インタビュー

TVドラマ「FFXIV 光のお父さん」ゲームパート監督山本清史氏インタビュー

「FFXIV」プレーヤーだからこそ楽しめるちょっとした小ネタも織り交ぜた

――ドラマの中で、山本さんが作った映像が流れるゲームパートは何分ぐらいあるんですか?

渋谷氏: 30分ドラマで、ゲームパートがだいたい1話5分くらいです。だから、感覚でいうと、1/4ぐらいですかね。

――実写パートの中に写るゲーム画面の映像も撮ってるんですよね?

渋谷氏: 実写の中に写っているゲーム画面はすべて、マイディーさん本人が作っています。だから、ある意味本物なのです。

――マイディーさん始め、何人ぐらいの方がアクターとして登場していますか?

山本氏: マイディーさん、あるちゃん、きりんちゃん、それからじょびのメンバーで言うと、めるくん。あと、せとちゃんとクライブさん。あとは、ゆっきーと……。

渋谷氏: エンドクレジット載ってる人が一応全員ですよ。20人ぐらいです。

――ブログに登場して、喋っているような人は、全員出ている?

渋谷氏: だいたいは出ていますね。

――逆に、ブログには出ていないドラマオリジナルのキャラクターはいますか?

渋谷氏: 僕ぐらいでしょうか? 僕と監督だけ、あ、あとはAPの3人か。

山本氏: たゆたうの有志がアシスタント的に、ゲームの中で動いてくれたので、そのキャラと、僕のキャラと、あと渋谷さんのキャラですね。

――セリフはあるのですか?

山本氏: セリフはありませんが、画面に映ることはありますね。

FCじょびネッツアのメンバーが、実際のキャラクターを使って撮影に協力。ブログでおなじみのメンバーが登場している

――撮影時間は夜の9時からの固定だったのですか?

山本氏: 始まりはほぼ固定ですね、9時開始ですが、皆さん仕事があるので、遅れてくる場合もあります。きりんちゃんが今日はちょっと渋滞にはまってるとか(笑)。終わりの時間はまちまちです。ひとまず11時で、「2時間経ちましたけど、まだやれますか?」と聞いて、「やります、やります」だったらやるけど、「眠いんです」でおしまいみたいな。

――ゲーム内で撮影するのって結構大変ですよね? 例えばギルドで記念撮影1つ撮るのもすごく時間がかかって、向きが変だなんだかんだって、なかなか思い通りにいかないものですが、それをプロが見てもおかしくない、TVで放送するドラマに仕上げるのは、とても大変そうですが、どのようにやったのですか?

山本氏: 最初は皆さん戸惑ってましたね。エモートの繋ぎ方にしても、例えば笑いながら喋るという時、笑った後に誰かを見て、またうなずくとか。そういう動きの自然さってあると思うのです。始めのうちは、やはりぎこちないのですよね。あまりそういうエモートの使い方を、普段はしないじゃないですか。でも、だんだん慣れてきて、笑いが約何秒続いて、そのあとこうすると、動きがこう繋がるということを、皆さんだんだんとわかってきたと思うんです。本当に、どんどん動きに違和感がなくなっていきましたから。

――出演者の方には、あらかじめ台本を送るわけですか?

山本氏: 台本は、マイディーさん経由でみなさんに送っています。台本を元に、僕が描いた絵コンテも、皆さんに渡っていて、それをもとに撮っていきます。さらに追加のカットがあれば、こういうのを撮りますとチャットで言って、動きはこうですと指示しながら、フィールドマーカーでAからBに行ってCみたいな(笑)。パーティを組んでやることが多かったですね。ほとんどはパーティチャットです。

エモートと演出的なギミックを組み合わせて撮影

――演技は、移動と、エモーションと、あとは口パクですか?

山本氏: そうです。

――それを、マクロでやっているのですか?

山本氏: マクロの人もいますし、マクロと手動を組み合わせている人もいます。口を動かすための「あああああ」というマクロだけは組んでおいて、後は間にエモートをクリックしていく人もいますし、人それぞれですね。この「泣く」のエモートも、本来はこうではないのですが、うまく繋ぐことでこうなります。

――撮影は全部、山本さんが主観視点で移動しながら撮ってるわけですね。

山本氏: 1カット1カット移動しています。

渋谷氏: 番外編に、20人くらいでリムサ・ロミンサを走るシーンがあるのですが、その人数に直接演出指導しているのです。

――実際、どうやって撮ったのですか?

山本氏: これはグループポーズで撮影しました。この中に僕もいます。

渋谷氏: この時僕が感心したのは、7人ごとのチーム分けですね。

山本氏: アライアンスを組みましたね。

渋谷氏: 7人パーティを4つ作って、監督が、そのパーティに順番に参加して、ここに立ってくれ、こんなエモートしてくれと全員に演技指導をした後、よーいドンでライブサーバーのリムサに行ってだーっと走ったのです。リムサにいた人たちは、いきなりじょびのメンバーが現われて、20人くらいでだーっと走ってくるので、何事かと思ったでしょうね。

山本氏: この日、面白かったのが、本当の光のお父さんにリムサでばったり会ったのです(笑)。あ、お父さんいるよってみんなで手を振って。

――Gungnirサーバーで撮っていて、噂になったりはしなかったのですか?

山本氏: バレなかったですね。基本的にはインスタンスの中にいたので。グリダニアの周辺で撮影したのは、最初の1、2話だけで、その頃にはまだドラマに関する情報は一切なかったですから。

グリダニアにあるバスカロンドラザーズ

――おかしいなと気づく人もいなかった?

山本氏: マイディーさんのファンかもしれないですが、ずっと見てる追っかけの人はいましたね。何かあの人ずっといるよね、とか。多分、スクリーンショットを撮っていると思ってるんじゃないかな、とか。何人かは、渋谷さんが話しに行いきましたよね。

渋谷氏: すぐ側まで来ちゃう人がいて。まだ、ドラマを撮っているとは発表できないから、「すいません、ちょっと僕とお話しませんか?」って、ナンパですよね(笑)。そうすると「え? え?」と言いながらも、僕が外に向かって歩くとついてきてくれるので、そこからは普通のフリートークです。その間に撮影を。バスカロンドラザーズはそうでしたよね。

山本氏: そうですね。バスカロンの酒場のシーンは原作には出てこないのですが、僕はとにかくあそこが好きで。裏技で2階に上がれるじゃないですか。あそこの2階で撮りたかったんです。そういう、ゲームをやっている人間にしかわからないような場所というか、一般の視聴者は、あの2階にすぐに上がれると思っているはずです。でも、実は屋根づたいに登山しなくちゃいけないとか。そういうちょっとした小ネタを挟みたくて、そのためにバスカロンラザーズに行きました。

――ボイスチャットでの収録は考えなかったのですか?

山本氏: 考えなかったですね。

――テキストにこだわった理由があるのですか?

山本氏: ボイスチャットは、彼ら、彼女たちにとってのリアルじゃないなと思ったんです。エオルゼアでは、会話はだいたいチャットでやっていて、その中で演出するということが、神様に頼らないことと同じような意味合いで言うと、大事かなと思いました。ただ、それだけの理由です(笑)。完全にこだわりっていうか。

序盤はグリダニアのフィールドでドラマが進むため、モンスターや事情を知らないプレイヤーもいる中でのロケとなった