【特集】
真のインディ体験がここに! 「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」ハンズオンレポート
1人称視点がもたらす濃厚なインディ体験。これぞ“プレイする映画”だ
2024年10月29日 23:00
- 【インディ・ジョーンズ/大いなる円環】
- 12月9日発売予定
- 価格:
- スタンダードエディション 9,800円
- プレミアムエディション」12,900円
- コレクターズエディション 24,900円
- CEROレーティング:D(17歳以上)
東京ゲームショウ 2024で多くのゲームファンが不満を抱いたのは「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」が試遊できなかったことだろう。会場の入り口付近2カ所に巨大な広告があり、TGS初日には「Tokyo Game Show Xbox Broadcast 2024」で日本語吹き替えされたトレーラーも公開されたにも関わらず、残念ながら会場では試遊台はおろか、展示すら行われなかった。Bethesdaは、とにかく発売まで試遊させないメーカーで知られるが、心残りで会場を後にしたゲームファンは少なくないだろう。
その「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」をようやくプレイする機会を得ることができた。去る10月17日にオーストラリアシドニーのベセスダオフィスで開催された試遊イベントに参加することができたので、インプレッションをお届けしたい。クリエイターインタビューも別稿でお届けする。
なお、今回はハンズオンでの画像キャプチャはできなかった。おそらくハンズオンのビルドに見せたくない何かがあったか、大きな仕様変更があったものと見られるが、そのためスクリーンショットは既存のものとなる点、ご了承いただきたい。最新映像は記事中のプレイ映像で確認いただければと思う。
誤解のないように追記しておくと、撮影禁止措置は、ゲームのクオリティが低かったり、バグが多かったからではない。あくまで今回体験できた3つのエリア限定の話にはなるが、このまま発売されたらヤバいなという致命的なバグや不具合には一度も遭遇しなかった。安心して発売を迎えられそうだという手応えが得られたが一番の収穫だった。
プレイしたのはPC版で、DLSS、レイトレーシングに対応しているが、今回のビルドではオフになっていた。PCはGeForce RTX 4090搭載PCで、軽々と動いていたが、ギザステージは、かなり遠くまで見渡せるオープンワールドとなっており、レイトレオンのプレイはかなりPCパワーが必要になりそうな感触だった。
「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」はXbox Series X|S、PC向けに12月9日発売予定で、Xbox Game Passに対応する。PS5版は2025年春発売予定となっている。価格は9,700円より。
一人称視点による濃厚かつ没入感のあるインディ体験をついに実現
インプレッションに入る前に、「インディジョーンズ 大いなる円環」の概要を改めてまとめておきたい。もう知ってるよというインディファンは飛ばしてもらっても構わない。
「インディ・ジョーンズ」といえば、ご存じの通り、1980年代を代表する傑作冒険活劇であり、Eidosの「トゥームレイダー」シリーズやNaughty Dogの「アンチャーテッド」シリーズなど、ゲーム界にも多大な影響を与えた人気フランチャイズだ。もちろん、「インディ・ジョーンズ」自体も正伝、外伝、様々な形で何度もゲーム化されてきているが、まだ技術的に発展途上だった20世紀にリリースされた作品が多く、その後もPS2やWii向けにリリースされているものの、多くは日本語化されていないこともあり、真の意味でのインディ体験が味わえるゲームはまだ登場していないように思う。
「インディジョーンズ 大いなる円環」は、「インディ・ジョーンズ」初期3部作の世界観を活かす形で、真の意味でインディ体験をAAAクオリティで実現することを目指したアクションアドベンチャーゲームだ。プロジェクトの発起人は、「The ElderScrolls」シリーズ、「Fallout」シリーズのクリエイターとして知られるトッド・ハワード。開発がスタートしたのは2021年だが、トッド・ハワードが、Lucasfilmのジョージ・ルーカスにピッチしたのは2009年頃まで遡るという。
本作は2021年1月に正式発表され、BethesdaとLucas Filmの共同プロジェクトとなる。おもしろいのは、開発はBethesda自体では行なわず、同じくZeniMax Mediaを親会社に持つMachine Gamesに委ね、トッド自身はエグゼクティブプロデューサーに退いたことだ。Machine Gamesは、「ウルフェンシュタイン」や「DOOM」など1人称視点のタイトル開発を得意としてきたメーカーで、「インディジョーンズ 大いなる円環」のゲームとしての最大の特徴は1人称視点のゲームであることだ。
この大胆な決断は、2024年1月のトレーラー公開以降賛否両論が渦巻いているが、今回プレイした限りでは、それがゲームの圧倒的な個性になっていると同時に、「トゥームレイダー」や「アンチャーテッド」など、既存のアクションアドベンチャーとの決定的な差別化要因になっている。
ゲームプレイは常にインディの視点で進む。それはつまり、秘法を文字通り目の当たりにでき、顔に触れるような近さでムチが振るわれ、巨漢から繰り出される拳が画面一杯に飛んでくるということだ。当然、わらわらサソリの群れも、鼻を刺されるような迫力で襲いかかってくるし、唾棄すべきナチス高官の顔の表情もよく分かる。これらインディ体験は、まさに一人称視点でなければ味わえないことばかりだ。
それでいてカットシーンは、ノンストップかつシームレスに3人称視点に切り替わる。映像の中心には我らがインディが大映しになり、敵と対峙したり、仲間とディスカッションしたり、謎に挑んだりする。まさに、映画のワンシーンそのものであり、圧倒的な没入感がある。今回、インタビューを挟んで約2時間ほどの試遊だったが、すっかり没頭して、ハンズオンの終わりを告げられるまであっという間だった。
詳しくは後述するが、Bethesdaスタイルのフルスケールのオープンワールドや、RPGかと思うようなサブクエストの多さ、等身大の人間を操作する派手さにかけるアクションなど、個性が強く好き嫌いはわかれそうな作品だと感じたが、言うなれば小島秀夫氏の「DEATH STRANDING」を初めてプレイした時のような良い意味での作家性を感じることができた。それではインプレッションをお伝えしていこう。
インディらしさと、スニーキング、謎解き、バトル、そのバランスの良さが心地よい
今回、2時間たっぷり3つのステージを体験することができたが、いずれも凄く良い手触りを得ることができた。インディ・ジョーンズならではの濃厚かつダイナミックなストーリーテリング、インディらしい無骨なメレーアクション、ジョン・ウィリアムズの傑作BGM、エキゾチックで謎めいたヒロインたちとの邂逅。そして状況に応じて変化するインディの息遣い。インディ・ジョーンズ好きのゲーマーは期待する要素がもれなく入っている。
今回プレイできたエリアは、プロローグのマーシャル大学を皮切りに、バチカン、ギザの計3エリア。それぞれ別のゲームかと思うほど、ゲーム性が変化し、同作の持つゲームとしての多様性を感じることができた。
ただ、今回は序盤ということもあり、主な武器は、自らの拳と、インディのアイデンティティであるムチ、そしてその辺に転がっているアイテムぐらいで、映画のようにリボルバーでズドーンというような気分爽快な体験はできなかった。
そのトレードマークであるムチの操作も思ったより難しく、映画のようにカッコ良くはいかず、当然トレーラーのようにもいかない。ムチを誤爆してうっかり敵に見つかったり、ムチの操作を誤り、落とし穴に落ちたりして何度もやり直しすハメになってしまった。映画と同様に、基本的なゲームデザインはスニークアクションだが、避けられない戦いや難所も存在する。特にメレーアクションとムチの操作はしっかりマスターしないと、ゲームを進めるのは難しいと感じた。
ゲームの進め方は自体はとてもシンプルだ。マーシャル大学で発生した事件を起点に大いなる謎を解き明かすメインクエストと、ステージごとに異なるサブクエストが用意されている。フィールドには、謎解きに繋がる様々ななヒントがあり、それを見つける度に、アドベンチャーポイントを獲得できる。このアドベンチャーポイントが、本作のキモで、これを貯め、アドベンチャーブックで消費することで、各種スキルやアイテムを手に入れることができる。まずはさくっとストーリー重視でゲームをクリアして、ゲーム性やレベルデザインを理解した後は、2週目でアドベンチャーポイントを貯めまくり、未知のスキルを取得し、強いインディで遊ぶのも楽しそうだ。
「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」は、ここ数年のゲーム業界のトレンドであるバトル主体の死にゲーとはま根本的に異なるゲームデザインで、映画と同様に、考古学者であるインディの戦闘能力には限界があり、複数の敵に襲われたら後ろを向いて全力で逃げるしかないというところが、インディらしいところだ。インディの最大の武器は知恵であり、知恵を使って無駄な戦闘を回避していくスニークアクションが王道のゲームと言えそうだ。
【マーシャル大学】でインディを冒険に駆り立てる事件が起きる
さてここからは、各ステージの雑感をプレイ映像と共にお伝えしていきたい。まずは、プロローグのマーシャル大学から。なお、プレイ映像は、全映像共通となるが、ネタバレになる要素がマスクされ、そのシーンが意図的に飛ばされており、連続的なプレイ映像ではない点に注意したい。実際には各シーンの最後にたどり着くまでに、解かなければならない謎があったり、カットシーンがあったりして、追加でかなりの時間を要するので、あくまで各シーンの雰囲気を掴む程度に留めて欲しい。
時代設定は1937年。1936年のナチスドイツを相手にインディが大暴れした「レイダース/失われたアーク<聖櫃>」と、1938年の再びナチスを相手に親子で聖杯を探す旅に出る「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」の狭間にあたる時期だ。
マーシャル大学で考古学の教授を務めるインディは、自室で寝落ちしていたところ、闇夜にガラスが割れる音で目を覚ます。怪しげな人影を追い、めちゃくちゃに荒らされた図書館の奥へ歩みを進めると、謎のラテン語を唱える未知の大男と遭遇。インディはミュージアムのポールを手に撃退しようと試みるがあえなくやられてしまう。
朝、図書館で目を覚ましたインディは、支援者のマーカスと共に彼が奪っていったものが何かを探っていく。ここが最初の謎解きになっており、ガラスの割れた中身のない陳列棚を確認しながら、その周囲に散らばっているお宝を1つずつ手に取り、元の場所に戻していく。これを繰り返すことで、失われたお宝がわかる。
奪われたお宝は、キャットマミー。しかしその理由がわからない。かくしてインディは、その謎を解き明かすため、ローマへ飛ぶことを決める。お馴染みのスーツケースにムチを詰め、新たな冒険に飛び立つ。
このマーシャル大学は、物語のプロローグかつチュートリアルになっており、謎の提示と遊び方のガイドがメイン。アドベンチャーポイントが貯まるオブジェクトは、わかりやすくふちどりされており、暗所でも見落とすことはない。巨漢とのバトルも、勝てない仕様になっており、倒されてもゲームは進行する。映像を見てもわかるように、グラフィックスは美しく、図書館は隅々まで細かく描かれている。常時1人称視点のゲーム展開に戸惑うが、インディらしい展開にワクワクさせられた。
動画
【バチカン】さっそくムチの使いこなしと丁寧なスニークアクションが求められる
インディが向かった先はバチカンにある古城 サンタンジェロ城。この向こうにあるパッセット・ディ・ボルゴに古い友人のアントニオが待っているという。この城には入り口はなく、多くの敵が潜んでいるが、ムチを駆使して城を突破せよ、というまさにインディらしい展開。
ここはスニークアクションがメインとなるステージ。ワインボトルを向こうに投げて監視を突破したり、ムチを使って壁をよじ登っていく。インディは家ぐらいなら簡単によじ登れるが、スタミナのパラメータが存在し、ずっと掴んだままではいられない。タイミング良くよじ登り、敵の監視を突破していかなければならない。敵がインディを見つけるとパラメータが上がり、それが上がりきると発見となり、襲いかかってくる。こうなると逃げるしか方法がなくなってしまう。
プレイ映像では、箒やモップを手に、監視役に殴りかかるインディの姿を見ることができるが、映像が右回りで敵と衝突しながら進んでいるのに対して、筆者は左回りで敵との遭遇を避けて目の前の家屋へと侵入を果たした。
家屋は各種部材が乱雑に置かれている部材置き場として使われているようで、身を隠しやすい構造。階下に降りるとマップがあり、これで目的地に向かうための準備が整った。マップは、物理的なアイテムで、確認するためには両手で広げる必要があるが、現在位置を矢印で示してくれるため、非常に便利だ。まずはマップを探す、というのが基本行動になりそうだ。
家屋を出ると、ナチスドイツと同盟を組むイタリア軍の兵士達がいた。後ろを向いてるので、そっと傍を通りぬけることも、タイミングを見計らってスパナで殴りかかることも可能だ。プレイ映像は、一貫して武闘派プレイで、繰り返しスパナやスコップでイタリア兵に殴りかかっているが、筆者はムチを使って高所に登り、見つからないように城の扉へと急いだ。
プレイ映像を見ていると、敵が休憩を取っている小部屋に、スキルを覚えられるアドベンチャーブックや現金、鍵などを見つけている。筆者はムチを使ってどんどん城壁を登っていったため、目的地まで比較的あっさりたどり着くことができたが、かなり多くのアドベンチャーブックを見逃しており、もう少し丁寧に探索すべきだったなと後悔した。ともあれ、スニークアクションと探索の楽しさを同時に味わえるステージだ。
【ギザ】インディ・ジョーンズのオープンワールド世界をたっぷり楽しめる
そして今回もっとも「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」の醍醐味を感じることができたのがギザだ。いわゆる“ギザの三大ピラミッド”が舞台になっており、ナチスドイツの支配下にある。インディは、失踪した姉を探すヒロイン ジーナと共に、エジプト ギザに侵入し、発掘現場に潜り込んでいく。
まずはギザの作業許可証を得るために、ブルーテントにいる友人に会い、その後、ギザの各地に点在する石碑を探していくことになる。石碑は4カ所に点在し、それぞれ発掘現場を探索する必要がある。各発掘現場にはそれぞれトラップが仕掛けられ、ムチやライターなどを駆使して石碑をひとつずつ探していく。
スタート地点の高台からは、ピラミッドが並ぶ壮大な光景が見下ろせると共に、ピラミッドやスフィンクスは近くまで寄ることができ、蒸気機関車や、労務に就く現地人の集落も複数あり、異文化との遭遇が楽しめる。集落にはコブラ使いや、ウードを弾く人などもいて観光気分で楽しんでしまった。細かいところまで良く出来ている。ちなみに、現場には発掘作業を行う現地人以外に、ナチス兵が巡回しており、むやみに出ていこうものなら、集団で襲われてしまうので注意したい。
このステージは、オープンワールドの構造になっている。ブルーのテントに向かえ、4つの石碑を集めろといった指示は出るものの、それを無視して探索を続け、サブクエストを楽しむっていう遊び方も可能だ。この探索の楽しさを増幅させてくれるギミックが写真撮影で、画面内に撮影する価値のあるものが含まれると、画面上部に撮影アイコンが出現する。この時にカメラを構え適切なフレームで撮影を行うと、アドベンチャーポイントが獲得できる。ギザでは、ピラミッドやスフィンクスといった有名どころのみならず、集落の何気ない風景や、ナチスの発掘現場でも出現するため、良い稼ぎになる。
それ以外にも集落では様々なフィールドワークに遭遇する。メインを進めているつもりで、気付かないうちにサブにはまり込んでいたなんてこともあり、このギザはかなりのボリュームがありそうだ。この「Fallout」や「The ElderScrolls」シリーズを彷彿とさせるオープンワールドRPG感は、賛否両論あると思う。インディはそういう寄り道をするキャラクターではないからだ。ただ、人助け、謎解きをすることで、理解が深まるし、新しい解法が見つかったりする。すべてが繋がっていると考えれば、寄り道している感じも減るのではないだろうか。
このギザで、効果的なアイテムがライターだ。これはギザの集落のひとつで手に入れることができ、暗い発掘現場を照らしてくれるだけでなく、草木を燃やして侵入路を確保したりなど大活躍してくれる。また衣装を変えることで、現地に溶け込むことも出来る。このギザ編の攻略は時間不足で途中までで終わったが、無数の解法が用意されていそうだ。
公開されたプレイ映像ではほぼカットされていたが、大小様々なカットシーンが用意されており、映画を彷彿とさせる濃厚なストーリーが展開される。ストーリーの全体像はまだわからないし、スコータイやヒマラヤなどすでに発表されている地域でどのような目的で向かうのかもわからないが、1つ1つの古代遺跡がひとつに繋がる(大いなる円環)という、インディらしいストーリー展開にはワクワクさせられる。メレーファイトとムチ裁きがいまひとつうまくいかなかったので、そこをしっかり鍛えて、ぜひストーリーを最後まで楽しみたいと思っている。12月の発売が非常に楽しみなAAAタイトルだ。
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