インタビュー

シリーズの生みの親。鈴木氏に「シェンムーIII」の気になるところを直撃インタビュー

「シェンムー」ファン必読の裏話が飛び出す

 東京ゲームショウ2019の初日である9月12日に行われた「シェンムーIII」ステージイベントでは、様々な話が飛び出し、会場は終始大盛り上がりであった。

 イベント終了後、弊誌は本作のディレクターである鈴木 裕氏にお話を伺うことができた。リアルタイムで「シェンムー」をプレイしてきた筆者としては、大変貴重な機会である。

シェンムーの生みの親である、鈴木 裕氏

「新旧の両ユーザーが楽しめるゲームを目指した」

――発表から年月が経ちまして、ついに今年の11月に発売になる「シェンムーIII」ですが、これまで開発にあたって苦労された点などありましたか?

鈴木氏:開発のきっかけはキックスターターから始まりまして、早い時点で2ミリオンを達成して製作が決定したのですが、そこから3ミリオン、4ミリオンと、どのバジェットになっても対応できるよう対応しなければならなかったのが大変な部分でした。ですが、おかげさまで当初の予定よりもフルスペックな「シェンムー」を作ることができました。

――初めに想像していたものよりもクオリティがかなり上がったと。

鈴木氏:はい。どんどんクオリティが上がっていきました。バジェットが変更するたびに企画変更するといった苦労、それと0からのチーム作りなど、簡単にはいかなかったですね。


「シェンムー」ファンからの熱い支援により、高い仕上がりとなったという

――開発チームには「シェンムーI&II」のオリジナルメンバーは参加されているんですか?

鈴木氏:シナリオやサウンドの方など、「シェンムー」を知るメンバーは何人か来ていただいています。

――なるほど。「シェンムーIII」を触らせていただきましたが、良くも悪くも当時の「シェンムー」らしさが感じられましたが、そういったのは意識されて作られたのですか?

鈴木氏:意識というわけではないですか、技術とかが違ってもたぶん僕が作るとこんな感じのゲームになっちゃうんでしょうね(笑)。

――過去作のテイストは踏襲されていますが、システムは今作から大きく変更されましたね。

鈴木氏:いろいろ話し合いの中でちょっとチャレンジをしてみたんですね。成長要素を入れたりと。今回は成長させてゲームを進めていきますので、IとIIよりもちょっと難しいゲームバランスになっています。

――成長要素が入ることで逆に難しくなったと。

鈴木氏:前作まではパラメーターの成長要素などはないので、誰でもパッとクリアできる難易度になっていましたが、今回はそこを少し調整しました。とはいえ、誰でもパッと進める「シェンムー」が好きなファンも当然いると思うので、ゲーム難易度を変更できるようにし、プレーヤーに合った楽しみ方ができるようにしました。「シェンムー」の経験者には少し歯ごたえのある「チャレンジモード」でプレイしてもらいたいですね。

――過去作のファンにはチャレンジモードがおすすめと。

 鈴木氏:腕自慢の人には、バトルの難易度が高い「やめておけモード」に挑戦してもらいたいですね(笑)。


成長要素が加わり、よりRPG感が増した

――今回の「シェンムーIII」では、技コマンドの簡略化や投げ技を無くすといった、バトル面でシンプルになった印象ですが、これはライトユーザーも意識しての作りなのでしょうか?

鈴木氏:キックスターターから始まった作品ですので、第一には「シェンムー」を支持していただいたコアなユーザーに向けて作ってはいます。その次に、新規のユーザーに「シェンムー」の世界をIIIからでも楽しめるように工夫しました。

――新旧ユーザーの両方に向けてといった感じなんですね。

鈴木氏:「シェンムー」に似ているゲームってあまりないと思うので、新規ユーザーにもハマってもらえることを期待しています。


前作までは「バーチャファイター」寄りの技コマンドだったが、今作からは1ボタンで必殺技を出すこともできる

ファンの要望に応えつつ、クリエイターとしてのこだわりを持って作られた

――公開されているPVではチャイやレンなど過去作のキャラクターが登場していましたが、他にも懐かしのキャラが登場したりするのか気になりますね。

鈴木氏:劇中にフル3Dで登場するとは断言できませんが、いろいろな形で登場する予定です。


Iのラスボスであるチャイや、IIで涼の相棒として活躍したレンがIIIにも登場

――コレクション要素も「シェンムー」の魅力の1つだと思うのですが、今回でも登場するガチャガチャの種類や、収集アイテムのボリューム感などはいかがですか?

鈴木氏:ガチャガチャは過去の作品よりも数は増えていますね。こんなガチャガチャがあるのか、というようなものも用意しています。ガチャガチャはコレクションするだけではなく、お金やアイテムなどと交換できるので、ゲーム内で役立つ要素にもなっています。

――それは面白いですね!

鈴木氏:ガチャガチャと交換で手に入るアイテムと他のアイテムを組み合わせて、また別のアイテムに変わるなんてのもあります。

――もはやガチャガチャがゲームのシステムの一部に組み込まれていますね。

鈴木氏:ガチャガチャだけじゃなく、アイテム自体もものすごい数があります。今回は着せ替えもできますし。


今作では「シェンムー」のキャラクターもフィギュアになっている。懐かしのIのヒロインも

――プレイさせていただいた体験版でもショップにTシャツが売っていましたが、パーツごとに着せ替えができるといった感じでしょうか?

鈴木氏:はい。インナーとアウターとパンツと靴の4箇所を好みに着せ替えることができます。


――ガチャガチャの他にも、「シェンムー」はミニゲームなどの遊びの要素も充実していて、「ハングオン」や「スペースハリアー」などの名作がプレイできたと思うんですけど、今回はそういったミニゲームはありますか?

鈴木氏:今回は残念ながら、過去のタイトルは入っていないんですよ。

――そうなんですか。それは残念ですね。

 鈴木氏:ですが、ミニゲーム自体は今作でも入れています。パンチングマシンや玉落とし、それから釣り――あとは「バーチャファイター」っぽいのは入れています。

――「バーチャファイター」っぽいミニゲームですか、それは気になりますね

鈴木氏:可愛らしいゲームになってますので、期待していてください(笑)。


今作でもミニゲームが充実しているとのこと

――「シェンムー」の代名詞ともいえる「フォークリフト」がIIIでも登場しますね。

鈴木氏:なぜかフォークリフトが人気なんですよね。何でなのかわからないですが(笑)。

――港でレースしたり、1から存在感ありましたからね(笑)。IIIでは当初から出す予定だったんですか?

鈴木氏:ユーザーアンケートを見ると、1番興味あるのがストーリー。2番目がバトル。3番目になぜかフォークリフトなんですよ。

――バトルに次ぐ人気なんですね(笑)。

鈴木氏:そういう訳なので、入れない訳にはいかないですよね。今回はいろんなものがフォークリフトで運べるようになっていて、アルバイトでゲーム筐体を運ぶと、翌日にゲームセンターに設置されて遊べるようになるといった楽しみも用意しています。

――涼が運んだゲームが、ゲーセンに置かれると。それは面白いですね。


「シェンムー」とは切っても切り離せないフォークリフト

――何年か前のインタビューで「シェンムーIII」では物語は完結しないとおっしゃられていましたが、それは変わりなくといった感じでしょうか?

鈴木氏:はい。しっかりしたストーリーがあるので、そこを短くして無理やり完結させても面白くないと思うんですよ。結末を見たいという声ももちろんあるんですけど、ゲームとして「シェンムー」の世界観も楽しんでもらいたいので、急いで完結はさせないという形になりました。

――IIIが発売されて、その後シリーズを続けていく予定はあるのですか?

鈴木氏:今回IIIの開発をスタートしたときのように、ファンの皆様から作ってほしいという声がある限り作り続けたいと思っています。

――その言葉が聞けて良かったです。最後に「シェンムーII」から続編を待ち続けていたファンに一言お願いできますか。。

鈴木氏:IとIIが違っているように、IIとIIIも違う形ですが、まぎれもなく「シェンムー」という作品に仕上がっていると思います。類似するものがない独特な世界観の作品なので、「シェンムー」のファンの方にはぜひプレイしていただきたいです。

――本日はありがとうございました。