ゲーミングノートPCレビュー「GT72VR 7RE Dominator Pro」

GT72VR 7RE Dominator Pro

Kaby Lakeモデル見参! GeForce GTX 1070&120Hz対応モニターで極上PCゲーミング

ジャンル:
  • ゲーミングPC
発売元:
  • MSI
開発元:
  • MSI
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
300,000円前後(税別)
発売日:
2017年1月6日

「GT72VR 7RE」

 MSIは1月6日より、ハイエンドゲーミングノートPCのラインナップ「GT」シリーズに“Kaby Lake”こと第7世代Coreプロセッサを搭載したモデルを投入する。Kaby Lakeは前世代のSkylakeに比べてコアあたりの性能が微増しているほか、内蔵GPUの性能が大きく向上していることが特徴だ。

 本稿で取り上げる「GT72VR 7RE Dominator Pro」は、CPUにIntel Core i7 7700HQ、GPUにNVIDIA GeForce GTX 1070を搭載した“ハイエンドの入り口”と言えるゾーンに属する製品だ。ラインナップとしては8月に投入された「GT72VR 6RE Dominator Pro」の直系の後継モデルということになり、ハードウェア的な違いはCPUがSkylake世代からKaby Lake世代に更新されたことだ。

 前モデルのTobiiアイトラッキング搭載タイプ「GT72VR 6RE Dominator Pro Tobii」については既にレビューをお届けしているとおり、ハイスペックなデスクトップPCと同等のGPUであるGeForce GTX 1070を搭載することにより驚異的なゲーム性能とVR性能を実現していた点に大きな特徴があった。

 本モデル「GT72VR 7RE Dominator Pro」では、CPUが新しい世代に刷新されたことでさらなるパフォーマンスの向上が期待できる。そのあたりを含めて細かく見ていこう。

Kaby Lake世代のCPUを搭載した正統進化型のモデル

外観は前世代のモデルと全く変わらない

 「GT72VR 7RE Dominator Pro」は、CPUにIntel Core i7-7700HQ、GPUにGeForce GTX 1070を搭載し、SSDとHDDのツインドライブ構成を採る17.3インチのノートPCだ。ディスプレイはノングレアタイプで解像度はフルHD(1,920x1,080)で、なおかつ最大120Hzのハイリフレッシュレート仕様となっている。

 今回試用したモデルの基本スペックは以下のとおり。


【「GT72VR 7RE Dominator Pro」スペック】
OS: Windows 10 Home
CPU: Intel Core i7 7700HQ (Kaby Lake)
GPU: NVIDIA GeForce GTX 1070
メモリー:DDR4-2400 SO-DIMM 8GBx2
ディスプレイ: 17.3インチ 1,920x1,080 / 120Hz
SSD: 256GB (M.2 SATA)
HDD: 1TB (SATA) 7200rpm
光学ドライブ: BD Writer (9.5mm)
接続端子: Type-C USB3.1 Gen2x1, USB3.0x6, RJ45x1,SDカードスロット、HDMI x1、Mini-DisplayPort x1
ACアダプター: 230W
本体重量: 約3.78kg(バッテリー含む)

ディスプレイは120Hz出力に対応
各種ゲームで120Hzのハイリフレッシュレートが利用できる

 CPUがCore i7 7700HQになったこと以外は、スペック的には前世代の「GT72VR 6RE Dominator Pro」と全く同等だ。本体形状や重量、各種接続端子の構成など全く同じで、純粋なCPUアップグレード版と言える。

 とはいえ、前回取り上げたTobiiアイトラッキング搭載タイプとは大きな違いがいくつかある。ひとつは、もちろんアイトラッキング機能がないことだが、もっと重要な点は、本モデルは最高120Hzのネイティブ出力が可能なハイリフレッシュレートタイプのディスプレイを搭載していることで、よりハードコアなゲーミングのために性能を活かせるようになっていることだ。

 スペック面で1つ留意することがあるとすれば、それはCPUの内蔵GPUについてだ。本製品ではディスプレイとGeForce GTX 1070が直結されている。このため、内蔵GPUを経由して映像を出力する一般的なノートPCとは異なり、基本的に内蔵GPUによるグラフィックス描画機能を利用することができない。つまり、本モデルではバッテリー駆動時等にオンボードGPUに切り替えて駆動時間を延ばすことができないということだ。消費電力の節約という点で弱点になるが、ゲーム性能やVR性能という点では常にフルパワーを出せることになる。

 実際、本製品をバッテリーのみで使用する場合、フル充電から連続使用できる時間は軽作業でも2~3時間程度、ゲームうやVR等の重めの処理を行なうと1時間かそれ以下でバッテリー切れを引き起こす。本体重量が3.78kgもある重量級ノートPCということで、頻繁に持ち出してちょこちょこと使用するようなモバイル用途は最初から考慮していない感じだ。実質的には「ある程度持ち運びが容易なデスクトップPC」として使用するシチュエーションが主となるが、そのぶんゲーム・VR性能は抜群である。

 その意味において、本製品が120Hzのハイリフレッシュレートディスプレイを搭載していることは非常に大きなポイントだと言える。ゲームの動作を圧倒的に滑らかにし、応答速度も高めてくれるハイリフレッシュレート性能は、いまやデスクトップ環境では当たり前であり、コアゲーミングにとって必須のものになってきているためだ。ハイエンドのゲーミングノートPCの使命が理想のゲーミング環境を1台で実現することにあるとすれば、本製品のスペックはまさにその通りの条件を満たすものだ。

本体寸法は428x294x58 (mm)。本体重量は3.78kgと重量級。排熱能力を重視したデザインになっていて、フル稼働時でもファン音がうるさくなることはなく、かつ本体の発熱も人肌レベルに抑えられている。ACアダプターは実測で1kg程度あり、フルセットで持ち歩くとおよそ5kg。あまり持ち歩くことなく擬似デスクトップ的に利用するシーンが主になるだろう

SteelSeries謹製のゲーミングキーボードを標準搭載
Dynaudioのスピーカーユニット
背面にはウーファーを装備し、低音もしっかり表現する

 本モデルならではの特徴について紹介してきたが、MSIのゲーミングノートPCとしての共通点についても触れておこう。まずはSteelSeries謹製のキーボードユニット。カスタマイズ可能なLEDライトを全キーに搭載し、暗所でも間違いのない操作を支援してくれる。また、Dynaudioのスピーカーユニット。背面にはウーファーも搭載されており、ノートPCとは思えないほど低音までしっかりとしたサウンドが楽しめる。

 また、ネットワークチップはゲームに強いKILLER製を使用し、帯域・遅延の最適化も可能だ。さらにキーボード左側にある4つの特殊ボタンでは、ディスプレイの即時オンオフ、冷却機構の最大出力化、「Xsplit Gamecaster」の起動、キーボードプロファイルの切り替え、といった操作を1ボタンで制御可能となっている。

 プリインストールアプリとしては、上述の各種機能へ簡単にアクセスできる「MSI DRAGON CENTER」を軸として、キーボードカスタマイズを行なう「SteelSeries Engine」、オーディオの高度なイコライザ機能およびゲームにおける音声位置の可視化機能をを提供するNahimic 2、ゲーム録画・配信の本格ツールであるXSplit Gamecasterなどが入っている。特にXSplit Gamecasterは1年間の無料ライセンス付きなので、ヘビーに使うなら1万円くらいオトクである。

 もちろん、GeForceのコンパニオンツールであるGeForce Experienceもプリインストールされているため、Share機能による動画の録画・配信機能等もアウトオブボックスで利用することができる。ここまでやるならSteam等の実質的にゲーマー必携となっているアプリ類もプリインストールしてくれればと思うが、まあそこはユーザーが何を遊ぶかによりけりなので、むしろ「余計なものが入っていない」ことを歓迎したい。

MSI Dragon Center
SteelSeries Engine
Nahimic 2
Xsplit Gamecaster

パフォーマンスはSkylake世代から微増。バッテリー動作時の性能もチェックしてみる

前モデルとの違いはCPU

 次にゲームのパフォーマンスについて見てみよう。本製品では前世代の「GT72VR 6RE」と同じくGPUはGeForce GTX 1070を搭載しているため、基本的な性能としては、デスクトップPCにおけるGTX 980搭載機をやや上回るほどの性能を持つことは変わらない。ほぼ全ての最新ゲームが最高画質設定で快適に動作し、VRもまず間違いなく余裕を持ってプレイできる性能だ。この高性能GPUによるインパクトについてはこれまで度々書いてきたので、今回は少し違った形の検証もしてみよう。

 まず定番の「3DMark」でのテストだが、前世代のSkylake世代CPU(i7 6700HQ)を搭載した「GT72VR 6RE Dominator Pro」では「Fire Strike」にて13,281、「Time Spy」にて5,143というスコアだった。それが本製品では、CPUがKaby Lake世代(Core i7 7700HQ)に更新されたことでわずかながら数字が向上している。具体的には以下の通り。

Fire Strike: 13,122 → 13,298
Time Spy: 5,143 → 5,200

 割合にして1~2%という、ほとんど誤差みたいな向上割合だが、有意な差ではある。特に各スコアの内訳を見ると、「Fire Strike」のPhisicsスコアではCPUスコアでは9,582→10,528、「Time Sply」のCPUスコアでは3,857→4,225と、それぞれ10%程度の向上が見られている。若干であるが確実に、トータルのパフォーマンスも向上していると見ていいだろう。

「Fire Strike」テスト結果はスコア13,298

「Time Sply」テスト結果はスコア5,200

VR性能を確かめられる「VRMark」
実際にステレオ映像を描画して試験する

 さらに、VRパフォーマンスを測るVRMarkもテストしてみた。前世代のマシンをテストした際にはまだリリースされていなかった新鋭のツールだ。このツールでの「Orange Room Benchmark」では、VRで必要となるステレオ描画を行なった際のパフォーマンスを計測し、Oculus Rift/HTC Vive推奨スペックを基準値5,000としたところからの相対的な性能を見ることができる。

 結果としては8,055というスコアが得られた。これはいわゆるVR-Readyなスペックを50%以上も上回る数字だ。これなら、各種VRアプリを標準以上の画質でプレイしたり、推奨スペック以上を要求するアプリを快適に利用することもできる。VRアプリ利用中の録画・配信も問題なしだ。これほどの環境がノートPCで得られるというのもすごい時代である。

VR Mark Orange Room Benchmarkテスト結果は8,055

バッテリー駆動時、フル稼働では1時間程度しかもたないが
「Dragon Center」のシステムチューナー
「Steam VR Performance Test」、バッテリー駆動時でもVRレディとなった

 上述のベンチマークは電源接続時のものだ。それではバッテリー駆動時についてはどうだろうか。VR-ReadyなノートPCを所有する動機として「出先でVRデモを行なう」という用途があるだろう。ネットカフェ等で電源が利用できる場所であればいいが、筆者の実体験としてそうでない場合も多い。バッテリー駆動時でもあるVR性能を発揮できるかどうかは、ノートPCの用途を広げる上で重要だ。

 ゲーミングノートPCの中にはバッテリー駆動時にCPU内蔵GPUの使用が強制され、ゲーム性能がほとんど得られなくなるものもあるが、本製品の場合は電源接続時であろうがバッテリー駆動時であろうが、使用されるGPUは常にGeForce GTX 1070である。このためパフォーマンス低下はないのではないかと思われてしまうのだが、実際のところは電源接続時とバッテリー駆動時では利用可能な電力量が変わり、バッテリー駆動時ではCPU/GPUともにフルパワーを出しにくくなる。

 実際に試してみると面白いことがわかった。バッテリー節約機能を手動ですべて解除し、電源管理設定でCPUパワーを100%出すようにした設定では、ゲーム性能が大幅に低下してVRも利用不可なレベルに落ちてしまうのだが、「Dragon Center」のシステムチューナーにて規定の設定となっている「ECO」を使用すると、パフォーマンス低下の度合いが抑えられ、ギリギリでVR性能を確保できたのだ。「Fire Strike」の結果を見てみる。

CPUフル稼働設定時:2,755 (VR Readyスペック 3,362 をやや下回る)
「ECO」モード設定時:3,638 (VR Readyスペック 3,362 をやや上回る)

 この差はどこから来ているかというと、CPUとGPUのパワー配分の違いだ。CPUをフル稼働させる設定にしていると、CPUスコアは電源接続時と変わらない水準が出る一方、GPUスコアは大幅に低下する。しかし「ECO」モードの設定では、CPUスコアが半減する変わりに、GPUスコアの低下が抑えられるのだ。

 つまり、MSI謹製のシステムチューナーにおける「ECO」モードでは、ゲーム性能を最大化するためにパワー配分をGPUに寄せているということだ。これによりバッテリー駆動時でもギリギリながらVR性能を確保することに成功している。SteamVR Performance Testでも、バッテリー駆動時でVRレディとの評価を得ることができた。この背景には、より少ない消費電力で性能を出せるKaby Lake世代のCPUを搭載したおかげの部分もあるに違いない。

バッテリー駆動、CPUフルパワー時。CPUスコアは高いがGPUスコアが大幅に低い
バッテリー駆動、「ECO」モード時。CPUスコアが低いがGPUスコアが高く、全体として高スコアに

120Hz対応ディスプレイを十二分に活かせる高性能

リフレッシュレートはデフォルトで120Hzに設定されている
「バトルフィールド1」冒頭のシーケンスでフレームレートを測った

 ここまでゲームとVRのパフォーマンスについて見てきたが、本製品は120Hzディスプレイを搭載するということで、ハイリフレッシュレートゲーミングにもその旨味がある。通常の60Hzを超えた滑らかでクイックなゲーム環境は、1度体験したらもう戻れないほどの威力だ。

 問題は最新ゲームで実際に120Hzを活かせるフレームレートが出るかどうかだが、その点でも、本製品では全く問題のない性能が実現されている。「バトルフィールド1」では、最高画質設定にて2分間のテストを行なったところ、最低113fps、最大121fps、平均119.364fpsという結果が出た。実際にはほぼ常時120fps張り付きで、目の前で爆発などの大きなアクションがあったときに一瞬だけ110fps程度まで下がる、という感じである。

 もうひとつテストした「Forza Horizon 3」では、最高設定では60fpsを割り込むシーンもあったが、このような場合でも、グラフィックス設定を多少下げるだけで90~100fps程度のパフォーマンスは簡単に得られるため、本製品ではあらゆるゲームで120Hzディスプレイの恩恵を受けることができる。

 とはいえ、さすがにバッテリー駆動時はフレームレートが大幅に低下する。バッテリー消耗を度外視してフルパワーを出す設定においても「バトルフィールド1」のフレームレートは40程度まで低下した。このようなゲームではCPU/GPUともに高い負荷がかかるため、バッテリー駆動時の影響が大きいらしい。このため、ハイリフレッシュレートのメリットを享受できるのは電源接続時に限られるということになる。疑似デスクトップとして使われるケースが多いであろう本製品にとっては些細なことではある。

 というわけで本製品「GT72VR 7RE Dominator Pro」は、それぞれ最新世代のCPUとGPUを搭載することで着実なパフォーマンスアップを果たしており、バッテリー駆動時においてもVR体験が可能なほどの余力を備えていることがわかった。最近のコアゲーミングでは必須となりつつあるハイリフレッシュレート環境というトレンドも抑えており、ゲーム・VRに活躍するメイン環境として申し分のないマシンに仕上がっている。かなりのコアゲーマーであってもデスクトップPCは不要のものになってしまいそうだ。