レビュー

これは傑作!「鬼武者 Way of the Sword」レビュー

自由度の高いゲーム性、奥深い剣戟アクション! 全く新しく生まれ変わった「鬼武者」

【鬼武者 Way of the Sword】
9月4日 発売予定
価格:
通常盤:8,990円
デラックスエディション:9,990円
プレミアムデラックスエディション:10,990円

 シリーズ1作目が2001年にリリースされ、カプコンを代表する看板タイトルの1つとなったアクションゲーム「鬼武者」シリーズ。最後にリリースされた「新 鬼武者 DAWN OF DREAMS」から約20年ぶりの新作となる「鬼武者 Way of the Sword」が9月4日についに発売となる。

 人類の脅威となる化け物の「幻魔」、その幻魔に対抗する「鬼の力」といったシリーズ共通の設定はあるものの、キャラクターや世界観などは過去作との繋がりはなく、新規のプレーヤーにも安心な設計だ。

 約20年も経っていることもあり、ゲーム部分はありとあらゆる面が進化している。奥深さが格段に増した手に汗握る剣戟バトルや、自由度の高いゲーム性へと生まれ変わったその内容など、本作の魅力をお届けしよう。

【『鬼武者 Way of the Sword』 - The Legend of the Onimusha】

主人公があっさり討死!? 開幕から衝撃のストーリー展開

 6月から本作の体験版が配信されており、その体験版では主人公・宮本武蔵が清水寺を目指すというシーンから始まる。なので、これまでどういった話の流れで武蔵が「鬼の籠手」を手にし、幻魔と戦うことになるのかが明かされていなかった。そして、今回ようやく気になっていた冒頭のシーンからプレイすることができた。

 本編では、江戸時代の京都の名門剣術「吉岡道場」の当主である吉岡清十郎との決闘の場面から物語が始まる。剣の達人を前にして、「最初の獲物としては上々だ」と言い捨てる武蔵。この自信に満ちたふてぶてしい様は見ていて痛快だ。

最初の敵となる吉岡清十郎
自分が狩る側と確信している強気なセリフにはシビレた
武蔵は一閃の一太刀で吉岡清十郎の腕にダメージを負わせ、戦いに勝利する

 そんな武蔵だが、ただ強くて武骨な侍というキャラクターではない。当主がやられて吉岡一門による襲撃を受けるシーンでは、初めは返り討ちにする勢いを見せていたものの、ゾロゾロと湧いて出る門下生のあまりの多さに表情を一変。コミカルに決死の逃走を試みるといったユニークな面も持ち合わせている。過去作の主人公たちはヒーロー然としたキャラクター像であったが、本作の武蔵は“人間味のある等身大の侍”というこれまでにはない魅力を持つキャラクターである。

背を向けながら余裕を見せる武蔵。しかし振り返ると……
あまりの数にこの笑顔
この数には分が悪いと逃走。焦り方が非常にリアル

 そして、ストーリー展開の緩急も凄まじい。やや軽いノリで吉岡一門からの追跡を振り切った後は、突如現れた幻魔たちにライバルである佐々木巌流と共に武蔵もあっけなく殺されてしまうのだ。相手は本当にザコの幻魔なのだが、普通の人間の力では一般の幻魔でさえ全く歯が立たないという、これまでの作品以上に幻魔の恐ろしさを表現している。

武蔵のライバルである佐々木巌流。登場と同時に背後から刺されて絶命
幻魔の圧倒的な力の前に武蔵も倒れる

 命を落とした武蔵は、地獄の入口で謎の白装束の男と出会い、半ば強引に「鬼の籠手」を腕に着けられてしまう。

 鬼の籠手の力により現世に蘇ることができたのだが、己の力のみで天下無双の剣豪を目指す武蔵にとって鬼の籠手は邪魔な存在であった。しかし、鬼の籠手が武蔵の命を繋ぎとめており、幻魔の魂を喰らって肉体を回復させなければ外すことができない。鬼の籠手と訣別するため、武蔵は幻魔との戦いに身を投じる――というのが本作の物語の本筋になる。成り行きで始まった武蔵の戦いだが、導入からプレーヤーをグイグイ引き込むストーリーである。

鬼の籠手を着けるのを拒むも強引に着けられてしまう。この男は何者で、何が目的なのだろうか……?
鬼の力を得て蘇った武蔵。手も足も出なかった幻魔たちを軽々と斬り捨てる

真剣勝負の神髄は力動にあり! 戦局が一変する新システムが熱い

 これまでの「バイオハザード」をイメージさせるような決められた道筋を進んでいくゲーム性とは大きく変わり、本作では京都の町を自由に行動・探索ができるワイドリニア形式を採用している。京都に実在する六道珍皇寺を拠点とし、メインミッションをクリアしていくことで物語が進んでいく。

小野篁や出雲阿国といった仲間と共に幻魔を討伐していく
広大な京都の町を駆け回り、ミッション発生ポイントに向かう
町の至る所で幻魔が暴れ回っている。襲われている人もいるので積極的に助けよう
ミッションの目的を達成すれば、次のミッションが出現する。このサイクルを繰り返してストーリーを進めていく

 ここからは本作の肝となる剣戟アクション部分に触れていこう。

 基本となるアクションはスピードは速いが威力の低い片手攻撃と、一振りが遅いが威力の高い両手攻撃の2種類があり、これらのアクションを駆使して幻魔を倒していく。

片手攻撃は素早い斬撃を連続で繰り出せる
両手攻撃はダメージが大きいだけではなく相手をよろけさせやすく、強力な体術を叩き込むことができる

 戦いの中で随時発生するチャンバラ演出もバトルを大いに盛り上げる。たとえば、刀同士がぶつかり合うと「相子剣戟」が発生する。お互いに刀を弾き合い、仕切り直して次の一撃を互いに出し合うといったまるで演舞の様な演出が入る。

 ここで次に出す攻撃のルールが、“相子剣戟が発生させた攻撃と逆の攻撃を選ばなければならない”というもの。片手攻撃で発生したらならば両手攻撃、両手攻撃で発生したなら片手攻撃を瞬時に判断してボタンを押さなければならない。成功すると相手に大ダメージを与えられるが、失敗すると逆にダメージをもらってしまう。一瞬たりとも気が抜けない戦いはプレーヤーを熱くさせる。

 そして、チャンバラアクションの華でもある鍔迫り合いも稀に発生する。ボタン連打で相手を押し切れば自分の攻めのターンに持ち込める。これらの瞬間瞬間で発生するアクションも的確に成功させていくのも戦いを生き抜く重要なポイントだ。

刀がぶつかり合うと、間合いを取り合い仕切り直す。この瞬間の間も非常にカッコいい
相子剣戟は突然発生するので、ボタンを連打気味で戦っているとミスをしてしまうので注意が必要
火花散らす鍔迫り合い演出もテンションが上がる

 「鬼武者」シリーズの代名詞と呼べる定番のシステムである「一閃」は、本作ではさらに爽快なものになっている。一閃はボス以外の幻魔を一撃で倒すことができ、ボスにも特大級のダメージを与えられる必殺の一太刀だ。

 強力がゆえに発動条件がかなりシビアで、敵の攻撃が武蔵に当たる直前の瞬間にジャストのタイミングで攻撃ボタンを押さなければならない。失敗すると、当然敵の攻撃は直撃する。ザコ戦ならまだしも、ボスで一閃を狙うのはかなりのリスクが伴う。

一閃が成功すると敵の斬撃を回避して、閃光の一撃を放つ
失敗するとかなりの痛手を負ってしまう

 通常の一閃の発動条件は過去作同様に狙うのがかなり難しいが、本作から新たに実装された「力動」と呼ばれるシステムが一閃の間口を大きく広げている。

 攻撃をヒットさせたり、弾きなどの防御アクションで相手の攻撃をしのぐことで力動ゲージを奪い、ゲージがゼロになると「力動崩れ」状態にすることができる。力動崩れ状態の敵は普通に斬るだけで無条件で「崩し一閃」が発動するのだ。

 どんなやり方であっても力動ゲージさえ削ってしまえば、アクションゲームがそれほど得意でない人でも一閃の爽快感を存分に味わうことができる。「鬼武者」シリーズの核ともいえるシステムながら使いこなすにはかなりの練習が必要だったという問題点を見事に解消しているのはさすがである。

 ほかにも攻撃を受ける瞬間にガードで発動する「受け流し」、攻撃の瞬間に回避して即反撃に移れる「見切り回避」、ガード状態から敵の攻撃を弾く「弾き」など、受けの手段も数多く、それぞれが力動ゲージを削ることに繋がる。その合間に「相子剣戟」のような特殊アクションも入ってくるので、戦闘そのものがとても楽しい。

力動崩しのおかげで、誰でも一閃を使うことができる

 過去作では基本的に連打で斬りまくって戦うといった傾向が強かったバトルであったが、力動システムによって攻めと守りの攻防がとにかく奥深く、かなり熱いバトルに進化している。

 20時間ほどプレイをして、本作のバトルの神髄は“力動ゲージの奪い合い”にあると強く感じた。先でも触れたように、力動ゲージを奪うことで一閃を繰り出すことができるので戦いが圧倒的に有利になる。

 しかしこれは敵だけではなく武蔵にも力動ゲージがしっかり存在している。敵の攻撃を食らってしまったり、何発もガード攻撃を受けてしまうと力動ゲージがみるみる削れ、ゼロになると同様に力動崩れ状態になってしまう。

 この状態になっても敵から一閃を食らうということはないのだが、魂を放出してしまい、体力や必殺技を使うのに必要な鬼力を大幅に失ってしまうのだ。さらに放出した魂は敵も吸収してくる。すると敵の攻撃が強化されるので、力動崩れになった途端に一変して窮地に追い込まれるという、常に緊張感のあるバトルになっている。

タイミングよく敵の攻撃を弾くと力動ゲージを大きく削ることができる。守りの行動が攻めにも繋がっているという非常に奥深い戦闘システムだ
力動ゲージがゼロになってしまうと、回復する間もなくそのまま畳みかけられてゲームオーバーになることもザラにある

 以前にプレイした試遊版でも感じていたが、本作で登場するボスはどれも一筋縄ではいかない手強い相手となっている。

 基本的にボス幻魔はこちらの攻撃を受けながらも怯まずに攻めてくる、いわゆるアーマー状態がデフォルトなので、相手のパターンに合わせて攻めと守りを的確に切り替えて立ち回らなければならない。

 これだけ聞くと非常に窮屈な戦いの様に思えるかもしれないが、隙を見せた時には一気に攻め、攻撃を仕掛けてきそうな気配がしたら弾きや受け流しを準備してしのぐ。静と動、攻めと守りの展開の早さが、没入感のある真剣勝負を存分に味わわせてくれる。

 戦いで味わえるのはヒリつき感だけではなく、敵の猛攻を弾きや受け流しを成功させてしのぎ切ったときは、まるで自分が剣の達人になったかの様な感覚に酔いしれる。苦しい守りが続いた後、「崩し一閃」の発動で一気に大ダメージを与える瞬間の気持ちよさはクセになる。

初見ではボスの攻撃をしのぐのはかなり難しいが、リトライを重ねているうちにパターンが読めてくる
ボス相手の崩し一閃は、部位選択でダメージ重視か、放出させる魂を重視かを状況に合わせて選択できる

 そして、他のアクションゲームではあまり感じたことがない“己の弱い心との闘い”といった部分も強く感じられた。あくまで筆者の個人的な感想にはなるが、筆者が強敵との戦いで敗れるパターンの大半は“自信のなさ故に余計な行動をして負けるパターン”であった。

 例えば、相手の力動ゲージがもう少しでゼロになりそうなとき、一回攻撃を弾けば力動崩れ状態に持っていけるのだが、焦って攻撃で力動ゲージを減らそうとして敵の攻撃と噛み合ってやられるパターンや、自分の体力が少ないとき、あと一回攻撃をしのげば回復アイテムを使うチャンスが生まれるにも関わらず、ジャストで攻撃を防ぐ自信がなくて強引に回復しようとしたところに攻撃が直撃するといった、自分の迂闊な行動で負けを引き寄せてしまう場面が多く見られた。

 特にボス戦において、一瞬の気の迷いが死に直結するという、まるで剣豪同士の死合を表現したかのような戦いを楽しむことができた。プレイしていて思わず声が出てしまうほど緊張感のある戦いはぜひ一度味わってもらいたい。

一旦攻撃をしのげばいいものの、回復を焦ってそのまま散華。メンタルの弱さで数えきれないほどゲームーオーバーになった

やり込み要素のボリューム感も半端じゃない! 京都の伝承にまつわるサブクエストからも目が離せない

 メインストーリーを進めるだけではなく、ワイドリニアという設計を活かした探索要素やサブクエストなどのやり込み要素もふんだんに用意されている。

 京都の町には隠された宝箱が数多く存在し、それらを手に入れるには「眼覚醒」をはじめとした鬼の力を使う必要がある。鬼の力はメインストーリーを進めていくことで開放されていくのだが、この要素が探索の面白さを増幅させている。

 剛力の「腕覚醒」は、町の至る所にある道を遮る瘴気壁を破壊することができ、探索エリアを拡大させられる。次に「脚覚醒」は特定の壁を走り抜けることが可能となり、本来行けなかった場所にも進むことができる。そして、鬼の力の中でもっとも活躍する場面が多いのが「眼覚醒」で、周囲に落ちているアイテムをサーチしたり、通常では目視できない隠れた宝箱を発見できたりもする。広大なマップをただ駆け回って宝を手に入れるのではなく、鬼の力を駆使して仕掛けを解いていくという遊びが盛り込まれているのも面白いポイントだ。

フィールド上に隠れている宝箱の中身は、成長に必要な素材や資料的なものまで様々
腕覚醒で障害となる壁をぶっ壊せる
戦闘でも活躍。盾や堅い守りを崩すことができる
まるで忍びのごとく、脚覚醒で壁走りが可能
鬼の籠手が光る場所で眼覚醒を使うと、隠れていた宝箱が出現する
結界を作る厄介な幻魔も眼覚醒で目視できるようになる

 サブクエストもかなりやり応えがある作りになっている。マップ上から受注場所が確認ができ、特定の人物と会話することでイベントが発生する。

 本作のサブクエストは単なるお使い的なものではなく、源氏物語でお馴染みの平安時代の作家・紫式部と怪奇を追うといったドラマ仕立てになっているのも引き込まれるポイントだ。

武蔵と見聞きした怪奇を物語に綴る紫式部
本人は部屋から出ないため、代わりに紫の蝶を同行させている

 とあるサブクエストでは、重病を負ったDV夫のために、その妻は毎日清水寺でお祈りをしていた。ご近所の人からは、普段から酷い目に合っているのに夫の病気が回復を祈っていて健気だと噂をされていたが、後に夫婦の家では夫の変死体が見つかる。

 実は妻が通っていた清水寺は「夜叉神」と呼ばれる神が祀られており、人を呪い殺す恐ろしい縁切りを祈願する場所でもあったのだ。この話はゲームの中だけの設定ではなく実在する伝承だったりする。

 サブクエストのエピソードは、京都で昔から言い伝えられている伝承などをモチーフにしており、ゾクリとするショートエピソードと共に京都にまつわる黒い歴史を学ぶことができて非常に面白い。本作で知った知識を博識の顔をして誰かに話したくなるはずだ。

サブクエストながら、カメラアングルの演出などもメインストーリー並みにしっかり作り込まれている

 宝を探したり、サブクエストを消化するためには広大な京都のマップを駆け回ることになるが、点々と配置されている「破魔鏡」からワープすることができるので、移動のストレスはフリー。ロード時間もほぼ瞬時なので、快適なのが地味に嬉しい。

 他にも、素材を集めて武蔵の装備や能力を強化させる成長要素や紫式部から頼まれる狛犬探しなど、やり込みのボリューム感が半端じゃない。全てを遊び尽くすにはかなりの時間が溶けそうだ。

破魔鏡ではワープやセーブ、武蔵の強化などが可能。新アクションなども解放していけば、より快適にゲームを楽しむことができる
町の至る場所に隠れている狛犬。見つけた数で紫式部から報酬がもらえる
出雲阿国に素材を渡して鬼灯袋を強化すれば、回復アイテムの効果や使用回数などの上限を上げられる

孤高の侍・宮本武蔵の成長物語も必見

 奥深いチャンバラアクションや自由度の高いゲーム性など、様々な魅力を持つ本作だが、主人公・宮本武蔵の成長物語も見逃せないポイントである。

 先にも少し触れたが、歴代「鬼武者」シリーズの主人公たちは完成されたヒーローの印象が強いが、本作の武蔵は剣の腕は他を寄せ付けない強さを誇るものの“人間としては非常に未熟”といった人物である。

 ゲーム冒頭で吉岡清十郎に「親類縁者もすべて斬り捨てる」と言われた際に、「そんなモンは一人もいねえ。身軽に越したことはねぇ」と答える。武蔵は孤高の存在で、守るものも何もなく本当に剣の道だけが全てであった。

真っ直ぐに侍としての生き方を歩んできた武蔵

 剣と共に己だけで生きてきたこともあり、鬼の籠手に宿る静御前を「篭手女」と呼ぶ粗暴な武蔵に、静御前も不快感を示していた。

 他人を思いやる気持ちが一切ない武蔵は、六道珍皇寺で共に幻魔と戦う仲間である出雲阿国とも幾度となく衝突を繰り返すのだった。

孤高が故に、仲間たちとも相容れない関係であった

 そんな武蔵も数々の戦いを潜り抜ける中で、徐々に仲間を思いやる気持ちや、誰かのために剣を振るう“鬼武者”へと成長していく。人間として未熟な分、これまでの「鬼武者」シリーズにはない、主人公の人間としての成長がしっかりと描かれているのだ。

不器用ながらも、世界のために戦うことを決意する武蔵の姿には熱いものを感じる

 今回、約20年振りの「鬼武者」を存分に体感したが、正直を言ってこれまでの「鬼武者」シリーズとはまるで違うゲームになっていた。もちろん良い意味でだ。

 過去作では横道に逸れる要素などはそれほど多くはなく、ほぼ本筋のストーリーを追うといったゲーム性だった。しかし本作ではメインストーリー以外にも遊びが詰まっておりゲームのボリューム感は格段にアップしている。

 アクション面の奥深さと歯応えのある難易度も絶妙で、熱心なアクションゲームファンも唸る仕上がりになっている。過去に「鬼武者」に夢中になった人はもちろん、「鬼武者」を通っていない若いゲーマーにも触れてもらいたい1本だ。