インタビュー

「次回作は新IPのアクションで、2年以内に完成(予定)」。インディーゲーム製作集団NIGOROの“ボス”楢村氏が語る

「薔薇と椿」がスマートフォンで"復活"した理由とは

9月14日 収録

 発表より4年半もの時を経て、2018年7月31日にPC版、昨年にはコンソール移植版が発売された遺跡探検考古学アクションアドベンチャーゲーム「LA-MULANA2(ラ・ムラーナ2)」。その製作を手がけたインディーゲーム製作集団NIGOROの“ボス”こと楢村 匠氏に、東京ゲームショウの会場で話を聞く機会を得た。

 クラシックかつ高難易度な「LA-MULANA」シリーズを始めハードコアなゲームで知られるNIGOROだが、ブースで展示されていた作品はなんとスマートフォン版「薔薇と椿」。同作は元はFLASHゲームとして制作された作品であったが、ここにきて突然の移植が発表された形だ。

女たちの華麗なる戦いを描くFLASH版「薔薇と椿」。マウス操作で相手をビンタしつつ、相手のビンタを回避するという異色の作品

 今後NIGOROはもしやPC・コンソールではなくスマートフォンタイトルに注力していくのか?というか「LA-MULANA」の次回作は!? と気になることを色々と"ボス"に聞いてきたので、その模様をお伝えしよう。

NIGOROの“ボス”こと楢村 匠氏

――昨年コンソール版「LA-MULANA2」がコナミより発売されましたが、そもそも「LA-MULANA」シリーズを作るきっかけはなんだったのでしょうか?

楢村氏:元々、僕がインターネットでMSXパソコン(MSXという規格に則って作られたパソコンの総称。ソニー、松下、カシオなどの各社がMSXパソコンを作っていた)のファンサイトを運営していたのですが、そこに集まってきたのが今一緒に仕事をしているメンバーです。僕はプログラムを組まない人なのですが、このサイトを運営することでプログラムを組む人と知り合えて、ゲームを作れる環境が少しずつ構築されていきました。

 この当時、MSXのグラフィックスや音を模してゲームを作るのが流行っていたので1作目をリリースしたところ、かなりの人気を得ました。そこで2作目に取りかかったのですが、このときに“MSXで過去に発売されていたゲームで最も面白い”と感じたコナミ(当時)の「魔城伝説II ガリウスの迷宮」(※参考)というタイトルをモチーフにしたのが「LA-MULANA」です。探険と言えば遺跡!考古学!鞭と帽子!と、とんとん拍子で決まっていったのですが、当時はゲーム機で発売されるような事になるとは思わず……気づけばコナミさんから発売されることになっていました(笑)。

【「LA-MULANA」シリーズ】
「LA-MULANA」
「LA-MULANA2」

――そうして昨年、大々的に発売されたコンソール版「LA-MULANA2」はコナミブースに居を構えていましたが、今回は再びインディーブースに戻ってきました。今回の出展作品はスマートフォン向けのタイトルですが、これはなぜでしょうか?

楢村氏:「LA-MULANA2」は元々、Kickstarterで製作資金の募集が行なわれ、それに成功して資金をゲットしたという華々しいスタートを切っています。しかし、実際に発売されるまでに4年もかかってしまい、資金はあっという間になくなってしまった。評判が良くてたくさん売れても、4年もかかってしまっては赤字です。

 実は前から「大きな作品をPCで作り、これをゲーム機へ移植する作業に取りかかると、必ずメンバーの誰かの手が空くはず。その時に次の企画のプランニングだけ進めるとか、システムだけを組んでしまうといったことができれば、速いペースで作れるはず」と考えていました。ところが、「LA-MULANA」も「LA-MULANA2」も移植をお任せしていたら、色々と我々が出張らないと事が進まない事態が多々発生してしまった。つまり、まだまだ同時進行でスパンを短くすることができなかったんです。

 最近になり、ようやく「LA-MULANA2」は手が空いてきたので、新しい作品を作ろうという話が出てきました。同時に、プログラマの手が1人分空くのがわかったタイミングで、Flash Playerのサポート終了という話が飛び込んできました。これはつまり、我々が過去に作ってきたFlashゲームが動かなくなってしまうことを意味します。

 これは何とかしたいと思い、移植がスムーズでなおかつ今見ても笑ってもらえる「薔薇と椿」が候補に挙がりまして、移植作業を行なったのが今回の出展タイトルとなりました。また、「薔薇と椿」の作業中にroom6さんがNIGOROと何かやりたいという話をしてくださり、我々はスマートフォンでタイトルをリリースしたことがないのでroom6さんのノウハウを活かしたい、ということで一緒に出ましょうということになりました。

今回出展されているスマートフォン版「薔薇と椿」

――それで今回、room6さんとの合同ブースになっているんですね。

楢村氏:そうですね。去年はある意味で人生のピークでしたが、今年はまたインディーブースに戻ってきました。気持ち的にはどうかな?と言うところもありますが、お客さんとの立ち位置が非常に近いので、これはこれで楽しいです。

 また、NIGOROブースでは、以前からずっと「LA-MULANA」シリーズっぽいものばかりを展示してきたのですが、実は説明が大変なんです。しかも、冒頭を少し遊んだだけでは面白さも伝わらない。なので、製作陣も飽き飽きしていたんです(笑)。ところが今回の「薔薇と椿」は、操作が簡単なので全然説明しなくても問題ありません。

 しかも、「LA-MULANA」のときのお客さんは男性中心でしたが、今回は女性が多いんです! 「LA-MULANA」の時から、NIGOROは違う客層に知名度を広げないとダメだという目標があったので、今回の「薔薇と椿」はそれをクリアしてくれたと思います。

――ただ、昨年「LA-MULANA2」でNIGOROに惚れ込んだユーザーの中には、今回の出展に衝撃を受けた人もいたと聞きます。もしかして、スマホゲームと言う新しいプラットフォームに移行してしまい、「もうコンソールではソフトを出さないの?」 と心配している人もいたそうですが……。

楢村氏:それはないので、心配しないでください。あくまでも、新作を作るまでに間が空いてしまうので、その間に小さい作品をリリースしていくという計画です。また、「薔薇と椿」は10年前のFLASHゲームがベースで、これは「LA-MULANA」よりも古いタイトルです。それをもう一度きちんと遊べるようにしたということであって、新しいプラットフォームに移行したという感覚は僕にはありません。

――そうなると、当然ながらユーザーの方々が気になるのは次回作だと思います。そこに関しての情報を、ギリギリまでお願いします。

楢村氏:現状では、「LA-MULANA」っぽくないゲームにしようと考えています。

――ユーザーとしては、「LA-MULANA」、「LA-MULANA2」ときたので、次回作は「LA-MULANA3」と思いますよね?

楢村氏:「LA-MULANA3」は、絶対に作らないです。もうイヤです(笑)。

――では、今度は完全新作に?

楢村氏:そうですね。いつまでも「LA-MULANA」屋さんだと思われるのはイヤですし、代表的なIPではあると思うのですが、それ以外のものも作れるということを訴えたいです。実は、次回作は2年以内に完成させることを目標としています。我々は時間がある限り作り続けてしまうので、それはやめようと。

 また、今では個人でも条件が揃えばNintendo Switchでゲームをリリースできるなど、インディーゲームも敷居が下がっていますよね。そういう面でもコンソール機のインディーは盛り上がっているので、Nintendo Switch人気がある間には絶対に1本発売したいです。2年で作るというのは、そのような事情も入っています。

 とはいえ、2年で作るとなると、マップの広い探索ゲームだったり謎解きが大量にあるゲームは難しいです。それでも、2Dを発展させたゲームを作る考えは変わっていないですし、仮にステージクリア型ゲームになったとしても、一度クリアすればそれで終わりでは無く、何度でも遊ぶことができるようにします。我々は絶対にそのように作るので、期待は裏切りません。

――柱になるのは、やはり探索なのでしょうか?

楢村氏:まだそこまではっきり言える状況にはなっていません。現在はプランニングを行なっているところで、プログラムは陸地の上でキャラクターを歩かせるテストを行っている程度で……ジャンプもしていますが(笑)。そこまでです。まずは、僕がどのような世界観やストーリーを作りたいのかを構築しないと、これ以上企画を進められないですね。

――先ほど、「LA-MULANA」シリーズは「魔城伝説II ガリウスの迷宮」をモチーフにしたと仰っていましたが、そうなると知っている人なら次回作は「シャロム 魔城伝説III 完結編(※参考)」のようになるのでは?と想像しますよね。そうはならないですか?

楢村氏:それは良いところを突いた質問ですね(笑)。ただし、「シャロム 魔城伝説III 完結編」はアドベンチャーゲームでしたが、NIGOROの新作はアクションゲームになるのは間違いないです。けれど、まあ、なかなか良い質問だったと思います(笑)。

――つまり、次回作はアクションゲームで、2年以内の完成が目標だと。

楢村氏:例えば、「薔薇と椿」がビックリするほど大ヒットしたときは、こっそりと“3年以内に”と言い換える可能性もありますが……(笑)。とはいえ、私たちのファンの多くは30代、40代なので、“あと5年待ってください!”となった時に、5年後にゲームを遊んでいない年齢になっている可能性もありますし(笑)。なので、2年以内という目標は達成したいです。

 ただし、僕らはインディーゲームというスタイルを取りましたので、自分たちが作りたいものを作る、という立場は変わりません。もしかして、2年間製作をしたものの、自分たちにとって欲求不満であればじっくり作る方向に動くかもしれません。

――それが、インディーのゲーム製作集団NIGOROの姿であり、NIGOROが手がけるゲームなんですね。

楢村氏:そうです。次回作に関しては、ジャンルはアクションゲームで新しいIPになる事は間違いないです。まだ脳内で企画中の部分もありますので、もうしばしお待ちください。

――ありがとうございました。