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【特報】過去シリーズから探る「マフィア III」の魅力

伝説を作ったシリーズ1作目「マフィア」はどんなゲームだったか

「マフィア III」

10月27日発売予定

価格:
7,900円(税別、パッケージ版)
7,484円より(税込、ダウンロード版)

 2Kが10月27日に発売を予定している「マフィア III(MAFIA III)」。ベトナム帰還兵リンカーン・クレイを主人公に、ニューボルドーという街を舞台に彼の復讐と、マフィアとして力をつけていく物語を描くクライムアクションだ。

 現在公開されている情報は前回の特報でまとめたが、今回、弊誌ではあえて過去のシリーズを紹介することで、「マフィア III」への期待を盛り上げていきたい。なぜならば、「マフィア」シリーズは独特の魅力、雰囲気を持った作品であり、過去作からそれは連綿と受け継がれている。そしてその魅力を取り出すことで、「マフィア III」への期待がグッと高まるからだ。

 そしてもちろん、筆者自身がその独特の“味”が大好きだからだ。今回紹介するシリーズ1作目の「マフィア(Mafia: The City of Lost Heaven)」は、2002年(日本語版は2003年)に発売された作品であり、現在の視点から見れば荒削りなところもあるが、その魅力は多くのユーザーの心を捉えた。筆者もこの作品で一気にシリーズのファンになってしまった。本作で提示された要素がどのように「マフィア III」で活かされていくだろうか? 今回改めてWindows版をプレイして、その魅力を取り上げていきたい。

1930年代、ノスタルジーに満ちた魅力的な“時代”の描写

 「マフィア」は北米では2002年にWindows向けに発売されたクライムアクションである。北米ではその後、プレイステーション 2版とXbox版が発売されている。日本ではズーからWindows版が発売された。その独特の雰囲気と高いストーリーは日本のPCユーザーにも評価された。残念ながら現在は入手困難な状況だ。

ゲーム冒頭、主人公トミーは衝撃の告白を始める。彼は仲間を裏切るというのだ
マフィアの2人がクルマに乗り込んできて、銃を突きつけられる。これがすべての始まりだった
現在の価値観から見るとグラフィックスはレガシーだが、その雰囲気は魅力的だ
レースに出場する羽目に。当時の車の感じが楽しい

 「マフィア」は1930年代のアメリカの都市「ロストヘイブン」を舞台にしている。ゲームは1人の刑事・ノーマンがレストランで待ち合わせをしているところから始まる。底に現われた男が、本作の主人公トミーだ。トミーは刑事であるノーマンをこの場所に呼び出したのだ。

 トミーは自分がマフィアの重要な位置にいることを語り、今はボスの「ドン・サリエリ」に命を狙われていること、そして彼の悪事などをすべて証言する代わりに、トミーと彼の家族を保護して欲しいと言ってくる。そしてトミーは自分のことを語り始める。「僕は元々、平凡なタクシーの運転手だったんだ……」。

 トミーは平凡なタクシーの運転手だった。しかしいきなりマフィアの抗争に巻き込まれる。車の事故の音がすぐ近くで起きたかと思うと、そこから2人の拳銃を持った男が現われ、トミーに銃を突きつけてきたのだ! 「おい、運転手、早く出せ! とにかく飛ばせ!」脅されるままトミーはアクセルを踏み込む。それがトミーのマフィアへのきっかけとなった。彼はこのことをきっかけにマフィアのドン・サリエリと出会い、敵対組織に命を狙われ、保護を求めマフィアの一員となったのだ……。

 「マフィア」は当時、「Grand Theft Auto III」により1大ブームとなったオープンワールドアクションの1つともいえる。大きな街を3D空間として表現し、その街の様々な場所で物語を描き出すという手法は、現在にまで繋がる流れを作り出した。その中で幾百の作品が生まれたが、「マフィア」のように現在までそのシリーズ最新作が生まれるほどに多くの人の心をつかんだ作品は多くない。

 「マフィア」が他のオープンワールドアクションに比べ優れているところは、ストーリーと、「時代の再現性」である。1930年代、第2次世界大戦前というと暗いイメージを持ちがちだが、アメリカでは工業化が加速し、繁栄を迎えていた。自動車が急速に普及し、トミーのような“タクシーの運転手”の様な最先端の職業も生まれてくるのである。

 「マフィア」はこの世界を見事に、情感豊かに再現している。劇場などが並ぶ繁華街や、華やかで豪奢なホテル、お堅い行政区域、治安の悪い低所得者地域、怪しいチャイナタウンなどロストヘイブンには様々な区画がある。郊外には広大な畑が広がっていていて、こちらに行くエピソードもある。まるで1930年代のテーマパークを見ているかのような雰囲気が楽しい。

 そしてこれらの風景を進んでいくのは当時の車だ。1930年代は車文化が一気に花開いた時代であった。ゲームでももちろんきちんとこの時代の大衆車や高級車があって、それらを自分のものにできるサブミッションも用意されている。現代の車と比べものにならない、加速のにぶい、安定性の悪い操作感が、当時の車を運転しているような独特な感覚をもたらす。対向車のクラクションも現代のものとは違う。さらにこの時代に生まれたレーシングカーに乗ってレースを繰り広げることもできるのだ。

 そしてゲームを彩るのはこの時代の独特のBGMだ。本作では地域によってBGMが変化する。「Belleville」、「The Mooche」、「Chinatown」など当時のジャズやブルースで雰囲気を一層盛り上げてくれる。車以外にも、路面電車、高架鉄道、跳ね上げ式の橋を通る貨物船など乗り物も風情たっぷりだ。本当にフィールドを車で流しているだけでも旅情気分に浸れる。この情感豊かな世界で、プレーヤーは様々なミッションに挑戦していくのである。

【ロストヘイブンを走る】
場所により異なる街並み、路面電車や、跳ね上げ式の橋、華やかな街から貧民街などロストヘイブンには様々な地域があり、多彩なドラマが待っている

なぜ彼は友人を、ボスを裏切る道を選んだか? プレーヤーを引きこむストーリー

 「マフィア」のもう1つの大きな魅力がストーリーである。主人公トミーはゲームのスタート時、「足を洗う」ことを決心している。そう、「マフィア」は、“トミーがどうしてマフィアの世界から決別することを決めたのか”を探っていく物語なのだ。

ドン・サリエリ。頼もしいボスだが、自分を裏切った者には容赦しない
ポーリーは気のいい男だが、時にこちらをびっくりさせるような冷酷な顔をする
時にはロマンスも……

 トミーはサリエリの部下を助けたことで組織に迎え入れられる。ロストヘイブンは、警察だけでは解決できないゴタゴタが多く、サリエリは周囲からみかじめ料を受け取って他の勢力から住人を保護している。トミーは様々なミッションを成功させていくことで、頭角を現わしていく。

 トミーは最初に出会ったマフィアの若手ポーリーとサムとつるんで仕事をしていく。彼らは共に危機を乗り越え、信頼を強めていく。しかし時に見せるポーリーの冷酷さや、任務の凄惨さに悩むこともある。そしてトミーの手はどんどん犠牲者達の血で赤く染まっていく……。

 「マフィア」は“現在のゲームの感覚”から言えばバランスは荒削りで、特に戦闘は運の要素も絡まないとクリアが難しい部分がある。ゲームのボリュームそのものも大きくはないが、そのぶんエピソードは厳選されており、マフィアの恐ろしい一面、そしてトミーの葛藤と、変化していく仲間達との関わりが描かれていく。プレーヤーはトミーの「究極の決断」は知っていても、それに至るまでの彼のことは知らない。エピソードを重ねていくことで、彼の心情を理解していくこととなる。

 筆者は発売当時、本作をプレイし、1本の映画を見ているような演出、悲劇へ向かっていくストーリーにしびれた。友人となった仲間達、自分を目にかけてくれたボス、トミーはどうして彼らを裏切ることになったのか? 筆者は10年たった今でも特にラストシーンが心に残っている。のどかで楽しい街のドライブと、悲劇に向かっていくやるせないストーリー、この2つの魅力は筆者にとって「マフィア」というゲーム、そしてシリーズを特別なものにしているのだ。

 今回、あえて10年以上前のシリーズ1作目を取り上げてみた。現在本作をプレイするのは難しい現状があるが、本作のエッセンスは確実に「マフィア III」に活かされている。マフィアというテーマをどう描くか、街と時代をどう描くか、そこは本作をプレイしていなくてもきちんとプレーヤーの心に刻み込まれると思う。本稿を読んでもらって、「マフィア III」への期待を高めてくれれば幸いだ。

【激しい戦い】
サリエリのバーには彼らをバックアップする人物もいる
ミッションはドンドン血なまぐさく、凄惨なものになっていく