素晴らしきかな魂アイテム

【魂コラム】アーマーゾーン! 野性味溢れるライダーを力強く再現! 「S.H.Figuarts(真骨彫製法)仮面ライダーアマゾン」

題字:浅野雅世
【第17回魂アイテム】
「S.H.Figuarts(真骨彫製法)仮面ライダーアマゾン」、9月29日発売、価格は7,020円(税込)。1974~1975年に全24回に渡って放映された「仮面ライダーアマゾン」のアマゾンを、S.H.Figuartsの真骨彫製法にてフィギュア化。2011年に発売された「S.H.Figuarts 仮面ライダーアマゾン」とは異なる新規設計で、本稿ではその比較も行なっている

【ライター:稲元徹也】

 ゲーム及びホビーを主軸に執筆するフリーのライター。「真骨彫製法」シリーズは好きなライダーだけ買っていて、手持ちには響鬼、ディケイド、Wサイクロンジョーカー、Wファングジョーカーがある。電王とフォーゼの発売を待ちわびつつ、劇中で共演機会があった2人の写真を撮影。このシーン、本当はクウガもいるのだけど、未所持にて再現できず……。(絵:橘 梓乃)

 BANDAI SPIRITSが展開中の「S.H.Figuarts」シリーズの「真骨彫製法」にて、「仮面ライダーアマゾン」が発売された。骨格から造形を行なう技術によって、ヒーロー本来の存在感を表現を実現するこのシリーズでは、主に平成ライダーが発売されていて、昭和ライダーとしては2017年12月に発売された「仮面ライダー新1号」、「仮面ライダー新2号」に続いて、このアマゾンが3体目となる。

 「S.H.Figuarts」シリーズとしては、2011年に1度フィギュア化され、プレミアムバンダイでは専用バイクのジャングラーも発売されているが、今回は真骨彫製法の基準に基づいた完全新規の造形がほどこされたこの製品が発売となった。発売から少し日時が経過してしまったが、ワイルドさが魅力の“真骨彫アマゾン”をレビューしていこう。

白地にデジタル処理した本体の顔写真をメインにした真骨彫シリーズのフォーマットに準じたものだ
内部ブリスター。付属品は4種類の両手と2種のマフラー、そしてベルトのコンドラー着脱状態のパーツだ


アマゾンの怪人的なデザインを、真骨彫製法独自のシルエットでフィギュア化

 「仮面ライダーアマゾン」は、1974年より放送が開始された、「仮面ライダー」シリーズ第4弾となった作品だ。事故によって遭難し、南米アマゾンのジャングルの奥地で育った日本人の山本大介が、古代インカ帝国に伝わる秘密のエネルギーを秘めた「ギギの腕輪」を長老バゴーに移植されて改造人間となり、それを奪おうとする十面鬼が率いる組織「ゲドン」との戦いを描いている。

 それまでの仮面ライダーとは趣がまったく異なり、そのデザインは怪人にも近く、架空の「マダラオオトカゲ」をモチーフとした姿は、全身に赤いスジが入った緑色で、手足や背中にヒレを思わせる意匠がほどこされている。その戦い方も怪人的で、その初期にはパンチやキックなどの格闘技ではなく、噛みつきやひっかきなど動物的な戦法を多用し、ゲドンの怪人を流血させてダメージを与えるといったワイルドな戦い方が見どころだった。

 主人公の大介(劇中ではこの名前で呼ばれることはなく、変身前の姿でも「アマゾン」と呼称される)も登場時にはほとんど言葉を話せず、長老バゴーの言葉によってやってきた日本で友達となった岡村まさひこや立花藤兵衛との交流により少しずつ言葉を覚えていくという演出があり、「アマゾン、トモダチ」というセリフは、昭和ライダーファンの心に残るフレーズとなった。

真骨彫アマゾン全身。かなりヒロイックなスタイルで、脚は太ももが太く、腕はやや細め。自然に“S字立ち”になるプロポーションだ

 当時は小学生にもなっていなかった筆者だったが、物心ついた頃に見た記憶があるのが前番組の「仮面ライダーX」とこの「仮面ライダーアマゾン」であり、それまでのライダーシリーズとはひと味違った趣に興味を持ったようで、Xの変身ベルトと、アマゾンの超合金を買ってもらったことを覚えている。

 「S.H.Figuarts(真骨彫製法)仮面ライダーアマゾン」は、そんなアマゾンの野性味あふれる魅力が詰め込まれている。この製品を開封して筆者が最初に気づいたのは、「S.H.Figuartsアマゾン」との体格の大きな違いだ。

 「S.H.Figuartsアマゾン」は全身がやや細身で、頭部の形状もマスクというよりは頭部そのもので、後頭部のとがった部分もかなり大きく、番組アイキャッチにも登場する漫画原作のアマゾンにも近い印象を受ける。一方今回真骨彫製法にて新規に設計されたアマゾンのは、マッシブと言って差し支えない体躯で、特に太ももの太さや胸部コンバーターラングのボリュームが特徴的だ。

 丸みを帯びた頭部はかなり大きめで、人型のアクションフィギュアとしての存在感が強調された印象がある。横から見ると、素立ちの状態はすねが太ももよりやや後ろに位置していて、いわゆる“S字立ち”時の下半身となっているのも今風の設計だ。

模様やギギの腕輪の塗装には感心させられる。劇中のイメージで頭部は光沢、本体はつや消しで処理されている
シルバーで塗装されたファスナーの溝には、細かなモールドもある

 全身に見られる赤のまだら模様はかなり複雑なパターンで、造形にうっすらとモールドがあり、それをなぞるようにラインが引かれている。トレードマークであるギギの腕輪も、塗装に加えて細かなモールドにスミ入れが施されている。

 コンバーターラングのグラデーション塗装や、グローブとブーツの内側だけにシルバーで引かたスーツのジッパーを表現するラインなど、塗装にはかなりのこだわりが見られる。筆者の購入した個体には塗装ムラやはみ出しもなく、非常に満足度の高いものだった。

マフラーは首のボールジョイントに接続。ボールジョイントは首を中心に1周し、位置も自在だ
「S.H.Figuartsアマゾン」(右)との比較。体型がかなり異なっているのがわかるだろう


独自の可動箇所を設け、アマゾンの激しいアクションを再現可能

 この真骨彫アマゾンの可動域は、「S.H.Figuartsアマゾン」よりも大幅に増えていて劇中の激しいアクションの再現が可能だ。両肩には前後へのスイング域を設けていて、胴体は3つに分割、グローブとブーツそれぞれの境目にロールが入り、当時のスチールでもあまり見られなかったような外連味のあるポーズを付けられるようになっている。

 またこの可動により足の設置性が非常に高く、よほど無理なポーズを付けない限り自立してくれるので、動かしているのが楽しくなるフィギュアでもある。もちろん必殺の「大切断」ポーズも難なく決められる。

胴体は3つに分割。これにより、体をひねったりかがんだりする状態も可能となった
マスクのクラッシャーはもちろん可動。口の断面はガンメタルで塗装されている
背ビレは中央よりやや下に可動域があり、腰の動きに合わせられる
頭を上げると後頭部パーツが収納される。マフラーを後ろに付けるときも便利だ

 構造として面白い部分もいくつか存在していて、例えば背ビレは下側2/5ほどの部分が稼働するようになっていて、背中を丸めても背ビレが浮いてしまうことがない。また後頭部は下を向くとせり出し、上を向くと中に収納されるというギミックになっていて、見た目をなるべく損なわないように可動域を増やしている。

 マフラーの付け根の移動やコンバーターラングの可動など、「S.H.Figuartsアマゾン」から引き継いだギミックもあり、同じキャラクターを題材としたフィギュアとしての正統進化を遂げているとも言える。

「アー・マー・ゾーン!」のかけ声で変身。ポーズはシンプルだ
「ケケーッ!」というかけ声で飛び上がるコンドルジャンプはアマゾンの最も印象的なポーズだ
番組スチールなどで見られた腰をひねってかがめたポーズも思いのままだ
体を大きくひねれるので、胸部が邪魔にならずに「大切断」のポーズもとれる

 これだけの可動範囲の広さがあると、それをさらに楽しむための付属品も欲しかったところだ。ベルトのコンドラーは外した状態のパーツは付属するものの、劇中でよく使われていたロープ状態のものはない。

 コンドラー以外の付属品はマフラーと手のみであり、大切断エフェクトなどが付属した「S.H.Figuartsアマゾン」と比較すると物足りなさを感じてしまう。現状の税込7,020円という価格に対して付属品が付くとなれば、さらなる高騰も予想され、やむを得ない仕様だとは思うので、筆者は「S.H.Figuartsアマゾン」のものを使用して楽しんでいる。

「S.H.Figuartsアマゾン」に付属する大切断エフェクトやコンドラーを使用した例。正しい遊び方ではないので、自己責任で

 劇中のアマゾンは変身前、変身後ともに細マッチョな体型で、それにより頭部の形状やヒレなどが強調される結果となった。それゆえ、この真骨彫製法のマッシブな体型は、番組を見ているかどうかで印象が異なり、当時のスーツアクターの骨格を意識したものでないことを受け入れられないという声も聞かれた。

 丸みを帯びた頭部や太めの太ももなど、ややデフォルメ分も入った体型になっていることもあり、好みがわかれることは間違いないのだが、個人的には“スタイリッシュなアマゾンのフィギュア”として楽しんでいる。11月5日現在、まだ市場にも在庫があるようなので、ワイルドすぎる昭和ライダーのダイナミックなアクションをぜひ堪能してみてほしい。

ポーズを取るのがとても楽しいフィギュアだ。「アマゾン、トモダチ」のポーズ用に、小指を立てた組み手があれば嬉しかった

※記事中、昭和ライダーの「真骨彫製法」に関して、本商品は3体目であり、記事に間違いがあったため修正させていただきました。