インタビュー

「FFXIV: 暁月のフィナーレ」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー

新ジョブ「リーパー」の基本仕様、ハイデリン・ゾディアーク編を完結させる意図とは!?

5月15日収録

 「ファイナルファンタジーXIV デジタルファンフェスティバル2021」Day1が終了した。本稿ではファンフェス初日終了後の恒例となっているメディアインタビューの模様をお届けしたい。

 コロナ禍ということもあり、参加メディアはやや少なめだったが、吉田氏は翌日のリハがあるということで、インタビュー時間も限られていたため、今ひとつ深く突っ込む機会が得られなかった。正直、ジョブ周りやストーリーは謎だらけのままだが、また別途取材機会が設けられるということで、その際に深掘りしていきたい。インタビューのベースとなる情報については本日のレポートを参照いただきたい。

新ジョブ「リーパー」について。アヴァターは1種類

【リーパー】

――新ジョブ「リーパー」について、「FF」シリーズには「FFXIV」に実装されていないジョブがまだたくさんあるが、それらではなくリーパーにした理由は何か?

吉田氏: 35年続いてるシリーズなので、たくさんのジョブがあるが、僕らはMMORPGというジャンルのゲームを発展させていこうとしたときに、(過去の「FF」シリーズで実装されたような)トリッキーなジョブをMMORPGにアレンジしすぎると、元のジョブの良さが消えてしまう。もちろん存在しているジョブを実装して欲しいという声もあるのは事実だが、そのままの体験を「FFXIV」に持って来る際に大事にしているのはおもしろくなるかどうか。無理に皆さんの思い入れを引っ張ってきて、感触が違うものを実装すると「FFXIV」としても良くないし、オリジナルのジョブに対しても失礼になる。今回はというよりは、今後はオリジナルジョブの方が多くなっていくと思う。それがリーパーにした理由。かなり検討を重ねた上で「FFXIV」ならではのものにしようということで作ってきた。

――リーパーの他のDPSとの違い、特徴は?

吉田氏: 数あるジョブ候補の中でもファンの皆さん、特に欧米で巨大な鎌を振り回すジョブを実装して欲しいという声を、3~4年前から頂いていた。それを「FFXIV」ならではのジョブとして新しいゲーム体験を作ったときに、単純に近接で、自分の力だけで殴るだけというよりは、もうひとつそこにひねりがあって、それによって何かしらのゲージが上がっていって、そうするとアヴァターを取り込んでいくことができて、となったほうが、中二的な言い方をするとバトルを続けていく上でテンションが最大化できる。それを体現するアイデアがチームから出てきたので、「これはいいね」と。あとは本当にシステムとして成立するか検証しようとなって、意外とすんなりいって、満場一致だった。あとはグラフィックス的にもイメージしやすい、作りやすいというところもあって開発も順調に進んでいる。

――リーパーについてもう少し質問を重ねたい。私は「FFXI」世代なので、鎌と来て特典にデスサイズが付くとなると「FFXI」を意識しているのだなと感じたが、「FFXI」ではウェポンスキルと呼んでいたギロティンや、リーパー繋がりでクロスリーパーといったスキルは「FFXIV」でもどれぐらい実装されるのか?

吉田氏: 今技を作っているところ。たとえば、このコンビネーションでいいのかとか、僕らも「FFXI」出身のメンバーもいるので、当然リスペクトするところはある。これまでも「FFXI」にあったジョブや武器、アクションなどをうまくリスペクトしながら実装してきたのでそこは変わらない。ただ、中途半端に実装すると逆にガッカリされてしまうので、そういう場合はオリジナルに振り切ったりはしている。そこのバランスの妙は楽しみにしていて欲しい。今後、メディアツアーに該当するようなものをやらせていただくので、既存ジョブも含めてジョブの全容はそこで明らかになると思う。

【両手鎌】

――リーパーのアヴァターについて、“憑依してゲージが貯まる”みたいな表現があったが?

吉田氏: 今そこについていうと「最終実装が違う!」ということになりかねないので現段階での具体的な言及は避けたい。基本的には何かしら攻撃していくとゲージがたまっていって、それがマックスになったら自分でアバターを取り込むタイミングを図ってみたいなイメージではある。ただ、それが我々がイメージしているとおりのプレーヤーの手応えになるかどうかはまだ検証中なのでイメージとして捉えて欲しい。

――召喚士のようにアバターを動かしたり、機工士のようにロボが出てきたりといったものとも異なるということか?

吉田氏: 異なる。リーパーはペットジョブではない。「FFXIV」はジョブ毎にゲーム体験を変えるというのがポリシー。そういう意味では、召喚士とも機工士とも違う。さっき言ったイメージで開発を進めている。

――リーパーはピュアDPSなのかシナジーDPSなのか?

吉田氏: おおよそ定まっているが、今言ってユーザーの間で議論になることは避けたい。バトルを紹介する機会はまた設けるので、そのときに突っ込んで貰えれば。

【バトルイメージ】

――リーパーのアヴァターは種類があるのか?

吉田氏: いいえ。さすがにグラフィックスの制約、レギュレーションがあるので1種類。「FFXIV」は1キャラクターに収められるテクスチャ容量もポリゴン数も厳密に切られている。その中であれだけダイナミックな動きをした上に、アバター用のモデルとテクスチャを限界まで詰め込んでいる。あれが5種類ありますという発注書があったとしたら、デザイナーから、「吉田さん、だったらレギュレーション変えて下さいよ」と怒られてしまう(笑)。でもだからこそ1体しかいないからこそアヴァターと融合したときに凄く気持ちよくなるようになっているし、各種族ごとに融合してもディテールを守って同じにならないように、種族ごとの個性が消えないような対応はせいいっぱいやっている。そちらに期待して欲しい。

【アヴァターの憑依】

――ヴィエラの男性はこれまで見たことがないが、「FFXIV」チームのオリジナルか?

吉田氏: そのとおり。「漆黒のヴィランズ」のときにも色んなインタビューを受けたときに、今日話したとおり、新しい種族の実装は、ヴィエラ女性、ロスガル男性で止めるつもりだった。なぜなら、滅茶苦茶膨大なリソースがかけ算で増えていくから。パッチの開発に影響が出てくる。あらゆる装備、報酬がその種族用に作って行く必要がある。ただ、実装してみて、世界中でミコッテとも異なる獣人系種族の男性バージョンも「FFXIV」チームなら作れるのでは? という声もいただいた。

 とはいえ、「1つの拡張で2つの新種族を作るのは本当に無理だよね」という話をしていて、グラフィックスチームが「吉田さんがもしやりたいというなら、2つは無理だが、1つはなんとかチャレンジしてみる」と言ってくれたので、手探りで検証をはじめて、誰も見たことの無いヴィエラの男性をどうやって構築していくか。「FFXII」に思い入れがあるひとにとっては、「これがそうなのか?」という評価になると思うので、ヴィエラ女性をベースに、もの凄い数のアートワークを作り、大本の設定に沿った形で、ミコッテとも差別化することを意識した。

 本当はロスガル女性と同時実装すべきだと思う。ジェンダーということをいわれる方もいるので、我々はすでに次の拡張もやる覚悟ができているが、そこまで引っ張ったとしても全体の作業量はそんなに変わらないので、「ロスガル女性は必ず実装する」と伝えたうえで、まずはヴィエラの男性からスタートしたほうが、長いめで見たら皆さんのためになるのかなという判断。ヴィエラ男性は、正真正銘「FFXIV」チームで作ったヴィエラなのでぜひ使って貰いたい。

【ヴィエラ男性】

――ヴィエラの男性は希少種ということで、NPCとしても見られない。「暁月のフィナーレ」ではPCとして登場することで、NPCとしてもキャラが登場したりするようになるのか?

吉田氏: もちろん可能性がゼロだとは言わない。ただ、稀少だからこそ皆さんが目にすることはなかったということは設定として作ってきたので、大繁殖してヴィエラ男性の郷があるかというと、ないと思う(笑)。ちゃんと設定に基づいた形で「FFXIV」の世界に登場すると思う。

【ヴィエラ男性】

ハイデリン・ゾディアーク編完結の意味することとは?

――「暁月のフィナーレ」はボリュームが凄いということだが、メインストーリーのプレイ時間はどれぐらいになるのか? 従来比でどのぐらい違うか?

吉田氏: 今丁度、開発中期で、そこまで言及しづらい。今作ってる感じだと、確実に長いだろうなと思う。拡張としてカットシーンのボリュームも過去最大級、ボイスもそう。ハイデリン・ゾディアーク編を皆さんが納得できる形でお届けしようとしたときに、削れないところが多い。それは僕らに求められていることだから、それなら作りきろうと。当初目標にしていた時期はもっと前だったが、完璧な状態でお渡ししようと。そうなるとプレイ時間は伸びる方へ行くだろうなと思う。

 ちょっとここはこちら側の話になるが、5.0でフェイスシステムを実装したことで、ダンジョンに行くときに、プレーヤーがどのロールで行く場合でも、パーティーが成立するだけのメンバーを置かないといけなくなった。これは想定していなかったことで、つまり、今までは「じゃあ俺たちはこっちで調査してくるよ」といって、ダンジョンは光の戦士が行くという流れになっていた。彼らの活動はあとで報告は受けるにしても丁寧に描かなくて良かった部分だった。ただ、「漆黒のヴィランズ」以降は暁のメンバーがみんな付いてくるので、カットシーンでもみんな居るし、話しかけたらみんなトークする。その結果、カットシーンの登場人物が多い。カットシーンが同じ1個でも、キャラクターに演技させなきゃ行けない数が多い、ダラダラ話していると飽きられるのでちゃんと演出入れなければならない、ということでカットシーンが同数でもテキストボリュームと演出コストが肥大化してるので、そこがかなり大きい。ある意味総決算、トレーラーを聞いてわかるように曲も総決算になっている。ありとあらゆるNPCが登場してくるので、そういった部分に注目してくれると嬉しい。

――公開されたフルトレーラーについて、七大天竜のヴリトラが登場したのが驚いた。5.5でティアマットが開放されて、まだ登場していないのはアジュダヤだけだと思うが、この七代天竜のように「暁月のフィナーレ」では今まで設定だけがあったような要素も総決算的に語られていくのか?

吉田氏: 実はあんまり総決算だからといって今まで登場していなかったものを無理に配置しようとは思っていない。神木さんと話していたときも感じたが、賑やかしのために連れてきたなとか、ポッと出したなというのはユーザーにバレてしまう。それよりも僕らが今回描こうとしているのは、新生、蒼天、紅蓮、漆黒と描いてきた中で、たとえば蒼天であれば人と竜の意思、重い歴史が合った中での絆を提示してきたが、同じように今回も人と竜という存在が欠かせないが、それを語るのであれば七大天竜にストーリーの一翼を担って貰いたいという想いから登場させた。必要かどうかというところが大きい。

――つまり「暁月のフィナーレ」ではヴリトラが登場することがストーリー上の必然になってくるということか?

吉田氏: そういうことになる。ただ、その内容はあまり予想付かない形になるかなと思う。メインストーリーでヴリトラも語られるので、楽しみにしていただければ。

【エスティニアンとヴリトラ】

――ストーリーについて今回吉田さんは「完結する」ということを意図的に連呼しているイメージがある。別に完結させなくても6.0以降のストーリー展開は可能だと思うが、この完結させるというところに吉田さんのどういう意図が込められているのか?

吉田氏: これはちょっと個人的な話になる。僕は作り手であると同時に消費者でもある。いろんな作品の影響を受けながらここまで育っている。しかも、若干オタク気質、深くハマっていくタイプ。そういうなかで「ここでまとめといてくれればよかったのに!」という作品に出会ってきた。もちろん事情があるのはわかるし、オタクだからその事情も深掘りする。「まあ、そうか」みたいな。でも僕らが消費者として色んな作品の影響を受ける中で、「あそこでいったんクライマックスを迎えてくれれば、どれだけ良かったんだろう、この作品」と思うことがあった。

 「FFXIV」についても、当初の予定では7.0(暁月のフィナーレの次の拡張)で、ハイデリン・ゾディアーク編を完結するぐらいのペースを考えてきたが、「漆黒のヴィランズ」でこれまで張ってきた伏線の8割をバーンとぶちまけたときに、僕が消費者として感じてたときのあのテンションに皆さんがなってくれたので、これはもうヒートアップしたままで、いったんクールダウンさせる必要はないだろうと。であれば、皆さんが見たい一回目のクライマックスを、ここで提示してもいいのかなと思った。

 何故僕が意図的にハイデリン・ゾディアーク編完結といってるかというと、あまり次の話をすると、気持ち的に「どうせ続くからな」みたいな気持ちになってしまう。なので、いったんハイデリンとゾディアークにまつわるお話しはこれで終わりますと開発チームに言ってきている。「ラストを叩きつけるぞ」と。歴代「FF」シリーズでも、物語の8割が終わったら、残りはクライマックス。大地が浮き上がってみたりだとか、異常な世界になってもう世界は終わりだとか。そこからのクライマックスを1本にしてみよう、みたいな。それが今回の「暁月のフィナーレ」。ゲームというエンタメの中でのチャレンジだと思う。ストーリードリブンのMMORPGにしかできないことでもあるので思い切りやってみようと、プレーヤーの皆さんにも、あとも続くからまずはラストを見て欲しいという言い方をしている。

――しかも今回吉田さんは「6.0で完結する」という言い方をしているが、では6.xはどういうストーリーが描かれるのか?

吉田氏: 単純に新しい物語。主人公は光の戦士の皆さんになる。

――それは「暁月のフィナーレ」の一エピソードとして語られていく?

吉田氏: いえ、違う。

――ということは6.1から唐突にタイトルが変わる?

吉田氏: さあ、どうでしょう(笑)。本音で言うと、まだ考えていない(笑)。もちろん、6.1以降にどんな物語を描いていくか、誰が中心になって光の戦士と冒険していくかの構想はできている。ただ、それをどういう形で皆さんに届けていくかは、「暁月のフィナーレ」のテンション次第。つまり、僕もプレーヤーの1人として、ゲームを遊んだ時に、こういう感情になっているから、6.1からはこういうお届け方をすべきかなとというのは僕自身も経験していないので、もう少し開発が進んできたら色んなアイデアが出てきて決めるんじゃないかなと思う。

――無人島開拓について、ギャザクラをしてなくても楽しめるということだが、本当にあけてなくても遊べるのか?

吉田氏: あけてなくても大丈夫。もちろん、スローライフコンテンツと銘打っている無人島開拓によって、モンスターとガチガチの戦いをするだけでなく、動物たちを愛でたり、眺めているだけでも楽しいじゃんと思ってくれて、クラフターやギャザラーのライフ系のコンテンツもいいかなと思ったときに、楽に接触できる導線は引くつもり。

 質問にあったようにギャザクラ開放の有無を条件にすると途端にやらない人が出てくるので、あくまでそことは切り離して楽しめるようにしている。もちろん、ギャザクラをやっていればプラスになるようなところはあるかもしれない。今回競うような要素は極力排除していて、自分のペースで、好きなように好きなものを集めて癒されて下さいという作り方をしている。

【無人島開拓】

――発表後、思いのほか反響が合ったと聞いたが、どれぐらいを想定していたのか?

吉田氏: 「ああ、なるほどね」ぐらいだと思っていた(笑)。やっぱり日本の方はコツコツものを集めたりするのが好き。スーパーファミコン時代からデータ遊びが好きというところがあるが、でもやっぱり欧米は、アクションベースだったり、結果ができるだけ早く欲しいというコンテンツが好まれる。この手のコンテンツはなかなか訴求が難しいという思いがあったが、だからといってやらないというのも違うと思っていて、「FFXIV」の世界をより豊かにするための新しい遊びとして用意していく。開発チームのモチベーションも非常に高い。

 今回は北米欧州が凄いが、日本も凄い。DASH島といったもんだから、DASH島のディレクターまで反応してTwitterトレンドにもなったぐらい。欧米も凄く反響が大きくて、欧米メディアのインタビューでも、「無人島を楽しみにしてるのでどういうコンテンツか教えて欲しい」とか、「ギャザクラやってなくても遊べるの?」とか質問が凄く多い。企画自体は結構前から進めていたが、パンデミックの中で「どうぶつの森」のようにみんなで繋がっていけるゲーム、焦らなくてもみんなでやっていけるゲームが改めて評価されているという風潮があるからこその反応なのかなと。ここはまだ深掘りできてない部分だが、ちょっとプレッシャーが掛かっているよねという(笑)。

 インタビューの最後に、コロナ禍ということで、どうしても会場にお客様が来て頂けない中で、本来ならばユーザーの皆さんが満面の笑みで楽しんでいるところを取材できたりするが、そこは僕らも本当に残念に思っている。これも新しいこれからの時代の、デジタルを使って全世界を巻き込んだイベント作り方をチャレンジさせて貰うことができたと考えている。これを糧にまたやっていくし、まだDay1が終わったばかりなので、明日Day2も凄いステージあるし、THE PRIMALSもある。明日もぜひよろしくお願いします。