インタビュー

「信長の野望・新生」小笠原賢一プロデューサーインタビュー

味方武将がAIで独自に判断。よりリアルな戦国大名体験へ

2022年早期 発売予定

価格:未定

  コーエーテクモゲームスから発売されている「信長の野望」シリーズは長くに続いているタイトルだが、実は今年、2021年は第1作となる「川中島の戦い」が発売されてから40周年となるメモリアルイヤーだ。

 この記念すべき年の3月に発表された「信長の野望・新生」。現在は2022年の早期に発売するよう、開発が続けられているという。今回、東京ゲームショウ2021に合わせて、同作のプロデューサーである小笠原賢一氏に話を聞くことができたのでそれをお届けするとともに、全体の概要をふかんしてお伝えしたい。

コーエーテクモゲームス 「信長の野望・新生」プロデューサー 小笠原賢一氏
【『信長の野望・新生』PV】

コンセプトは「AIで躍動する武将たち」

 本作だが、開発がスタートしてからすぐに、チームは新型コロナウイルス禍に巻き込まれた。これまでとは同じ生活ができなくなった現状について、シブサワ・コウ氏は「世の中のコロナに打ち勝って、力を与えるようなサブタイトルを付けたいね」と語ったそうだ。こうした思いに応える中、付けられたのが「新生」だ。また、これまでの40年を振り返りつつ、「信長の野望」シリーズはどういった形で深化していくべきかを振り返り、未来を見据えた新しい一歩を踏み出すようなタイトルにしよう、という意味もあるそうだ。

 こうした話を含めて、「信長の野望」が今後表現していくべき所を考えたとき、大名に成り代わって生きるという醍醐味を深化させるべきという話になった。これを支えているのはゲーム世界のリアリティだ。こうした中で戦国時代をしっかりと表現させ、共感できるのが一番大事となる。そこで、ここ数作は大名を取り巻く敵勢力のAIに力を入れてきたが、本作では配下の武将をAIで動かそうというチャレンジをすることに。そしてコンセプトは「AIで躍動する武将たち」に決まった。

 このため配下で自律行動する武将をしっかりと設定しなければならないわけだが、今でも戦国時代の武将については、遺跡調査や文献などにより新たな発見が相次いでいる。こうした内容を見ると、戦国時代の大名は絶対的な存在ではなく、国人と利害を一致させつつ、自分たちの暮らしを守る存在として大名がいて、結果を出せば権威も保てる、という存在だったようだ。このためその解釈に近い世界をゲームに入れようとチャレンジしたのが本作だ。

 これまでのシリーズで登場した城の数は200数十あるが、プレーヤーが管理できる数としては限界に来ていた。しかし実際に武将たちが所持していた領地としては少ないわけだ。そこで本作は「郡」という考えを城の下に導入し、郡を活動の拠点にとして、武将たちが領地を発展させ、守り、強化するという行動を取るようにした。これまでの「信長の野望」シリーズだと、勢力を広げたとき、そこから取れるべきすべてのお金や米は大名が完全に利用できたのだが、本作では土地はそこにいる武将が所有することになるので、そこから取れる米などは武将が利用する。このため大名は自由勝手に使えないのだ。

 ではどのように大名が領地を発展させるかというと、住んでいる人に対して課されている租税と、労働力として持っている人を使うわけだ。定期的に租税は入ってくるので、大名の経済力は大きなものがある。このあたりが従来のシリーズと異なる点だが、近作の流れはそのままになっているので、それほど意識しないでプレイできるとのことだ。ただし戦闘の際には、郡を治める武将が城に参陣し、城ごとの部隊を組んで出陣するため、どれだけの兵が出るのかは支配下の郡にどれだけ国力があるか、に関わってくる。ただし部隊は従来シリーズと同様に操作できるそうだ。

 なお内政面だが、自分が所有する郡が支配地を発展させる行動はAIで行なうこととなる。しかし基本的な、最低限のことをやるだけなので、スピード感を持って強化したい場合は大名の金と労働力を投入して開発することができる。ミクロなところではAIが国造りをやってくれるが、そのほかは大名の力が重要になるのだ。

プレーヤーが介入しなくても、武将たちは自らの意思で最善と思う手を選ぶ

 また城を落としたい場合、1つの城の兵力では難しく、複数の城から兵力を集める必要がある場合も出るだろう。こうするためには大名が大きな存在である必要がある。大きなジャッジをしたり、戦を起こすのは大名で、敵勢力に隣り合った郡との細かいいざこざや調略、破壊工作は郡を治める武将たちが、郡が所属する城主の責任に置いて解決することになる。

 しかし城主が解決しきれないくらいに、敵が攻勢を強めていれば、大名に対して助言を請う場面も登場する。敵の調略が進んでいる場合は、この城を落としましょうという提言も来る。こうした争いの応酬が敵も味方も同様に発生するので、小さな火種が大きくなることも。こうしたやり取りを武将と行なうことで、家臣と一体となった天下取りを目指せるのが本作なのだ。従来シリーズとは異なり、武将とのダイレクトなやり取りを経験しながら、戦国時代のリアリティを感じることができるのだ。

配下から多彩な提案がなされるシーン
国を大きく発展させるには、家臣の力が不可欠。どの武将をどこに任せるかで発展の様子が変わる

1日30分のプレイでも楽しめる「新生」

 ではここからは、小笠原プロデューサーへのインタビューとして、一問一答形式でお届けしよう。

――AIで味方の武将も動くとのことですが、大名が指名できますか。

小笠原氏: 本作では、ゲームの世界を当時になるべくリアルに近づけたいと思っています。このため、土地を納める武将というのは各地にいましたから、ゲーム内でもあらかじめ配置されていて、その武将とともに勢力を拡大するという、リアルに近い設定となっています。勝手に土地を取り上げる権限は大名にありませんし。ただし序盤では、郡に武将を配置すると、武将たちが活動を始めるという体験をしてもらう必要があるので、プレーヤーに配置してもらうことはあります。

 ゲーム世界当時をなるべくリアルなゲームに落とし込みたいと考えているので、当時は土地を納める人間がいたので、ゲームのほうも基本的には配置されています。群に武将を配置すると、武将たちが活動を始めるという体験を序盤にしていただかないといけないので。そういった意味でプレーヤーにしてもらうことはあります。

 ただその土地を従来から納めている武将の存在がいて、その武将とともに勢力を拡大するというリアルに近い設定なので、勝手に取り上げたりする権限は武将にはないですし、こことここを入れ替えというのもできなません。

 とは言っても織田信長が尾張を統一して岐阜を取って、小谷城を落として近江を取り、安土城を作る頃には大名としてはものすごい権威を持っていて、家臣に対する支配力も非常に高まった状態なわけです。ここまで来れば、誰それをここに配置してといったことをしたと思います。佐久間信盛を追放したりとか。

 そのくらいプレーヤーも大きくなっていけば、できるようになるタイミングが来ます。ここの城に光秀を置いてその下に粒ぞろいを置いて、こういう部隊にすればここから手ごわい毛利とも戦える部隊を組めるとか。ゲーム的な意味で言うと、そういったカスタマイズは、序盤は地道に国衆や地侍の力を借りてじわじわと大きくなっていって、大きな威信と支配力を持ったときにはできるようになります。中盤以降ですね。

――大名自身も大きく育てないといけないですね。

小笠原氏: 大名の領地は基本的には変わらないんですが、新しく取ったところは勲功を重ねている家臣がいるので与えていくという形になります。その分お金と量動力は増えていくので、それを使うことになります。

 あと大名の居城は拡張性があり、大胆な政策を及ぼすことができる特別な城なので、面積は変わらなくてもポテンシャルを上げていけます。ただし自分の所ばっかりどんどん上げていっても、他の城から出した部隊を含めて合戦となるので、支配に置いた城も、自分の経済力と労働力を用いて拡張しないといけない。

 戦闘の時は各郡から集まって合戦に行くのですが、兵力たちが動くための兵糧は、大名は家臣の領地から取れません。その分自分の城で用意しろよということになるので、力がないと基本的にはあまり遠くまで拡張できないことになります。

 そうした動員力や遠征力は施設を建設して上げていきますが、施設に任せるだけではいかんせん時間がかかります。そこで内政をしっかりして、城の範囲を広げていって大きな勢力になるよう進めるということが重要です。

――領地の境界線でもAIで戦いがあるとのことですが、それは頻発するんでしょうか。

小笠原氏: 城と城という戦いはあまり起きないですが、郡同士での小競り合いは起きます。まだ調整中ですが、あまり起きすぎてもうるさくなると思うので調整中です。

――こうしていったら自分がなりたいような大名になれるというのはありますか。

小笠原氏: 順調にこっちで攻めているが、こっちは兵力が少なくて攻められるということはままあると思います。歴史シミュレーションゲームも複雑になってくると、それはここを見てないあなたが悪いとは決して言えないので、そういった意味ではここに危険がありますよと言うのは、AI的なサポート機能として、危険度をプレーヤーに知らせてくれることも強化しようと思っています。

 ですから兵力的に足りないがここを落としたいという時は、やはり攻められないように他の勢力と同盟を一定期間やりましょうとか。その上でさっきの場所に兵力を割きましょうという所まで配下の武将とやり取りしながら国を広げることが大事ですね。

 もしくは、ここがだいぶ敵が強くなってきたのでうちの城は危ないですよということも知らせてくれて、じゃあこうしようとプレーヤーが大名としてジャッジできるようなやり取りもあります。武将がAIとして動くことで、プレーヤーに逐次インタラクトとしてくれるようなゲームにしたいと思っています。

 なので、武将とのやり取りがこれほど頻繁に発生する「信長の野望」はすごい新しい感覚として受け入れていただけると思います。また初めて「新生」でやる人も、今回は武将のほうから積極的に武将のほうからこうしてほしいと言ってきます。相互のやり取りが非常に増えているデザインになっているので、そこまで深くゲームの仕組みを理解しなくても、ある程度は成長できます。何となくできてきたなというプレイの過程で、ゲームの勘所をつかんでいただけるんじゃないかと思います。

 今回味方の武将をAIで動かすという新しいチャレンジをしているので、ゲームの導入におけるサポートチュートリアルは丁寧に用意しています。ゲームを進めていく上でもそこはしっかりと機能して、初めての方にもこの世界をご理解していただけるような作りにしようと思ってています。

――1日30分くらいのプレイでも楽しめそうでしょうか。

小笠原氏: はい。サポートをしっかりするために、今の状況を振り返られるような武将からの働きかけなども検討しています。なので、なるべく多くの人にしっかりと楽しんでいただける作品にしたいですね。作を重ねることにコアのファン向けの所が表に出がちですが、40周年という大きな節目の新たな一歩ということで、「新生」でプレイする人への配慮、わかりやすさは心がけて作っています。

――戦闘のシステムで変わったところはありますか。

小笠原氏: いままでは出陣したらこれはここ、あれはここというように武将へ細かく命令を出していましたが、今作では「攻略対象はこの城」と合戦の目標を掲げると、「じゃあうち行きますよ」と示されます。もちろん「君行かなくていい」というのもできるんですが、出陣といったら各武将がAIで判断して最適に攻め上がります。

 目の前の状況に応じて、いけそうだったら戦うし、やられそうだったら逃げるしという。そういう基本的な行動はAIが行なって、攻略目標に対して武将なりに最適な行動を取ります。それに対して大名は俯瞰した視点ですべての武将を把握しながら戦っていきます。たとえば、止まる必要がないのに止まっているところへには「進軍しろ」と命令を下せるようなことはできます。

多方面から敵の本拠地に向かって出陣するシーン
敵味方大軍勢が入り混じって戦うシーン
戦場によって、進軍ルートや重要な拠点が異なる
騎馬突撃で敵を粉砕したシーン
刻一刻と変化する戦場で、武将は局面を判断して進軍する
拠点の攻防シーン。重要な拠点を制圧すると戦いを有利に進められる
柴田勝家の戦法が発動したシーン。強力な戦法は戦局を一変させる
歴史を変える一戦を制すると、全国に名を轟かせることができる

 本作ではだいぶAIを強化していますので、今までは到着したら戦闘開始するみたいな形でしたが、今回は友軍の到着を待って勝てる勢力がそろったら行くという、AIの進化も実現しています。なので「君たちのお手並み拝見しようか」というプレイも楽しめます。AIで動く武将たち、プレーヤーに働きかけてくる武将たちと一緒に君臣一体の天下統一へ、というところが「新生」でアピールしたい一番のポイントとなります。

――武将が大事ですが、織田家以外にオススメの勢力はありますか。

小笠原氏: 安定して進めやすいのは島津ですね。武将のクオリティはそろっている上に後ろを突かれる心配がない。国力と武将の質と地政学的な有利さで、初めてプレイする人にはオススメです。織田家というのはいろいろなイベントもありますので、織田家はもちろんオススメですが。

 あとは北条が安定していて、地盤も強固でしっかりしていて数もあり国力も高い。関東地方の他の大名は北条家に対抗できるほど大きくないですし。プレーヤーとして北条家を選ぶのもありです。武田家も強いですが国力がしんどい。しかも上には謙信がいるという状態なので、北条のほうがだいぶ安定しています。

――シナリオはどのくらい用意されるのでしょうか。

小笠原氏: 具体的な数は現時点では言えないのですが、これまでのシリーズで用意してきた程度はあります。シナリオはあとから追加できるようにしているので、要望があったら時代を追加していく形ですね。あとは史実とは違うが、ものすごいオールスターを全国にちらばしたような、仮想的なシナリオでプレイするのは、これまでのシリーズでも用意してきましたので、同じようにユーザー様へのサービスというシナリオも準備します。現時点ではお答えしにくいのですが、シナリオはDLCで配布することになる予定です。

 本作はまず、多くのユーザーに納得できる作品にできるかという所が目標です。しかしここには答えが出ないので、発売後のアップデートという形になるかもしれないですが、ユーザーの満足度をアップできるようなフォローをしていきたいと考えています。最近のゲームは発売日に出せば終わるというものではないですからね。それを承知して開発していますので、ある程度時期が近づいての発表となりますが、ロードマップを提示して、そこに対して適宜ユーザーの声を拾い上げ、一定期間ごとにアップデートを出していきたいです。

――小笠原さんが好きな武将は誰でしょうか。

小笠原氏: 大名としては武田信玄、武将としてはその配下にいる山縣昌景ですね。山縣のグラフィックのチェックは他の武将より細かいという(笑)。ここちょっと山縣っぽくないんじゃないかとか。ひげが下がりぎみだとちょっとなとか、本作でもこだわっています(笑)。

 また武田家でプレイしてみて、それはしんどすぎるとか楽すぎるとか検証するのが大事なのです。「信長の野望」シリーズは基本的には織田家でバランスをチェックするので、織田家は安定しているんですが、それ以外での存在として武田でやってみて、上杉に対して圧倒的すぎないとか、逆にすぐに飲み込まれないとか。武田の強さをこの辺と定めると、関東あたりが整って、それが定まればあとはこうだよねと他のバランスも決まっていきますので。

 ただ武田家は信玄が早く死んじゃうので、生きているうちに頑張るということもあります(笑)。それが武田家プレイのいいところなのかなと。

――最後に読者へのメッセージをお願いします

小笠原氏: 3月の末にタイトルとして発表してから半年経過して、今まさにプロモーションがスタートしたのですが、今回はその第1弾として本作のコンセプト、世界観などをお知らせしました。このあとは具体的な内容に興味があると思うので、ざっくりと月に1回くらいは新しい情報を後共有できるよう準備しますのでご期待いただきたいです。

 また40周年の節目を飾るにふさわしいタイトルとして、チーム一丸となって全力を尽くして、新しい大きなチャレンジに、配下武将をAIで動かしてなおかつ大名としての手応えも感じさせるという大きなチャレンジに向かっていますので、発売を楽しみに待っていただければと思います。

――ありがとうございました。