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どの順番でも読める! 異色ADV「終天教団」濃厚5ルートインタビュー

5つの異なるインタビューから小高和剛氏と「終天教団」の中身を深堀り

【終天教団】
9月5日 発売予定
価格:
通常版:6,980円
デジタルデラックス版:9,180円
豪華版:13,580円

ルートC:ADVはインディーだけじゃない──大作ADVを作る理由【小高和剛によるADVの原体験と「終天教団」の関係編】

Tookyo Games代表取締役CEOの小高和剛氏

 ルートC【小高和剛によるADVの原体験と「終天教団」の関係編】では、現在の小高氏を形作ってきた原体験から、その原体験が「終天教団」に影響していることなどを聞いた。小高氏によるモノローグ形式でお送りする。

小高和剛にとってADVゲームを作る上で核となっている体験

 僕は元々ADVゲームが好きでした。ただ、1990年代や2000年代のADVゲームといえばギャルゲーやエロゲーで、“選ばれしヤバいゲームオタク”たちが遊ぶものでした。ADV自体もすごくニッチなジャンルで、やる人はやるけどそうじゃない人は見向きもしない、というような。

 そういうADVゲームを好きで遊んではいましたが、当時はそんなに「これが作りたい!」だとか、アツい思いがあった訳ではないんですよ。ただ、何かを作るのであれば「自分のオリジナルを作りたい」という思いだけはあって。

 実績も何もない中で自分に何ができるか。そう考えたときに、文字を使って“面白い話”を書くことならできるなと。その時に、「あの頃遊んでいたADVゲームだったら俺にも作れるかもしれない」とつながりました。それがADVゲーム作りのはじまりでした。

ADV作りの原体験は「終天教団」にどう影響を及ぼしているか

 この原点が「終天教団」にどう影響しているかについてお話するには、まず「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」まで遡る必要があります。

 僕が「ダンガンロンパ」を作っていた2000年代後半は、ADVゲームがそこまで売れていない時代です。今で言うインディーゲームのようなPC向けのギャルゲーはたくさんありましたが、コンシューマーゲームの世界では、せいぜい「逆転裁判」シリーズがあるくらいでした。

 その頃はニンテンドーDS向けにADVゲームが大量に販売されていました。最初は売れていたようですがどんどん下がっていって、ジャンルとしては落ち目の時期でした。PSP(PlayStation Portable)では、「銃声とダイヤモンド」「遠隔捜査 -真実への23日間-」といったタイトルが発売されていましたが、それらも思うように売れていなかった不遇の時代です。

 「ダンガンロンパ」は2010年に発売することになりますが、ジャンルを「ADV」と大きく言ったことはありません。スパイク・チュンソフトで企画を通す際、「ADV」と言ってしまうと売れないから「“ハイスピード推理アクション”というジャンルです」と言い張ってみたり、学級裁判のシステムにもシューティング要素を入れてみたり。「ADVです」とは胸を張って言えず、むしろなるべくADVからは遠ざけようというところからスタートしています。

「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」

 当時を振り返ると、スマホゲームの影響も大きいかもしれません。昔、ギャルゲーを読んでいた人も、今ではスマホゲームを遊んでいることが増えました。たとえば「Fate/Grand Order」「ヘブンバーンズレッド」はそうした典型だと思います。初代「ダンガンロンパ」の発売からもうすぐ15年ほど経ちますが、こうした様子を見ていると、ADVはもはや抵抗感のあるニッチなジャンルではないのかなと思います。

 一方で同じようなスマホゲームでも「これはシナリオじゃないでしょ。文章でしょ。字が書いてあるだけだね」みたいなものも多々見かけます。だからこそ、ちゃんと“面白いアドベンチャー”を作りたい、僕自身も正面からADVにぶつかっていきたいなと思っていました。「これはADVゲームです!」と、声を大にして言ってみたいと思ったのは、まさに「終天教団」に影響している部分です。

「終天教団」

 結果的にはDMMさんと組めることになり、「終天教団」はADVゲームの中でもリッチなゲームに仕上がりました。実は、こうしたことも1つの大きな意味があると考えています。今、インディーゲームの世界にはADVがとても多い状況です。確かにどれも面白い作品ばかりですが、「ADVと言えばインディーだよね」といったイメージが付くのはどうかなとも思うのです。そうすると、ますますADVゲームがインディー化していってしまうかもしれません。

 僕らは運良くDMMさんと組めたので「終天教団」を作れることになりました。「終天教団」はADVの中でも大作の部類に入ると思っていますし、やはりこういう作品も必要だよなと考えています。コンシューマーからADVゲームが出なくなってしまうのは僕としてはイヤで。ぜひ長編のADVゲームが出てきてほしいなと思っています。

「宗教」をテーマに選んだ理由

 「終天教団」では、オカルト臭い物を作りたいという思いがありました。元々「流行り神 警視庁怪異事件ファイル」のような作品が好きだというのも理由です。「ミステリー」と「オカルト」は、噛み合わせが悪いようで意外に良いのです。

 そして、そのオカルトを最大限に活かすために選んだのが宗教でした。宗教を丸ごと作ってしまえば、独自のルールや風習なんかも全て作れます。本作に登場する終天教は、“人類が滅びるの万歳”といった人々の集まり。しかし普通の人間であれば、人類が滅亡するのはイヤだと思うはずですよね。

 でも、何か特別な宗教だったらそうした信仰もあり得てしまうかもしれない。そういった、普通の常識が通用しないところを描けることに「宗教」の魅力を感じたのです。いい意味で、プレーヤーを振り回す作品になったかなと思います。

教団本部の外観