インタビュー

Xbox世界戦略のキーパーソン、サラ・ボンド氏インタビュー【#TGS2023】

ハードの垣根を越え、多くのユーザーが面白いゲームに触れることができる未来を!

【東京ゲームショウ2023】

会期:9月21日~9月24日

会場:幕張メッセ

 日本マイクロソフトは東京ゲームショウ 2023で「Xbox Digital Broadcast」配信した。この配信ではセガ、カプコン、スクウェア・エニックスといった日本のゲームメーカーが様々なタイトルをXboxでサービスすることがアピールされた。

 今回話を聞いたサラ・ボンド氏はMicrosoft コーポレートバイスプレジデントであり、Xbox のゲームクリエイターやパートナーのために製品やサービスの制作と販売を専門とする部署を率いている人物だ。

 MicrosoftはXboxの名のもと世界中のクリエイターとユーザーを繋げようとしている。その構想はハードの垣根すら越え、「面白いゲームを作ろうとする開発者」と「面白いゲームをプレイしたいユーザー」が繋がる世界の実現だ。インタビューではボンド氏の壮大なビジョンを聞くことができた。改めてXboxとはどんなゲームサービスであり、目指すところがどこなのかを知ることができたと思う。ボンド氏の想いに触れて欲しい。

(9月22日14時追記)Xbox Game Passの対応タイトルについて、サラ・ボンド氏の発言に誤りがあり、一部記述を修正しました。

「Xbox Digital Broadcast」ではXboxの今後が明らかになった

Xboxは世界も、ハードの垣根も越え、面白いゲームを提供できるサービスへ!

――最初に、Xbox Digital Broadcastの見所を説明いただけますか?

ボンド氏:昨年も東京ゲームショウに来ましたが、今年も再び来ることができました。日本に来るのはいつも楽しみです。Xbox Digital Broadcastでは19タイトルが発表され、その中の実に15タイトルはアジアの開発社によるものです。これらの大多数が、サブスクリプションでプレイできるXbox Game Pass」に含まれます。

【【TGS2023】TOKYO GAME SHOW 2023 Xbox Digital Broadcast】

 Xbox Digital Broadcastでは多くの著名なクリエイターが自ら自分のタイトルを語ってくれます。セガ、カプコン、スクウェア・エニックスなどなど日本のメーカーからXboxに向け、多彩なタイトルがサービスされるのが発表されます。

 「ホテルバルセロナ」はゲームプレイが初公開となります。「逆転裁判123 成歩堂セレクション」がGame Passに入ります。「インフィニティ ストラッシュ ドラゴンクエスト ダイの大冒険」や「オクトパストラベラーII」も発売されます。「龍が如く7外伝 名を消した男」は発売日当日にXbox Game Passに、そして「龍が如く 維新! 極」も近日対応となります。

 ファーストパーティータイトルとしては「Elder Scrolls Online」が11月15日より日本でもXbox Series X|S/Xbox Oneでプレイ可能となります。「Forza Motorsport」では日本にインスパイアされたコース、そして日本車が登場します。Xbox Digital Broadcastではこういったポイントを注目して欲しいです。皆さんにこれらの情報を是非楽しんでいただければと思います。

――アジア開発15本のうち、インディータイトルは何本くらいですか?

ボンド氏:現時点で私自身も細かく把握はしていませんが、私たちはインディーと、大きなメーカーのタイトルを意識して分けていません。私たちが皆様にサービスするタイトルは大きな会社のものも、小さなスタジオのものもたくさんあります。

 私は以前「何が良いゲームなのでしょう?」という質問を受けて、考えたことがあります。それは「どうすれば人を喜ばせられるのか?」という問いと同じだと思うんです。方法、やり方、表現の仕方は無数にあり、これだけが正解というものはない。ストーリーや、グラフィックス、世界の色、プレーヤーの人生の状況ですら「喜び」は変わってくるはずです。

 私はゲームに大切なのは有名なゲームメーカーや開発社だからということはなく、新しさ、未知の楽しさ、驚きをもたらすもの、こういった体験を提供できることが重要だと思います。ゲームはエンターテイメントであり、芸術でもある。そしてプレーヤーにとって大切なものとなる。それがゲームで大切なことだと私は思っています。

 私たちが提供するID@Xboxにおいて大事なのは小さなチームでも多くのオーディエンスに働きかけることができる。私はこの業界にはいって5年ですが、このプログラムを拡大し続けているところに誇りを感じているのはこの部分です。ID@Xboxでは過去600人以上のクリエーターが活躍しています。そのうち300,約半分が日本からです。日本のクリエーターの力は非常に大きいです。

――Xbox Game PassやID@Xboxはそういった様々な作品をたくさんのユーザーに認知してもらうためのサービスという意味合いが強いのでしょうか?

ボンド氏:はい、私たちはポートフォリオとして、ユーザーがいつでもどんなタイトルでも取り上げて楽しめるものを作り上げることだと思っています。だからこそ取り上げるクリエーターや、サービスする言語などもどんどん拡大しています。そしてグローバルに"選択肢"を提示していきたい。

 ユーザーが自由にプレイするタイトルを選べるというのが、Xbox Game Passの良いところだと思います。クリエイターに収入を得てもらう方法の1つではないかと。自分たちが直売すると言うだけでなく、Xbox Game Passに参加することで収入が得られる。ユーザーだけでなく、メーカーにも選択肢を提供できていると考えています。

――今回発表するタイトルで注目の1つはやはり「ホテルバルセロナ」です。製作そのものはかなり前にアナウンスされていますが、今回ついに具体的な姿が見れるのでしょうか?

ボンド氏:Xbox Digital Broadcastではゲームプレイを見ることができます。どんなゲームかはっきりと皆さんに提示できるのでお楽しみに。今回の目玉ですが、あくまで目玉の1つです。他にもたくさんの注目作がありますよ(笑)。

――「Forza Motorsport」で日本のコースが登場とのことですが、実在する道路を再現しているのでしょうか?

ボンド氏:あくまで「日本にインスパイアされたコース」です。実在のものを再現しているわけではありません。そのイメージソースは「箱根」です。箱根らしい要素を詰め込んだコースになります。やっぱり放送での注目ポイントは「Forza Motorsport」ですね。とても美しい情報を皆さんにお見せできると思います。

【Forza Motorsport】
箱根らしい要素を詰め込んだ日本を舞台としたコースが入るという

 そして番組全体から感じてもらいたいのは私たちが日本のクリエイターとプレーヤーの方々に対して、継続して献身していきたいと思っていることを感じて欲しいです。私たちは日本やアジアの皆さんに、私たちが提供するゲームを楽しんでもらいたいと強く思っています。

 私たちはやっぱりゲームが好きです。だからこそクリエイターとプレーヤーを繋げるために様々なゲームを紹介していきたいです。

――日本のインディーのクリエイターももっと注目して欲しいという想いはお持ちですか?

ボンド氏:繰り返しますが作り手の大小は問いません。皆さんには幅広く多くのゲームを見て欲しいと思っているんです。予算が限られたユーザーがいるかもしれません。タイトル1つ1つを購入するにはお金が足りないという人もいるかもしれない。そうなるとゲームの続編とか、有名クリエイター、大きなメーカーのゲームしか買わないという人も出てきてしまいかねません。

 サブスクリプションに参加していれば多くのゲームを遊べる。Xbox Game Passは様々なタイトルにユーザーが触れる機会を増やしてくれると思っています。触ったことのないタイトル、知らなかったタイトルも試していただけるシステムだと思っています。

 Xbox Game Passによって3年前から特にアジアでは4倍以上プレーヤーの数を増やしています。このサブスクリプションサービスを利用してくださるプレーヤーは爆発的に増えている。今後もさらに受け入れて欲しいと思っています。昨年から比べてもその増加のスピードは加速しています。

――Xbox Game Passはやはり大きなタイトルが起爆剤となってユーザーが増えますか?

ボンド氏:そうですね。大手メーカーの大きなタイトルではなく、基準となるのは「面白いかどうか」です。面白いタイトルをサービスすればユーザーはこぞってそのタイトルをプレイする。昨日発表しましたが「Starfield」がリリース1週間で、プレーヤー数1,000万人突破しました。そして私自身が"ゲームの宝石"のように大好きな「Hi-Fi RUSH」は300万以上のプレーヤーを獲得しています。こういったタイトルが私たちを後押ししてくれます。

 「Starfield」は本当に長い時間を掛けて開発し多くのユーザーに歓迎されました。私たちはこういった素晴らしいタイトルを世界各国のユーザーに届けたいと考えています。

――現在はゲームを様々なハードでプレイできます。優れたゲーミングPC、コンソール機、クラウドでのゲーム。Xboxが考える未来のゲームは様々なハードで同じゲーム体験をさせるものでしょうか? それともハードによってゲーム体験を分けようと考えていますか?

ボンド氏:私たちはすべてのデバイスでXboxを楽しんで欲しいと考えています。そのための技術的投資も継続して行っています。だからこそXboxはPCやクラウドでも遊べる現状があります。

 実際にはハードによって画面のサイズは違うし、入力のデバイスも異なる。タッチコントロールとキーボーと+マウスでもプレイ感覚は変わってくる。そこを投資することでPCのゲームをクラウドを通じてモバイルハードでプレイできるようにしたり、様々な方法でハードの垣根を越えゲームをプレイする環境を現在も構築しています。

 これまでも見ていただけていますが、私たちはプレーヤーの方々がすべてのデバイスにおいて、同じゲームをプレイできることが可能になる未来を目指しています。そしてプレーヤーのニーズに応えながらプレーヤーがゲームに触れる機会と環境を増やしていこうと考えています。

 ユーザーの声に耳を傾ければ「モバイルでもPCでも同じゲームをプレイしたい」というのが本音なんですよ。デバイスの垣根を越えて面白いゲームを遊びたい。ゲームハードでプレイできるゲームが限定されるのは、ユーザーは好きじゃないんです。だからこそ私たちはハードの垣根を越えることができる環境の提供を私たちはしていかなくてはいけない最大の問題だと、私は信じています。

 もちろんゲームによって求められる環境はあります。ソロプレイだから楽しいもの、多人数だから面白いゲーム、良いハードだからこそ面白いゲームもある。それが現在の私たちの状況です。しかしXboxは現状に囚われるのではなく、ゲームがユビキタス(偏在)な存在となる未来を作り上げていきたい。そのために私たちは時間と労力を使って努力をしています。

――それは例えば「Starfield」のような優れたハードだから表現できる世界、ゲーム性を持ったゲームでも、モバイルのような限られた表現でプレイできる環境も考えていく、ということでしょうか?

ボンド氏:開発者はやはり最高の環境、最高の体験をユーザーに提供したいと考えます。ハードの性能に合わせて表現を制限するというのは違うと思います。しかしユーザーはコンソールだけでなく、モバイルでもゲームをしている。モバイルだからカジュアルユーザー向けだけ、コンソールはコアユーザー向けのゲームを提供すれば良い、という時代では既にないと思うんです。

 一番大事なのはユーザーがその時持っているデバイスで、自分が望むゲームをプレイできること。だからこそゲーム開発者も、彼等のゲームをサービスする私たちも、ハードの垣根を越えもっと色々なデバイスで活躍できる環境を作っていきたいと考えています。

――「マウスとキーボードだからプレイできるんだ」といったユーザーのプレイ環境にこだわった開発者も多いと思います。ユーザーの「すべてのハードで同じようにプレイしたい」という願望と、両方を重視していくという姿勢なんでしょうか?

ボンド氏:その通りです。だからこそ私たちはXboxで選択肢を与えたい。クリエイターがユーザーを限定することで実現するゲームビジョンと、面白いゲームをプレイしたいというユーザーをいかに繋げていくか。そこを考え実現していくことが私たちXboxの役割だと考えています。

――実は私も出先でクラウドでスマホでスターフィールドをちょこちょこ遊んでいます(笑)。もちろん家では大画面でのプレイです。

ボンド氏:まさにそういうことです! そこに未来へのヒントがあると思っています。

――Xboxは世界中のクリエイターと、世界中のプレーヤーを繋げようとしています。どうしても私たちメディアは日本と欧米のゲームに注目しがちですが、今後注目のゲーム開発地域を教えてください。

ボンド氏:私たちはインドやアフリカ地域のゲームクリエイターも支援しています。それらの地域は人口も多く、潜在的に大きなゲーム市場もある。彼等がゲームを作るにはまだ何年もかかるかもしれません。だからこそ今からちゃんと関係を作っておきたいです。

――最後にユーザーへのメッセージをお願いします。

ボンド氏:Xboxをサポートしてくれる皆さんにまず感謝したいです。「Xbox Digital Broadcast」を見ていただくこと、ゲームをプレイしてくださること、に感謝します。私たちは全世界を対象に開発者とゲームをリサーチし、皆さんに愛されるタイトルを提供していきます。……そして、ぜひ「Forza Motorsport」に注目してください。10月10日発売ですよ!

――ありがとうございました。

 今回のボンド氏が語った構想は非常に新鮮だった。1ユーザーとしてはやはりクリエイターが提供する壮大な世界を最新ハードで体験したいと思う。しかし一方で「どんなハードでもゲームをプレイしたい」という願いもわかる。例えば「Starfield」をクラウドを通じてスマホで遊べるというのは、ボンド氏とXboxの考え方が具体的に見える一例だろう。

 Xboxとはハードを指すのではなく、「ゲームを提供する環境」を指す、といことを改めて実感したインタビューとなった。世界中のクリエイターのゲームが遊べるようになるという未来もワクワクさせられる。これからさらに注目していきたい。