インタビュー

「アサシン クリード オデッセイ クラウドバージョン」を触ればゲームの未来がわかるかも?

5Gは神! クラウド技術企業「ユビタス」がクラウドゲームの現在を語る

10月5日 発売

価格:8,400円(730日利用券、税別。ダウンロードは無料)

 ユービーアイソフトが10月5日に発売したアクションRPG「アサシン クリード オデッセイ」(ACOD)。本作のプラットフォームはプレイステーション 4、Xbox One、PC、そしてNintendo Switchとなっている。中でもNintendo Switch版は特徴的で、タイトル名を「アサシン クリード オデッセイ クラウドバージョン」(ACODクラウドバージョン)とするクラウドゲームとして展開されている。

 「ACODクラウドバージョン」の大きなメリットは、Nintendo Switchとある程度の通信環境さえあれば、すぐに「ACOD」が始められるという点だ。44MBという非常に軽い無料ソフトをニンテンドーeショップからダウンロードすれば、すぐに「ACOD」が起動する。本格的なプレイには8,400円(税別)の利用チケット(730日分)が必要だが、最初の20分はテストプレイが可能なため、様々な接続環境を試すこともできる。

【アサシン クリード オデッセイ クラウドバージョン】
通信技術を駆使し、映像だけを端末に配信してゲームをプレイする

 今回、「ACODクラウドバージョン」の開発協力を行なったユビタスのSVP of Business Development オザン・コチョール氏と、ゲームパブリッシング事業部ゲーム開発部部長の美土路光氏に話を伺うことができた。

ユビタスより、SVP of Business Development オザン・コチョール氏(左)と、ゲームパブリッシング事業部ゲーム開発部部長の美土路光氏(右)。オザン氏は最近までウォーゲーミングジャパンにおり、オフラインイベントなどで積極的に露出していたのでご存知の読者もいるのでは。現在は縁あって、ユビタスに加わることになったそうだ。なお、名前は似ているがユビタスとユービーアイは一切関係がない

未来目前! 軽くてラグもない、気軽に楽しめるNintendo Switch版「ACOD」

 ユビタスは、クラウドコンピューティング技術を得意とする企業。クラウドゲームの開発にも積極的で、最近ではカプコンのNintendo Switch用「バイオハザード7 レジデント イービル クラウドバージョン」にクラウドゲーム技術を提供したことでも知られている。そして今回、インタビューの中で2人が大きく強調したのは、今の技術でできるクラウドゲームを、この「ACODクラウドバージョン」でぜひ試してほしいということだ。

 クラウドゲームとは、サーバー側で操作レスポンスも含めたすべての映像処理を行ない、プレーヤーの端末に映像のみを配信する形でゲームをプレイしていく技術を意味する。「ACODクラウドバージョン」での推奨通信環境は安定した5GHzのWi-Fiや有線LANによる接続で、この環境さえ整っていれば、ラグを感じることなく他プラットフォームと同じような「ACOD」体験が可能となる。

美土路氏による実プレイ。ラグはなく、PS4版ともプレイ感覚は変わらなかった

 「ACODクラウドバージョン」は実際に筆者もプレイしてみたが、「これはクラウド版」という前提を忘れてしまうほどスムーズなプレイが可能だった。本作は戦闘、特に敵の攻撃を受け流すアクションなどはタイミングが命なので、ラグがあるとプレイ自体が困難なものになってしまうが、プレイ中不安になることすらなかった。体感的には、筆者がプレイしているPS4版と変わらない操作感だ。

 UIはNintendo Switchに適したものに変更されているほか、携帯モードへの切り替えにも対応している。通信環境さえあれば、「ACOD」を持ち運んでプレイできるというのはクラウド版ならではだろう。もし通信が不安定になることがあっても、画質を落とすなどプレイの安定を優先させるような仕組みになっているという。

 話の中で印象的だったのは、ユービーアイソフト本社のギユモCEOがクラウドゲームにとても興味を持っているという点。オザン氏は、ギユモCEOによる「段階的にコンソール機はストリームゲームに変わっていくのでは」という発言を引き合いに出し、「ACODクラウドバージョン」もその考えの一環という認識を示した。一方で北米では、Chromeブラウザに「ACOD」をストリームするという実験が始まっており、ギユモCEOの考えは徐々に浸透しているようだ。この施策とユビタスは関連がなく、オザン氏は「Chromeの実験についてはコメントできる立場にない」としながら、クラウドゲームが広がっていくのは「我々にとってとてもいいこと」と述べた。

 そして両氏が「待ち望んでいる」というのが、次世代モバイル通信規格の5Gだ。北米では10月1日からVerizonが商用サービスをスタートさせ、日本では2019年にプレサービスの開始が計画されている。通信の超高速化、大容量化が期待されている5Gだが、現在色々な実験を行なっているオザン氏、美土路氏は「もうまったく違う」と口をそろえる。もし5Gが標準になれば、通信環境を気にすることなくクラウドゲームが遊べるようになり、その可能性が驚くほど広がる。そのため一刻もはやい登場を待ち望んでいるという。オザン氏いわく、感覚的には「5Gは神」なのだそうだ。

 5Gの登場はまだ先の話ではあるが、確実にその時は近づいている。5Gは、クラウドゲームにどんなインパクトをもたらすのだろうか。そう考えていくと、クラウドゲームの現在を知っておくことは、ゲームの未来に触れることなのかも知れない。Nintendo Switchを持っている方は、ぜひ「ACODクラウドバージョン」をインストールしてみていただきたい。