インタビュー

「FFXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー(後編)

“「パッチ2.1」が本当の意味でのグランドオープン”。エオルゼアはどう進化するのか!?

【パッチ2.1 覚醒せし者たち】

12月17日実装予定

 インタビュー後編では、現在開発中のプレイステーション 4版と、PC版のグラフィックスをさらに底上げするDirectX 11版、そしてインタビュー前編でも話題に上がっていたパッチ2.1の細かい部分について質問を重ねてみた。

【FINAL FANTASY XIV パッチ2.1トレーラー「覚醒せし者たち」】

ダンジョンの“手触り”の改良について。ランドスライドに当たる人はどうすればいい?

「FFXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー/ディレクターの吉田直樹氏

――それでは「パッチ2.1 覚醒せし者たち」について質問していきます。まずは12月17日という日程について。これは意外と早かったなという印象を持っています。どうせ遅らせたのだから、年末ギリギリまで引っ張るんじゃないかという雰囲気を醸していたので、嬉しい誤算でした。

吉田氏:プレーヤーの皆さんも、「これは年末だな」、「12月30日か?」、「いや、ヘタをすれば1月だな」みたいなご意見があったので、プレーヤーの皆さんの反応を見せていただき、正直ほっとしました。

――このスケジュールは頑張った結果なのですか? それとももともとの11月予定から20日ほどずれ込んだというイメージですか。

吉田氏:20日ほどずれた、というのが正解です。もちろん、開発が相当頑張ってくれての20日遅れなので、お待ちいただいているプレーヤーの皆さんと、開発チームには頭が上がりません。

――プロデューサーレターLIVEの前半で、「パッチ2.1」からはインスタンスバトルの手触りが良くなると発言されていましたが、何がどう変わるのかをもうちょっと詳しく教えて下さい。

吉田氏:βの時のウルヴズジェイルで2人のキャラクターが対峙したとします。白魔道士の前にモンクがいて殴ろうとして追いかける時に、白魔道士が急ターンした時、パケット更新を補正しないから、見た目とずれが出やすくなります。この動きの補正を瞬間的にパケットを送って、できるだけ見た目と合わせよう、という処理を負荷を掛けずに軽く実装できるようになった、ということです。

――それでは従来の0.3秒の壁を破って、さらに高速でパケット通信を行なうわけではないんですね?

吉田氏:0.3秒はどのMMORPGもほぼ絶対数値です。そこを変えるとサーバースペックが破綻してしまいます。0.3秒は安定した実績数値なので、伝統に近いですね。

――その手触りが良くなるのは、一部のエリアが対象と言うことですが、特別処理を行なう対象のエリアというのは?

吉田氏:真蛮神、極蛮神、ワンダラー以降のハイレベルダンジョン、真アルテマ、クリスタルタワーですね。ただ、ダンジョンを全部やってしまうかもしれないですね。

――私も何年ぶりか忘れましたが、「FFXIV」を遊び始めてからスクエニのサーバーまでのPingを調べたりしました。(笑)。なんでかというと、真タイタン戦でランドスライドで落とされるという苦い経験をしたからなんですが、「絶対避けているのになんでやねん!」と思って調べたら、そのときには外出先でスマートフォンのテザリングを使って遊んでいたんですよ。で、調べて見たら確かに遅かった。改めて自宅で計ってみたら、普通にPing1桁で、もう軽々と避けられたんですね。「旧FFXIV」はサーバーラグが酷いゲームでしたが、「新生FFXIV」の場合、ラグってる場合は、大多数がローカル側の環境の問題ではないかと思うんです。しかし、いまだにスクエニ側、ゲーム側の問題だという発言も散見されてツラい感じですよね。

【新生FFXIV 真タイタン ラグ】
ラグの発生がわかりやすいユーザー投稿動画。ランドスライドを避けてるのに何故か当たってしまうという方は、まずはPingを疑ってみた方がいい

吉田氏:それについては、僕の立場からは言いにくいので、GAME Watchさんでぜひ(笑)。

――是非というか、凄く簡単な話だと思うんですよ。自分のプレイ環境から、ゲームサーバーまでのPingを調べるツールを公開するだけで、簡単に片付く問題だと思うんです。

吉田氏:オフィシャルにそれを促すのは、多数の通信事業者さんがいる上では難しいですよね。

――でも、IPは全部特定されているわけですから、ベンチマークプログラムで自分のPCのパフォーマンスが客観的にわかるように、Pingチェックツールを出して客観的に何が原因なのかを伝えることに何の問題もないと思うんです。今の状態ってかなり不幸だと思うのですよね。「新生FFXIV」正式サービス後もずっと言われ続けているじゃないですか。今になっても無くならないということは、やはりそれだけ勘違いされている方も多いということですね?

吉田氏:うーん、僕らが公式に言えるのは「本気でコンテンツ攻略する場合は、優先環境をオススメします」くらいでしょうか。でも難しいのです、ここは。「オンラインゲームを作っているならそれくらい保障してくれ、ユーザー環境のせいにすべきじゃない」と言われることもありますし。それを見越して、避けられるように調整すべきだという意見もあって。

――そんなのムリでしょう。

吉田氏:そうですね、それだと難易度の高いものが作れないですし。

――Ping3桁みたいな状態で避けられるようになったら、もうゲームとしてぜんぜん面白くないですよね。

吉田氏:避ける有効時間を極端に伸ばすしかなくなります。それはコンテンツが超簡単になる、ということなので、無理なのです。

――難しい問題ですね。

吉田氏:そうですね、上位のコンテンツは相当激しい動きを要求されるシーンも多いですしね。

――でも、遊び手からしたら、「なんだよ絶対避けているはずなのに、このゲームおかしいぞ」ってずっと思ってことある度に文句を言うわけじゃ無いですか。それは双方にとって不幸ですよね。

吉田氏:それ、僕らの身内でも名言があって、「俺の画面では避けている!」というセリフ。何回やってもトラップを踏むギルドメンバーがいて、仲間が怒って「いい加減にしてください!」といったら、「俺の画面では避けている!」という名台詞が生まれました。その時にメンバーで冷静な切り返しをした人がいて、「じゃあ再インストールしてください。それバグってますよ」って(笑)。

 冗談はさておき、今回入れた処理は、立ち止まった際に、正しく位置補正する処理なので、今よりダイレクトに描画に反映されるようになります。ここは解説するのが難しいのですが、今までよりは、体感的に避けやすくはなると思います。極蛮神戦も、この線引きを最後まで悩んで調整した難易度になっています。

――手触りという意味では、壁を背にして戦うことが多いタンクの立場から申し上げると、基本カメラを引いた状態で戦っていても、カメラが壁に当たると視点が強制的に押し戻されて、そのまま戻らないのがイライラします(笑)。

吉田氏:すいません。「2.1」からはちゃんと戻るようになります。

――ただ、壁に当たって押し戻される仕様はそのままですか?

吉田氏:その仕様は残ります。オブジェクトの「カメラコリジョン」、つまりカメラに対しての当たり判定を抜けばカメラは阻害されなくなりますが、今度はガレキや柱の中に「カメラが潜る」という状況が生まれます。これを許容するか、しないか、がポイントですね。でも、中村さんからこの話が出るのは嬉しいです(笑)。

――私はオンラインゲームや海外ゲームを担当しているので、なんで「これ抜かないの?」と、最初から許容派ですが、むしろ、スクエニさんのポリシーが、「FFXI」などがまさにそうですが、初期画面のまま遊んでくださいという設計になってますよね。

吉田氏:そうですね。「旧FFXIV」もその思想で作られていました。「旧FFXIV」でも修正してしまいたかったんですが、でも引くと描画が破綻するから引けなくて。

――なるほど。

吉田氏:結論から言えば、カメラが当たってしまうオブジェクトはあります。が、パッチ2.1から突き抜けるオブジェクトが増えています。ダンジョンのカメラチェックは、最後は僕がやるのが必ずワークフローになっているのですが、「そろそろこの手の壁や柱は、カメラコリジョン付けなくていいよ」と伝えています。ここは徐々に慣れていただく必要があると思っています。

 やはりお客様の中には「キャラにカメラがめり込むのはバグだ!」、「柱をカメラが突き抜けるのは見た目におかしい!」と「FF」シリーズだからこそ、こだわられる方も多いのです。特にこれまでのスクウェアのゲームは、美しく作られた箱の中で、もっとも見て欲しいカメラポジションにしか絶対に作りませんでした。潜ったり突き抜けるなんてあり得ないと、今の中村さんの発言は、そんなのカメラなんか別にオブジェクトを突き抜けてくれていいから、視界を遮るなよっていうことですよね?

――そうです。オンラインゲームのプレイ視点って、そうじゃないですか?

吉田氏:価値観によりけりです。「FF」シリーズだから、オンラインゲームだからとなると、なかなかに難しいです。

――ちまたでは“大人の事情”でできないんじゃないかっていう話がもっぱら喧伝されてますが、実はそうではなくて、ユーザーさんさえ許せばすぐにできるぐらいの話なんですか?

吉田氏:最終的に透過させるとなると、そこは確かに特許が絡みます。また、シングルプレイのゲームでできることが、必ずしも多人数参加型のゲームで、他の処理を削ってまで実装すべきか、という問題にもぶつかります。突き抜けてもかまわんという割り切りをして、カメラコリジョンを全部抜いてしまうと、もっと簡単に自由の利く視界は確保できますし、高負荷な処理も入れなくて済みます。

――ただ、スクエニファンがそれを許容するかという話ですよね?

吉田氏:ですので、慎重に、という感じです。今回実装したのは、強制的にカメラが近づけられてしまうところから外れたら、バッと元のディスタンスまで戻すという処理です。お待たせしました。あとは地道にカメラコリジョンを抜いていっています(笑)。

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(中村聖司)