ニュース

【特別企画】台湾ゲームマーケットレポート(台中・高雄編)

台中ゲームショップレポート 小規模ながらキッチリ整備された良質のゲームショップが目白押し

【台中ゲームショップレポート】小規模ながらキッチリ整備された良質のゲームショップが目白押し

台湾新幹線で台中へ。台湾新幹線は日本のテクノロジーが提供されているため、社内は日本の新幹線そのままだ
台中の街並み。台北と比較するとゆったりしている
台中の中心部にある電脳街エリア
訪れたショップのひとつ。詳しくは後述するが、台中と高雄は、Microsoftの営業力が強い

 さて、それでは本題の台中・高雄編をお届けしたい。まず台中は、台湾島、いわゆる“フォルモサ”の中ほどに位置する台湾第3位の大都市。台湾高速鉄道を使って行くのが一般的で、始発の台北駅からわずか50分ほどで到着してしまう。東海道新幹線でいうところの、東京から熱海ぐらい。駅弁を食べそびれるほどの近さである。

 台中は、台北から距離が近いだけあって気候はほとんど変わらないが、街の風景はずいぶん異なっていた。道路の道幅が台北よりゆったりしており、それでいて人の数が少ない。台湾名物の原付バイクも控えめで、台北ほどごみごみしておらず、かなり過ごしやすい。心なしか公園やオブジェの類いも多い雰囲気があり、文化的な香りがした。

 実際、台中は、近年、老後を過ごす場所として台湾人に好まれ、それ目当てのマンションやショッピング施設などの建設が盛んで、ちょっとしたバブル景気に沸いている。この点、あらゆる街路を低層のショップハウスが埋め尽くし、新規の大型建設が発生しにくい台北とは対照的だ。聞くところによれば台中に国際空港を建設する計画も進行中ということで、将来的には台北と並んで存在感を示す都市のひとつになるかもしれない。

 さて、お目当ての台中の電脳街は街の中心部にあった。台北の光華商場のように一箇所に集まっており、台北にもあるITモールNOVAをはじめ、大小のモールがあり、台北のような1階が店舗、2階が住居、あるいは倉庫といったショップハウスタイプのテナントショップも目立っていた。その中にゲームショップもいくつか見かけることができた。

 ゲームショップに何店舗か入ってみて印象的だったのは、とにかく中古ソフトの取り扱いが多いことだ。販売するだけでなく、買い取りも積極的に行なっており、中古品だけを集めたセールの棚もあるなど、台中だけで中古のエコシステムが完成している様子が窺えた。中には独自の会員システムを導入している店舗もあり、いかに優良な顧客を抱え込み、幸せのスパイラルを拡大していくかに腐心している様子が伝わってきた。頻繁に価格が更新された買い取りリストが掲示されているところなどは、一昔前の日本のゲームショップを彷彿とさせる。

 取り扱っている商品は、正規品、並行品があまり区別されずに置かれており、日本からの並行で台湾未発売のWii Uのハード、ソフトもたっぷり入っていた。その一方で、海賊版用のハード改造や、コピーソフトなどはまったく見かけず、未発売タイトルのチラシやポスターが至る所に貼られるなど、メーカーの営業が行き届いている。目立っていたのは、プラットフォーマーではMicrosoft、サードパーティーではバンダイナムコゲームス、コーエーテクモゲームス、そして2Kといったところだろうか。サードパーティーについては、いずれもプラットフォーマー流通ではなく、自社流通でゲームを販売しているメーカーばかりだ。

 今回台中でリサーチしたショップの会員システムは、まず500NT$(約1,500円)払ってVIP会員になる。VIP会員はゲームソフト1本50NT$(約150円)、ハード1台30NT$(約90円)オフで購入でき、年間で1万NT$以上(約30,000円)もしくは10本以上購入することで、翌年度、無料でVIP会員になれる仕組み。日本にもある一定以上購入するとお得になる仕組みだが、特徴的なのは、対象となるゲームソフトは新品、中古を問わないところだ。このため、1本当たりの値引き額は小さいものの、もともと値引きされている中古だと地味に効いてくる。

 余談だが、新興市場のゲームプラットフォームの展開はいくつかのフェイズに分けることができる。まずはプラットフォーマーがゲームプラットフォームと1stパーティータイトルをひっさげて市場参入を果たす。次のフェイズとして、ゲームプラットフォームがゲームファンに認知されたタイミングで、プラットフォーマーの流通網を使ってサードパーティーがゲームタイトルを販売する。そして最後のフェイズとして、サードパーティー独自で流通網を確保し、自社展開するようになる。大別してこの3つの流れになる。台湾はその意味ではすでに最終段階まで来ているということになる。

 なぜこのような流れになるかというと、単純な話で、サードパーティーは不要なリスクを取りたくないからだ。普及していないプラットフォームに対して、自社で流通網を確保し、自社で展開するのはリスクが高すぎる。だから、まずはプラットフォーマーにリスクを預けた状態からスタートし、ゲームプラットフォームが普及してきて、ゲームソフトの販売数がある程度見えてきた段階で、今度は利益を極大化するために、しっかり自社でリスクを取って、利益率の高い自社パブリッシングに切り替えるわけだ。地方都市に、サードパーティーの営業部隊の存在が見え隠れするというのは、それだけ市場が正常に育ち、正常に機能している証左というわけだ。

 ちなみに台湾ではコンシューマーゲームには独自のレーティングシステムが導入されている。日本のCEROとほぼ同じ仕組みだと思えばいいが、アダルト表現に関しては日本より若干厳しいなど、いくつかの違いがある。中古品や並行品はレーティングなしで販売されているのかと思いきや、日本からの中古品や並行品はCEROのレーティングに準じて台湾のレーティングマークのシールを貼って販売していた。

 つまり、台湾のゲームショップでは、中古品や並行品もまた、正規の販売物のひとつであり、任天堂のリージョンコントロールの施策は、台湾においてはあまりうまく機能していない印象を受けた。ちなみにPS3やXbox 360は原則としてプラットフォーマーサイドでリージョンロックは掛けておらず(ソフトウェアメーカーで独自でロックを掛けているものはある)、正規品、並行品共に動作するようになっている。これは正規参入を果たす前に、並行品を購入したアーリーアダプターに対する配慮であり、任天堂に関しては、100%正規品の市場を育てるという大戦略を重視するあまり、施策があまり実情と噛み合っていないという印象が強い。このあたり、今後任天堂がどのように実情と馴染ませていくのかは注目されるところだ。

【台中のITモール】
台中のITモールは、台北で展開している大手の支店が多かった。品揃えは台北とそれほど違いは感じられなかった。強いて言えば、ボトル単位で販売しているサードパーティー製のプリンターインクやドライブレコーダーなどが目立っていたか

【台中のゲームショップ】
台中のゲームショップは、1店あたりの規模はそれほど大きくないものの、ポスターや試遊台などがしっかり整備され、熱意が感じられる店舗が多かった。とりわけ、バンダイナムコゲームスやコーエーテクモゲームス、カプコンなどサードパーティーがしっかり営業をかけていたのが印象的だった。1点だけ、SCETが営業を担当してるスクウェア・エニックスは、2012年1月に発売された「FFXIII-2」の大型ポップがそのままになっていた

(中村聖司)