インタビュー
推しキャラは旅館の女将!? 「シェンムーIII」鈴木裕氏インタビュー
gamescom開催にあわせて最新トレーラームービーも公開
2019年8月23日 17:17
幾度かの延期を経て、いよいよ11月19日に発売されることが決まった「シェンムーIII」。事前の予定外ということで持ち時間15分と非常に短い時間ながら、gamescom 2019ビジネスエリアのTHQ NordicとKoch Mediaの合同ブースで、本作のプロデューサー、鈴木 裕氏にお会いすることができた。
スウェーデンのTHQ Nordic ABを頂点に、ヨーロッパ屈指の巨大ゲームパブリッシャーグループとなったNordic Gamesグループの一翼を担い、オーストリアを本拠とするKoch Media傘下のゲームブランドDeep Silverが本作のパブリッシャーということもあってgamescomは鈴木氏と縁が深く、過去にも2017年にgamescom開催に合わせて鈴木氏がドイツを訪れている。
その際、弊誌でもインタビューを行なっているが、あれから2年が経ち、公開される情報も日増しに増え、いよいよ秒読み段階になってきたという印象だ。7月に公開されたコミカルなショートムービーの高画質版に続き、gamescom 2019開催に合わせて、最新のトレーラームービーも公開されている。
過去に縁があって、少しの間鈴木氏と働く機会を得たことがある筆者にとっても、本作のリリースは素直に喜ばしい。久々にお会いした鈴木氏からは、長旅とイベントでやや疲れの色が見えたものの、そのコメントのひとつひとつから何年経っても変わらない「シェンムー」への熱い思い入れが強く感じられた。そんな鈴木氏が率直に語ってくれた今の心境をお伝えしたい。
――全世界のみなさんに愛され続けてきた「シェンムー」の正史が、ついに「シェンムーIII」としてリリースできる。どうですか、やれたぞ、やりきったぞ、という実感はありますか?
鈴木氏:「シェンムー」という壮大な世界に対してキックスターターでは200万ドルものを支援を獲得することができました。これは本当に喜ばしいことです。しかし、イマドキのゲーム、しかも「シェンムー」の魅力を余すところなく伝えるには、残念ながら、なかなか厳しい予算感でした。その後のストレッチゴールを何段階か設定して、それぞれのゴールに対して、スケーラブルに企画内容を合わせていくのにも苦労しました。
その後、幸運にもシェンムーのために一肌脱ごうと、Shibuya ProductionsやDeep Silver、Koch Media、SIE、Epic Gamesといったパートナーが次々と合流して、フルスペックの「シェンムーIII」が作れることになりました。こうした支援のおかげで、当初は夢にも思わなかった一大プロジェクトになり、大変幸せです。本当に良かったと思っています。
――裕さんの頭の中にある壮大な「シェンムー」ワールドのうち、どのくらいのことが実現できたのですか?
鈴木氏:最初は200万ドル規模プロジェクトを覚悟していたから、その予算の範囲内でやろうと自分を納得させていました。バジェットは大きければ大きい方がいいんです。やりたいことはたくさんあるから(笑)。
最終的に大規模プロジェクトになったため、「シェンムー」の1や2を超えるボリューム感のゲームにすることができました。少なくともゲームボリュームという点では、過去の作品と比較して、ファンの方から物足りないという意見が出ることはないと自負しています。
ゲームの内容としては、1、2、3でそれぞれプロジェクトの状況が違い、それぞれでアプローチが違いますので、ゲームの味付けも当然違います。直接比較して、どうこうといった話にもならないと思いますね。
――バトルの方はどうですか?裕さんと言えば、格闘に造詣が深く、ディテールにこだわるイメージがあります。
鈴木氏:基本的なバトルシステムは、現在試遊できるバージョンが最終版に近い完成度です。試遊できるのはゲーム全体のごく一部ですが、バトルはリリース版と基本的に差はありません。RPGというか、レベルの概念があり、キャラクターの成長を考慮したものだから、ある程度の時間、通してゲームをプレイしないと良さがわからない。このあたりは、触ってすぐわかるバーチャファイターシリーズとは根本的に違いますね。
――初めて出会った時は、格闘ゲームの裕さん、リアリティにこだわる裕さんというイメージでした。ところがその後、物語性を非常に大切にしているとわかり、驚かされました。やはり本作で一番大事にしていて、一番の見どころになっているのはバトルよりストーリーですか?
鈴木氏:一番大事にしているのは世界観です。ストーリーというと物語の筋道だけということになりますので、それは違いますね。バトルも「シェンムー」を構成する大きな部分ではあるけれど、「シェンムー」の一部に過ぎないから、やはり世界観にマッチした戦闘にしなくちゃいけない。
特に一番見て欲しいとか、ここが一番の見どころというものはないんです。他のどのゲームとも違う、まったく新しいものなので、好きなように世界を巡って、ゆったりと「シェンムーIII」の雰囲気を味わってほしいと思います
もっとのんきに、寄り道したいところでいつまでも寄り道する、そんな「シェンムー」ライフを堪能してほしいんです。ストーリーだけを追いかけると20%の魅力しか味わえないのでもったいないですよ。
――なるほど、オープンワールドの先駆けだった「シェンムー」が、イマドキのオープンワールドになったからこその楽しみですね。
鈴木氏:オープンワールドといっても、ただ単に広いだけということではありません。ドンパチもやらないしね(笑)。 個々の目的に対して、それらを達成する手段は多様に仕掛けられています。自分の好みの方法を探ってほしいです。チュートリアルがあって、ストーリーをただただ追いかける、そんな一本道のゲームとはわけが違います。
――ゲーム開始後、つかみとなる導入部分には、どんなハイライトが用意されていますか?
鈴木氏:個々の部分を比較して、あれこれ言うことはできません。そもそも他のゲームとまるっきり違うから、すべてが驚きだと思います。すべてが絡み合ってこその「シェンムー」。どこか一部を部分的に捉えて優劣を語るようなものではないんです。
――カットシーンなどでキャラクターの話す言語は、各国版それぞれでどういう対応になるんでしょうか?
鈴木氏:どの国のバージョンでも、音声は日本語か英語が選択可能です。字幕テロップは多言語に対応しています。音声モードの設定が日本語だと、外国人のキャラクターでも日本語ボイスに、英語設定だと英語ボイスになります。
――さまざまなエピソードのうち、ここがイチオシという名シーンは何でしょう?
それぞれ甲乙付け難いですね。個々のシーンにとらわれず、世界そのものを楽しんでください。
――では、裕さんイチ推しのキャラクターは誰でしょう?
鈴木氏:涼やシェンファは別格で、この2人に対して、他のキャラクターはどうしてもその他大勢といった感じです。それでも強いてあげるなら、鳥舞(チョウブ)の旅館の女将が個人的なお気に入りです。
――ありがとうございました。