インタビュー

「VCT Pacific」ZETA hiroronn選手インタビュー「全力で努力したいと思えることがあるのが幸せ」

【VCT Pacific Stage1】

4月6日より開催中

ZETA DIVISION「VALORANT」部門・hiroronn選手

 4月6日より韓国・ソウルで開幕した「VALORANT」のアジアリーグ「VCT Pacific Stage1」。今年のPacificは2月に「Kickoff」が開催され、6月に「Stage2」が控えているという状況で、「Stage1」はちょうど真ん中のシーズンにあたる。

 日本からはZETA DIVISION(以下ZETA)およびDetonatioN FocusMe(以下DFM)が参戦。ZETAは4月16日のBleed Esportsに勝利し、4月22日20時よりGen.G戦を控えている状況だ。DFMは4月23日17時よりTeam Secret戦が始まる。

 筆者は昨年同様、今年も現地取材を敢行しようと計画を立てたのだが、今シーズンから会場での1on1インタビューは初週と最終週のみとなってしまっていた。会場での写真撮影は予定通り実施したが、インタビューはなし。ということで急きょ別途インタビューをお願いしたところ、ありがたいことに応じていただける運びとなった。

 今回はZETA所属のhiroronn選手に色々とお話を伺ってきたので、早速ご覧いただきたい。

試合に出る機会が増え成長していると実感

――本日はインタビューに応じていただきありがとうございます。まずは、ここまでの「VCT Pacific」での戦いを振り返って、ご自身のパフォーマンスについてどう感じているのか聞かせていただけますか。

hiroronn選手:リーグ期間が長いのもあって、チームとしては修正を重ねて上手くなってますし、個人的にもパフォーマンスはまだ出ていないところもあるんですが、どんどん成長しています。Pacificに来る前までは国際大会に出たことがなかったので、試合に出る機会が増えて経験という意味でも成長している実感はありますね。

――それなら今すごく楽しいのでは?

hiroronn選手:楽しいですけど、やっぱり勝てないと期待に応えられなくて申し訳ないという気持ちはあります。成長も大事ですけど勝つことも大事なので。

――ああ、そうですよね。では、これまでの「VCT Pacific」を通じて、印象に残っているチームや選手がいたら教えていただきたいです。

hiroronn選手:やっぱり「VCT Pacific Kickoff」で優勝したGen.G Esportsは印象に残っています。韓国人5人のチームで世界2位は快挙ですし、これからPacificで戦っていくなかでも一番の強敵になるチームだと思っています。それから、Global Esportsと戦う機会が多くてもう3戦ぐらいやってるんですけど、唯一のインドチームで唯一のインド人のLightningfastさんが最近めちゃくちゃ強くなってて、ひとりで国を背負っているような形なのですごいなって思って見てます。だけどやっぱり自分はT1のSayaplayerさんが好きなので、倒したいという気持ちと尊敬も含めて一番印象に残ってますね。

――Sayaplayer選手については本当に色んなインタビューで言及しているのを拝見していたんですが、Sayaplayer選手のどんな点が特に素晴らしいと感じますか?

hiroronn選手:「VALORANT」が始まった当初、たまたまSayaplayerさんと一緒にアンレートする機会があって、そのときにAIMが「人間じゃないな」ってぐらいすごくてビックリしちゃって。もう一目惚れって感じですね。「自分もこうなりたい!」って思ってずっと追いかけてきました。デュエリストですけど頭も回るし、どんな武器を使っても強いし、エージェントもわりと何でも使えるし、全部すごい(笑)。「Overwatch」時代からリーガーとして活動していて「VALORANT」でも最初はアメリカでプレイしていましたし、リーグができてからは韓国でやってますけど本当にずっと第一線を走り続けているところが尊敬できますね。

――ちなみに韓国へ来てSayaplayer選手と交流はありましたか?

hiroronn選手:Kickoffのときに話しましたね。16日のBLEED Esports戦の前にT1対Rex Regum Qeonがあって、Sayaちゃんが壇上でインタビューし終わったあとにグータッチしに来てくれました。すごく優しいんですよね。

Sayaplayer選手

hiroronn選手から見たコーチやチームメイトはどんな人?

――ZETAは今年からメンバーも変わってチームの雰囲気がまだ見えていない部分も多い気がするので、是非hiroronn選手から見たコーチやチームメイトについて語っていただけますか。

hiroronn選手:じゃあまずはCarlaoコーチから。ずっとほかのチームの試合を見て研究し続けている努力家で、自分たちのこともすごく考えてくれています。熱い人でみんなを引っ張って行ってくれる、もう本当にお父さんみたいな感じですね(笑)。JUNiORコーチは……ちょっと抜けてるお父さん? お父さん多いから親戚のおじさんにしておこうかな(笑)。不思議な人なんですけど、チームのみんなからすごく愛されてます。役割としては、Carlaoコーチは日本語がわからないので、選手とコーチ間の基本的なコミュニケーションを取ってくれています。

Carlaoコーチ
JUNiORコーチ

――順番的に次はcrowコーチかなと思うんですが、hiroronn選手を見ているとcrowコーチのプレイスタイルを引き継いでいるという感じもします。

hiroronn選手:そうですね。使うエージェントも似てますし、それこそ最初のころはエージェントとかチームの動き方を全部crowコーチに教えてもらいました。だからcrowコーチは自分からすると完全にお兄ちゃんなんですけど、役割で言うとYuranくんと自分のプレイのアドバイスをしてくれたり、最近は研究をやったりしてくれています。今はメンタル的なアドバイスもしてくれるので、大会中かなり助かっています。

crowコーチ
Yuran選手

――いいですね。続いて選手、いきましょうか。Yuran選手とかだと話しやすいですかね。

hiroronn選手:Yuranくんは一緒に生活してて本当によくわからない人なんですけど、天然でムードメーカー的な感じですね。発言とかも意味わからないことしか言わないんですけど、人を笑わせる才能があって。プレイ面ではすごい自信がありますよね。この半年Carlaoコーチからコーチングを受けて基礎も完璧になってきて、これからどんどん良い選手になるんだろうなって思います。

――強気なプレイと天然のムードメーカーって、かなりギャップがあって面白いですね。では次はどなたにしましょうか。

hiroronn選手:じゃあ年齢順でいこうかな。SugarZ3roさんは普段は友達みたいな感じで話しかけてくれて、自分も話しやすいです。ゲームに関しては真面目ですし、柔軟で頭がいい。それでいて撃ち合いも強いのでオールラウンダーに見えますね。自我はあまり出さない方ですが、ほかの人に合わせるのが上手い選手です。Depさんは自分がチームに合流してすぐ開催された「Red Bull Home Ground」のときにいなかったのでまだ交流が浅いんですけど、最近よく話すようになりました。傍からはよく「天才」とか言われてますけど、内からみると「努力家」なのかなって。理論的なプレイではない感覚派だけど、その「感覚」を積み重ねて研究して研ぎ澄ませていく感じなんです。

SugarZ3ro選手
Dep選手

――わかるような気がします。天才が努力するとすごいことになりますからね。さて、大トリはLaz選手。

hiroronn選手:普段から一緒に出かけたり話したりすることが一番多い気がします。自分とタイプが似ている気がしてて。まあでもすごく大人ですし、年齢もあるんでしょうけどご飯をおごってもらったりめちゃくちゃ優しくしてもらっていてありがたいです。ゲーム面では一番の努力家で、試合は絶対見返して反省してますしランクもチームで一番やっていて、絵に描いたような「スター」ってイメージですね。本当に尊敬できるしみんなの憧れです。

Laz選手

――では、最後にhiroronn選手のチーム内での立ち位置や役割について教えてください。

hiroronn選手:やっぱり年上が多いから、弟みたいな感じで見られてるんじゃないかなと思いますね。ゲーム内で言うと最近は結構変わってきてて、LazさんひとりのIGLじゃなくなって、ほかの人もコールはしますけど自分が半IGLみたいな感じになったんです。それにイニシエーターなので、最近は味方を動かすような立場になっているのかなとも思いますね。難しいし大変なんですけど、まとめ役になろうとしているところって感じです。

自分を成長させたいなら変化が必要

――ここから少し話題を変えて韓国での生活についてお伺いしたいんですが、ズバリ韓国での生活はどうですか?

hiroronn選手:生活はぶっちゃけあんまり変わらないですね。大会が終わるまではずっとゲームしてたいですし、休みの日も疲れちゃってそんなに出かけないし、ご飯を食べに行くぐらい。韓国料理は、バリエーションが少ない気はするものの基本めっちゃ美味しいです! むしろ韓国とか関係なく、共同生活になってみんなとすごく仲良くなれたのが良かったです。お互いを理解し合ってさらに強くなれるという感じがして、とても満足しています。

――オフラインで一緒にやれるのはやっぱりいいですよね。hiroronn選手といえばZETA Academy出身でFENNELで国内優勝も経験して、今はZETAに入ってこうして国際大会にも出てプロ生活をすごく順調に歩んでいるイメージがあるんですが、ご自身ではどう感じていますか。

hiroronn選手:自分が一番成長できる環境に身を置くのが好きだし重要なことなので、個人的にはどんどん成長していけてると感じています。やっぱり変化しないと成長しないというか、自ら変化していくのは大変なので環境とかチームを変えたら変化せざるを得なくなるわけで。たとえそこでちょっと弱くなったとしてもそこから成長したら前の自分より絶対に上手いって思えるので、普段から変化するようにはしていますね。

――それは興味深いお話ですね。

hiroronn選手:確かに、日本だと珍しい考え方なのかもしれないですね。保守的というか、ずっと同じチームでこのチームで世界に行くんだ、みたいな。それも理解できるんですけど、自分を成長させたいならやっぱり変化が必要かな、と。

――ZETAファンの「行かないで!」っていう声が聞こえてきそうですけど……。

hiroronn選手:それは、まだ大丈夫です(笑)。というかZETAとDFMが国内トップチームなのでこれ以上は上がないし。

――となると海外チームになるのでは?

hiroronn選手:自分は英語ができないので……(苦笑)。でも海外のチームに行ったら全然違う環境になると思うので、いつかは行ってみたいという気持ちはありますね。まあ、20代の後半ぐらいにチャレンジできたらいいかなって思ってます。

自分より若い世代に憧れられるような選手になりたい

――今は19歳ということでまだまだ若いですけど、受け答えもしっかりしているなという印象を受けました。何かプロとして意識していることってありますか。

hiroronn選手:プロになってインタビューや動画撮影も増えたので、きちんと答えられるようにはしたいなって思ってます。もちろん、身だしなみとかも変にならないように気をつけてますし(笑)。だけど、一番には生活が変わりましたね。プロって勝たないといけないので、人生全体をゲーム中心に回すというか。自分の場合は1日のなかでゲームする時間や休憩時間を決めて、睡眠も1日8時間以上は寝るようにしています。普段の生活の影響でパフォーマンスが上がったり下がったりするのは良くないので、生活を安定させるようにはなりましたね。

――ではそろそろまとめに入っていきたいのですが、今後の目標というか、長い目で見てこんな選手になりたいといった目指すところを聞かせていただきたいです。

hiroronn選手:大会の目標で言ったら、やっぱり「Masters」とか「Chanpions」などの世界大会に一度は出たいっていうのがあります。個人的には、自分自身がプロゲーマーに憧れてプロになったっていうのがあるので、自分より若い世代にプレイ面でも人格的な部分でも憧れられるような選手になりたいです。

――最後に、応援してくださっているファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

hiroronn選手:韓国の会場に足を運んでくださっている方やファンミ等に来てくださっている方、もちろん放送で試合を見てくれている方や自分の配信を見にきてくれる方、本当に見てもらえるだけで励みになります。応援してくれている皆さんのおかげで自分たちがこの仕事をやれていて努力を続けられていると思うので、感謝しかないですね。

――それと、せっかくなのでプロゲーマーを目指している若い世代に向けてのメッセージも送っておきましょうか。

hiroronn選手:自分がプロゲーマーになる前は「これからどうしよう」って悩んでいたんですが、それまでの人生で全力で努力したっていう経験がなくて、今は本当に全力で努力したいって思えることがあるのが幸せだと思ってるんです。昔の自分と同じように悩んでいる子も多いと思うんですけど、プロゲーマーとして成功できるかどうかはわからないけれど、一度全力で努力してみてほしいなという気持ちですね。

――ありがとうございました!

 今回は筆者がhiroronn選手にインタビューするのが初めてということもあって基本的な質問が中心となったが、ZETAファンの皆さん楽しんでいただけていれば幸いである。最後に、急きょインタビューに応じてくださったZETAの関係者の皆様、hiroronn選手にこの場を借りてお礼の言葉を伝えたい。