【特集】
【PS Plusクラシックスレビュー】PS「鉄拳2」
前作のラスボスが主人公! 三島平八はじめ魅力的なキャラ満載の3D格ゲー
2022年6月2日 00:00
- 【鉄拳2】
- プラットフォーム:プレイステーション
- 1996年3月29日発売
- 価格:5,800円(税別)
3D格闘ゲームというと真っ先に名前が挙がるのがセガの「バーチャファイター」だろう。1993年より稼働を開始した本作は登場するキャラクターたちがフルポリゴンで表現されており、本格的な3D格闘ゲームを実現した名作だ。個人的にもカクカクとしたポリゴンを感じられるデザインはシリーズの中でも最も好みの1本だ。
翌年、1994年にはテクスチャを使う事で表現力が向上し、よりリアルな人物の表情や衣装が再現できるようになり、フレームレートも向上したという続編「バーチャファイター2」がリリースされた。同年、同じくナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)からも3D格闘ゲームの新作がリリースされた。それが「鉄拳」だ。
「鉄拳」は同社初の3D格闘ゲーム。1994年以降も新作をリリースし続け、2015年には最新の「鉄拳7」がアーケード版で稼働開始、2019年に最新のバージョンアップ版「鉄拳7 FATED RETRIBUTION ROUND2」をリリースしている。今回紹介する「鉄拳2」は初代「鉄拳」のリリースから1年後にリリースされた続編だ。
6月2日にリニューアルされる有料サブスク「PS Plus」のプラン「プレミアム」では、「鉄拳2」がプレイできる。今回はこれに合わせて、改めて本作に触れた模様をお伝えしていきたい。
パロディ色強めのキャラクターたちが魅力!
「鉄拳」シリーズ最大の特徴はキャラクターのバリエーションの豊富さだ。「バーチャファイター」シリーズが堅実な3D格闘ゲームに見えるのに対して、少なくとも「鉄拳」、「鉄拳2」については、登場キャラクターたちがどれもぶっ飛んでいたのが非常に印象的だった。
そもそも主人公からしてなんか違う。「鉄拳」で登場した主人公の三島一八は、正義の味方や熱血主人公といった雰囲気ではなく、クールでダークヒーロー的な空気があり、目つきもどうも悪い。当時主流の格闘ゲームである、「ストリートファイター2」や「バーチャファイター2」の主人公がいずれも熱血系の主人公だったことへのアンチテーゼが感じられる。
そして「鉄拳」でラスボスを務めたのが一八の父である、三島平八。彼の風貌もまた、どう見てもまともな神経をしていなさそうな奇抜な髪型だ。両サイドの髪が天に向かって跳ね上がっており、ここだけ見るとアニメ「魔法使いサリー」に登場するサリーちゃんのパパそのものだが、その他の髪がどこかにいってしまっている。
そう書いている筆者もスキンヘッドだが、いっそ全部剃ってしまう方がスッキリするのになぜ両端を残した? そもそもなぜ両端だけそんなに生き生きとしている? と、髪については疑問を呈したくなる。ちなみに筆者の髪型も普段はスキンヘッドだが、手入れをさぼると平八のようなヘッドになりがちなので注意が必要ではある(関係ないけど)。
主人公とラスボス以外にもジャガーのマスクを被った覆面レスラーの「キング」(タイガーマスクかな?)、黄色いジャージが似合うアメリカ国籍の中国系移民でカンフー使い「マーシャル・ロウ」、見た目は人間ながらも実はロシアの軍事用ロボットである「ジャック」といったギャグやパロディ色が強いキャラクターたちなど、どれもクセのある奴らばかりだ。また、中ボスにクマを用意するなど、従来の格闘ゲームのイメージを根底から覆すチョイスにも驚愕した記憶が残っている。
ゲームシステムはパンチ2ボタン、キック2ボタンとシンプルな構成。ジャンプやガードはスティックで行なえるので、実に直感的に操作できる。さらに技のコマンドがスティックを前に入れてからボタンだったり、同じボタンの連打や、2つのボタンの組み合わせで発生するなど、シンプルな物が多く、これが非常に遊びやすかった印象だ。
当時主流の2D格闘ゲームの多くはスティック操作で複雑なコマンドを入力する必要があったが、「バーチャファイター」シリーズと「鉄拳」シリーズでは、技のコマンドが全体的にシンプルだったので、初心者でもとっつきやすい要素だったと言える。
こうしたユニークな特徴をさらに拡大し、より遊びやすくしたのが今回紹介する「鉄拳2」というわけだ。「2」になるとさらにおふざけ度は加速する。
先ず主人公とラスボスが丸ごと入れ替わり、まさかの三島平八が主人公だ。ストーリーはシンプルで、「1」のラストで三島一八に殺されたと思われていた平八が実は生きていて復讐を誓う、というもの。他のキャラクターたちも、新たに追加されたのが香港国際警察の刑事で拳法が得意な「レイ・ウーロン」だったりとパロディ要素は健在ながら、「風間準」のようにまじめそうなヒロインも追加されている。
個人的なお気に入りはオープニングだ。オープニングでは「1」から「2」に繋がる経緯をムービーで紹介しており、例えばジャックが戦場で戦うシーンや、マスクを脱いだキングが落ちぶれて酒浸りになっているシーン、そして「1」で優勝し、三島財閥を牛耳った成金モードの三島一八など、見所は満載だ。
20年ぶりのエンディング到達で三島平八の悪い笑顔を目撃
筆者の「鉄拳」シリーズのプレイ体験は「1」と「2」しかなく、またキャラクターは終始「ミシェール・チャン」の一択だった。理由はシンプルで、当時は女性キャラクターを使うのが大好きだったからだ。今回は久々のプレイですっかり感覚を忘れていることもあり、あえての主人公、三島平八でプレイしてみた。
前述の通り、コマンドがシンプルな事もあり、パンチとキックの位置が分かっていれば、何も見なくてもある程度楽しむことができる。パンチを連打したらうまい具合に連続でヒットした、とか、パンチとキックの同時押しで投げが決まるなど、忘れていた仕組みを少しずつ思い出していく感覚が心地よい。
「鉄拳2」では敵に攻撃をヒットさせて宙に浮いた状態になった場合でも当たり判定があり、浮いた状態の敵に連続で攻撃を与えて追加のダメージを与えられる。また、倒れた状態の敵に追い打ちすることでさらに体力を削れるので、ダウンさせた後も忙しい。
ただ、中盤くらいからはこうした単発攻撃だけでは敵が倒せなくなってくる。そこで必殺技を使うべく、色々と試していたのだが、ふとポーズボタンを押す事で必殺技コマンドが確認できた。
こうして必殺技をうまく駆使する事で、ラスボスの三島一八を無事撃破。さらに追加で登場するデビルカズヤに対しても、かろうじて勝利を飾る事ができ、20年振りくらいながらエンディングを見る事ができた。「1」のラストで一八から崖に放り投げられた平八が今度は息子一八の体を火山の火口に投げ入れる。さらには去り際には満面の笑みを浮かべるなど、やっぱり悪党感が半端ない。
他にも本作では各キャラクター毎に因縁の相手を用意し、それらを中ボスとして配置している。例えば吉光の中ボスは州光(くにみつ)という昔の仲間だったり、ジャックの中ボスはよりメカニカルな外観のプロトタイプ・ジャックだったり、キングの中ボスはアーマーキングだったりと、それぞれにゲーム本編では語られない裏設定も用意されているなど、単なる色物キャラクターでは終わらせずに掘り下げてあり、奥の深さを感じさせる。
今も現役稼働する「鉄拳」シリーズ初期の作品ということで、新作しか知らない人は1度遊んでみるのも面白そうだ。実際にプレイすると今の感覚と異なるところもあるかもしれないが、一方でシリーズの歴史を感じるのには最適な1本とも言える。
また、プレイステーション初期の頃に持っていた人は久しぶりにプレイしてこのいい意味でふざけた雰囲気を味わい、懐かしい気持ちを思い出してもらうのもよさそうだ。
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