インタビュー
StanSmith氏による“スマートなフラッグシップ”「G633」インプレッション
「これまでのゲーミングヘッドセットの中ではダントツに良い!」
(2015/8/27 17:00)
米Logitechが8月26日に発表した有線ゲーミングヘッドセットのフラッグシップモデル「G633」。2013年5月にリリースされた現行のハイエンドゲーミングヘッドセット「G35r」の後継モデルであり、実に2年半ぶりのラインナップ更新となる。
米国オレゴン州ポートランドの州境にあるキャマスのオーディオラボで実施されたプレスツアーでは、この「G633」と、日本未発売の無線7.1chモデル「G930」の後継となる「G933」がお披露目され、それぞれ発売前に体験することができたが、ロジクール GブランドアンバサダーのStanSmith氏は、すでに実戦投入しているという。ヘッドセットの良し悪しは言葉で説明するのが難しいだけに、実体験者の意見は非常に貴重だ。今回は本モデルの発表に合わせてStanSmith氏に「G633」の使い心地について聞いてみた。
多彩なゲーミングヘッドセット遍歴を持つStanSmith氏のインプレッション
StanSmith氏は、プロゲーマー、そしてロジクールGブランドアンバサダーとしてこれまで様々なシーンでゲーミングデバイスを使ってきた経験を持つが、マウスやキーボードについてはこれまでに様々なところでその遍歴が語られているものの、ゲーミングヘッドセットについてはどうなのだろうか。
「以前所属していたチームが『ボイスチャットに甘えるな、メンバーが何を考えているのか想像しながら行動しろ』というポリシーだったので、実はヘッドセットはそれほど多くは使っていないのですが、ダーマポイントの『DRTCHD33BK』、Steel Seriesの『7H』、ロジクールでは『G35r』、『G430』などを使ってきました」(StanSmith氏、以下同)
現在StanSmith氏は、e-Sports大会の解説や、ロジクールGブランドアンバサダーとしての活動が多く、プロゲーマーとして大会に参加する機会は減っているというが、大会参加時のデバイスを尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「オフライン大会では、会場がうるさく、7.1chの効果も得られにくいので、ロジクールのカナル式イヤフォンUE900sをメインに、G430を被せる形で使っています」という。これにより、G430のイヤーカップで防音しながらUE900sでしっかり音を聞き取りつつ、マイクはG430を使う、というプロらしい贅沢仕様だ。それならイヤフォンとスタンドマイクでも良さそうな気もするが、G430による防音効果が大きいのと、スタンドマイクはキーボードの打鍵音などのノイズも拾ってしまうため使いにくいのだという。
今後は、自宅やネットカフェなど、ある程度静穏性が保たれる環境では「G633」のみ、e-Sports大会などヘビーな環境では「G633」+「UE900s」になるのではないかと語ってくれた。こうしたヘッドセット遍歴のStanSmith氏に、今回発表された「G633」について聞いたところ、元「G35r」ユーザーとして、ストレートな意見を寄せてくれた。
「『G35r』は重かったんですけど、少し軽くなり、そしてかなりカッコ良くなりました。これなら通常のヘッドフォンとしても使えますし、ゲームだけでなく、音楽を聴くのにも使えると思います。全体的な使い勝手も向上していて、ボタンの位置が変わって押し間違えが減りましたし、ボリューム操作もしやすくなりました。新しいLGS(Logicool Gaming Software)を使ってイコライザーを切り替えたり、RGBカラーを設定したり。RGBカラーは、対応しているマウスとキーボードと光るタイミングを同期することもできるんです。ヘッドセットは使ってる本人は見えないんですけど(笑)、全部光ると嬉しいし、点滅させるとカッコイイですよね」。
デザインについてはどのあたりが気に入っているのだろうか。
「実は、去年見たときの初期デザインは丸かったんですが、最終的にベストセラーの『G35r』の後継モデルらしいデザインになり、最高のヘッドセットになりました。イヤーカップが丸いと耳が接触して痛くなりますが、長方形だと耳がスポッと入って、7.1chサウンドの迫力がダイレクトに感じられます。実は四角いケースも格好いいんですよ」。
ちなみに「G35r」ではボタンが配置されていたイヤーカップ表面は、カパッと外せるようになっている。外すと内部構造が覗けるスケルトン構造になっているが、用途が今ひとつよくわからない。これを外すことで、RGBイルミネーションがより派手になったりするのだろうか?
「いえ。これはゲームとコラボレーションするためのギミックで、ゲームのロゴなどをデザインしたパネルを装着できるようにしているみたいなんです」と教えてくれた。
気になる音については、「一言で言って綺麗になりました。『G35r』は若干篭もる感じがあって、圧迫感というか、小さな部屋でゲームをしている感じがあったんですが、『G633』は大きなスタジオでプレイしている感じで、周りから音を囲んでくれる感じ」と独特の表現で語り、マイクについては自分自身ではわからないため、「LORD of VERMILION ARENA」のマルチプレイなどで、「俺の声どう?」と仲間にさりげなくヒアリングしたところ、特に違った反応はなく、従来通り綺麗に聞こえ、指向性が強くなった印象があるという。
余談だが、筆者は「G35r」のひとつ前のモデルとなる「G35」を長年にわたってずっと使っていた。まさについこの間まで使っていて、イヤーカップの合皮部分がポロポロ剥がれてゴミが出てしまうのが不満だった。このため「G633」はついにメッシュになったのが個人的には嬉しいポイントだったが、StanSmith氏はどう捉えているのだろうか?
「そうなんですよね。僕はもう『G230』、『G430』とメッシュ採用モデルばかり使っていますが、メッシュは蒸れにくく、臭くなりません(笑)。熱もこもりにくいのでプレイに没頭できます。メッシュは構造上、外の音を拾いやすいんですが、最近はe-Sports大会のプレイ環境も良くなっているので、特に問題にはならないと思います」と教えてくれた。
そしてイヤーカップ表面からサイドに移動したGキーを始めとした各種ボタン類。こちらはどう評価しているのだろうか?
「ヘッドセットを着脱する際に押し間違えることがなくなりました。Gキーについては、僕はカスタマイズして使うタイプではなく、イコライザーやマイクミュートなど標準のプリセットでそのまま使っていますが、実はボタン毎に向きが違っていて、その角度の違いでどのボタンなのかがわかるようになっています。ボリューム調整も使いやすくなりましたし、『G430』だとサウンドコントロールがケーブル上のボックスでやるので、その重量で耳が引っ張られる感じがあるのですが、『G633』はそれもないので、とても使いやすいです」とユーザーならではの細かい指摘をしてくれた。
最後に「約20,000円という価格設定はゲーミングヘッドセットとしては高いのではないか?」と少し意地悪な質問をしてみた。しかし、StanSmith氏は、これについては明確な答えを持っていた。
「ロジクールは技術に凄いお金を掛けています。ライバルメーカーのヘッドセットにもカッコイイのは幾らでもありますが、カッコイイ上に、技術にもこだわっているのがロジクールの良いところで、たとえば、マウスなら、ロジクールGブランドアンバサダーになる前に、RazerのDeathAdderなどを使っていたとき、もうマウスの進化は終わって、誰も使わないDPIをどんどん上げていくだけなんだろうなと思っていたんですが、ロジクールのGシリーズは、クリックのバネを変えたり、高速移動に対応させたり、技術の進化でマウスを進化させてきました。『G633』も同じだと思います。“スマートなフラッグシップ”という感じで、これまで試したゲーミングヘッドセットの中ではダントツに良いです。音は聞いてみないと分からないのでぜひ試して貰いたいですね」と語ってくれた。
StanSmith氏は、PCゲーマーへのメッセージを寄せてくれた。
「ゲームにとってサウンドは良い体験をさせてくれる大事な素材で、ゲーミングデバイスというとキーボードやマウスから入ると思うんですが、耳から入って音を楽しむのも大事だと思います。コアなゲーマーだけでなく、ゲームを楽しむ多くの人に触って貰いたいです」