インタビュー

「崩壊:スターレイル」Ver.2.0の「王のゴミ箱」や終盤に待つ“例の展開”について色々聞いてみた。開発チームインタビュー

 HoYoverseは、プレイステーション5/Android/iOS/PC向けに配信中の「崩壊:スターレイル」にて、3月27日にVer.2.1「深淵への狂走」をリリースしている。

 「崩壊:スターレイル」は、銀河を旅する星穹列車の旅路を描いたスペースファンタジーRPGだ。本作と同じくHoYoverseが配信する「崩壊学園」、「崩壊3rd」らに続く、いわゆる「崩壊」シリーズの一作品であり、本作においてはターン制のコマンドRPGという誰でも親しみやすいゲームジャンルが採用された。

 記事執筆時点では、先述したように最新バージョンとなるVer.2.1が配信中で、夢の星「ピノコニー」を舞台としたシナリオが展開中。これまでとは打って変わって、ミステリーチックな切り口で紡がれる物語と衝撃的な展開(色々な意味で)は、何かとSNSでも話題になっている。

 今回は、リリース直後に多くのプレーヤーから特に反響があったピノコニー導入編、Ver.2.0「真夜中に夢を見るなら」の配信中のタイミングに「崩壊:スターレイル」開発チームへメールインタビューを実施した。極力ネタバレに配慮しているものの、質問と回答によってはやむを得ない場合もある。気になる方は、ぜひVer.2.0をクリアした上でご覧いただきたい。

【【崩壊:スターレイル】ピノコニー観光プロモーション動画「チクタク!一緒に夢を散策しよう!」】

ゆったりと楽しく過ごせて、なおかつ光に満ちた明るいピノコニーを作ることに当初から全力――

――初の大型アップデートとなるVer.2.0「真夜中に夢を見るなら」のリリースから時間が経ちましたが、手応えはいかがでしょうか。

開発チーム:ピノコニーという世界に対するプレーヤーの皆さんの期待、好奇心、そして未解決の謎への関心をひしひしと感じています。皆さんには冒険しながら宴の星の謎めいた面を少しずつ明らかにしていってもらいたいと思い、ゆったりと楽しく過ごせて、なおかつ光に満ちた明るいピノコニーを作ることに当初から全力を注いできました。

 メインストーリーはVer.2.0からVer.2.2までの3バージョンにかけて展開され、さらに後日談があります。このような流れにしたのは、ストーリーを段階的に展開させ、非の打ち所がない、奥深いものにするためです。今のところピノコニーのストーリーにはまだピリオドは打たれていませんし、未公開の素晴らしい内容がたくさんあります。ですから、ここであまり多くを語ることはできません。どうかお許しください。

 プレーヤーとメディアから認めてもらえるかどうかは重要ですが、だからといって古いやり方に固執して挑戦しないということにはなりません。長期運営のゲームにとって、新しくて面白いコンテンツを絶えず提供していくことが常に課題としてあるのです。Ver.2.0の公開とは単にコンテンツの更新、新キャラの追加、ストーリーの掘り下げを行なうだけではなく、「『崩壊:スターレイル』という作品をより進化させるぞ!」という決意の象徴でもあるのです。

――本バージョンの舞台「ピノコニー」の物語は「ヤリーロVI」、仙舟「羅浮」とも異なるシナリオテイストで、自分を含めて多くのプレーヤーにとっても新鮮な体験になりました。ただ、SNS上ではver.2.0の終盤に訪れる"例の展開"に、衝撃を受けた開拓者たちが多かったようです。そんな彼らの反応を見てどんな気持ちになりましたか?

開発チーム:「×××」や「×××」(※自主規制)といったキャラが予想外の出来事に見舞われ、ショックを受けているプレーヤーを見ていると、自分の作ったものが皆さんの心の琴線に触れたのかな? と思います。もちろん、皆さんがどのように感じるかも理解できます。何しろまだVer.2.0、Ver.2.1ですからね。ピノコニーの壮大なストーリーはまだ始まったばかりですよ。

 予告番組でシェアしたように、ピノコニーのストーリーはゆったり、楽しい、明るいを基調にし、開拓者を夢の地での探索の旅へと誘います。各勢力がピノコニーに集まる真の目的、列車組を招待した人物、ファミリーがひた隠しにしている秘密、これらの謎が、今後次々と明らかになりますので楽しみにしていてください。

――NPCの感情をチューニングする新要素「クロックトリック」が、とてもユニークで面白い遊びでした。ほかにも「夢覗き電話」、「夢の泡」といった魅力的な仕掛けが複数ありますが、どのような経緯で生まれたのでしょうか。

開発チーム:今、挙げていただいたものは、どれもピノコニーの世界観を作り出すのに必要な要素ですね。宇宙の旅の次の駅を構想するにあたり、星間交流の壮大な舞台を作り出したいと強く思ったんです。そこは銀河各地から、様々な派閥の様々な目的を持つ人々が特殊なきっかけで集まってくる「夢の地」です。「夢の地」という基本的なコンセプトが定まった後、今度は「夢境世界」を構築するというアイデアが出てきました。

 1つには夢の魅力、すなわち「夢の中では理想の生活が送れる」という点がリゾート地であるピノコニーの設定とマッチしていて素晴らしい! と思えたからです。もう1つは、プレーヤーが夢と現実を行き来できるという設定により、ストーリーやキャラクター作りの面で可能性を広げることができるからです。

特殊な力「クロックトリック」を使用すると、NPCの感情を操ることができる
街中に設置された「夢覗き電話」では、主要キャラクターたちがみている夢をのぞくことができる

開発チーム:夢境世界について具体的にお話しすると、たとえば「黄金の刻」のデザインとビジュアルに関しては「ジャズ・エイジ(1920年代のアメリカを指す言葉)」を基調とし、なおかつ我々の想像力を発揮して非常に愉快な「華やかさ」を演出するとともに、同時にちょっと「荒唐無稽」な感じを出せるよう努めました。

 そびえ立つ摩天楼、複雑に入り組んだ交通網、広大で賑やかな商業エリアなど、夢の世界の繁栄を体現する要素をビジュアル面で丹念に描き出しています。そこに都市の燃料であるドリンク、プレーヤーを追いかける看板、夢の泡、夢覗き電話、ドリームウォーク、感情の歯車と、それに付随するNPCの感情操作や、クロックボーイ&ブラザーハヌなどの設定・要素を組み込みました。こうして夢境世界の荒唐無稽さを表現し、夢と現実との違いをプレーヤーが直感的に体験できるようにしたのです。

ピノコニーの主要エリア「黄金の刻」
商業区「オーディ・ショッピングセンター」

ピノコニーから登場したキャラクターへのこだわりと、過去作を知っているとニヤリとできる要素について

――今回から登場したキャラクター「王のゴミ箱」がどのようにして生まれたのか、また「王のゴミ箱」の誕生にまつわるエピソードがあればぜひ教えてください。

開発チーム:ピノコニー編には「王のゴミ箱」と呼ばれる面白いNPCが登場します。ピノコニーのいたる場所でプレーヤーは王のゴミ箱と思いがけず遭遇することになるでしょう。このNPCが誕生したきっかけは、本作が正式にリリースされた後に流行ったゴミ箱ミームです。

 開発過程では、ゴミ箱は単にクスっと笑えるささやかな隠し要素でしかなかったのですが、ゲームのリリース後に皆さんからこうも注目される要素なのだと知りました。そこで「開拓者とゴミ箱に王座をかけた対決をさせよう!」と考えたわけです。

「王のゴミ箱」

開発チーム:「王のゴミ箱」のデザインのポイントはその高慢な性格と、一生をかけて強いライバルを求めているという設定です。強靭な戦士としての「王のゴミ箱」の特徴は、弱点がなく普通の攻撃ではダメージを与えられないという点です。プレーヤーが攻撃すると、攻撃したキャラクターの属性が「王のゴミ箱」の弱点属性となります。

 果敢にその弱点を撃破することで、プレーヤーの実力が認められ、「王のゴミ箱」はクールな後ろ姿を残し颯爽とその場を去ります。皆さんは「王のゴミ箱」と戦うことを選び、刺激的なバトルの快感を味わってもいいですし、ゴミ箱とおしゃべりして、その内面を探ってみるのもありでしょう。

――「王のゴミ箱」は「パム」に続く新たなマスコットキャラクターに定着しつつあるような気がしています。今後のバージョンにおいても、彼らの生き生きとした活躍は見られるのでしょうか。

開発チーム:王のゴミ箱を好きになってくれて本当にありがとうございます。バージョンアップでストーリーが更新されるNPCもいます。この先も愉快なNPCをたくさん登場させますのでご期待ください!

【【崩壊:スターレイル】スウィート・ドリーム予告PV「華麗なるタルタロフ」】
こちらの動画では「王のゴミ箱」がサムネイルに選ばれユニークな仕上がりに

――SNSでは「花火」がとても話題になっていました。また、公開中のキャラクターPVの反響も大きいようです。

開発チーム:花火という人物は捉えどころのない「仮面の愚者(※)」で、「愉悦」のためには手段を選ばず、愉しみを追い求めます。危険なトリックスターで変装にも長け、どんな人物にだってなりきります。彼女は千の仮面を持ち、万の顔を演じることができるのです。花火にとって、富も名誉も権力も煙のように儚いものにすぎず、「愉しいこと」だけが彼女を行動に駆り立てます。そういった我が道を行く小悪魔タイプで、謎めいた雰囲気を作りたいと考えていました。

(※)「仮面の愚者」=作中に登場する数ある派閥の1つ

 戦闘面からみると花火は万能なサポートキャラであり、パーティのSPリソースを回復してくれるため、汎用性も非常に高いです。憎めない人柄とパワフルな実力を持つ彼女が皆さんに愛されているのは非常に嬉しいです。

「花火」

――「アベンチュリン」はどこか内面に含みのある人物像ですが、それ以上にキャラクターデザインから色気を感じられます。彼に対するこだわりのポイントがあれば教えてください。

開発チーム:「アベンチュリンにはミステリアスな雰囲気があり、悪人とも、善人とも言えず、善悪の要素を兼ね備えたようなイメージが皆さんの目には魅力的に映るのかもしれませんね。Ver.2.1で開拓者は「『十の石心』博戯の砂金石」と争うことになります。アベンチュリンはなぜあのような姿で登場するのか? なぜ開拓者と戦うのか? その戦いの行方はどうなるのか? これらすべてがVer.2.1のストーリーで徐々に明らかになるでしょう。

「アベンチュリン」

――自称巡海レンジャーの「黄泉」の姿に、「崩壊3rd」や「原神」などの“とある人気キャラクター”を重ねたプレーヤーはたくさんいたと思います。これらの作品を知っていれば、ニヤリとできる小ネタはありますか?

開発チーム:「崩壊:スターレイル」で巡海レンジャーという肩書きで登場する黄泉は、冷徹孤高な宇宙を旅する人で、復讐のために孤独な道を歩んでいるように見えますが、実は謎めいた背景を持つ「自滅者」です。記憶も過去もない不思議な存在なんです。彼女のスキルは、全体的に荒廃や破壊の雰囲気が漂うように仕上げました。これも強大な力の裏にある空虚さと孤独を伝えたいからです。“彼女”をよく知る古参プレーヤーなら、そこから親しみ深い要素を見つけることができるでしょう。

 また、「崩壊:スターレイル」は崩壊シリーズにおける新作であり、古参プレーヤーであれば本作のいくつかのキャラクターに既視感を覚えるかもしれません。たとえば「ヴェルト・ヨウ」、「姫子」、「ブローニャ」などですね。特にヴェルト・ヨウは確実に同一人物であり、その上、本作と前作をつなぐ重要な架け橋でもあります。最新バージョンでの彼と黄泉とのやりとりに古参プレーヤーの皆さんは思わず吹き出してしまうでしょう。

 とはいえ改めて強調しておきますが、「崩壊:スターレイル」はあくまで崩壊シリーズの新作です! 「崩壊3rd」の続編ではなく、すべてのプレーヤー向けに作った完全新作であり、ストーリーの設定上でも完全に独立しています。崩壊シリーズを昔からプレイしているかどうかは全く気にしなくて大丈夫です。ゲームに隠した数々の要素は、すべてのプレーヤーの皆さんが理解し、楽しんでもらえるよう、細部までこだわって作ってあります。

「黄泉」
「ヴェルト・ヨウ」

――ターン制のRPGということで新キャラクターのバランス調整は非常に難しいかと思います。新キャラ「黄泉」などのキャラクターについて、実装の際に工夫している点や、特に気をつけていること、どのようにして強さを設定しているのかを教えて下さい。

開発チーム:新キャラの黄泉は戦闘において非常に優れています。しかも彼女は、我々がコンテンツとキャラクター仕様で根気強く革新を行ってきたことを象徴する存在でもあります。

 黄泉の必殺技のチャージはこれまでと違って、「残夢」という特殊なシステムを用いています。戦闘スキルを発動する、任意の味方がスキルを発動して敵にデバフを与えた際にも「残夢」ポイントは増えていきます。「残夢」ポイントが一定値に達することで、黄泉の必殺技は発動できるようになっています。要するに、これまで汎用的で極めて強力だったチャージ型の装備は適用されないので、新たにパーティ編成を考え直さねばなりません。

 また、黄泉が秘技を発動すると通常エネミーを即座に倒すことができるので、戦闘に入る必要もありません。これによりゲームの世界を冒険する際、マップを探索する時の選択肢が増えました。

 皆さんが馴染みのキャラも新しいキャラも愛してくださっていることに、とても感激しています。キャラクターの強さ、編成の変化に関して心配になるのも理解できます。開発チームはどのキャラクターにも最大限の熱意と努力を注いでいます。ですので、ゲームのバランスをできる限り維持し、どのキャラクターでも楽しくプレイしていただけることをお約束します。

【【崩壊:スターレイル】イッテ星穹「黄泉:また一陣の雨が降り、__________________」】

――以前、『崩壊スターレイル』では、キャラクターが階段の段差を1段ずつ登るとして話題になりました。非常に細かい部分ながら、実装に関しては戦闘バランスとまた異なる難しさがあると思います。こういった細部へのこだわりは他にもあるのでしょうか?

開発チーム:細かいところまで見てくださってありがとうございます。HoYoverseはゲームモデリングに関しては特にこだわってきました。今、質問で挙げられた点は、まさに開発チームがモデリングの際に努力した結果、得られた副産物なのです!

日頃から盛り上がる二次創作に対する想いと今後の展望

――ユーザーのファンアートや動画をはじめとした二次創作についてどうお考えでしょうか?また、本国での盛り上がり具合や日本国内での盛り上がりについて、制作サイドはどのように見ているのかを教えていただけますか?

開発チーム:本作がリリースされた後、各地で数々の二次創作が生み出されました。ユーモアあふれるネットミームにしろ、キャラクターが生き生きと表現されたコスプレにしろ、そのほかの形式の創作にしろ、ネット上で目にするたびに嬉しくなります。こんなにも情熱的で才能にあふれたプレーヤーの皆さんがいてくれて、開発チームとしては非常に誇らしいです。

 二次創作はゲームの世界観を広げ、より鮮やかにしてくれる存在で、さらにはプレーヤーたちの感情と体験を映し出す鏡でもあります。特に印象的だったのは、以前開催された二次創作イベントでの作品です。プレーヤーの皆さんが大阪・神奈川・東京・鎌倉といった日本の代表的な都市から着想を得て、「崩壊:スターレイル」のキャラクターと各都市の代表的な建築物とを巧みに結びつけ、息をのむほど美しい作品を作り上げてくださいました。実に素晴らしかったです!

 皆さんが優れた二次創作をどんどん生み出してくださることを心から応援し、支援したいと考えています。皆さんがその才能を存分に発揮し、ゲームへの愛とアイデアをシェアしていただけるよう、壮大な舞台を設けたいと思います。

【『崩壊:スターレイル』マルチバースの瞬きコンテスト PV | 奇想トリック】

――HoYoverseの「原神」は日本でのイベントやグッズの展開が増えてきました。今後「崩壊:スターレイル」においても増えることを期待していいでしょうか?

開発チーム:「崩壊:スターレイル」が正式にリリースされて以来、全世界のプレーヤーがこの銀河の冒険ストーリーを愛してくださっていると感じます。今回の1周年記念に際して、ロサンゼルス・東京・台北・香港・ベルリン・パリ・バンコクを含む世界各地でオフラインの記念イベントを開催します。

 そこで本作の不思議な世界観を体験していただければと思います。開拓者の皆さんが気の合う仲間と一緒に何かを成し遂げ、銀河の冒険談の数々を共有できるよう、より多くの楽しいオンライン/オフラインイベントの開催にもっと力を入れていきます。

――最後にひとつ。HoYoverseでは今後「ゼンレスゾーンゼロ」のリリースを控えているかと思いますが、各作品の垣根を超えたコラボなどの予定はされていますか……?

開発チーム:ご期待いただき、またご注目いただきありがとうございます。コラボに関しては、決まり次第いち早く皆さんに共有しますね!

――ありがとうございました!

サービス開始1周年を記念したイベントなど、ゲーム内外含め今後も様々な取り組みが予定されている