インタビュー

「RPGタイム!~ライトの伝説~」の制作ではダイソーが活躍!? 開発者インタビュー

藤井知晴氏と南場元樹氏にこだわりを聞いた

【RPGタイム!~ライトの伝説~】

今冬 発売予定

価格:未定

左からデスクワークス代表取締役の藤井知晴氏、同じく取締役の南場元樹氏

 アニプレックスは、Xbox Series X|S/Xbox One/PC用RPG「RPGタイム!~ライトの伝説~」を今冬に発売する。オンラインイベントとして開催されている「東京ゲームショウ2021 ONLINE」では本作が出展されており、開発を手掛けるデスクワークス代表取締役の藤井知晴氏と、同じく取締役の南場元樹氏にインタビューをすることができた。今回は本作に対する思いや制作にまつわるエピソードなど深堀りしていく。

【家庭用ゲーム「RPGタイム!~ライトの伝説~」新トレーラー | Official New Trailer - TGS2021】

 なお、本作に関する概要やデモ版をプレイした内容をまとめたものに関してはプレイレポートとして掲載しているので、こちらも合わせて確認して欲しい。

――まずはじめに本作のストーリーを簡単に教えて下さい。

南場氏:プレーヤーである自分が、小学生のけんたくん作のRPGが遊べるノートを放課後までにクリアするというのが大きな枠です。ノートの中では魔王にさらわれたお姫様を主人公が助け出すという話になっています。子どもの遊びをベースにしているため、ただ助け出すだけでなく、いろんな展開を盛り込んだストーリーになっています。

――なるほど。となるとある1日の放課後の出来事ということなのでしょうか。

南場氏:そうです。複数のステージを放課後にクリアするという内容になっているため、ステージ1であれば、時間的にまだまだ明るいのですが、ゲームが進むにつれて夕方のライティングになっていきます。

藤井氏:夕方にはチャイムが鳴ることもあって、結構気持ち的に焦ってくるんですよ。1日が終わってしまう寂しさなどをを感じることができ、後半の雰囲気も楽しんでほしいです。

――次に、構想期間15年・開発期間9年という長い期間をかけて制作しているということを聞いたのですが、本作が生まれたきっかけを教えて下さい。

藤井氏:私と南場が同じ学校の学生で、卒業制作を作ろうと決まったときにまでさかのぼります。当時は卒業制作でゲームを作る際にシューティングゲームだったり、横スクロールのアクションゲームを改造するといった、比較的簡単に作れるものを制作する人が多かったです。そんな中、今まで作られていないジャンルについて調べたときに、RPGは制作するのが大変なため、あまり卒業制作で作る人がいないということを知りました。そこで、自分たちは当時から少し変わったことがしたいという思いがあり「じゃあRPGを作ってみようか」となったことがきっかけです。

藤井氏:また、当時から自分たちはゲームの企画を考えるプランナーで、グラフィックスやプログラムに関する技術もあまりありませんでした。しかし、鉛筆で書いたものを画面に映すことはできて、絵も下手ではあるものの「小学生にしてはちょっと上手」という設定にすることで、自分たちが一生懸命作れば本物に近いものができるのではないか、というアイデアから制作がスタートしました。

――本作最大のポイントはどこでしょうか?

藤井氏:様々な仕掛けを取り入れてくるゲームマスターでもある「けんたくん」の存在です。本作では平坦に話が進行していくのではなく、彼はできるだけプレーヤーを驚かせようと、えんぴつだけでなく消しゴムなど、あるもの全てを使って楽しませてくれるところかと思います。

画面右上に登場するけんたくん
最初はこのようなステージだが、消しゴムで道が消えたり、えんぴつではしごができたりとバリエーションは様々

――本作ならではの仕掛けや、レベルデザインにおける工夫はありますか?

藤井氏:本作では「レベルデザインをしすぎない」という点に注意しました。多くのRPGであれば段々とレベルが上っていくというのが普通ですが、本作では子どもが考えているものなので、突然強い敵が出てきたり弱い敵がいたりなど、順当に難しくなっていくという設計ではなく「今こういう敵が出てきたら面白いぞ!」といったようにカオスになっていたりもします。

南場氏:チュートリアルはもちろん入っていますが、段階的にステップアップしていくのではなく、次々に面白いことを展開するという設計です。なので、レベルデザインというものに関してもそんなに必要がないと考えています。

藤井氏:また、自分たちはプレーヤーが退屈してしまう点を減らせるよう重視していました。同じことを遊んで退屈してしまう場合には新しいアイデアを入れて、間を埋めていくという作業もしました。ページも1-1、1-2、1-3といったように順番になっていたのですが、アイデアを入れていくにつれて、間にページが5枚ぐらい増えてページ番号がバラバラになったということもありました。

南場氏:ページ単位でゲームが進むため、構造的にも後から追加しやすい設計になっていました。また、順番を入れ替えるといったことも行ないやすかったのではないかなと思います。

――制作にあたってゲーム内に登場するアイテムを実際に作ったりしましたか?

藤井氏:実際の開発現場に学校の机がありまして、僕と南場の席の間に机をおいて、実際に机に書き込んだりアイテムを置いたりしてアイデアを出し合っています。登場する物についても実物大であることを意識していて、本来であれば画面上できれいに見せるため、少し小さくしたいのですが、そうすると“ちっちゃい物”になってしまうので、ちゃんと実物大で登場します。ワールドマップも机に乗るサイズのものを実際に作ったりもしました。

公開されているビジュアルにも様々な文房具が登場する

藤井氏:また、体力バーを表示させるため、最初は紙に書いて消してを繰り返して実際に試していたのですが、そうすると紙がクシャクシャになってしまうという問題がありました。そこで他になにか良い物がないかなと思ったときにメジャーを見つけました。これだと体力の増減を示す際に、メジャーを伸ばす・縮めるという動きが繰り返しできたためメジャーが晴れて採用されました。

――なるほど。ここで実物を使って試していたからこそのアイデアがゲームに活きてきたのですね!

藤井氏:そうですね、逆に本当はこれを使いたいけど、サイズが合わなくて断念したということもあります。

――ちなみに、大きすぎて断念したというものはなんでしょうか。

藤井氏:メジャーに関しては苦労しました。例をあげて話しますと、メジャーは2mや3mなど引っ越しなどで使われるサイズのものが多く、ゲームでは特殊な物ではなく、身近な物を出したいという考えがありました。そういうときには僕と南場でダイソーに行くのですが、ダイソーさんが品揃えが多く“神”で、小さいメジャーを用意してくれていたりと、ほしいと思った物が沢山揃っていました。

――最後にタイトルに込めた思いや意気込みをお聞かせください。

藤井氏:「RPGタイム!~ライトの伝説~」というタイトルが決まったのはかなり遅かったです。開発が始まって6・7年目あたりに決まったもので、正式に発表するために本タイトルに決定しました。タイトル後半の「ライトの伝説」は、ゲーム内で登場するけんたくんがノートにつけている名前です。ライトはノートの中の主人公なのですが、書くのライト(write)や光のライト(light)、ページが右に進んでいくため右のライト(right)など様々な意味が込められています。

藤井氏:一方「RPGタイム!」はボーナスタイムやおやつタイムなど「○○タイム」といったワクワクしてもらえるものをイメージしています。また、学校の時間割で国語・算数・理科・社会などに次いで「RPG」という時間があったら素敵だなとおもって名付けました。

――ありがとうございました。

 今回のインタビューでは本作に対する情熱やこだわり、ゲームを遊ぶだけではわからない制作サイドの裏話を聞くことができた。インタビューの最後に筆者が「今年の冬には発売できそうでしょうか?」と尋ねると少し笑いながら「冬って何月までですかね」という返答があり、発売までもう少しといったところまで進んでいるようだ。制作者の遊び心がたくさん詰まった「RPGタイム!~ライトの伝説~」の完成に期待したい。