミュージックを触媒に、その感慨に浸れるのは光の戦士ならではの愉しみと言える。

【14、Close in the Distance】
【16、山峡の涼風~オルコ・パチャ:昼~】
【17、Give it All ~至天の座アルカディア:ライトヘビー級~】
【18、Smile】
【19、終焉の戦い】

 筆者が注目していた「記憶幻想~遠き日々のメドレー~」は、アンコール2曲目、コンサートの締めくくりに演奏されたが、控えめに言って最高だった(またしても最高更新)。スフェーンのかつての記憶を再現したインスタンスダンジョン「記憶幻想 アレクサンドリア」をモチーフに、声楽パートが加えられ、実に大胆なオーケストラアレンジが施されていた。用意された映像は、パッチ7.3のスフェーンが活躍するクライマックスシーン。この日のために錬りに練り込まれている。

 特徴的なのが声楽パートの使い方。「記憶幻想」のアレンジのひとつである「エターナルクイーン討滅戦」の声楽パートとはまったく別で、いわゆるサビの部分に用いられており、入りは控えめの弦楽器と男声バックコーラスで、クライマックスではトランペットと女声コーラスが最大火力で最前面に躍り出て、フルオケならではの壮大なスケールとなり、一発勝負のライブならではの魂が震える体験ができた。

【20、記憶幻想~遠き日々のメドレー~】

 MCを務めた吉田氏は、最後の幕間の挨拶で、「こうして光の戦士の皆さんと一緒に冒険の旅路を素晴らしい演奏で振り返っていくと、本当に長い期間、皆さんと一緒に歩ませていただいたなとしみじみ感じてます。まだ正式発表ではないんですけど、来年から皆さんにまた大いなる新しい『FFXIV』と、新しい冒険と新しい体験をお届けしていくつもりです。開発チームは、もうすでにスタートしているセクションもありますが、大いにまた新しいチャレンジ、新しい体験を皆さんにお届けして参ろうと思いますので、ぜひこれからも我々と一緒に歩み続けていただけると嬉しく思います。本日はありがとうございます」と挨拶。光の戦士に向けて、改めて2026年、新しい拡張パックをお届けすることを約束した。

 ゲームミュージック好きとしては、次の拡張パックでの冒険やゲーム体験がどのようなものになるかも楽しみだが、同時に祖堅氏らアーティストが紡ぎ出す新たなサウンド体験にも注目が集まるところだ。今後も引き続き「FFXIV」のゲームミュージックに注目していきたいところだ。

【カーテンコール】