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【特別企画】台湾ゲームマーケットレポート(台中・高雄編)
台湾第2、第3の都市のゲーム市場を覗く。アーケードゲームにメダルゲーム、台北とは異なるガラパゴス的進化を遂げていた!!
(2013/3/15 00:00)
1月下旬から2月上旬にかけて行ってきた台湾取材の締めくくりとして(というには1カ月も間が空いてしまったが)、台湾で台北に次ぐ大都市として知られる台中と高雄に日帰り取材に行ってきた。
台湾は伝統的に、もっとも早いタイミングで現地法人を設立し、台湾展開を図ってきたSCEの“縄張り”として知られ、SCETがシェアの面で、頭ひとつふたつ飛び出ており、残りをMicrosoftと任天堂が分け合っているような状態になっている。しかし、それはあくまで台北だけで、台中、高雄はそうではないという。そればかりか、台北ではほとんど見られない大型のアミューズメント施設やメダルゲーム、カジノなどもあるという。
これまで台湾のゲームマーケットは、台北については過去に何度かお伝えしてきたが、台中と高雄についてはこれまでまとまった情報をお伝えしたことは無かった。台湾関係者によれば、台北とはかなり異なるゲームマーケットで、独自の進化を遂げており、台中、高雄を見なければ、台湾のゲームマーケットは見えてこないとも言われる。
アジアでは“南方特有のゆるさ”という言葉がよく使われるが、台湾でも同じ事が言えるようで、南方の都市は台北ほど各種規制が厳しくなく、その結果、台北とは異なる風景を生み出しているようだ。今回の取材ではそれを確かめに、台湾高速鉄道をフル活用して台中と高雄のゲームマーケットを視察してきたのでその模様をお届けしたい。
任天堂の台湾進出で賑わいを増す台北地下街
台中、高雄取材に先立ち、まずは予習として台北ゲームマーケットのメッカである台北地下街を覗いてみたので、まずはその模様からお伝えしよう。
台湾では、これまでSCEとMicrosoftの2社が現地法人による自社展開を行なっており、任天堂のみ代理店による展開だったが、2012年に任天堂が台湾に正式に進出し、Wiiやニンテンドー3DSの自社展開をスタートさせた。もっとも、代理店時代も、オーナーが古くから任天堂と繋がりがあることもあって、準現地法人のような扱いで厚遇され、中文ローカライズタイトルは存在していた。しかし、今回、100%自社展開に切り替えたことで、より多くのタイトルが中文化され、台北地下街のゲームショップも活況を呈していた。
ショップにおける、代理店による展開と自社展開のもっとも大きな違いは、自社展開ではポスターやチラシ、専用の陳列ボックス、試遊台など販促グッズが作られるため、売り場が一気に賑やかになることだ。台湾任天堂(Nintendo Phuten)は、この時期、ニンテンドー3DS XL(LL)をメインに、「マリオカート7」、「スーパーマリオ3Dランド」、「ゼルダの伝説 時のオカリナ3D」といった自社の大型タイトルを前面に押し出していた。とりわけ台北地下街では、台湾のアイドルグループを使った広告を頻繁に見かけることができ、代理店時代よりも存在感を示していた。訪れたタイミングも良かったのか、今回3つのプラットフォーマーの中ではもっとも目立っていたといっても過言ではない。
この状況は、さぞかし台湾のゲームファンも中文繁体字で任天堂のゲームを楽しむことができて嬉しいだろうと思いきや、現地のゲームファンに話を向けてみると、意外と万々歳というわけでもなく、複雑な心境だという。
というのは、台湾にはもともと任天堂のゲームファンが多く、彼らは並行輸入品でハードやソフトを購入し、日本語のままプレイするという遊び方で長年ゲームを楽しんでいるものの、台湾任天堂が販売している正規品は、リージョンロックが掛かっており、日本から入ってきた並行品が動作しないためだという。
つまり、海外から仕入れた並行品のハードでは、台湾の正規品のソフトが動作せず、その逆も然りというわけで、どちらのユーザーにとっても現状はあまり嬉しくないというわけだ。ショップでは今なお、正規品と並行品が、ハード、ソフトとも並べて販売されており、ライトユーザーにとってはわかりにくい状態になっている。
おそらく、他のリージョンでの展開方法を見ても、これから台湾任天堂がリージョンロックを解除することはないだろうから、台湾ユーザーの不満を解消するためには、ローカライズタイトルを増やすだけでなく、並行品に負けないスピードで展開する必要がある。いずれにしても時間が掛かる話で、当分はこの不満が解消されることはなさそうだ。こうしたカルチャライズの細かい部分を見ていくと、SCEはアジアにおいて任天堂の数年先を行っているという印象が強い。