インタビュー

「ドラグーン エンパイア」開発者インタビュー

プロデューサー入院!? 思わぬトラブルから生まれた、正統派の冒険ストーリー

プロデューサー入院!? 思わぬトラブルから生まれた、正統派の冒険ストーリー

各章の冒頭と締めに、キャラクターたちの会話シーンが挿入される。主要キャラだけでなく、ボスとの会話まで楽しめる

――プレイしてみて、古き良きファンタジーRPGを彷彿とさせる正統派の冒険ストーリーで、安心して遊べるなと感じました。シナリオはどのように詰めていったのでしょうか?

長木氏: いや、それがですね……。あのシナリオは、偶然が生み出した奇跡の産物なんです(笑)。実は開発中、僕が身体を壊してしまったことがありまして、1カ月の長期入院を余儀なくされてしまいました。プロデューサーが1カ月も戦線を離脱するわけですから、普通、開発を止めると思うでしょ? しかし、恐ろしいことに止まらなかったんですよ!

立川氏: 長木さんが入院したと聞いたときは、開発チーム一同仰天しました。でも、「ここで開発を止めるわけにはいかない」という使命感のようなものが湧きあがってきて。「長木さんが戻ってきたときに、“ここまでやりましたよ!”と胸を張れるぐらいのものを作ろうじゃないか」とチームを盛り上げ、シナリオの制作に着手しました。

 そうは言っても、どこから手をつけていいかわからない。物語の大枠や世界観については事前にお聞きして把握していましたが、自分たちでシナリオを執筆するとなると話は別ですからね。誰が、どんな段取りで、いつまでに、なにを書けばいいかすら見当がつかず、「う~ん」と頭を抱える日々が続きました。

 そんなとき、ウチの女性デザイナーがいきなり「もう、私がシナリオを考えてくるっ!」と。彼女が書いたシナリオを読んでみたら、これがなかなか面白くて、あとはトントン拍子で開発が進みました。

長木氏: 退院したらシナリオができていたので、びっくりしました(笑)。読んでみて最初にイメージしていた内容ではなかったので、初見は戸惑いましたし、ボツにしようかとも思いました。僕が最初に思っていた世界は、ゴリゴリとした硬質なファンタジーだったのですが、よくよく考えてみると、それでは面白味に欠けてしまう気もしたのです。

 そう考えてからは、柔らかく愛嬌がある世界観にした今のシナリオは広く受け入れやすい内容に仕上がっていると思います。ガチガチのファンタジー作家ではなく、デザイナーが書いたからこそ、気付かなかったことに気付かせてもらい、うまく落ち着いたのではないかと思っています。

プロデューサー自らが手を動かし、ギリギリまでこだわり続けたビジュアル

カードはデザイナー出身の長木氏が監修

――本作のアートディレクションは、長木さんが手掛けていらっしゃるとのこと。プロデューサーだけでなくアートディレクターもされていると聞いて驚きました。

長木氏: もともとデザイナーだったこともあって、カードやキャラクターなどのグラフィックまわりは自分で監修したいなと思っていました。

 特に気をつけたのは色合いですね。この手のファンタジー系RPGは、カードの色合いが暗くなりがちだと思うんですが、ダークになりすぎないよう、自分の手で色味のバランスを調整しました。また、段階を追ってカードが進化していく「進化合成」の見せ方にも気を配りました。3Dのパーティクルを足したり、2Dのエフェクトを混ぜたりして、少しずつカードの印象を変えていって……。最終段階では魔法のような、いかにもゲームっぽい加工を意図的に施しています。

 それともうひとつ、あまり大量に美少女キャラを出さないようにしました。女の子のカードは、全カードのうちの1/4程度。最近のカードゲームでは異例と言っていいぐらいの少なさだと思います。僕自身は女の子がいっぱい出てくるほうが嬉しいんですが(笑)、美少女ばっかりのゲームを外で遊ぶのって、なんだか恥ずかしいと思っていて。世の男性が街中で堂々と遊べるように、あえてちょっと硬派なカードを多めに入れています。

――まさか、イラストも長木さんが描かれていたわけでは……。

長木氏: いや、さすがにそれはないです(笑)。イラストは、できるだけいろいろな作家さんに描いてもらうようにしました。ひとりもしくは少数の作家さんや企業さんにまるっと発注してしまったほうがラクはラクなんですが、それだと面白みがなくなってしまう。さまざまな個性を持った多くの作家さんにイラストを描いていただくことで、カードの世界に広がりが出ると思ったんです。ユーザーさんに、好きな作家さんのカードを集める、なんていう楽しみ方もしていただけますしね。

 いろいろな作家さんに描いていただいたイラストを、僕の手元でギリギリまで調整し、クオリティを高めてから立川さんにお渡しするようにしていました。

立川氏: なかなかカードのデータが出てこないので、実は内心、「大丈夫かな……」と心配していたんですけどね(笑)。上がってきたときはホッとしました。と同時に、「この素晴らしいカードを生かすために、がんばらなきゃいけないな」という気持ちになったことを覚えています。カードを引き立てるためフレームにはトコトンこだわりましたので、ぜひ、ゲームをプレイしてご確認ください!

長木氏がギリギリまで調整したカードたち。作家の個性を生かしながら、ビジュアルのトーンを統一するのに苦労したそう

男のロマン・飛空艇の、ダイナミックなビジュアル変化

左側に飛空艇が! マイページだけでなく、「天空戦線」のバトル画面でも、自分の飛空艇を愛でられるようになった

――飛空艇が進化する様子も楽しませていただきました。飛行船のようなタイプから、飛行機型、重機型と、さまざまな形に変わっていきますが、あのダイナミックな変化は、どういった発想から生まれたのですか?

長木氏: 「一般的な飛空艇のイメージから、どんどん遠ざかっていこう」というコンセプトで、あの変化を考えました。まず最初に、誰もがイメージするオーソドックスな飛空艇が登場する。そこで、ユーザーを油断させておいて、いきなり飛行機のような形に変化するわけです。そこからどんどん、飛空艇らしからぬ形になっていく。単純にパラメーターが上がるとか強くなるだけでなく、ビジュアルが変わる新鮮さや驚きを味わっていただきたいと思って工夫しました。

 ちなみに、「天空戦線」のバトル画面には、“現在乗っている飛空艇”が表示されるようになっているんですよ。特徴的な形の“マイ飛空艇”が表示されるだけで、飛空艇に乗っている感じや、戦いの臨場感が高まるのではないかと。そういった細かなところにも注目していただけると嬉しいですね。

立川氏: 飛空艇って、男のロマンだと思うんです。自分の飛空艇がグレードアップする瞬間は、なんともいえずエキサイティングです。メカ好きの方でしたら、きっと楽しんでいただけると思います!

――ところで、飛空艇の形が進化する前に、色が3回変化しますよね。あれはなにか理由があるんでしょうか?

長木氏: 理由というほどではないんですが……。いきなりですけど、小学生のときに、プールの授業で「級」ってありましたよね? 水に潜れるようになると線が1本もらえて、バタ足ができるようになるともう1本増える、みたいな。線が3本に増えて、4段階目に入ると新しい色の帽子がもらえる仕組みになっていたと思うんですが、あの帽子が変わる瞬間が、僕はもう、めちゃくちゃ嬉しかったんですよね。その感覚が染みついていて、自然と「3回色が変わったら、ガラッと形が変わる」仕様になっていました。理由はそれだけです。スミマセン(笑)。

――では最後に、ユーザーの皆さんに向けてメッセージをお願いします!

立川氏: 「ドラグーン エンパイア」は、リアルタイムバトルでの共闘やカードの相性でパラメーターが変化するところなど、他のアプリには見られない“やりこみ要素”が盛り込まれたゲームです。ただデッキを組んでバトルするたけではない、いろいろな遊び方ができると思いますので、ぜひご自分らしい楽しみ方を見つけてみてくださいね!

長木氏: いま、世の中には、スマホ向けのアプリやブラウザゲームがあふれています。「ソーシャルゲームはオワコンだ」なんていう声もよく耳にしますが、僕は、あんまりそういったことは気にしていません。アプリだろうがブラウザゲームだろうが、いいものはきちんと残っていく。

 ソーシャルゲームに関しても、いいものが残りきちんと進化していくと思っています。これからも、ソーシャルゲームファンを大切にしたゲーム作りをしていきたいと思っていますので、「ドラグーン エンパイア」に、そしてリイカに、いままで以上にご期待ください!

(秋山由香)