インタビュー
「不満ではないけど満足はしない」。世界戦を終えた「LoL」日本代表チーム「DetonatioN FocusMe」インタビュー
2018年10月7日 08:13
ライアットゲームズが開催中のPC用MOBA「League of Legends(以下、LoL)」の世界大会「2018 World Championship(WCS)」において、プレイインノックアウト進出という快挙を成し遂げた日本代表チーム「DetonatioN FocusMe(以下、DFM)」。
10月6日には健闘及ばず、中国代表の「EDward Gaming(EDG)」に敗れることになったが、試合終了後には世界戦の感想や、世界上位のチームと戦って見えた課題など、様々な話を聞くことができた。本稿ではこちらの内容をご紹介しよう。
WCSを終えて……試合を振り返るDFM
――まず、EDG戦の感想からお願いします。
Evi選手:世界の壁の高さを認識させられる試合でした。
Steal選手:Eviが言った通り……
Evi選手:なんかそれ昨日も聞いたな(笑)。
Steal選手:強い相手と戦って、いい経験になったと思います。
Ceros選手:EDG以外の相手であれば調子が良ければ勝てると思うこともあるんですけど、正直今回の試合に関しては本当に自分たちがどれだけベストパフォーマンスであろうと勝てなかったのかなっていう気持ちがあります。やっぱり中国の強豪チームの強さを実感しました。
――戦う前はいかがでしたか?
Ceros選手:戦う前は勝つ気でいました。相手が強いことはわかっていんたんですが、やっぱり、戦う前から諦めていると勝てないんで。戦う前は自分たちは勝てるんだとワケわからん自信を持って臨んでいました。
Yutapon選手:中国と韓国、中国はこんなもんだろうなと正直思っていて、試合の結果も終わってからはこんなもんだろうなという感想しかなかったですね。正直。僕たちは勝つ気がなかったかと言われると決してそんなことはないんですが、勝てる気がしたかと言われると勝てる気はしなかったですね。
Steal選手:正直すぎだ(笑)。
viviD選手:実力差を感じました。努力します。
Kazuコーチ:EDG戦は「ハイマーディンガー」を開けてきて、僕たちが1番得意としているスタイルが取れたと思ったんですが、結果を見れば相手はどのLJLのチームよりも、世界中のチームよりも僕たちのことをしっかりと研究してきていました。
もちろん相手のコーチの方が格段に上で、今の選手たちの発言からもわかるとおり、勝ち方がわからないというほどのレベルの違いを実感して、いい経験になりました。
――ドラフトそのものは思い通りにできましたか?
Kazuコーチ:レーニングには実力面で若干の差があったと思うんですが、ドラフトだけを見ればわりと僕はわりとやりたいようにピックはできたと思います。ただ、結果と相手のバン&ピックの早さを見ると、明らかに"取らされて"いました。「ハイマーディンガー」をどこで取るかもわかっていたようですし、悔しいですね。でも、正直ああするしかなかったと思います。
Ceros選手:ピックは良かったよ。EDGじゃなければ……。
Evi選手:相手の中身が変わるか、俺たちの中身が韓国上位選手に入れ替わっていれば勝っていたかも(笑)。
Kazuコーチ:「カミール」と「ハイマーディンガー」、「ノクターン」と「ラカン」、「ノクターン」と「ハイマーディンガー」、「ノクターン」と「シェン」の組み合わせもできたし、「俺たちにはこれ以上何があるんだ」というレベルのドラフトでしたが、結局は全部相手からすると取らせていたんでしょうね。
――一応考えていた作戦通りのことはできたということですね。
Kazuコーチ:そうですね。
Steal選手:全部やりきった感じはあります。
Evi選手:全部やりました僕たち。俺らの力はこれやーーー!と。
Kazuコーチ:プレイインステージよりも取りたいものを取れたんですが、相手はそれをあえてやらせていたのかと思うと、本当に実力の差を感じます。
――3戦目で「ジグス」がバン、相手Midが「シンドラ」をピックしている状態(注:シンドラはハイマーディンガーのタレットをスキルで飛ばせるため、カウンターピックとされる)で、「ハイマーディンガー」をピックしたのは何故ですか?
Ceros選手:「ハイマーディンガー」をピックした理由は1、2、3戦目でそれぞれ違うんですが、3戦目では本当は「シンドラ」を相手にするために「ジグス」をやりたかったんですよ。でもバンされてしまっていたので、「シンドラ」相手に本来「ハイマーディンガー」は厳しいマッチアップなのは理解したうえで、「やるしかない」と思って出しました。
Kazuコーチ:僕としては全体を見ても「シンドラ」と「オーン」が先出しされている状態で、相手は集団戦が強い。一方、こちらはシェンが取れるという状態で、集団戦にも対応しなければなりません。「カルマ」や「ガリオ」が「ノクターン」と合わせるにはいいんですが、「ハイマーディンガー」なら集団戦で勝てるというCeros選手の自信と、熟練度を考慮したピックでした。
Ceros選手:「シンドラ」を相手にした「ハイマーディンガー」の後出しは疑問に思われることもあるかと思うんですが、その辺りは織り込み済みのピックでした。
――相手のピックで特に嫌なものはありましたか?
Evi選手:「アカリ」かなぁ……。やられた後に思った(笑)。
Kazuコーチ:EDGのScout選手はLPLで9勝1敗、KDAも10以上ですし、ぼっとレーンに関しては「カイサ」を27回使って勝率が80%以上です。Meiko選手は「アリスター」と「ラカン」が滅茶苦茶うまいし……どこから攻めていくかという話の中で、「アカリ」を開けようという話も出ていたんですが、空けていいレベルの「アカリ」ではなかったですね(笑)。
Ceros選手:Mid視点でいうと、「アカリ」も強いは強いんですけど、Scout選手のプールを考えた時に、「アカリ」以外も正直強いというのがわかっていたので、「アカリ」にバンを割き続けるよりは、わりと何が出てきても厳しいところがあってもしょうがないかなとは思っていましたね。
Evi選手:何開けても変わらないっていうのがあるよね正直。全部強いから(笑)。
Kazuコーチ:Scout選手にバンが3つじゃ足りないです。8つくらい欲しい(笑)。
Evi選手:ルブラン、イレリア、ゾーイ、シンドラ、アカリ、ライズ……うぉぉあーーー!
Kazuコーチ:なのでライズだけバンして、他は開けました。
Evi選手:もうなんでもいいよね。取れるのは1人だけだ!
――今後DFMはチームとしてどこを強化すると、EDGのようなチームに対する"突破口"になると思いますか?
Evi選手:そうですね、やっぱ僕がCuVee選手(韓国Gen.Gのトップレーナー)になることですかね。僕が彼を超える実力を身につけて、他のメンバーそれくらいの実力を手にしたら勝てると思います(笑)。
――Evi選手がCuVee選手のファンだということが配信で言われてましたよ。
Evi選手:めちゃくちゃファンです。大好き。
――配信を通じて、その想いは本人に届くかもしれませんね。
Evi選手:でも僕韓国のソロキューで会うたびに「I love CuVee」って言ってるんですけど、全部無視されてます。
一同:(笑)
Evi選手:「Hi」っていうと返事が返ってくるんですが、「I love you」っていうと無視されるんですよね(笑)。
――WCSの後は反応が変わるといいですね(笑)。
Kazuコーチ:突破口は、EDG戦だけを考えると圧倒的に個の力だと思います。彼らはレーニングから物凄く強いという前評判もありましたし、実際試合でも2、3レベルの段階から正直全レーンもう"終わってた"んですよ。Steal選手も動けない状態にされて。
EDG以外の「KABUM! E-SPORTS(以下、KBM)」や「Cloud 9(以下、C9)」戦を見ると、中盤のチーム力や連携などの課題が残っていて、何戦か落としてしまったんだと思います。振り返ると特にC9戦ではそれが顕著でしたね。改善できれば必ずいい結果に繋がると思います。
Ceros選手:いろいろ……いろいろありますね。EDGと比べると正直全面的に劣っていた、という話になってしまうんですが、C9は集団戦も上手いですし、「中盤、終盤で勝つ」というチーム全体の意思を感じました。
僕ら以外の試合でも、序盤から中盤で勝っていようが負けていようが、最終的に終盤のチームファイトで覆すというのをチームのスタイルとして持っていて、そういうチームと戦えたというのは経験値としては大きいと思います。自分たちはどうすればよかったのかというのを考えさせられますし、チームとしての中盤以降の動きはとても勉強になりました。個人的にはもっと自分の実力も、とか思うんですが、これを言い出したらみんな感じていることだと思います。
viviD選手:EDGに関しては正直「レーン戦が下手だった」で終わる話ですね。それ以外のC9やKBM戦のような試合を繰り返したら、レイトゲームの判断や冷静でいることが学べるのではないかと思っていました。この辺りが課題だと思っているので、改善することができればもっといいチームになれると思います。
Kazuコーチ:これは振り返りにも繋がるんですが、今回のDFMは得意チャンピオンで頑張ろう、攻めていこうという方針でやってきました。C9は終盤の集団戦、EDGは最初の10分のレーニングなど、上位チームはチャンピオン選択よりも1歩上のステップにいて、どの時間帯が自分たちの強み、チームとしての色なのかというのを徹底しています。これがDFMに足りないところで、これが確立できればチャンピオン選択ももっと自由にできるのかなと思いました。
――WCSの感想をお願いします。
Yutapon選手:結果として見れば「まぁこんなもんだろうな」という感じですかね。良くもないし悪くもない、そんな位置に落ち着いたかなと思います。
Evi選手:満足ではないけど、不満ではないって感じかな。
Ceros選手:そうかな、そうなのかな。
Yutapon選手:良くも悪くもないと思う。ほんとに。
Evi選手:「めっちゃよかったー!」ではないけど、まぁまぁという感じ。
Ceros選手:負けず嫌いだからね、不満じゃないけど満足はしないよね。
Evi選手:それはそうだ。負けて満足しないよ。
――Steal選手はいかがですか?
Steal選手:まぁ、こんなもんだね。
一同:(笑)。
Evi選手:すみません、Stealはしゃべるのがあんまり得意じゃないんです。
Steal選手:Eviが決めるの(笑)。
Evi選手:すみません、Stealめっちゃしゃべるの得意なんです。今から見せてくれると思います。
Steal選手:Yutaponが全部喋ってくれたけど、いいでもないし悪いでもない。
Ceros選手:あっさりしてますけど、こんな感じです。
――それでは最後に、来年のDFMについて伺えればと思います。
Kazuコーチ:今シーズンはアグレッシブにやっていく、というのが今回のWCSに繋がったと思うので、また違う方針を考えるか、さらに磨いていくかはこれから考えたいと思います。
――梅崎さん(DetonatioN Gaming CEOの梅崎 伸幸氏)はいかがでしょうか。
梅崎氏:今考えているのはゲーミングハウスの引っ越しですね。ずっとKazuコーチとも話していたんですが、次の若手、育成選手を獲得して、次世代に技術を継承していきたいなという気持ちがあります。なので引っ越し先を探しています!
Evi選手:環境面の整備をしていこうという話ですよね。
梅崎氏:そうですね、人が増える分ゲーミングハウスも大きなところにしないと。
Kazuコーチ:後進の育成は今いる選手たちの刺激にもなるだろうし、違う面も見られるかもしれない。
梅崎氏:チーム内で練習試合ができるというのは大きいと思います。海外のチームはそうやっているんですよ。
――本日はありがとうございました。
© 2018 Riot Games. All Rights Reserved.