インタビュー
TVドラマ「FFXIV 光のお父さん」ゲームパート監督山本清史氏インタビュー
2017年4月20日 12:21
すべてのUIを消して、攻撃を避けつつ行なわれた撮影
――ゲームパートの撮影方針は、マイディーさんの原作を、できるだけ再現するような形なのですか? それともかなり自由な表現が可能だったのか。その辺りはいかがですか?
山本氏: ブログが書かれた時代は、今とは全然違うじゃないですか。ですから時代だけは合わせようと思いました。
――時代、といいますと?
山本氏: じょびのメンバーはレベル60ですが、ブログが書かれた当時にはレベルキャップは50です。そのレベルで、しかもアイテムレベルが下限でのツインタニアだったから、大変だったという話じゃないですか。でもさすがにIL下限で撮影をするのは無謀なので、スキルセットだけは50に合わせて、装備とレベルは制限解除でいくことにしました。レベル表示は出ないので、装備と技さえ合ってれば50に見えるよねっていう。それでも、僕は一人称視点で撮影しながらなので、よく死にながらやっていましたが(笑)。
――なるほど、原作よりも、少しぬるい環境で撮影しているということになるわけですね。
山本氏: じょびの人たちにとっては、ぬるかったと思います。いや、わからないですが(笑)。学者で言えば「不撓不屈」禁止とか、白魔道士なら「エアロガ」禁止とか、レベル50に見せるためにそういう制限もありましたから。
――監督はどのジョブで参加されていたんですか?
山本氏: 僕はずっと白魔道士です。RPGや、オンラインは白と決めているので、白一色ですね。
――HPが減った時に自己回復しつつ撮影するとか、そういう理由ではなく?
山本氏: そういう理由ではないですね。回復は全部あるちゃんがやってくれました(笑)。いつの間にか回復してました。ツインタニアが面倒くさいのは、インディの表情とかを撮るときに、勝手に頭にマークが付くじゃないですか。あれが出るとNGなんですよ。だからもう、合間合間に。特にリミットブレイク打つ頃なんて終盤戦なので、大変でしたね。
――ツインタニアの撮影はどのくらいかかりましたか?
山本氏: 何日もかかっています。リミットブレイクだけで3カットありますから。3方向から撮影してますから、最低でも3周はしているわけです。
――全滅したら当然撮り直しですよね?
山本氏: そうですね。リテイクは数限りなくありました。1度の撮影で、10回は余裕で超えてます。タイミングが合わないだけでも全部撮り直しなので。
渋谷氏: 僕らはパラメーターを全部表示してプレイできますが、監督は撮影するから表示をオフにしなくちゃいけない。監督だけ、誰がどういう状態なのか、まったく見えない状況でやっているわけです。
――では、8人編成のコンテンツを、実質7人でプレイしてるということですか?
山本氏: そうです。僕は基本的に何もできないので(笑)。まあ、ツインタニアは大変でしたね。僕が撮ってる間に勝手にツイスターに巻き込まれて死んでたりするので(笑)。
――NGが出て、撮り直しってなると、やっぱり人間なので士気が下がるじゃないですか。そういう場合ってどうやって志気を高めていくのですか?
山本氏: ツインタニアに関しては、士気は下がらなかったですね。
――よし頑張ろう、まだまだだって感じですか?
山本氏: 僕が「あああ!」と打つと、「もう1回行きましょう!」と。それは全然大丈夫でしたね。
――1日で何周もしたのですか?
山本氏: 何周もしました。
――ツインタニアではリミットブレイクを撃ってましたね。
山本氏: リミットブレイクしますよという合図で、カウントダウンを合わせて、僕がカメラをセットして、リミットブレイクを撃ちました。
渋谷氏: プレーヤーはどうやって撮ったんだろうと思うでしょう。知らない人は、何となくこんな絵なんだなと見過ごしてしまうでしょうが。
――テレビ的な編集もかなり入っているのですね。
山本氏: かなりやっています。エモートも途中で切ったりはしていますし。
――実はそのまま生の映像はほとんどない?
山本氏: あることはありますが、結構切り返しもありますし、口パクの秒数が合わなければ切り返して、カットバックしたりとかしてます。映像的なギミックは相当使ってますね。
――その辺はさすがプロの仕事というところですね。
山本氏: 僕が今まで培ってきたスキルを総動員させて、こういう時にはこうすればそう見えるとか、実際に実機で撮っておけば編集に使えるとか、そういう今まで低予算をさんざんやってきた甲斐があったなというか(笑)。時間がない中でこう撮ればいいというのはよくわかっているので。
――監督が今回、個人的に撮っていて楽しかった蛮神や敵はいましたか?
山本氏: 僕自身が燃えたのはイフリートでしたね。かっこいいと思いました。
――真で撮ったのですか? それとも極?
山本氏: 無印です。お父さんの最初の蛮神なので、超弱い奴ですけど。イフリートは、どこから見てもそこそこかっこいいなと思いました。で、すごく面倒臭いというか、大変だったのは、タイタンでしたね。
――どういうところが大変でしたか?
山本氏: 放っておくと落とされるので(笑)。主観視点で撮影していたら、急に撮れなくなったなと思ったら落ちているという。
――そうですね。山本さんなら極タイタンも経験済みだと思いますが、極は撮影不可能ですよね?
山本氏: 極はちょっと……、極タイタンは無理ですね。ステージが小さい上に、かなりの確率で石になるんで。ちょっと極は無理かな(笑)。
――でも無印でもランダムでやってくるランドスライドを避けつつ撮影するのは大変そうですね。
山本氏: 僕が攻撃をくらわないようにしながら、さらにインディの方を向くので、タイタンは基本僕の後ろにいるわけです。だから、ランスラが来るかどうかは床のラインでしかわからない(笑)。「あ、やべえきた!」と、避けたりして。
――そうか、3人称視点ではなく、いつも1人称視点で遊んでるわけですよね。さらに難しいですね。
山本氏: タイタンは1人称ですね。景観カメラで撮っている余裕がなかったですね。
――リテイクが1番多かったのも、ひょっとしてタイタンですか?
山本氏: タイタンは多かったですね。あと、ツインタニアもめちゃめちゃ多いですね。普通に死ぬんで。
ドラマ終了後には、ネット限定の番外編を放送予定
――ドラマはフィールドでも撮られているのですよね。それはどういったシーンで、どのような内容なのでしょうか。
山本氏: フィールドでは、お父さんと出会うシーンを撮っています。それを撮影している間に天候は変わっていくし、後ろでモンスターが動いているし。場合によっては、誰かが伐採に来るし(笑)。すごいなこれ、と。
――交通規制はせずに、普通に撮ったのですか?
山本氏: しようという話はあったのですが、やるとプレーヤーにバレてしまうので。
渋谷氏: 「撮影してるのでどいてくれ」とは、絶対に言えないですからね。
山本氏: 邪魔なモンスターを引っ張ることはありましたね。さっき言ったAPに「トレント・サップリングを引っ張っといて」とか。大きすぎるモンスターはどかせるとか、そういうことはやりましたね。
――長い尺で撮るにも限界があるわけですね。
山本氏: 同じカットでもどんどん天候が変わりますから。前に撮ったカットが朝なのに、次のカットが夕方だったなんてことは、普通にありました(笑)。カラーコレクターで結構いじったりしながら対応していきました。
――次の朝まで待ち続けるわけではなく、色を調整してしまうのですね。
山本氏: 日中はそれでいけますから。太陽が落ちるところはごまかせませんが。朝の光に、夕景をあわせるとか、そういうのは、実写でもよくあるので。
――2カ月間の撮影中に、1番苦労したのはどのシーンですか? 発表会の時に、ツインタニアは本当に死にそうになったと言われてましたよね。
山本氏: ツインタニアは、他に7人いるじゃないですか? だから、絵はなんとかもつのですが、フェーズがたくさんあるので。どのフェーズをどう撮るかという悩みで死にそう感はありました(笑)。ダイブボムなど、どう撮ってもツインタニアが映らなくて、どうにもならんと思いつつ撮ったりしてました。ツインタニアは、そういう演出的な意味で死にそうになりましたが、実際には、なんだかんだ、番外編が1番大変でしたね。ほとんどエオルゼアパートなので。
――本編の撮影は、そこまで大変ではなかった?
山本氏: そういうわけでもないですが、ただ、実写がメインだったので。僕は、「頑張りました。どうぞ使ってください」と野口さんに渡すだけで、後は野口さんが選択してくれますから、責任感は二の次というか(笑)。ダメな所は切ってくれますから、安心していたのですが、番外編は、実写パートの絵を全部渡されて、繋ぎも全部僕がやるという感じだったから、かなり責任重大で、吐きそうになりましたね。
――その番外編は、いつ観られるんですか?
渋谷氏: 6月ですね。1話のみです。
――長さは何分ぐらいなんですか?
山本氏: 27分ですね。
――ほぼ全部エオルゼアのシーンばかりですか?
山本氏: そうです。実写パートは最初と、最後だけです。