インタビュー
「WoWS」プロデューサー柳沼恒史氏に「はいふり」コラボについて聞いた
コラボ艦、コラボ艦長、コラボポート、そしてコラボミッションを実装へ
2016年9月17日 21:47
「World of Warships」は昨年の東京ゲームショウで正式サービス開始から1年が経過した。現在公式サイトでは1周年を記念したインフォグラフィックを公開している。それによるとこの1年を通じてグローバルで約957万人のユニークユーザーがゲームをプレイし、意外にもホームであるロシアは2番手で、中国がグローバルでもっとも多くのユーザーを集めていることが明らかになっている。日米艦からスタートした「World of Warships」が中国やロシアでこれほど人気が高いとは意外で、それに比べると日本を含めたアジアの数字はまだまだ少なく感じられる。
それだけにウォーゲーミングジャパンの2年目の取り組みに注目が集まるところだが、東京ゲームショウでは、既報の通り「蒼き鋼のアルペジオ」に続く大型コラボ第2弾として「ハイスクール・フリート(はいふり)」とのコラボを発表した。今回は日本運営プロデュサーの柳沼恒史氏と、「はいふり」とのコラボを企画した畑井翔氏に、今回のコラボの経緯や、コラボの内容、そして「World of Warships」の今後の展開について話を伺った。
相思相愛で決まった「はいふり」コラボ。「アルペジオ」コラボを上回る規模で実施へ
――「ハイスクール・フリート」とのコラボ決定おめでとうございます。まずは「はいふり」とのコラボを決めた経緯から教えて下さい。
柳沼氏:ありがとうございます。そこについてはアニメ大好き畑井から説明させていただきます。
畑井氏:「はいふり」については、アニメの放送が始まる前から、事前に情報を聞いていて、「はいふり」側からも相談があって話を進めていった形になります。この1年間、「World of Warships」のユーザーから「『はいふり』とコラボしないの?」という声をいただいていましたし、「はいふり」のほうでもファンの方から「『WoWS』とコラボしないの?」という声を頂いていたようです(笑)。そしてついに東京ゲームショウで正式発表できたという流れになります。
柳沼氏:我々としても試写会の段階から応募したりして、なんとか接点を見いだそうとしたりしていましたね。
――「はいふり」全話を見ましたが、艦長が艦から離脱したり、艦がすぐ逃げたり、とにかく戦わない海戦アニメですよね(笑)。「World of Warships」はガチの海戦ゲームですから、両者の相性は必ずしも良くないではないかとも思ったのですが。
柳沼氏:でも、史実に近いフネが出ていますし、「蒼き鋼のアルペジオ」と比較しても親和性はあるのかなと考えています。
――気になるのはコラボの内容ですが、東京ゲームショウでは旗のイメージを公開していましたが、どういったコンテンツの追加を考えているのか教えて下さい。旗だけだと残念ですよね(笑)。
畑井氏:はい、旗だけではありません(笑)。今のところ、これまで1年間やってきた「アルペジオ」コラボのように、コラボ艦艇、コラボ艦長、コラボポートはやっていこうということは考えていまして、さらに追加としてよりコラボ感を感じられるような要素も考えています。まだ確定ではありませんが、シナリオ的なコンテンツですね。アニメで行なわれた海戦をやってみるとか、たとえば駆逐艦隊だけで武蔵に挑んでみるとかですね。「World of Warship」だと無茶な戦いですけど(笑)。
――それはNPC戦ということですか?
柳沼氏:そうですね。仲間と協力して戦うようなPC対NPCのモードは、以前からやりたかったことではあるので、ひょっとしたら「はいふり」のコラボに合わせてそういった新しいモードを追加できるかもしれません。
――「はいふり」は、いわゆる艦長だけではなく、他の乗組員のキャラも立ってますよね。先ほど艦長を実装するということでしたが、コラボには他のキャラクターも登場しますか?
畑井氏:そこについては「World of Warships」では艦長しか役割を設定できないので。
――しかし、プロデューサーの柏田さんも“大漁はっぴ”を着て登場するぐらいですから、主人公の岬明乃だけでなく、「他のキャラも!」という声は挙がりそうですよね?
畑井氏:うーん、そこはあまり考えていなかったですよね(笑)。
柳沼氏:でも、確かに声だけでも入れられたらいいですよね。
畑井氏:ユーザーさんからも「10人ぐらいの主要キャラの声を入れるのかな?」という期待の声もあるのですが、本当に入れてしまうとぐちゃぐちゃになってしまいますし、キャラクターは絞る形になってしまいそうですが……。
柳沼氏:私はできるだけ絞らずに1人でも多くのキャラクターの声を入れたいとは思っています。
――おふたりでご意見が割れていますが(笑)、「ガルパン」コラボでも、IV号戦車に乗る主要キャラクターだけでなく、カチューシャやノンナといったライバルキャラクターのボイスまで実装されましたからね。ここまで入れるのかという展開を期待したいと思います。
畑井氏:はい、頑張ります。
――コラボ艦艇についてですが、柏田さんは晴風と武蔵について言及されていましたが、それ以外にもアニメに登場する艦艇はひととおり実装する方針ですか?
畑井氏:すべてではないですね。ゲームバランスの兼ね合いもありますし、これを入れることでゲームに新しい遊びを追加できる特徴的なフネは入れるつもりですが、「はいふり」の場合、近代艦も多いので、それらを入れてしまうとバランスがおかしくなってしまうので、「World of Warship」の世界観にあった艦艇を入れていく感じですね。
――基本性能やTierの設定は、「World of Warships」に合わせた形になるわけですね。
畑井氏:はい、そうなりますね。
――発表会では様々なコンテンツが出来上がりつつあるというお話でしたが、現在の進捗状況はどのような感じですか?
畑井氏:ぶっちゃけると、まだ何も出来ていません……。
柳沼氏:ちょっと待って下さい(笑)。コンセプトはできています。それをどう展開していくかというのは、ユーザーさんの反応を見ながら決めていって、2017年頭ぐらいの実装に向けてこれから年末に掛けて情報を小出しにしていこうかなと考えています。
――gamescomで「World of Warships」の開発者にインタビューした際、戦艦1隻を実装するのに、開発に半年掛かるというお話でしたが、間に合うのですか?
柳沼氏:そういう意味では、水面下でだいぶ進んでいますので大丈夫です。
――「はいふり」コラボについて、運営側としての抱負を聞かせて下さい。
畑井氏:「World of Warship」のユーザーさんが、ゲーム内で「はいふり」を楽しめるようにするというコンセプトで企画していますので、ゲーム内でコラボを感じながら「World of Warships」と「はいふり」両方楽しめるようにしていきたいと思っています。
――コラボの実施期間は?
柳沼氏:未定です。コラボは1回の実装で終わりではなく、第1弾、第2弾という風に段階的に作って行くことになると思うんですが、ユーザーさんの反応次第ではずっと続くかもしれませんし、現時点ではまだ何とも言えませんね。
――「はいふり」コラボが発表された一方で、現在、「アルペジオ」のコラボが継続中ですが、この2つのコラボは同時平行して走るのですか?
畑井氏:現在のスケジュールですと、10月のイベントで高雄が入手可能になります。これで「アルペジオ」コラボは終了というわけではないのですが、一区切りになります。そして現在準備している「はいふり」のコラボが2017年頭ぐらいを予定していますので、切り替わるという訳ではないですが、重ならないようにはなっています。
柳沼氏:コラボしている間は、協力していただいてるメーカーさんにもコラボを使っていただきたいので、2社同時ということにはならないようにしています。
――「はいふり」のコラボは、「アルペジオ」と同様にグローバルで展開するものですか?
畑井氏:「アルペジオ」はグローバルでしたが、「はいふり」は今のところ検討中という段階で、アジアでの展開まで決まっています。
柳沼氏:グローバル展開は確定ではありませんが、その可能性は十分にあります。
「World of Warships」の今後について
――「World of Warships」についてもいくつか質問したいのですが、まず先月実装されたドイツ戦艦ツリーについてですが、実装後の反応はいかがですか?
柳沼氏:ドイツの戦艦そのものは非常に使いやすいというフィードバックを頂いています。課金艦のシャルンホルストなどもリロードも早く動きやすいと好評ですね。
――ドイツの戦艦ツリーを育てている方が多いですか?
柳沼氏:はい、いらっしゃいますね。
畑井氏:あまりにも人気で、実装直後は、ドイツの戦艦が両軍に5隻ずついたりしたぐらいです。
柳沼氏:実装直後はしょうがないかなというところもあるんですが、マッチングが戦艦だけになってしまうというのはゲームバランス上問題なので、次回は避けたいなと(笑)。
――避けるというと、戦艦ツリーだけの実装は避けて、艦種をばらけさせるということですか?
柳沼氏:そういうことですね。あるいは何かのツリーが入ったときに、別のものを使いたくなるような施策を同時に行なっていく必要があるなということを学びましたね。全部戦艦はさすがに辛いです(笑)。
――今後実装される新要素について教えていただけますか?
柳沼氏:日本の駆逐艦ツリーが分岐して2つに分かれます。従来の駆逐艦ツリーは隠蔽率が高く、魚雷を中心に戦っていくというオーソドックスなツリーですが、新しい駆逐艦ツリーは艦砲を増やしたり性能を上げたり、魚雷間の数は少ないんだけど有効距離が長いとか、従来のツリーに対して差別化を図ったツリーになります。近日実装予定です。
この新しい駆逐艦ツリーの実装意図なんですが、サービス開始当初は日本の駆逐艦は非常に人気があったんですが、その後、新しい駆逐艦、たとえばソ連の駆逐艦ツリーやプレミアム艦が実装されたことで、相対的に使いにくくなってきたということもあり、統計を見ても人気が下がってきているんですね。そこでてこ入れのためにリノベーションを行なうということです。
――日本の駆逐艦の人気が落ちていたというのは意外ですね。「World of Warships」の動画では、島風が人気ですよね。みんなTier Xの島風を目指して日本の駆逐艦ツリーを育てている人が多いのかと思っていました。
柳沼氏:島風は確かに今も人気なのですが、日本の駆逐艦ツリーが実装されてからこれまでに、魚雷が発見される距離の変更とか、日本の駆逐艦にとって不利になる変更が行なわれてきたので、島風に限らず、日本の駆逐艦のバランスがおかしいんじゃないのという声は出ていました。
――この新しい駆逐艦ツリーの最上位に位置する秋月級の駆逐艦は、史実では対空駆逐艦として有名ですが、ゲームでも同じ扱いですか?
柳沼氏:はい、そうです。ただ、それがあまりにも強くなりすぎないように現在調整を行なっているところです。
――対空防御に特化した艦艇というのはこれまであるんですか?
柳沼氏:あるにはありますね。アメリカのアトランタや、日本の夕張なども比較的対空寄りですね。
――なるほど、それらはプレミアム巡洋艦ですが、秋月は駆逐艦として、対空性能をさらに先鋭化させたイメージですか?
畑井氏:そうなんですが、バランスが難しいんです。対空処理が秋月でいいやとなってしまうと、そればっかりになってしまいますから、そうならないように注意しながら開発を進めています。
柳沼氏:そうなんですよ。特に駆逐艦は、そもそも発見されにくいという特徴がありますから、空母のプレーヤーからすると、見えない敵にどんどん艦載機が落とされるぞということになるとバランスの面で問題があるので、そこは慎重に見ていきたいなと考えています。
――運用スタイルとしては、単艦でどんどん攻めるというよりは、戦艦や空母に随行して空の攻撃から守るイメージですか?
柳沼氏:そのイメージですね。
――その空母の運用に関して、高Tierになるほど直掩活動が重要視され、空母は攻撃機による魚雷攻撃より、戦闘機の直掩活動に重きが置かれる傾向がありますが、その一方で艦載機による直掩活動など、間接的な行動が戦功に繋がりにくいという問題があります。この部分について日本運営ではどのように感じていますか?
柳沼氏:それについては、味方へのサポート行為にボーナスが付くような変更が近日中に行われる予定です。たとえば、空母の艦載機や駆逐艦が敵艦をスポッティングする、見つけたことについてボーナスが入りますし、その見つけた相手に攻撃が当たることでもボーナスが得られるようになります。
――まさに「World of Tanks」の車輌発見と観測アシストのような感じですね。
柳沼氏:そうですね。
――空母の直掩活動についてはいかがですか?
柳沼氏:同じように考慮されていくと思います。たとえば、航空機の撃墜に対してボーナスが付くとか。まだ確定したものではありませんが、空母で味方を支援したら大損してしまったということのないようにしたいと思います。
――今回の「はいふり」コラボの反響はとても大きいですが、コラボ関連の記事に対する反応として多いのは、「コラボもいいが、ゲームバランスをなんとかして欲しい」という声があります。運営側として今のバランスについてどのように見ていますか?
柳沼氏:どこについてのご意見かということにもよりますが、継続的に様々な試みが行なわれていて、先々月のアップデートでパッチメイキングのバランスが改善されて良いフィードバックが届いています。ゲームバランスについては特に注力しているつもりです。
――全体感としては、まずまず良好なゲームバランスにあるということですね。
柳沼氏:はい、ただ、新しい艦が追加されると、それによってバランスは変化しますから、バランスには常に目を光らせている状態ですね。
――「World of Warships」には、十分な機能を備えた観戦モードなども追加されて、そろそろ大会を行なっても良さそうな感じですが、何か具体的な計画はありますか?
柳沼氏:今年はまさにそのための準備をしている期間で、大会を開催するためには、仰るように観戦をサポートするような機能が必要になると思います。年内にはそういった情報も出せると思います。実施には2017年に入ってからになると思います。
――最後に「World of Warships」ファンに向けてメッセージをお願いします。
柳沼氏:私自身、コアな「World of Warships」ファンとして日々皆さんと一緒に戦っていますが、いつも遊んでいただいてありがとうございますということと、日本のユーザーさんにはサプライズとなるような日本艦艇もしっかり用意していきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
――ありがとうございました。