インタビュー

3DS「3D ザ・スーパー忍II」インタビュー

「お客さんが体験するゲーム画面の存在感、立体感ということについては、本当に20年目の再挑戦ですね」

「お客さんが体験するゲーム画面の存在感、立体感ということについては、本当に20年目の再挑戦ですね」

奥成氏:それと、今までの3D復刻プロジェクトと同じように、オリジナルにはない機能をプラスするという部分ですが、今回は2つ入っています。

 1つは、ステージセレクトです。これは「3D ソニック」と違ってオリジナル版にはなかった機能です。今回は、最初から最終ステージのボスのところまで、一気に見ることができます。毎回言ってますが、各ステージの3D立体視ぶりを、クリアできない人でも1つ1つ見てもらえるとうれしいなと。

――オリジナル版ではコンティニューが3回でしたっけ? すべてのステージにすぐアクセスできるようになっているのはうれしいです。

堀井氏:コンティニューも無限になっています。

本作では最初からステージセレクトが可能となっている

「ダイレクト操作モード」の設定画面
「ガード」も任意のボタンに割り振ることができる

奥成氏:もう1つ、「ダイレクト操作モード」というものを入れました。これは何かというと、ボタンの操作を別々に割り振れるようにしたものです。「ザ・スーパー忍」は初代も「II」も基本的に同じ操作で、ジャンプと攻撃と忍術発動の3つが基本操作ですが、「ダイレクト操作モード」では、攻撃を近距離のクナイと遠距離の手裏剣で別のボタンに割り振ってあります。

 ガードボタンもつけて、瞬時にガードできるようにしました。「ザ・スーパー忍」では、パワーアップ状態のときは、移動中にクナイを重ねて持っていたり、刀で敵に手裏剣をはじくことができましたが、「II」は攻撃ボタンの押しっぱなしなので、まず手裏剣を撃ったりしてしまうので、瞬時に発動せず、1作目のような使い方ができなかったんですね。「3D ザ・スーパー忍II」の「ダイレクト操作モード」では、ボタン1発でガードできるようになっています。1作目に比べると防御判定はシビアにはなっていますが、瞬時に攻撃を防御する手段が入っているのは大きいと思います。

 それをL、R、A、B、Y、もちろんXにしたかったらXにしてもらってもいいんですが、自由に割り振ることができます。

 実はこのモードは「ギガドライブ」版が最初なわけではなくて、あまり知られていませんが、オリジナル版でも隠しコマンドでできたんです。当時出たばかりだったメガドライブの「6B(ボタン)パッド」に対応したものとして。でも今回移植するにあたって、6ボタン操作をそれをそのまま入れと、ボタンが足りなくなるわけですよ。それでも「ちゃんと入れなきゃね」ということで。また、今のボタンコンフィグだとアサインが大変なことになるので、今回新たにアイコン化して入れました。今まで、この裏技を知っている人は少なかったと思いますし、実際にそれで遊んだ方も少なかったと思いますが、今回標準で入れましたので、知らなかった人にとっては、まったく新しい感じの遊び方ができるんじゃないかと思います。

――……「ガードがあったら無敵じゃん」と思ったらそうでもないという。

堀井氏:そうでもない。初代「ストリートファイター」が感圧ボタンじゃなくて6ボタン操作だったら完全に楽になったか、といえばそうでもなかったみたいなものですかね。

――(笑)。あれはコマンド入力のほうがシビアで大変でしたからねー。

奥成氏:これで遊ぶと、今までプレイしていたものとは別の感覚になりますよ。

――クルマで言えば、オートマチックとマニュアルぐらい違う感じですかね。

奥成氏:通常操作で極めた人はこちらで遊んでいただくとか、通常操作で先に進めない、という人はこちらでちょっとプレイしていただくと、別のゲームを遊んでいるような感覚で楽しめるのではないかと。

 実際にオリジナル開発スタッフに聞いたわけではないのですが、このゲームは開発期間がかなり長かったという話なので、ガードに関しても、瞬時に出せるようにしたかったんじゃないかと思うんですよね。そうしなかったのはゲームバランス調整の過程とかで。でも最後の最後で6Bパッドが出ると聞いて対応させてみたけど、もう標準で実装するには開発期間が間に合わなかったんじゃないかと。せっかくなので今回、それを表舞台に出してみたわけです。

――当時、もうガードを入れることには違和感のない時代ではあったと思うんですが、面白いと思います。

奥成氏:弾数制限のある手裏剣が別ボタンになったことで、できるかぎり近接攻撃で倒したくなると思うんですよね。

――手裏剣を封印すれば、さらにアクションゲーム寄りになりますよね。

奥成氏:「ザ・スーパー忍II」はダッシュ切りとキックの2つの新たな近接攻撃がありますし、クナイで切ることが加われば、手裏剣を使わないで進めようとすると、かなり違った面白さになりますね。

――この仕様は開発初期にはなかったんですか?

奥成氏:最初は単に裏技として入れておこう、という話だったんです。

堀井氏:ここまでやろう、という話になったのは開発後期ですね。

奥成氏:この要素はクローズアップすべきだなと。僕もなんとなく「裏技だ」というイメージだったんですが、「ザ・スーパー忍II」の隠れた面白さがこの「ダイレクト操作モード」にあると思います。ガードが「3D ソニック」の「スピンダッシュ」以来の「追加アクション」だと思っていただければいいかなと。「手裏剣を封印する」というのは、ユーザーさんの自由なので、「縛り」をしてプレイするというのは実にアラフォーな遊び方なんですけれども(笑)。もちろん逆に手裏剣を無限にしたい場合は、オリジナル版の裏技はそのままお使いいただけます。

OPTIONS画面で「S.E.」を「SHURIKEN」表示にしてから、「SHURIKEN」の数字を「oo」にして数秒待つと、手裏剣が無限大マーク(∞)になる。このままゲームをスタートすれば、手裏剣の残り数が減らなくなる

――難易度も選べますし、自分はうまく遊べているという人には、さらに別のゲームとして遊んでもらえるという。そこも「3D ソニック」の「スピンダッシュ」に近いですね。

奥成氏:「3D ソニック」とは逆で、初代にあったものを「II」で使えるという。初代と違って、パワーアップしていなくても使えますし。苦労したのは、テンプレートのままでいいやとずっと思っていたボタンアサインをアイコン化しないとわけがわからなくなるということに気付いてからですね。細かい話ですが、こういう部分でもスケジュールに影響が出ます(笑)。

――これはビジュアル化してもらうことでわかりやすくなって、助かりますね。2本分遊べるという意味で、ありがたい要素ですね。

堀井氏:ささやかなおまけですけれども、がっつりと時間かけてます。是非遊んでください。

奥成氏:もちろん、海外版も……ロゴが違うだけですけれども(笑)遊べますし。

――海外版の難易度は国内版と変わっていないんですか?

奥成氏:変わってないようですね。

海外版ももちろん選択可能。タイトル画面が変わる

画面設定も「ギガドライブ」タイトルでは「ノーマル」のほかに、ブラウン管テレビでの表示を擬似再現した「クラシック」が選択可能。画面の表面が丸みを帯び、発色なども”にじみ”を持たせた表示となる

――では、最後に一言いただけますか?

奥成氏:「ザ・スーパー忍II」に関しては、メガドライブの後期に作られたタイトルということで、2Dの忍シリーズでは1番凝ったものになっていると思います。同時に、アクションゲームとして1つの完成をみている作品なのではないかと。そしてその凝りに凝った演出を、どう3D立体視に対応すべく料理したのかを、1つ1つ味わっていただいて、もし、遊んでいないという方は、この際、ぜひ遊んでいただきたいゲームになっていますね。

 このゲームが出たタイミングというのが、いろんな新しいアクションゲームがいっぱいリリースされていたとか、BGMが前作を担当した古代祐三さんではなかったということが、前評判としてデメリットとして働いていたので、当時スルーしていたお客さんも入るんじゃないかと思うんですが、実は、音楽もカッコいいですし、アクションゲームファンにはとても評価の高い作品なので、「II」はやっていないという方も結構いらっしゃるかなと思いますが、これを遊んでいないなんて実にもったいない(笑)。

――甲乙付けがたいですが、確かにメジャーなのは「ザ・スーパー忍」かなとは思います。ゲームとしては「II」の完成度は見ておくべきタイトルかなと。

奥成氏:とにかくダッシュ移動が気持ちいいというか、ゲームの基本の部分になるので。前作「ザ・スーパー忍」がプレイしたいという方には、「SEGA AGES ONLINE」やWiiのバーチャルコンソール版をぜひオススメします(笑)。ハードは違いますが好評発売中です。古代祐三さんの曲が3DSで聴きたい! という方はバーチャルコンソールで「The GG忍」が出ております。こちらも傑作なので、シリーズに興味が出てきた方は合わせて是非。

堀井氏:メガドライブをねちっこくねちっこく使って画面作りをしているところに、こちらもねちっこくねちっこくねちっこく立体視を付けたので、そのねちねちをぜひ、楽しんでいただきたいと思います。かなり楽しめると思います。

――こうして苦労している部分を教えてもらうと、「ふむふむ」と共感しながら遊んでもらえるのかなと。

堀井氏:たぶん、当時遊んでいた人の中でも「これ、メガドライブじゃできない3重スクロールじゃん」とか、見逃しているところがあるんじゃないかと思うんですよ。そのあたりが立体視化することで可視化されてしまうので。「おかしい……どうやってるんだろう?」って楽しむのはかなりアリですね。

奥成氏:当時のその苦労……プログラム技術やデザインを含めて、うまく立体感を作っていたところに、今回エムツーさんが3D立体視化することに挑んでいるわけです。お客さんが体験するゲーム画面の存在感、立体感ということについては、本当に20年目の再挑戦ですね。

――次回作もあるということで、今後も期待しております。ありがとうございました。

(佐伯憲司)