インタビュー

ポスターのみに描かれた“幻”、「超合金 メカゴジラ(生頼範義ポスターVer.)」

ポスター版メカゴジラがついに立つ! 驚異の変形合体システム

 いよいよ合体である。ガルーダは“怪獣らしい要素が集中したデザイン”になっており、ナーガは東宝メカのデザインラインの延長、そしてガンダルヴァは合体を意識した“腕”そのもののデザインになっている。3つのデザインラインが異なるメカが1つに合体しメカゴジラになるところに「超合金 メカゴジラ」の面白さはあると西川氏は語った。

合体した姿。迫力たっぷりだ
昨年秋の展示したものから新規に作り直したという顔。イラストの持つ迫力に立体物で迫ろうとして最も力を入れた部分だ
飛行ポーズをとらせることも可能

 変形、合体はまるで映画のシーンを見ているかのような楽しさがある。合体は腕と上半身になるガンダルヴァが、ナーガの上に乗っかるところから始まるのだが、ガンダルヴァのキャタピラが重なるように折りたたまれ、胸部分を形成する。ナーガはメーサー砲部分が縮み、センサー部分が前に倒れて装甲となって、ガンダルヴァと合体する。

 この形態はまるで“地上戦艦”のようにも見える。「オリジナル合体」を追求するのも本商品の楽しい遊び方だと寺野氏は語った。ここから上半身が垂直に浮き上がることでナーガが変形、四肢を持った人型を思わせる形になる。「超合金 メカゴジラ」は、ポスターそのまま腕が長いデザインであり、足もゴジラと比べると長く見えるデザインなので、この形態だと、人型ロボットっぽい。

 メカの細かいディテールは、合体の楽しさを膨らましてくれる。このメカの細部の描き込みが、合体時に「内部メカ」として魅力を放つのだ。特にガンダルヴァはキャタピラ部分が折りたたまれて胸になるので、内部メカがぎっちり詰まっている雰囲気となる。また、足の付け根のメカ描写も細かい。体の各部のバーニアを吹かして直立する姿が想像できる合体の手順が楽しい。

 そしてこの形態にガルーダが後ろから合体することで、首としっぽ、そして背中が形成され、合体完了だ。手足のバランスを調整してポーズを決めれば、巨大な翼を持ち、独特の雰囲気を放つ「生頼範義氏のポスター版メカゴジラ」がここに完成するのである。

 メカゴジラの西川氏のこだわりの1つが股関節を隠すアーマー。目立つ関節を隠すことと同時に、胴体のボリューム感が増し、結果として中に人が入っている“着ぐるみらしさ”が出るという。膝を曲げることでグッとゴジラらしくなるところもこだわりとのこと。「超合金 メカゴジラ」は昨年の10月に開催された「TAMASHII NATION 2016」が初出展だが、そこから太もものディテールや、フロントスカート、さらには3つの機体からの共通の意匠として取り入れた黒いラインなど、様々なポイントに手が加わっている。

 そして寺野氏と西川氏がこだわったのがメカゴジラの“顔”である。まずベースデザインがあり、そこから西川氏が監修でポイントを指摘するという形だったのだが、生頼氏のポスターの迫力のある独特のデザインがうまく出ない。結局寺野氏の決断で1からもう1度作り直し、現在のものになった。生頼氏のポスターをじっくり見て、真横、正面、様々なアングルから生頼版メカゴジラを再現させるべく、作りだしたという。

 可動も優秀だ。手足はデザインもあって細かく関節が仕込まれているし、変形機構も兼ねているため、首や、足首、しっぽも良く動く。また翼部分が折れ曲がる所なども表情付けに面白い。ガンダルヴァでは奥にあったセンサーが胸の正面に出ているところや、手のツインメーサーに繋がるケーブル表現など、細部をチェックする楽しさがある。

 「超合金 メカゴジラ」は飛行ポーズをとらせることも可能。両手ビームキャノン砲であり、体の各部に重火器を装備しているため、「ゴジラvsメカゴジラ」のメカゴジラと同様、アウトレンジから様々な火器をゴジラにたたき込む、というのがコンセプトだ。昭和「ゴジラ」シリーズのメカゴジラの発展系という意味合いも持たせ、特に火力は充実させる方向で考えたとのことだ。とはいえ、「超合金 メカゴジラ」は“映像作品がない”というところは実は魅力の1つであり、自由に活躍を想像できるところも面白いと西川氏は語った

 合体に関しては、やはり3機のメカとしての整合性は苦労させられたと寺野氏は語った。特に下半身は直線的なデザインで、他のメカとのバランスを考えさせられた。腰アーマーは下半身の大きい怪獣らしい“太さ”をもたらすのに効果的だったという。西川氏はもの足りないと感じる部分や、よりモチーフに近づける部分など、何度もポスターを見て監修していったとのことだ。印象的な赤、そして黒いラインで、銀一色のボディが引き締まったというカラーリングは、寺野氏のこだわりのポイントだ。

 「寺野さんと同じように、ポスター版のメカゴジラに強い思い入れを持っている人に、『これだ!』と思ってもらいたい。だからこそ何度もポスターを見直しました。『これじゃないよな』と思って欲しくなかった。実物はなく、“正解”といえる映像作品もない。“絵”というのは映像作品や着ぐるみとは違う別の力を持った存在で、それを“立体物”という違うものにどう変換していくか、絵の通りだけではなく、そこには立体物ならではの魅力も発揮させなくてはならない。そして今の雰囲気も取り入れる。改めて難しいなと思いましたね」と西川氏は語った。

 寺野氏は「ポスターは絵なので、それと全く同じものは立体物では作れない。西川先生のデザインと、そして生頼先生のポスターに描かれたメカゴジラを立体化するには、『あのデザイン画でそのまま映画が作られて、メカゴジラが着ぐるみで表現されていたら』というところを考えることで実現しました。『あのポスターのメカゴジラの立体物が欲しい』と僕が思ったものを作ることができたと思います。ポスターから感じたかっこよさ、“メカゴジラ感”は、この商品できちんと再現できた。僕の一方的な思い出だけではなく、僕だけのワガママで作られたわけではなく、当時のスタッフであり、知識をお持ちの西川先生が監修して下さったからこそ、本当の意味で“ポスターのメカゴジラ”を立体化できた。僕自身はもちろん、あのポスターのメカゴジラに魅力を感じた全ての方が望んでいた立体物が実現できたと思っています。そう、“あのメカゴジラ”が実現できたんです」とコメントした。

【メカゴジラへの合体】
ガンダルヴァが折りたたまれ、ナーガの上に合体する
一気に立ち上がり、背面にガルーダが合体する。
メカゴジラ完成。映画として撮られ合体シーンを想像したくなる合体プロセスだ

 最後にユーザーへのメッセージとして西川氏は、「今回は企画自体が面白かった。1枚の“絵”がこういう形で立体物になるというのは、画期的なことだと思います。かつて私がデザインしたメカゴジラを、生頼先生がポスターに描いていただけた時も本当に『やったー』と思いましたが、それからこんどは立体物になったというのは感無量なところがあります。過去の思い入れを持ってる人はもちろん、そうでない人にも純粋にメカとして、ロボット・怪獣フィギュアとして魅力的だと感じてもらえればうれしいです」と語った。

両氏の強い思い入れで、「超合金 メカゴジラ」は生まれた

 寺野氏は「『魂MIX メカゴジラ』は合体変形メカとして部品を差し替えずに“完全変形合体”しますので、変形ファンにも強く満足してもらえます。「vs メカゴジラ」の時、僕自身は小学生でした。マニアでもない僕ですら、『ポスター版メカゴジラ』には強く惹きつけられた。やはり当時の『ゴジラ』というコンテンツの魅力と、生頼先生のポスターのパワーはすごいものだったんだと思います。その魅力を感じた全ての人がこの商品に賛同してくれればいいなと、思っています」とユーザーに向かって語りかけた。

 筆者の場合は昭和の「ゴジラ対メカゴジラ」が一番印象に残っているが、今回、「超合金 メカゴジラ」は強い魅力を感じた。なんと言っても変形合体のメカニズムが良い。ガンダルヴァのキャタピラが折りたたまれ胸部分に変形するギミックで、グッとハートをつかまされた。3機のメカが変形合体し、「メカゴジラ」になるというコンセプトそのものが楽しく、そしてその合体メカニズムに強い魅力を感じた。

 そして寺野氏の「自分の世代が欲しい商品が実現できた」というところにも“力”を感じた。自分が作りたいものをただ実現するのではなく、西川氏の監修を実現し、「あのポスターのメカゴジラで映画が作られていたら、どんなメカゴジラになったか」という、非常に面白い想像が実現できるというのは、そのコンセプトそのものが面白い。本当に魅力的な商品だ。ぜひ商品を手に取り、自分の手で変形合体させ、活躍を想像して遊んでみたい。

【S.H.MonsterArts ゴジラ(生頼範義ポスターVer.)】
今回新たに生頼氏のポスターで描かれたゴジラの立体化も決定した。ぜひ対決させてみたい