2017年1月21日 00:00
セガゲームスより1月19日に発売予定のプレイステーション 4/PlayStation Vita用、死に抗うRPG「蒼き革命のヴァルキュリア」。
かつて3作品が発売された「戦場のヴァルキュリア」シリーズからイズムを引き継いだ「ヴァルキリア」プロジェクトの最新作であり、戦闘にはリアルタイム性とアクション操作を重視した新たなRPG作品となっている。本作のレビューをお伝えしていこう。
後の世で“大罪人”と呼ばれている者たちの真実を辿る、解放戦争の物語
物語の舞台となるのはヨーロッパをモチーフにした架空の国であり、その戦争の歴史。
ラグナイトと呼ばれる鉱石のエネルギーを使った魔法のような力「咒術(ジュジュツ)」から、やがて、そのエネルギーを燃料とする「咒工業(ジュコウギョウ)」が生まれ、中世から機械文明へと時代を塗り替えていく産業革命「蒼き革命」が起きた。
人々の暮らしは飛躍的に便利になったが、各国は資源であるラグナイトを巡って争い、その激しさを増していった。圧倒的な軍事力を誇り領土を広げるルーシ帝国と、それに与する列挙国に取り囲まれて、ユトランド王国は経済封鎖に追い込まれていた。
じわじわと貧困へと追い込まれていたユトランドは、ついにルーシ帝国への戦争に踏み切る。後に「解放戦争」と呼ばれることになるその歴史の影には、“大罪人”と呼ばれる5人の存在があった。
解放戦争から約100年後。首都から遠く離れた森深く、うち捨てられたようにある小さな墓標。そこに埋葬されているという大罪人について、1人の歴史学者と生徒が語り合っていた。生徒は、解放戦争の文献を紐解くうちに、大罪人が本当に罪を犯したのか疑問を持つようになり、歴史学者へと詰め寄る。
祖先から語り継がれてきたという“5人の大罪人の真実”が、歴史学者リシェールの口から語られていく。
本作はこのように、100年前にあった戦争の歴史を歴史学者リシェールの語りとともに辿っていくというストーリーテーリング手法を取っている。それはまるで歴史物のドラマのようであり、単純に主人公達だけでなく、その時代の背景や、人々の暮らし、経済や世論、さらには敵方の思想など、様々な角度からしっかりと描いているのが大きな魅力だ。
散りばめられているキーワードも惹き付ける魅力がある。後の世に“ユトランドを戦争へと駆り立てた5人の大罪人”と呼ばれることになる主人公「アムレート」と、その仲間である「スレイマン」、「バジル」、「フリート」、「バイオレット」は、アムレートはアンチ・ヴァルキュリア部隊「ヴァナルカンド」の隊長、スレイマンは政治の世界、バジルは経済界、フリートは世論を動かすコラムニスト、バイオレットは諜報活動員として、それぞれが得意とする分野で頭角を現し、“復讐”を果たすという目的のために暗躍する。
後に大罪人と呼ばれることになっているという歴史を前置いたうえで、アムレートたちの真実を追っていくという単純な勧善懲悪ではなく、謎も含んだアプローチはプレーヤーを引き込むものがある。
またそこには、アムレートたち部隊と行動をともにするユトランドの姫「オフィーリア」というヒロインの存在もあり、主人公アムレートたち大罪人にはどんな思惑や想いがあったのか、葛藤も描かれていく。
重厚かつ多角的に、この世界の戦争の歴史を描いているストーリーだけに、本作は非常にストーリーの比重が重い。基本的なゲームの流れとしては「イベントシーン」>「街などでの戦闘準備」>「ミッション」というものになるが、フルボイスで展開するイベントシーンは20分~30分を越えることがほとんどという、すさまじい構成をしている。
このイベントシーンの長さは、さすがに好みがわかれるところだろうか。シーンごと飛ばしてしまうスキップ機能以外に早送り的な機能がないのも、ちょっと辛いところ。
だが、プレイ序盤こそ、このイベントシーンの比重には戸惑うものの、それだけがっちりと見せてくれるだけに重厚な世界観もキャラクターの魅力などもしっかりと楽しめる。本作は声優陣も非常に豪華で、物語も前述のように力の入ったものなので、ゲーム全体としてもそうだが、じっくりと楽しみたいという人にオススメだ。
リアルタイムアクション操作で戦うバトルシステムには、随所に「ヴァルキュリア」プロジェクトならではの個性が
本作の戦闘は、「ヴァナルカンド」のメンバーから4人を選んで、戦場の制圧などミッションごとの目標を達成していくという、リアルタイムアクション操作のバトルとなっている(ミッションによっては2チーム8人が出撃するときもある)。
ミッションは、ストーリーミッションやフリーミッションなどを選んで出撃するという方式。ミッション中にはある程度の広さのあるマップがあって、そこには敵軍が布陣している。進行ルートを考え、敵に囲まれすぎたり、増援を呼ばれないようにしつつ目的達成を目指すというものだ。このあたり、「戦ヴァル」シリーズを思い出させるシミュレーションゲーム的な構成をしている。
ポイントになるのはアクション操作だ。近接武器による移動から、攻撃、回避、防御をアナログスティックやボタン操作でリアルタイムに行なっていく。攻撃のアクションのみ、キャラクターの顔アイコンの周りにある円状の行動ゲージが満タンにならないと行なえないという仕組みになっているが、その行動ゲージ待ちの間は、移動や回避・防御で敵の攻撃をしのいでいく。
シミュレーションゲーム的なマップ構成ながら、リアルタイムなアクション操作になっていることで、「戦ヴァル」シリーズとはまったく異なる手触りに変化しているのが本作の大きなポイント。また、バトルパレットを開いている間は時間が止まるので、その点はコマンド選択式RPGに近い。アクションとコマンドをうまく使い分けるゲームになっている。
近接攻撃以外にも、魔法的な存在であり攻撃・回復・補助など様々な種類のある「咒術」、銃やグレネードなどの「サブウェポン」も使用可能。
特にサブウェポンは、銃で敵兵士の頭など弱点を狙うことで大きなダメージを与えられるし、グレネードは密集している敵を一網打尽にできるなど、うまく使うと戦闘を有利に運べる。このあたりの要素にも「ヴァルキュリア」プロジェクトならではのものを感じさせる。
画面上部には「戦況ゲージ」があり、適した行動をとっていくほど自軍のゲージが伸びる。戦況が有利になればなるほど、行動ゲージの溜まりが速くなって連続して攻撃できるようになるので、そうなれば勢いに任せて残った敵を殲滅していける。
隊員のキャラクターには、攻撃力の高いアタッカー「突撃兵」、素早く移動や行動ができる「偵察兵」、回復や補助に特化した「支援兵」、敵を引きつける「装甲兵」の4つの兵科がある。部隊の4人をどういう構成にするのかもポイント。また、ミッション中には操作キャラクターを切り替えられるので、状況に応じてキャラを切り替え、それぞれの兵科の良さを活かしたプレイをするという楽しみかたもある。
敵の攻撃にやられてしまうと、そのキャラクターはその場に倒れてしまう。そういうときは倒れてから60カウント以内に別のキャラクターで駆けつけて救出すると復帰できる。だが、60カウントが過ぎてしまうと……「死亡=消失(ロスト)」してしまう(主要なキャラクターの場合はゲームオーバー)。死亡したキャラクターは当然ながら、2度と登場しない。その代わりに一般兵的な外見の隊員が補充される。倒れたキャラクターの救出を優先していればなかなか死亡にはならないとは思うのだが、あえてやりこみのひとつとして死亡シーンを見てみるというのもありと言えばあり。
ゲーム全体の難易度はというと、結構、力押しで乗り切れるミッションの多い印象だ。主人公アムレートを操作キャラクターにして近接攻撃をガンガン振って敵の数を減らすことを重視すればなんとかなるものが多い。
このあたりは、シミュレーション的な複雑さよりも、アクションゲーム的な爽快感を重視していると感じるものがあって、特に序盤から中盤にかけては、育成や強化の要素を意識せずとも問題ないぐらいにサクサクと進められるぐらいだ。
ただし、中盤以降にはキャラクターの強化を意識していくことになる。特に武器の強化は能力アップも兼ねているので重要だ。
武器の強化はキャラクターごとに異なる強化チャートのマスに手に入れたラグナイトを費やしていくという仕組みになっていて、各キャラクターごとに全て手動で行なっていくので結構な手間がかかる。そうしたこともあり、だいたいの人は主人公であるアムレートだけはとりあえず強化していくと思うのだが、ミッションによってはアムレート以外のキャラクターを操作するものもあって、それがまったく強化していないキャラクターだったりする場合、ミッションクリアがだいぶ厳しい状況になることもあるかもしれない。せめて、主要なキャラクターだけはある程度まんべんなく強化しておこう。
ミッションの難易度も、中盤以降、特にボス戦ではだいぶ高まっていく。とはいえ、自分の操作で倒れた仲間を救出すればなんとかしのげるということもあって、なかなかゲームオーバーにはならないシステムになってはいるのだが、レベル不足や強化不足だとこちらの攻撃ダメージが低く、なかなか敵を倒せないという状態になってしまう。
そうした状況が目立つようになってくると、「フリーミッションでレベルを上げて、ラグナイトも手に入れて武器の強化をしていかないとな……」といったように、プレーヤー側の意識も変わってくる。序盤こそは「アクション操作の力押しで進められるな」という印象だが、中盤以降は「キャラクターの強化とカスタマイズをしっかり行なった上で、アクション操作で戦うシミュレーションゲームなのかも」というように、ちょっとゲームの見え方も変わってくるかもしれない。
そうした見え方になってからが本作の本当の始まりと言えるかもしれず、そこからゲーム後半や、さらなるやりこみの道へと繋がっていく。
物語もゲームプレイもじっくりと遊びこむのに向いている、遊びごたえがっつりの新感覚タイトル
重厚な物語と、リアルタイムなアクション+コマンドバトルをひっさげた新たなRPG作品として登場した「ヴァルキリア」プロジェクトの最新作だが、非常に独特な手触りのゲームとなっている。
がっつりたっぷりと見せていく物語があり、戦闘では、序盤こそアクション操作の力押しで進められるものの、次第にキャラクターの強化や咒術のカスタマイズなど育成に時間を費やす比重が高まっていく。ある程度プレイしてそのあたりを理解すると、本作はじっくりとやりこむボリューミーでヘビーなゲームに見えてくる。実際のところストーリークリアだけなら30時間ほどになると思うが、フリーミッションなどもしっかりやりこむと、さらに多くのプレイ時間になっていく。
少々気になるのは、やはり遊びはじめの序盤の印象だろうか。イベントシーンを見る時間の長さと、序盤の力押しで進めてしまえるバトルの感触からは、アンバランスなものを感じてしまうかもしれない。だがそれは、中盤ぐらいから難易度が上がってきてシステムの理解度も進むと変わってくる。じっくりと腰を据えて、物語を楽しみ、やりこみもしていきたいという人にオススメだ。
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