【特別企画】

「ブラッドボーン」10周年! 青ざめた血とは? 上位者とは? 獣の病とは? 本作の様々な謎を改めて考察してみた(ネタバレだらけ注意!)

【Bloodborne】
2015年3月26日 発売

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SIE)が2015年3月26日に発売したプレイステーション 4用アクションRPG「Bloodborne」(以下、「ブラッドボーン」)が、本日2025年3月26日で発売10周年を迎えた。

 「ブラッドボーン」は、「ダークソウル」などのシリーズを産みだしたフロム・ソフトウェアが開発した作品で、本作も例に漏れず、プレーヤーの心を容赦なく折ってくる高難易度なアクションRPGとなっている。だが、フロムの死にゲーの中でも本作はスチームパンク感の強い、異色の作品となっており、根強いファンを多く持つ作品だ。

 以前に筆者が執筆した「『エルデンリング』、次のフロムゲー何やる問題を解決したい!」の中でも「ブラッドボーン」にはおすすめ度「★★★★★++」をつけさせてもらっているほか、2年前にも本作を振り返る記事を掲載したが、本稿では10周年を記念して、あえてネタバレにめちゃくちゃ踏み込んだ記事をお届けしたい。

 本作のストーリーを知らない人は前述の記事を、ヤーナムに憑りつかれた狩人の皆さんにはぜひ本稿を読んでいただければ幸いだ。

 なお、フロム・ソフトウェアのゲームには"明確な正解"というのはないと思っている。本稿ではあくまで"筆者なりの解釈"で考察した本作の謎を紹介しているので、10周年の節目に本作の謎を一緒に楽しんでいただければ幸いだ。

【Bloodborne(ブラッドボーン) ローンチトレーラー】

「青ざめた血」とはなんだったのか

 まず本作を語る上でどうにも外せないのが「上位者」という存在である。上位者とは、読んで字のごとく「我々人間よりも上位の世界に存在する者」=「月から訪れた者」で、姿なきオドン、脳喰らい、アメンドーズや、エーブリエタース、ロマ、ゴースあるいはゴスム、メルゴーの乳母らといった上位者が登場する。

 そもそも本作の主人公の目的は、冒頭に見つかるたった一枚のメモに書かれた、「『青ざめた血』を求めよ。狩りを全うするために」という、これだけである。

 では、「青ざめた血」とはなんだったのだろう。実は青ざめた血は、冒頭を除いてたった下記だけしか本編に出てこない。

ほう……「青ざめた血」ねえ……
確かに、君は正しく、そして幸運だ
まさにヤーナムの血の医療、その秘密だけが……君を導くだろう

見たまえ! 青ざめた血の空だ!

上位者狩り。上位者狩り
ローレンスたちの月の魔物。「青ざめた血」
三本の三本目

 青ざめた血については解釈がいくつかあるが、10年経った今でも青ざめた血が何なのか、その正確な答えはわからないのだ。本作のディレクターである宮崎英高氏も明言はしていないのだが、青ざめた血については大きくふたつの解釈がある、と記している。

 まずひとつめに考えられるのは、隠し街ヤハグルにあった「見たまえ! 青ざめた血の空だ!」のメモの通り、ヤーナムの空の色である。「白痴の蜘蛛、ロマ」を倒してメンシスの儀式を暴くとヤーナムの空の色が変わるのだが、その空の色を指している、という考察だ。主人公である狩人の目的はヤーナムの街の空という事になり、獣狩りの夜の終わりである「ヤーナムの夜明け」エンドともつながるように見える。

 そしてふたつめは、ビルゲンワースの教室棟にあったメモ「上位者狩り。上位者狩り。ローレンスたちの月の魔物。『青ざめた血』三本の三本目」から、「青ざめた血」とは、月から現われた上位者を指す言葉ではないだろうか。何故月から現われたのかは、真エンディングとも言える「幼年期のはじまり」エンドから容易に推察できる。

 この上位者と人間の出会いによって、「獣の病」の流行が始まったのではないか、ということが考えられるのだ。

星の娘、エーブリエタース。上位者は全体的に、海洋生物のようなものを中心にデザインされていることが多い

上位者とヤーナムとの関わり

 では、なぜ上位者と人間の出会いによって獣の病が流行ったと言えるのだろうか。

 その一端は、ヤーナムに存在する医療教会という宗教勢力が関係していると考えられる。医療教会の元となったビルゲンワースの研究の成果のひとつとして、神の墓を暴き、その聖体を持ち帰った、という話は、アルフレートから聞くことができる。

かつてビルゲンワースに学んだ何名かが、その墓地からある聖体を持ちかえり
そして医療教会と、血の救いが生まれたのです

 ここで言われる神が上位者と呼ばれる存在で、そして「獣」と結び付けるには、カレル文字「獣」のフレーバーテキストから推察できる。

それは遺跡の獣、その唸り声の表音であり
「獣」の意味が与えられ、一時的獣化の効果を高める

「獣」は、最初のカレル文字であり、同時に最初の禁字である
血の発見とは、すなわち望まれぬ獣の発見であったのだ

 さらには、アイテム「白い丸薬」のフレーバーテキストも見てみよう。

毒を治療する小さな丸薬
かつて旧市街を蝕んだ奇怪な病、灰血病の治療薬

もっとも、その効果はごく一時的なものにすぎず
灰血病は、後の悲劇、獣の病蔓延の引き金になってしまった

 これらのテキストから、獣=神=上位者であり、獣の病蔓延の引き金となった「灰血病」が発生したのではないだろうかと、筆者は考えた。なお最終的に灰血病が蔓延したヤーナムの旧市街は、医療教会によって焼き払われたことがわかっている。

メモにも、「医療教会は俺たちを見捨てるつもりだ。あの月の夜、旧市街を焼き棄てたように」とある

 しかし、「すべての上位者は赤子を失い、そして求めている」という謎が出てくるのだ。それを説明すべく、ここで「3本目のへその緒」というアイテムの概要を見てみよう。

別名「瞳のひも」としても知られる偉大な遺物
上位者でも、赤子ばかりがこれを持ち
「へその緒」とはそれに由来している

すべての上位者は赤子を失い、そして求めている
故にこれは青ざめた月との邂逅をもたらし
それが狩人と、狩人の夢のはじまりとなったのだ

使用により啓蒙を得るが、同時に、内に瞳を得るともいう
だが、実際にそれが何をもたらすものか、皆忘れてしまった

3本目のへその緒

 このアイテムのフレーバーテキストを読むと、上位者は赤子を求めており、赤子を手に入れる為にヤーナムの人間を利用しているかにも見える。

 また、この3本目のへその緒というアイテムは全部で4つあり、4つすべて微妙にテキストが違っている。

ふたつめの3本目のへその緒

姿なき上位者オドンもまた、その例外ではなく
穢れた血が、神秘的な交わりをもたらしたのだろう

みっつめの3本目のへその緒

故にこれはメルゴーとの邂逅をもたらし
それがメンシスに、出来損ないの脳みそを与えたのだ

よっつめの3本目のへその緒

かつて学長ウィレームは「思考の瞳」のため、これを求めた
脳の内に瞳を抱き、偉大なる上位者の思考を得るために
あるいは、人として上位者に伍するために

 「穢れた血が、神秘的な交わりをもたらした」、「あるいは、人として上位者に伍するために」など、気になるワードが出てくる。つまり、上位者は意図的に人間を利用して赤子を手に入れようとしていたのではないか、ということも考えられるのである。

 ビルゲンワースも、上位者を利用することで人類の進化を促そうとしていた面もあり、つまりどちらもそれなりに思惑があって利用しあっており、ヤーナムはその事実を知りつつ、支援をしていたのではないか、と考えられるのだ。

メンシスとは? 瞳とは?

 3本目のへその緒の説明で出てきたメンシスについては、また少々説明が必要だろう。

 メンシスとは、ビルゲンワースの学生として研究を行なっていた学派。ビルゲンワースの学生であったローレンスらはビルゲンワースを去って、メンシス学派を立ち上げることになる。

 その目的は血によって人を超え、上位者と邂逅し、瞳を授かることで、そのための儀式でヤーナムの獣狩りの夜が終わらなくなった事件を引き起こしてしまう。

 ミコラーシュをはじめとしたメンシス学派は、悪夢の探求をするために強靭な肉体を持つ獣を研究していたのだが、獣になると理性を保てなくなるので、獣に耐えうる瞳を欲した。

ミコラーシュ

 かつてビルゲンワースの実験によって生まれた「ロマの瞳」から、彼らは悪夢を見て、「瞳」にこそ悪夢があるとしたと想定される。つまり、上位者は瞳によって悪夢を得ている、というのがメンシス学派である。なお悪夢とは、狩人の夢とは異なる別の異次元空間だ。

 なお、ミコラーシュを倒すと「メンシスの檻」というアイテムが入手できるが、そのフレーバーテキストには「夢の上位者と交信するための触覚。そして、これは実際に、彼らを望む悪夢に導いたのだ」とあることから、ミコラーシュらは悪夢を手に入れるには上位者から奪ってしまえば良いのだと考えた。そしてローレンスもへその緒を使って上位者を呼び悪夢を手に入れたのだと思い、それを実行したと思われる。「悪夢の赤子」とはメルゴーの乳母が守る赤子のことなのは、メンシスの悪夢をクリアすればわかる。

悪夢の赤子を探せ

 それでは、改めて瞳とはなんだろうか。これはビルゲンワースの学長ウィレームが「我々は、思考の次元が低すぎる。もっと瞳が必要なのだ」と言っていることからも、人類が理解できないものを理解するための能力ではないかと思われる。

まだまだ考察すべきことはあるのだが……

 ちなみに、繰り返すがこれらは“筆者の考える「ブラッドボーン」”の考察であり、これが正解なのだと断じているわけでは決してない、ということを告げておきたい。

 ここまででも「じゃあ○○ってなんだったの?」という様々な疑問が浮かんでいると思うが、それについて書き出してしまうと永遠にこの記事が終わらなくなってしまうので、今回はここまでで終わりにしたいと思う。

 もしもまた機会に恵まれたら、今度は別のことを考察してみよう。そう、DLCエリアのこととかね。

 10周年でありながら、いまだにプレーヤーから深く愛されており、現在進行形でヤーナムから帰ってこられない狩人も多い「ブラッドボーン」。実際、久しぶりに起動してみたところ、まだ普通にマッチングすることに驚いてしまった。

 PS4で発売された作品とはいってもPS4の初期に出たころの作品ということもあり、リメイクや続編を望む声も非常に多い。

 また、フロム・ソフトウェアの作品のなかでも極端に情報が複雑かつ情報量が少なく、宮崎氏もあえて明言を避けている作品とあって、10年もプレーヤーの間で様々な考察が交わされている。

 これを読んで懐かしくなった狩人の皆さんたちは、ぜひまだまだ「ブラッドボーン」を盛り上げていってほしいと思う。「ブラボ」はいいぞ。

考察も楽しいが、もちろん狩人として生きるゲーム性が圧倒的に面白い本作。いまだにマッチングしてくれるのも嬉しい。昨今のフロム・ソフトウェアの作品ほどソロプレイがしやすくはなっていないので、困った時は遠慮なく助っ人を呼ぼう。スチームパンクな世界観が好きな人には、ぜひともプレイしてほしい