素晴らしきかな魂アイテム

【魂インタビュー】「METAL ROBOT魂 アカツキガンダム」、小西氏、坂埜氏のこだわりと経験を活かしたその“金色”を実現した技術と造形!

題字:浅野雅世
【第45回 魂アイテム】
「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> アカツキガンダム(オオワシ装備)」、10月発売予定。価格17,600円(税込)。アニメ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」に登場するMSで国家・オーブの旗機として設計された。金の装甲はビーム兵器を跳ね返す。商品ではその美しい金色の彩色に挑んでいる
【話を聞いたクリエイター】
多数の商品を手がけているBANDAI SPIRITS コレクターズ事業部の小西諒氏。原型師のDRAGON STUDIOの坂埜竜氏。今回もワガママを聞いてもらい、坂埜氏に商品のポージングをお願いした。やはりその大胆でこだわりを感じさせるポーズは感心させられる。他にも、今回のインタビューでは、小西氏のHi-νガンダムへのこだわりも注目して欲しい

 今回インタビューを行なったのは「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> アカツキガンダム(オオワシ装備)」だ。その美しく輝く金色が強く印象に残る商品である。“金色”というのは、古くは「ライディーン」や「ゴールドライタン」のころからロボットの色として取り入れられていた。「ガンダム」シリーズでは「百式」が真っ先に頭に浮かぶ。しかし、立体化という意味では難しいところがあるのだ。

 金色の表現として金メッキが思い浮かぶが、メッキの耐久度や塗装により部品が厚くなったり加工が難しくなる。そういった問題がある金メッキの美しい輝きを活かしながら、動かして楽しいアクションフィギュアにする。本商品はその難題をクリアしている。BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部で本商品を担当する小西諒氏と、原型師のDRAGON STUDIOの坂埜竜氏はいかにこの難題に挑んだか、その話を聞いた。

 今回はさらに坂埜氏が原型を担当した「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> デスティニーガンダム」のポーズ付けのコツや思い入れを聞くことができた。加えて受注を行なっている「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> Hi-νガンダム ~ベルトーチカ・チルドレン~」も商品を担当する小西氏のこだわりのポイントを語って貰った。3つの商品の楽しさをぜひ見て欲しい。


「電解メッキ」と「真空蒸着メッキ」が生む美しい輝きに包まれた金色の機体

 「アカツキガンダム(アカツキ)」は、アニメ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」に登場するMSである。物語の主要人物の1人カガリ・ユラ・アスハが登場する機体で、大きな力を持つ国家「オーブ」のフラグシップ機として設計された。最大の特徴は全身を覆う金色のコーティングで、このコーティングは「ヤタノカガミ」というシステムで、敵のビームを反射し、そのまま跳ね返すという驚異的な能力を持っている。

 アカツキはカガリが乗って出撃するシーンもあるが、その後ムウの搭乗機として活躍する。アカツキはストライクガンダムに近い設計思想で開発されたという設定があり、胴体のデザインなどストライクの意匠を多く受け継ぎ、またストライカーパックと同じように背中のパーツを交換できる。カガリが搭乗していた際は「オオワシ」という大気圏内で飛行可能なバックパックで、今回の商品ではこちらを装備している。ムウが乗った際にはオールレンジ攻撃が可能なドラグーンを装備した「シラヌイ」を使用した。こちらの商品展開も気になるところだ。

「METAL ROBOT魂 アカツキ」、今回は大気圏内戦闘用パック「オオワシ」を装備しての立体化だ
アカツキはストライクに近い設計思想と言うことで、露出したフレーム周りに共通するデザインが見受けられる

 「METAL ROBOT魂」シリーズでは、関節や足部分に金属パーツを使っているが、アカツキはこれまで以上に金属パーツを多く使っているところも特徴だという。足先、脛部分、、股関節だけでなく肩部分や首回りなども金属パーツだ。ちょっと面白く感じたのは、外装の金色部分に金属パーツを使うのではなく、フレーム(骨格)部分に金属パーツを使用しているところ。

 アカツキはストライク同様フレームが露出している場所が多く、坂埜氏はフレームを意識させるためにも金属部分を増やしたかったとのことだ。「フレームを目立たせることで、アカツキはストライクの系譜に繋がる機体だ、というイメージが強くできたと思っています。そこで関節だけでなく、外に見える部分でも金属パーツを使用しています。アカツキはその金色の外装に目が集まると思いますが、フレームにもしっかり注目してもらいたいですね」と小西氏は語った。

試作品を目の前にすると、その圧倒的な金色に感心させられる
露出するフレーム部分、黒い部分が金属パーツとなる。金の部分はABS素材だ

 本商品はやはりその全身金色のカラーリングが最大の特徴だ。「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> アカツキガンダム(オオワシ装備)」では、金属パーツに「電解メッキ」、そして外装のABS(樹脂素材)に「真空蒸着メッキ」という技法を使用し金を蒸着させている。この技法で金の塗膜をできるだけ薄く、そしてしっかり表面に貼り付けている。

 今回、小西氏が気をつけたのは塗装の“耐久性”だ。「METAL ROBOT魂」そして坂埜氏が原型を担当するアクションフィギュアは「ガシガシ動かして遊ぶ」ことこそ最大のセールスポイントだと小西氏は捉えており、手で触ると剥がれてしまうような塗装は避けたかった。金色の美しさを追求しながら、各部を手に持ってたっぷり動かして楽しめる、そういう耐久性に気を使ったとのことだ。

背中部分のバックパックを外したデザインも、はストライクと同じ小さなスラスターが取り付けられている

 さらに金のメッキによる表面処理も大きな課題となった。メッキは塗装以上に“厚く”なる。このためフィギュアに求められるディテール表現がどうしてもだるくなってしまう。外装にはメッキを使わず、塗装で金色を表現するという案も最後の段階まで検討していたが、美しい光沢を持ちながら、塗膜が薄くムラの出にく“真空蒸着メッキ”処理を工場側が実現してくれたので、今回のバランスが実現できたという。

 もちろんこういった最後の段階まで検討できたのは坂埜氏の設計があってのことだ。メッキ処理を選択すれば、ディテールが潰れてしまう懸念がある。だからこそ今回の設定では“面”の表現を多くし、シャープなパーツ構成を目指したとのこと。塗装ではなくメッキでも伝わる細部のデザインはどうすれば良いか、あらかじめそれを考えた坂埜氏の設計が、金色に輝き、そして細部のデザインの面白さも実感でき、そして何より動かして楽しい商品を実現できたと小西氏は語った。

 そしてマーキングである。真空蒸着メッキによる金のメッキの“薄さ”はマーキングも映えさせる。「ガンダムSEED」シリーズのオーブは日本を意識していると思わせる国で、アカツキやシラヌイだけでなく、船にタケミカズチ、可変量産MSにムラサメなど和名が多く見られ、漢字も当てられている。「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> アカツキ」にも各所に感じのマーキングが見れる。台座にも「暁」の文字が使われていて、とてもカッコイイ。

マーキングも繊細さが感じられる
台座のデザインもカッコイイ

 アカツキを立体化させるにあたり坂埜氏は腰回りのバランスが大変だったとのこと。アカツキはサイドアーマーなども大きく、中心のアーマーも突き出している。このデザインを活かしながら全体的なバランスをまとめ上げるところに工夫が必要だったとのことだ。もう1つ肩アーマーは左右2パーツだけでなく、上から装甲をかぶせる3パーツ構成でパーツの合わせ目を意識させない様にしている。ユーザーが手を入れなくても満足できる「完成品」だからこその工夫も随所に盛り込まれている。

 シラヌイのレールガンも注目ポイントの1つ。レールガンは握り部分が伸張しグリップが現われる。坂埜氏の工夫はレールガンの接続アームのパーツ構成。アームが3パーツで構成されることで自由度を確保し、きちんと小脇に抱えられるとのこと。基部はボールジョイントなので、構えやすくなっているとのことだ。

バランスが大変だったという腰回りのデザイン
肩アーマーは3パーツで構成されている
レールガンのアームを3パーツで構成することで、自由度の高い保持を可能にさせたという。しっかりと脇に構えての射撃ポーズがとれるようになった


アニメの作画を再現するためのポーズ付けにこだわった関節と自由度

 坂埜氏の設計というところで、5月25日に発売されたばかりの「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> デスティニーガンダム」の話も聞けた。本商品のこだわりポイントや、優れた点などは前回の小西氏のインタビューで取り上げているが、今回は坂埜氏に本商品のポーズ付けをお願いした。

 坂埜氏には毎回フィギュアにポーズを取らせていただいて撮影をしている。原型氏というフィギュアのポテンシャル、モチーフの構図、思い入れ……そういった全てを把握している坂埜氏が手の中でフィギュアを動かし、ポーズをとらせるとやはり違うのだ。何かコツはあるのか、今回はそこも質問してみた。

今回も坂埜氏にお願いしてポーズをつけてもらった。この写真は坂埜氏自身の撮影だ
自分が生み出す原型にこだわりたいという想いで原型師という道を選んだという坂埜氏

 坂埜氏は「アニメを再現しているだけです」と答えた。アクションフィギュアは様々なポーズをとることができるが、「原作再現」は最も注力するポイントだ。このため原作のビデオの止め絵や、原画など様々なシーンの「この1枚」という絵を抜き出し、それを脳内で再現しながらフィギュアを動かしていくという。手のライン、肩の位置、つま先の方向……設計ではそういったポーズがとれるように各部を調整し、商品ではその絵に近づけるように各部を調整していく。「絵に忠実にする」というのが、カッコイイポーズをとらせるコツだと坂埜氏は語った。

 今回は手のひらに付いた武器「パルマフィオキーナ」を使うシーンをイメージしてポーズ付けしてもらった。このポーズのコツは腰の向きと首の向きをきちんと合わせた上で、胸部分は大きく曲げること。そして写真を撮る際は股間を少しだけ斜めにする。こうすることでカッコ良さが増すとのこと。腰の入った力のあるポーズをとらせるため意識をするポイントとのことだ。

首の自由度は注力した部分だという
腰アーマーは接続パーツを挟みこみ隙間を作ることで、足の自由度を上げている
シンプルなデザインの「高エネルギー長射程ビーム砲」は元デザインを活かしながらマーキングで情報量を増している

 デスティニーはプラモデルやMETAL BUILEDなど立体物での評価が高い。「ROBOT魂 <SIDE MS> デスティニーガンダム」は自由度の低い「可動」という以外、各部の形状やバランスなどはとても良かったと坂埜氏は語った。今回は特に首回りをより動くように設計し、劇中作画を参考に過去アイテムと差別化を図りながら設計を行なった。他の商品に負けないようにというプレッシャーもあったとのことだ。

 坂埜氏の設計でのこだわりポイントは腰アーマー。腰とアーマーを直接接続させるのではなく、間にもう1つパーツをかませることで、腰アーマーを本体から離し、デザインを保ちながら足の自由度を上げている。坂埜氏は、これまでのデスティニーの商品の良さを、可動の自由度、ポージングの楽しさでさらに強調できるように力を込めて設計したという。

 小西氏は改めて完成品を手にすることで得た実感として、「本当に触っていて楽しい、遊んでいて楽しい商品になりました」と語った。ポージングの楽しさ、そして手に持って動かすからこそ実感できる質感の異なる塗装によるマテリアルの雰囲気。本体のつや消し、翼の赤の部分のグロス塗装、関節部分の「電解メッキ」により黒光りする関節……動かすことで魅力がふくらむ商品だという。「これまでのデスティニーの商品に負けない良い物になった、という実感があります。ぜひ多くの人に触っていただきたいですね」とのことだ。

腰と顔の向きを近づけ、腰と上半身をひねることで力の入ったポーズが取れる
デスティニーは多彩な武装を持つギミック満載な機体なだけに人気が高く、だからこそプレッシャーも大きかったとのこと


“原点回帰”の顔立ち。Hi-νガンダムらしさを強調するリニューアル

 もう1つ、商品担当者として小西氏が一言触れておきたい商品が、「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> Hi-νガンダム ~ベルトーチカ・チルドレン~」。こちらは10月発売予定で現在予約を受け付けているが、メーカーの予想を上回る人気だという。

 「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> Hi-νガンダム ~ベルトーチカ・チルドレン~」はやはりそのボリューム、密度が圧倒的だ。「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> Hi-νガンダム」はカラーリングの変更など改修を行なわれ何度か商品化しているアイテムだが、先日発売された「ROBOT魂 <SIDE MS> ナイチンゲール(重塗装仕様)」と並び立てるように頭部を含めた上半身のほとんどと、前部腰アーマーの造形をリニューアルしている。

今回特にこだわったのが“横顔”だというHi-νガンダムらしさをもう一度見直し、上半身を中心に改修が行なわれている
様々な商品を手がけつつ、それぞれに強いこだわりを活かしていく小西氏。今後もさらなる広がりを提示すべく準備を進めているとのことだ

 小西氏が特にこだわったというのが顔の造形。きつく、迫力のある目線を実現している。お気に入りは横顔のラインで、今回はこちらをアップで撮影し、そのラインを確認することができた。Hi-νガンダムはνガンダムとは一味違うボリューム、カラーリングでやはり独特の雰囲気がある。今回造形をよりシャープにしたことでキャラクター性がさらに強められたと感じた。

 小西氏は最後に「『SEED DESTINY』シリーズ、今回の『Hi-νガンダム』も本当にとても好評で、こちらもさらに力を入れていける状況になってきました。10月くらいに行なう予定の次のTAMASHII NATIONでさらに広くチャレンジしていく姿勢をお見せできると思います。ちゃんと提示させていただけるよう、がんばっています。楽しみにしてください」とユーザーに向けメッセージを送った。

「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> Hi-νガンダム ~ベルトーチカ・チルドレン~」。人気の高いHi-νガンダムといモチーフに対し、これまでとは異なるコンセプトで設計をリニューアルしている

 今回3商品を見ることができたが、それぞれのカッコ良さ、ディテール、可動に感心させられた。その中でもやはり強い印象に残るのは、「METAL ROBOT魂 アカツキガンダム」の金の塗装だ。この塗装を実現しながら可動に注力し、ポーズ付けが楽しめるというのは、とても魅力的だ。手に持つと高い満足感を得られるアイテムだと感じた。

【プレミアムバンダイで購入】