インタビュー
「G633」、「G933」マーケティング担当Doug Sharp氏インタビュー
Logitechの新型ハイエンドヘッドセットの誕生秘話と未来の展望を聞く
(2015/8/29 01:45)
Logitechプレスツアー最後のレポートは、「G633」、「G933」のマーケティングを担当したLogitechのDoug Sharp氏(Global Product Marketing Manager Gaming)へのインタビューをお届けしたい。「G633」、「G933」はどのような経緯で誕生したゲーミングヘッドセットなのか、なぜ有線と無線モデルを同時にリリースするのかなど、限られた時間の中で率直な疑問をぶつけてみたのでその模様とお届けしたい。
「G633」、「G933」誕生経緯について。ナンバリングの意外な法則
――「G633」、「G933」の企画コンセプトを教えて欲しい。
Sharp氏: Logitechは「G35r」や「G930」を成功させることができたが、我々としては音楽や映画も楽しめる、さらにより良いゲーミングヘッドセットを求めていた。「G633」、「G933」は、新しいコンセプトの元、独自開発した「PRO-Gオーディオドライバー」を搭載した最初の製品となる。
もうひとつは、インスピレーションをかき立てるデザイン。優れたデザインのギアを使うだけでゲーマーは気分が高揚する。そういう部分をとても大切にした。
――なぜ有線モデルと無線モデルを同時に発売するのか?
Sharp氏: 多様なゲーマーに対して選択肢を用意したかったからだ。ゲーマーにはワイヤレスが嫌いな人がいれば、これからはワイヤレスという人もいる。両方の意見を取り入れて、姉妹モデルにしたんだ。
――ただ、機能としては「G933」のほうが優れており、実質的に「G633」の上位モデルという扱いになっている。Logitechとしては、ゲーミングモデルもワイヤレスに切り替えたいという想いがある?
Sharp氏: 個人的な意見としてはワイヤレスが大好きだ。素晴らしいのでひとりでも多くのゲーマーに使って欲しいと考えているのは事実だ。しかし、その一方で一部のゲーマーは心理的なバリアがあり、ワイヤードがいいという人もいるのも確かだ。「G933」と「G633」はまったく同じクオリティになっているが、そう考えていない人もいるので、シリーズを通じてそうした偏見を無くしていきたいと考えている。
――ナンバリングについて教えて欲しい。「G933」は「G930」の後継とわかるが、「G35r」の後継がなぜ「G633」になるのか?
Sharp氏: まずナンバリングの法則を解説すると、3桁目の数字はクオリティを意味している。2桁目はプロダクトのカテゴリー。3はヘッドセット、0はマウスという感じだ。そして1桁目はバージョン。「G35」の5は5世代目を意味している。「G633」は6のクオリティ、ヘッドセット、3世代目という意味になる。
――なるほど! 初めて知った。英語のタイトルには、Artemis Spectrumとあるが、このサブタイトルに込められた意味とは何か?
Sharp氏: Artemisはハンターの神から取ったネーミングで、ゲーミングで勝つという願いを込めている。Spectrumはそのまま7色のスペクトルのことで、RGBカラーを表している。
――RGBカラーは非常にユニークな機能だが、ヘッドセットにRGBカラーを採用した理由を教えて欲しい。
Sharp氏: LogitechではこれまでにマウスとキーボードにRGBカラーを採用している。ヘッドセットも対応することで1つのエコシステムを構築したいと考えたんだ。自分で楽しむだけでなく、チームメイトや対戦相手に対するメッセージにもなると。一例がe-Sportsだ。自分の行動やHPをライトで示すことで、今の状況や自分が死んだことなどを仲間にに伝えることができる。
――ただ、RGBカラーに対応したゲームはそれほど多くないと思うが、今後新たに対応するタイトルや、どのようにして増やしていくのか教えて欲しい。
Sharp氏: 最近対応したタイトルは「Grand Theft Auto V」だ。パトカーに追われる際、ライトフラッシングが発生する。そのほかにもストラテジーゲームの「SMITE」などがある。ほかにも色々あるが、まだ言えない(笑)
――ヘッドセットのRGBカラーは、自分では見えないというところが非常におもしろいと思う(笑)
Sharp氏: パッションの部分が大きいが(笑)、キーボードやマウスも普段見ないが、ふと目を落とすと光っているとカッコイイ。そういうエモーショナルな部分を大切にしている。気分を向上させて勝ちに行って欲しい。
――「G633」、「G933」の特徴は「PRO-Gサウンドドライバー」にあると思うが、これは開発に苦労したのか?
Sharp氏: 「PRO-Gサウンドドライバー」は、設計を手がけたトレーシーの素晴らしいアイデアから始まっていて、開発は1年ぐらいで、開発そのものはそれほど難しくなかったが、筐体に納めることやチューニングに時間が掛かった。
――LogitechにはピュアオーディオブランドとしてUEシリーズがあるが、今回発表された2つのモデルは、それらと比較してヘッドフォンとしてどの程度のグレードにあると考えていいのか?
Sharp氏: ……鋭い質問だ(笑)。UEにも友達が沢山いるのであまり比較したくないが、今回のモデルには、UEにも搭載していない新しいオーディオドライバーを搭載しているので、個人的には「G」シリーズのほうが良い……、と考えている
――今回、DTSに新たに対応したが、これは何を意味しているのか?
Sharp氏: DTSはスタジオがデザインした音をそのままユーザーに届けるという基本コンセプトにインダストリアルデザイナーとして強く共感したところがあって採用しました。あと過去にDTSのメンバーとも仕事をしたこともあり、その関係もありました。
ドルビーは音楽や映画方面に強みがあるが、DTSは音のリアルさにこだわっているところがあって、ゲームはどちらかというとリアルな臨場感が大切なので、それを強化するために採用したという側面もある。
――「DTS Headphone X」のポテンシャルをフルに活かすためには、ゲーム側もDTSに対応する必要があるか?
Sharp氏: その必要はない。マルチチャンネル対応のゲームであれば、DTSのパワーを存分に発揮することができる。ステレオでもその効果は得られるのですべてのゲームで効果があると言ってもいいと思う。
――現在、マルチチャンネルに対応しているPCゲームは、どれぐらいあるか?
Sharp氏: 膨大だ。その数は誰もわからないと思うが、現在流通している60%から70%のPCタイトルがマルチチャンネルに対応していると思う。「Skyrim」、「GTAV」、「Alien Isolation」、「World of Warcraft」といったAAAタイトルはほとんどマルチチャンネルには対応している。
――Logitech Gシリーズは今後どのような進化を遂げていくと期待していいか?
Sharp氏: 新しいオーディオドライバーを搭載した「G933」、「G633」の登場は、Logitech Gシリーズの新たな歴史のスタートだと思っている。当然今回搭載したテクノロジーは他のモデルにも引き継がれるだろうし、これからの展開が楽しみで仕方がないが、具体的なプロダクトについてはまだ何もコメントできない(笑)。
――現在日本で流通している「G430」や「G230」も、「G433」、「G233」に刷新されるのか?
Sharp氏: (笑)。今は何もコメントできないが、私の頭の中には今後2年分のプランが出来ていて、今後も新しいモデルが登場するということだ。
――ゲーマーに話を聞くと、外部からのノイズを防ぐためにカナル式のイヤフォンを使っているという人も多い。イヤフォンタイプのGシリーズは考えていないのか?
Sharp氏: 良い質問だが、それはコメントできない(笑)。
――日本のゲームファンにメッセージを。
Sharp氏: 良いコメントができずに申し訳ない(笑)。新しいヘッドセットを待っていたゲームファンの皆さんお待たせしました。ぜひ楽しんで欲しい。