素晴らしきかな魂アイテム
【魂インタビュー】商品化の少ない陸戦型重MSをハイクオリティに表現! 「ROBOT魂 <SIDE MS> YMS-16M ザメル ver. A.N.I.M.E.」インタビュー
2019年9月19日 00:00
今回取り上げるのは、「ROBOT魂 <SIDE MS> YMS-16M ザメル ver. A.N.I.M.E.」である。「ROBOT魂 〈SIDE MS〉 MSN-02 ジオング ver. A.N.I.M.E.」以来の大型アイテムだ。今回は可動を見るための試作品を前にその圧倒的なボリュームや、魅力について話を聞いた。
「ver. A.N.I.M.E.」担当者としてこれまでのBANDAI SPIRITS コレクターズ事業部の野口勉氏に加え、相澤歩氏に話を聞いた。相澤氏は野口氏の元、“ものの見方”、「ver. A.N.I.M.E.」ならではの価値観や、仕事の進め方などを学んでいるという。今回は相澤氏と野口氏に商品のこだわりを聞くと共に、関連商品である「ROBOT魂 <SIDE MS> RGM-79C ジム改 ver. A.N.I.M.E.」と、「ROBOT魂 <SIDE MS> MS-14A ガトー専用ゲルググ ver. A.N.I.M.E.」を取り上げていきたい。
金属パーツで巨体をしっかり支え、豊富なエフェクトで重厚感を演出
「ROBOT魂 <SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」は7月より「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」のMSを立体化している。河森正治氏の設定画に近い姿の「GP-01」と「GP-02」は非常に好評である。野口氏はこの好評に関しては、「予想していた」と語る。設定画に近い雰囲気の立体物は昨今商品化されていないため、ユーザーの期待を満たせるという実感はあったという。
その野口氏が0083での3番目の商品として選んだのが「ザメル」である。ジオン軍の長距離砲撃MSであり、機体背部に680mmカノン砲を装備する。このカノン砲の射程は50km。その強力な砲撃は一撃でトリントン基地司令部を破壊した。この巨体でありながらホバーによる高速移動が可能である。これまで余り立体化されていないモチーフなだけにファンへ届けたいという思いは強かったとのことだ。
試作品を前にして圧倒されるのはその密度感だ。製品も基本は成型色で、塗装はポイントで施される。表面は艶は抑え落ち着いた感じにし、現在見える細かい傷などもなくなるとのこと。商品はまずみっしりと詰まったような密度感が楽しい。力強さを感じさせる造形は、非常に見応えがある。鉄の塊のような、大型の陸戦兵器ならではシルエットは通常のMSとはっきり異なる魅力があって楽しい。
巨大なカノン砲とミサイルポッドで、遠距離攻撃専門のイメージだが、両肩には鋭いスパイクアーマーがある。ホバーによる突進力と自重を活かした攻撃に使うのだろうか? 顔のモノアイとスパイクアーマーはザクにも通じる、「ジオンの兵器」としての関連性を感じさせられる。
面白いのが腕のデザイン。巨体に不釣り合いと感じさせるほどに細い。指は長く、繊細な作業もできそうだ。「太さと細さがザメルの面白さなんです」と相澤氏は語った。腕の他にカノン砲は細く、長い。この腕はザクバズーカやヒートホークを握らせることができる。「ver. A.N.I.M.E.」ならではの連携もきちんと考えられているという。もちろん上半身も良く動く。腕の優秀な可動だけでなく、胸部スイング機構により、胸の前で手を合わせるなど幅広い可動を実現している。
足に関しては関節部分が布でカバーされている“シーリング処理”をパーツで再現している。この布状カバーは、通常のパーツとは違う“手で形を整えている感じ”を加えているという。こういった商品の設計はCADで行なうが、コンピュータ上で原型を直接作る“手原型”的な作業を行なうことで柔らかい曲線を実現しているとのこと。この布状パーツの設計では「ROBOT魂 パトレイバー」シリーズの「タイラント」などで培った技術だと野口氏は語った。
足パーツは付け根なども含めて金属パーツを使いしっかり重量を支えている。各部がしっかり曲がり、砲撃時の踏ん張った足の形、ホバー時のダイナミックな足の動きも再現できる。付け根も可動するため、足を大きく前にもできる。本商品ではザメルを浮かして飾ることもできる台座が用意されているのでダイナミックな足の動きを見せるディスプレイも可能だ。腰部分の大型の安定板も基部に金属が使われている。
そして本商品の大きなウリがエフェクトパーツだ。今回は彩色されていないものだが、派手な煙の表現が楽しい。特に楽しいのは砲身の発射エフェクト。発射エフェクトに加え、左右の煙、そして廃莢のエフェクトパーツまで用意されている。これらのエフェクトパーツをつけても砲身はラチェット機構でしっかりと支えられる。
足回りもド派手なエフェクトパーツが用意されている。組み合わせで砲の発射時、空中に浮いた形のホバリング時、そしてホバーでの全力の移動など多彩なシチュエーションを再現できる。エフェクトパーツはアニメをコマ撮りにして形を決めたこだわりのもので、ザメルはもちろん、ドムのホバーなど様々なシーンでも転用可能だ。
「できるだけ『ver. A.N.I.M.E.』は強く人気がある機体だけでなく、その周辺にいるMSも商品化していくことでシリーズ全体が魅力的になると思っています。ザメルは企画時商品化のハードルは高いと思っていましたが、ジオングの好評もあり、0083シリーズ序盤のタイミングで実現したかった。そうすることでシリーズを盛り上げたいと考えました」と野口氏は語った。
一方で立体化の少ないモチーフだけに苦労も多かったと相澤氏は語る。商品にはこれまでの商品化のノウハウの蓄積があることで、全体の解釈、関節構造、手足の付け根の位置など、様々な要素が練り込まれていく。RX-78ガンダムやザクは“これが理想型”といったところまで様々な商品開発を経て形成されているが、ザメルにはない。設定の大きさよりアニメでは巨大感を強調していたところも苦労した部分で、劇中で感じる大きさをどう再現するかも工夫したとのことだ。
ジムとガトー専用ゲルググ、こだわりが光る0083を彩るメカ達
「ROBOT魂 <SIDE MS> RGM-79C ジム改 ver. A.N.I.M.E.」は“今までで一番動くジム改”を目指して作られたという。実際社内スタッフでも本商品を特別に気に入っている人がいて、試作品を動かしているとのこと。実際触ると手足のしっかり動く感じが楽しい。
ジムらしい量産機らしいデザインと、陸戦兵器らしいゴツさ、情報量の多い表面処理など、ジム改ならではの特徴が活かされている。設計時の意図としては“内部骨格は他のジムと共通で、外装が異なっている”というイメージ。ジム改のデザインはカトキハジメ氏で、ディテールの細かさも特徴だ。
開発側のこだわりは後ろの腰アーマーのバズーカーのマウント。設定画では描かれていないが、カトキ氏の「Ver.Ka ガンダム」から取り入れられた連邦側の共有ジョイントという意図で盛り込んだという。こういった“統一感を意識したギミック”も「ver. A.N.I.M.E.」の楽しいところだ。
もう1つの「ROBOT魂 <SIDE MS> MS-14A ガトー専用ゲルググ ver. A.N.I.M.E.」は、GP-02、そして「0083」冒頭でザメルに乗っているところから、「この機会にガトーが乗った機体を集中的に商品化しよう」という想いも込めて生まれた商品で、チーム内では“ガトー祭り”といわれてもいる商品。リカラー(色替え)ではあるが、最大の特徴としてMSの身長より大きな超大型のビーム・ライフルを同梱しているところだ。
この銃はことぶきつかさ氏の短編コミック「ソロモンの悪夢」でガトー機が持っているものだ。このコミックのガトー機は頭部に指揮官用のアンテナがある。アニメ版ではアンテナがなく、どちらも再現できるようになっている。これもまた企画のこだわりだと相澤氏は語った。
ファンへのメッセージとして野口氏は、「『ver. A.N.I.M.E.』シリーズはこれからも高いクオリティでお届けしたいと思っています。ただ今回のザメルのような大型アイテムは頻繁に出るアイテムではありません。この機会に遊んで頂くことで、僕らは次の大型商品にチャレンジできます。ぜひ手に取って下さい」。
相澤氏は「『0083』は1991年の作品で、僕は1993年生まれ。生まれる前の作品の商品を手がけているわけです。作品ファンの皆様とは、“原体験がない”という違いはあると思っています。一方でだからこそお客様の声を聞き、答えられるところがあるとも思っています。さらに僕たちだからこそ思いつけるようなラインナップやプロモーションを企画できるとも思っています。今後の「『ver. A.N.I.M.E.』の幅の広がりに期待下さい」と語った。
今回はやはりザメルの圧倒的なボリューム、陸戦兵器としての重厚さが楽しかった。重戦車のようなフォルム、エフェクトパーツは、他のMSにはない魅力を感じた。
今回はやはりザメルの圧倒的なボリューム、陸戦兵器としての重厚さが楽しかった。重戦車のようなフォルム、エフェクトパーツは、他のMSにはない魅力を感じた。こういったバリエーション豊かなメカが登場するからこその「ガンダム」世界である。立体化の少ないメカを、統一スケールで、ハイクオリティなフィギュアにする。「ver. A.N.I.M.E.」が実現する世界は本当にスゴイ挑戦である。
(C)創通・サンライズ
※写真はフラッシュで撮影を行なっているため、各部の彩色などが実際の商品と異なります。