レビュー
「終天教団」レビュー
5つの顔を持つマルチジャンルADVはルート順で見え方が変わる! 点と点が繋がるたった1度だけの体験
2025年9月3日 18:00
- 【終天教団】
- 9月5日発売予定
- 価格:
- 通常版:6,980円
- 豪華版:13,580円
- デジタルデラックス版:9,180円
DMM GAMESは、Switch/Steam/DMM GAME PLAYER用マルチジャンルADV「終天教団」を、9月5日に発売する。本作は「ダンガンロンパ」シリーズや「超探偵事件簿 レインコード」などの作品で知られる、小高和剛氏を始めとするTookyo Gamesのスタッフがシナリオを担当し、ゲームデザインの監修も行った完全新作ADVだ。開発には「マギマルと魔法使いの学園」などを担当したネイロが参画している。
「終天教団」は、5つのシナリオルートでそれぞれ5種類の異なるADVゲームが展開される挑戦的なタイトルであり、本作1本で主要なADVゲームのジャンルを楽しむことができる。本稿では本作のレビューをお届けしていきたい。
教祖殺しの真相を追う、異色のマルチジャンルADV!
ゲームの舞台となるのは人類滅亡の終末思想が根付く小さな宗教国家「終天教国」。しかし、そんな国を主導している「終天教」の教祖は、ある日何者かによって殺害されてしまう。それも教祖の遺体は建国記念日の早朝、巨像が鎮座する中央公園の中でバラバラの死体として発見される……。
主人公の下辺零(しもべれい)は、そんな殺害されたはずの教祖本人である。だが、ホテルの一室で目を覚ました彼女は一切の記憶を喪失し、自身が殺害されたことも覚えていない。戸惑う彼女の前に現れたのは“天使”を自称する男ミコトルと、おてんば娘のヒメル。あからさまに胡散臭い2人だが、零が既に死んでしまっていることと、現在は仮初の命を与えられていることを告げる。記憶と本来の命を取り返すためには、自分を殺した犯人に罪を自白させた後に殺害し、魂を奪い返す「神の試練」を乗り越えねばならないという。
教祖殺しの容疑者として、もっとも疑わしい教団幹部5名。しかし、仮の命に残された猶予は残り4日間しかない。たった4日間の中で、誰か1人を集中的に追い詰めて自白を引き出す、一発勝負の大胆な捜査活動を行うことになる。
冒頭のプロローグでことのあらましを知ったのち、零の捜査をサポートする「神の力」を用いて、5名の教団幹部から1名を選び抜いていく。選んだ幹部ごとに異なるシナリオルートとゲームシステムが展開され、プレーヤーは幹部の秘密と事件の真相を追っていくのだ。
内容については後述するが、ルートごとに体験できるゲームシステムは「推理アドベンチャー」「極限脱出アドベンチャー」「マルチ視点ザッピングノベル」「恋愛アドベンチャー(?)」「ステルスアクションホラー」の全5種類。どのルートから始めても構わないし、それぞれが教祖殺しの事件捜査という主目的を軸としつつ、独立したシナリオが進んでいく。
したがって、たとえば法務省ルート(推理アドベンチャー)が未プレイだからといって警備省ルート(ステルスアクションホラー)の話が理解できないといったことは起こらない。
得られる情報はそれぞれのルートによって変わるため、1ルートをクリアしただけではその全貌が見えてこない。筆者は実際にゲームをプレイしていて、むしろ余計に謎が深まっていく感覚さえ覚えた。
そのもどかしさが「真相を早く知りたい」という欲求に繋がって、次のルートを読み進めるための動力となっていく。何せこのゲームの謎は、教祖殺人事件に限った話ではない。終天教国、神の力、天使、異教徒……。あまりに異質な価値観と常識で構成されており、この世界の全体像すらも、プレーヤーが解き明かすべき謎なのである。
プレイを進めていくと、遊ぶルートの順番によってはプレーヤーの頭の中で謎が有機的に繋がっていく過程を楽しめることだろう。後回しにしていたルートで疑問が一気に解消されていく楽しみが待っているのが特徴的でもある。
どのルートを選んで進んでいくのか。遊ぶプレーヤーによって謎に迫る過程が異なるゲームデザインとなっており、それが「終天教団」ならではの魅力となっている。裏を返すと、プレーヤーが零のように記憶喪失にでもならなければ、たった1度しか味わえない希少な体験とも言える。
ルート選びに正解も不正解も無いのだが、恐らくいずれのルートを誰がプレイしても「あのとき違うルートを選んでいたらどんな感想を持っただろう」と、もしもの選択をついつい想像してしまう。また、シナリオ中は全く予想していなかったであろう展開や、新しい概念が登場することも多々あって、そうしたシナリオ運びの驚きと困惑がプレーヤーの考察を壊しにかかる。「ダンガンロンパ」シリーズ、「超探偵事件簿 レインコード」、「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」と、小高氏による作品で幾度も“してやられた”あの読後感には本作でも期待して良い。
どこから触れてもOK。5ルート5ジャンルをそれぞれ紹介!多面体なゲームデザインに舌を巻く
では各ルートでは、どのような体験が待っているのだろうか。その内容について、簡単にではあるが紹介しておきたい。
5つの異なるジャンルが内包されている中で、とりわけ異彩を放つのが、幹部の1人伏蝶まんじを描いた警備省ルートだ。このルートのゲームジャンルはステルスアクションホラー。他の4ルートがADVゲームのフォーマットとして形を保っているのに対し、こちらのルートはアクションジャンルとなっている。内容としては、削岩機を持って追いかけて来る殺人鬼ネフィリムから逃げ回り、時には隠れてやり過ごすクォータービュー形式のステルスホラーだ。
私ごとだが、「バイオハザード」の第1作目でゾンビが振り返るムービーシーンを見て、初代プレイステーションを電源コンセントから引っこ抜いてしまったほどホラーゲームに耐性がない。
ゾンビだろうが着ぐるみの殺人鬼だろうが、薄暗い部屋の中を追いかけ回されるゲームは自身にとって今でも心臓に悪い。こんな極度のビビリではあるのだが、実は警備省ルートを一番にプレイしていたりする。感想としては、ホラー要素がマイルドなので、なんだかんだクリアできた……というのが正直な感想。
「終天教団」はマルチジャンルの性質上、全く触れたことがないジャンルを遊ぶプレーヤーの存在が一定数考えられる。こうした配慮を考えると、5ルートの中でとりわけ特殊な警備省ルートは、アクションもホラーも優しい部類、となっている。
全体的な難易度としては高くないのだが、ゲーム中はマップの構造を見て、しっかり逃げ道を頭に入れておかないと、追い詰められてゲームオーバーになることもある。身を隠すポイントの活用や、道上にあるシャッターを下ろして追跡を振り切るといった駆け引きも必要で、プレイ中はハラハラしながら進めていた。ステルスアクションホラーではあるが、おそらくホラーが苦手な人でも勇気を出せば、十分クリアできる匙加減だと思っている。伏蝶まんじ(ふしちょうまんじ)も魅力的な人物なので、怖くても進めるだけの意欲が湧くはずだ。
天才少年科学者の伊音テコ(いおんてこ)が登場する科学省ルートは、マルチ視点ザッピングノベルで、主人公・下辺零以外の登場キャラクターの視点からも物語が紐解かれていく。ゲームそのものが5ルートに分岐しているコンセプトなのにも関わらず、群像劇を採用した上でさらにキャラクターごとのシナリオ展開が選択肢によって分岐する異様な作り込みである。
本ルートはマルチエンディングではなく、結末はひとつ。しかしながらその過程では、あるキャラクターの物語で決めた選択が、他のキャラクターの物語にも影響するという仕組みになっている。ときに選択を間違えながらも、正しいルートを少しずつ進んでいくという感じだ。ちなみに、バッドエンドは多数存在する。
物語進行そのものは一方向だが、プレーヤーが以前選ばなかった過去の時系列の選択肢をあえて選びなおすことで、その先のシナリオ展開が変わり、正解の結末に近づく試行錯誤は面白い。これはジャンル名にもあるように「ザッピング」と呼ばれるADVジャンルの性質だ。このルートはテキストボリュームも多く、結構な読み応えがある。体験としてもとりわけ高い完成度を誇っており、このルートだけでもかなり満足できた。コンパクトなインディー系ADVを1本クリアしたような感覚とでも形容すべきだろうか。
黒四館仄(こくしかんほのか)が登場する文部省ルートは、3人のヒロインを攻略対象とした恋愛アドベンチャー(?)となる。所定のターン以内に学園内でヒロインとのイベントをこなし、適切な選択肢を選ぶことで好感度アップを目指すという趣旨だ。このルートでは黒四館仄と同様の姓を名乗る3人の「黒四館」を口説き落とし、“誰が本物の黒四館仄なのか”を探るのがストーリーの目的である。
シナリオの都合上、零に残されている時間が少なく、一般的な恋愛ゲームと比べて長い時間を過ごすことで得られるヒロインへの愛着といったものは中々に難しい。それでも3人のヒロインは一筋縄にいかない超個性派が揃い、強く印象に残るはず。黒四館菊花(きっか)はギター演奏が好きだが、人前では思うように演奏できず、情緒が極端に変化する気難しい少女。文学や詩を好む黒四館美衣(みい)は知的に見えて、淫らな被害妄想で暴走しがちだ。黒四館結愛(ゆあ)はマリオネットを用いて意思疎通を図ろうとするいわゆる不思議ちゃんだが、それゆえに話が通じない狂気をどこかに持ち合わせている。
たとえ攻略対象を口説き落としてもそう簡単には終わらず、度々攻略済みのヒロインに会いに行かねば機嫌を損ねてしまう。残り行動ターン数とヒロインの機嫌という2つのリソース管理を徹底しながらゲームを進めていく必要がある。ライトノベルのハーレム系主人公のような忙しい(?)日々を楽しめるルートかもしれない。
筆者が個人的に苦手なジャンルゆえに苦戦したのが、極限脱出アドベンチャーを掲げる保健省ルートだ。幹部の丑寅幽玄(うしとらゆうげん)と共に、多人数参加型のデスゲームに強制参加させられてしまい、迷路のような空間から脱出するために、制限時間付きのスライドパズルだったり、向きと組み合わせを変えて全てのブロックを嵌め込むパズルなどを繰り返しプレイする。
パズルはいずれも制限時間が課せられているので、それなりの焦燥感を煽られた。ストーリー上では次々と命を落としていくデスゲームの脱落者たちの一方で、バーチャルタレントの生配信のような画面も登場する。「デスゲームを中継する」というスタイルが、悪趣味さを加速させる。自分を殺害した犯人かもしれない丑寅と、この密室内でどう向き合っていくのか、物語の面白さにも注目したいルートだ。
最後に紹介するのは、推理アドベンチャーが展開する法務省ルート。教祖の遺体の第一発見者である犬神軋(いぬがみきしる)と、資産家の自宅で発生する連続殺人事件の真相を解き明かしていく。事件現場内での捜査と、聞き込みで得られる証言から気になるキーワードを深掘りし、推理を完成させる。
このルートでは比較的早い段階から犬神の人物像が見えてくる。飄々とした振る舞いの中に何か大きな闇を抱えていそうな表情を見せ、機知に富んだ行動を見せたかと思えば、怪しい薬をキメて突然ハイになるなど、幹部の中でもユニークな人物である。余談だが、筆者は幹部の中でも犬神が一番好きだ。
本ルートは捜査パートと会議パート(推理)に分かれており、捜査パートで集めた手がかりを基に推理パートへと臨む。事件に関する要素を的確に深掘りする「スナッピングシステム」を駆使して、更なる手がかりを集めていく。会議パートは事件の全容を明らかにするため、集めた手がかりを整理して正しい順序に並べる証拠パズルを完成させる。いずれのパートも「信頼度」が備わっていて、ゼロになるとそこでゲームオーバー。
捜査パートでは事件に使われたトリックの全容があまり見えてこないものの、会議パート中の証拠パズルを完成させていく中で、徐々にトリックが見えてくる。ルートの作風から王道推理モノ、探偵ドラマのようなエンタメ的面白さであり、さらに使われているトリックもだいぶユニークだ。
推理モノのADVが苦手なプレーヤーでも、証拠パズルと零が口に出すヒントから正しい答えを想起しやすく、あまりストレスは感じない。会話の過去ログを遡ってみたり、零のセリフからプレーヤー自身も捜査パートを振り返ることで、気づきを得て正答率を伸ばすことができそうだ。プレーヤー側の推理がハマると気持ちいいルートとも言える。
全てのルートに意味があるシナリオの説得力
前項ではゲーム内に収録された5ルート、5ジャンルを全てプレイした上での感想を紹介した。本作をクリアした上で改めて「終天教団」に言えるのは、良くも悪くもプレーヤーにとって“向き不向きなADVジャンルが分かる”という気付き。苦手なジャンルはスムーズに進まないし、得意とするジャンルはテンポ良く物語が読み進められる。
だが、たとえ苦手なジャンルでも最後までクリアできる難易度バランスにはされており、全く進めずに詰むといった心配はない。むしろ、一定の苦労を経て苦手なジャンルをクリアしたことが、プレーヤーの中であまり触れてこなかった新ジャンルへの挑戦欲求に結び付くのではないかとも思っている。各ルートは、その厚みや仕上がりの部分で、相当こだわって作られている。クリアすれば、それぞれのシナリオや登場キャラクターが深く心に残っていることだろう。
そして、5ルートすべてをクリアしたらどうなるのか。ここから先は「言えない」としか言いようがない。内容は明かせないが、筆者は正直、プレイする手が止まらなかった。ぜひ、ご自身で確認していただきたい。
本作はゲーム1本に5つの異なるジャンルを横に並べたことで、ゲームとしてのバラエティがかなり豊かになっている。しかしその本質は、ADVジャンルにおける表現の幅の広さを感じられることだ。各ルートでは異なる遊びを体験することになるが、それぞれの遊びは物語展開に大きな意味を持つ。シナリオの都合から見ても、納得感が強い構成なのだ。
各ルート、各ジャンルの遊びやシナリオ単体で見てもよくできているが、あくまでそれらは「終天教団」の物語の一部である。全てのルートをクリアしたことで見えてくる教祖殺害事件の全貌と終天教国の秘密など、ルートとジャンルを超え、プレーヤーの中で点と点が繋がる体験がとても心地良い。
宗教団体とバラバラ殺人事件、かなりセンシティブな題材を扱っているが、作中でテーマの軸がズレることは決してない。これらの題材を取り扱うからには、最後まで責任を持って描き通すというDMM GAMESとTookyo Gamesの心意気を見た気分だ。「終天教団」は、ADVゲームが好きなプレーヤーはもちろんのこと、ジャンルに触れてこなかったプレーヤーにもADVの入口としても、自信を持ってオススメしたい一作品である。
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