【特別企画】

必殺技音はスーツケースから生まれた! 「鬼武者 Way of the Sword」開発のこだわりを目撃!

清水寺や安井金比羅宮などでゲームとリアル風景を比較も

【鬼武者 Way of the Sword】
9月4日 発売予定
価格  通常盤:8,990円
デラックスエディション:9,990円
プレミアムデラックスエディション:10,990円

 カプコンは、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2/PC用剣戟アクション「鬼武者 Way of the Sword」を9月4日に発売を予定している。2006年にリリースされた「新 鬼武者 DAWN OF DREAMS」から約20年ぶりの新作となる。

 本作は、主人公・宮本武蔵のフェイスモデルに名優・三船敏郎氏の起用をはじめ、開発にはかなりのこだわりと熱量が注がれている作品となっている。

 そして今回、カプコンのサウンド開発陣による音楽とSEの制作秘話と裏側の様子や、本作の舞台となる京都の聖地を実際に見て回り、ゲームではどのように活きているかを肌で感じることができた。

 「鬼武者 Way of the Sword」を形作る“開発のリアル”を目撃してきたので、本稿ではその熱量をお伝えしたいと思う。

京都の空気感を感じられるリアルなサウンドと「鬼武者」の世界を彩る感情豊かな楽曲を堪能

 今回カプコン研究開発第2ビルのサウンドスタジオにて、「鬼武者 Way of the Sword」のサウンドの魅力について取材できた。

 本題に入る前に、カプコンサウンドのこれまでの歴史を実際に耳で聴いて体感した。ファミコンの1chモノラル音源から始まり、2chのステレオ音源までは平面なサウンドであったが、5.1chサラウンドになると音に奥行きが生まれ、音がする方向などもしっかりと把握できるほど。7.1.4chの3Dオーディオともなると臨場感が凄まじく、頭上からも音が降り注いでくる感覚であった。

 普段ゲームをプレイする際は映像の部分に目が行きがちだが、サウンドもこれほどまでに進化してきたのかと改めて実感することができた。

ファミコンタイトルは1chのモノラル音源だった。画面は「ロックマン」
90年代のアーケードゲームは、2chの迫力あるステレオ音源。画面は「ストリートファイターII」
5.1chサラウンドは、まさに音の革命ともいえる進化であった。画面は「BIOHAZARD 7 resident evil」
7.1.4chの3Dオーディオは、自分がゲームの中にいるかのようなリアルなサウンド。画面は「Devil May Cry 5」

 そして「鬼武者 Way of the Sword」も7.1.4chに対応しており、開発陣の解説付きでサウンドを体感することができた。

 本作における3Dオーディオの目的は単に上から音を流すのを目的にしているのではなく、京都という世界をよりリアルに感じられること。幻魔などの異質な存在を際立たせたり、閃光の迫力やプレイのしやすさの向上を目指したのだという。

サウンド1つでゲーム内に様々な効果をもたらしていることに心を打たれた

 まず紹介されたのはゲームの体験版部分にあたる清水寺までの道中。心地よい風のなびきと、木々のざわめきとカラスの鳴き声が頭上から響き渡り、目をつぶれば屋外にいるかのようなリアリティがあった。

 話を聞くと、本作の環境音は実際に京都で収録したものを使っているそうで、リアリティがあるといったレベルではなく、紛れもなく“本物の京都の音”だった。

耳を傾けてみると、環境音にも実に趣がある

 戦闘時のSEなどの派手な部分がより際立つようなサウンドになるよう設計されているとのことで、幻魔を斬る斬撃音などが鋭く響き渡る。

 幻魔が避難所を襲うシーンでは、武蔵がいる位置よりも上の方で門を叩いて壊そうとしており、音の響き方もしっかり上から聞こえ、立体音響ならではの高低差のあるサウンド表現となっている。

上からの音の響きは、思わず顔を上げてしまうほどリアルである

 次は清水の舞台での巌流との一騎打ちのシーン。戦闘では常に高さ方向の音を強調している訳ではなく、飛び上がってから急降下するような動きに上下のダイナミズムを強調させて、気持ち良さとカッコ良さを表現しているのだそうだ。

動きに合わせて強調させる部分を変えることで、戦闘シーンの迫力を生み出している

 次は楽曲について。ダークな世界観の「鬼武者 Way of the Sword」の音楽はオーケストラと和楽器を中心に民族楽器で繊細さを表現し、電子楽器で幻魔や地獄のおどろおどろしい世界を表現しているようだ。

 本作の音楽で大事にしているポイントは、民族楽器を取り入れながら音楽そのもので日本らしさを表現。琴や尺八などの和楽器を取り入れるだけではなく、音楽そのもののメロディや和声などを大事にしているとのこと。そして、静寂や空間を作ることでドラマティックな場面とのコントラストを作り、物語から生まれる感情の揺らぎを表現しているそうだ。

 今回、3曲ほど聴かせていただいたが、幻想的な曲から激情的な曲まで様々な世界観が広がっていた。「鬼武者」を彩る美しい楽曲たちはゲームをプレイするプレーヤーの魂を揺さぶることだろう。

「鬼武者 Way of the Sword」の音楽で使用された楽器構成
強さ、剣の道について葛藤し、成長していく武蔵をイメージした本作のメインテーマ曲が披露された
佐々木巌流戦の曲と羅掌願戦の曲を演奏者の映像付きで聴くことができた

日常の何気ない物から効果音を生み出す、驚愕のフォーリーサウンド

 先のサウンドとは形は違えど、ゲームには欠かすことができない重要な「フォーリーサウンド」の実演を生で見させていただけた。

 フォーリーとは、物が触れ合う音で作中の効果音を生み出す手法で、本作「鬼武者 Way of the Sword」にも様々な物で作られた音が使われゲームを盛り上げる。

 今回は、なかなか立ち入ることができないフォーリーサウンドを収録しているフォーリーステージにお邪魔させていただいた。そこには刀や兜といった「鬼武者」らしい物から、こけしや大声で鳴くうるさい鶏の人形など、何に使われているのか不明なものまで様々な道具が並べられていた。

これらが実際に本作の収録に使われた道具

 初めに実演されたのは、本作のSEの核となる剣戟音。武蔵が抜刀や納刀する際の気持ち良い音は模造刀を使って実際に刀を抜いたり収めたりして収録している。生音を使っているだけにゲーム内のSEにリアリティがあるのも納得できた。

想像していたよりも刀と鞘からはしっかりとした納刀音が生み出されていた

 剣戟関連の音は全てこの模造刀を使って収録されている――のかと思われたが、どうやらそうではないらしい。

 本作では「ダーティで粗暴な刀の音を作る」というコンセプトがあり、勝つためには手段を選ばず、力ずくで戦う武蔵の荒々しさを音でも表現したかったのだという。

 開発初期では、先ほどの普通の刀を使って受け流しや弾きの音を録って検証していたが、音がキレイ過ぎるという理由から別の道具を使うことにしたそうだ。

映像と合せて受け流し音を実演していただいた。刀が擦れ合う音自体は非常にリアルなのだが、確かに荒々しさは感じられない

 もっとダーティな音を作るために選ばれた道具が、音響効果刀と呼ばれる音を鳴らすためだけの刀である。この刀は鉄工所でオーダーメイドで作ってもらった物で、この道具によって唯一無二のカプコンサウンドが生まれている。

 音響効果刀をすり合わせてみると、先ほどの澄んだ刀の音とは違い、武蔵らしい重さが感じられる重厚な剣戟音になっていた。

音叉の様な形状をしており、音が伸びる仕組みになっている
先ほどとは比べ物にならないほど重い音が生まれた

 これでも十分な荒々しさが感じられたが、求めているダーティさはこんなものでは無かったらしい。

 そこで追加されたのが、ギザギザの形状をしている鉄骨である。ギザギザ部分が粗暴な音を強調させるとのことで実際にその音を聞いてみると、その音に一切の美しさは無く、ゲームで聞いた音そのものの“鉄と鉄とがぶつかり合う武骨な音”が響き渡った。

受け流しや弾きといった、武蔵の荒々しい剣技はこのような形で生み出されているのだと知れて感動した

 続いて実演されたのは、必殺技に相当する鬼ノ武具・大鎚の効果音である。

 先ほどの刀と違い、鬼ノ武具ということなので現実世界には無い特殊な音を出したく、本作の舞台よりも未来感のあるテクノロジー的なものを感じさせる音作りを目指したそうだ。

 そこで使用された道具はまさかのスーツケース。この上で音を鳴らすことで、音の響きや音量を上げる役割をしてくれるようだ。

 スーツケースの上にはドラム用の壊れたフットペダルをセットし、さらにドアノブと工事現場のクランプという、これまで見たことのないメンバーによるセッションが行われた。

鬼ノ武具・大鎚に使用された道具。これが必殺技音になるのが想像できない

 カチャカチャと鳴る金属音が未来のテクノロジー感を確かに感じさせるものだった。その音を収録し、他のエフェクト音と合わせて1つの音にすることで、ゲーム内ではドアノブやスーツケースの音とは思えない迫力のサウンドになっている。

 鬼ノ武具・大鎚の音が完成するまで、別のケースや木箱を使ったりと試行錯誤の末に、今回使用したベストな道具が見つかったのだそうだ。

 ちなみに、新品のフットペダルではなく、なぜ壊れたフットペダルなのか聞いたところ、壊れているガタガタ感がちょうど良い音を生み出すらしい。フォーリーサウンドとは実に奥深い。

 カッコ良さとユニークさ、そしてゲームプレイをする上での気持ち良さを表現するためにいろいろ工夫してアイディアを詰め込んで音を作っているとのこと。今度からゲームを遊ぶときはこういったSEにも注目してプレイしたいと思う。

日常的にある物から、非日常的な迫力の効果音が生まれたことに衝撃を受けた

京都の史実や伝承が盛り込まれた、リアルかつファンタジーな「鬼武者」の世界

 カプコンサウンドの裏側に触れて感銘を受けた次は、「鬼武者 Way of the Sword」の舞台でもある京都を巡って聖地をこの目で見てきたので、ゲームの再現度や逆に違いなどを比較していきたいと思う。

 最初の目的地は清水寺。1,200年以上の歴史を持つ世界遺産で、体験版のステージにもなっている。ライバルである佐々木巌流との一騎打ちをする印象的な場所だ。

 清水の舞台ぐるりと見渡してみると、本殿や周りの景色はゲームで見たものとほぼ同じで、再現性の高さがうかがえる。

 ゲームでは自分の子供を清水の舞台から投げ捨てるという凄惨なシーンがあったが、その高さがどれほどのものか覗き込んでみると下にいる人たちがかなり小さく見えるレベルで、調べてみると高さは13メートルもあるようだ。手足をぐるぐる巻きにされて投げ捨てられたらタダでは済まないだろう。

建物の柱1つとっても再現度が高い
江戸時代と現代の清水の舞台の比較。それほど大きな変化はない
作中ではこの手すりに巌流が登っていたり、子供を投げ捨てていた
清水の舞台を下から見た様子。かなり高い
こんな高さから人が落とされたら、誰でもこんな表情になる

 次に向かったのは、古来よりこの世とあの世の境の地とされ、冥界への入口と信じられてきた六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)。ゲームでは武蔵たちの拠点となる場所で、結構な頻度で立ち寄ることになるだろう。

 まず目に入るのが、先祖の霊を呼び戻すという「迎え鐘」。ゲームでもこの鐘はしっかりと存在しており、鐘を鳴らすことで「鍛錬の間」へとワープすることができる。

 迎え鐘は2017年に実に100年ぶりの改修工事が行われ、老朽化した柱や瓦の取り替え、柱の塗り直しなどもされている。ゲームに登場する迎え鐘と見比べると真新しさを感じる。

六道珍皇寺の本堂。近くの松の木もあり、雰囲気はまさにそのまま
六道珍皇寺に入ってすぐ右手側にある迎え鐘。綱を引っ張って実際に鐘を鳴らすこともできる
普段は公開されていない仏像も間近で見ることができた。ゲーム内にも閻魔大王像はしっかり鎮座されている

 六道珍皇寺は小野篁(おのたかむら)の縁の地とされており、本堂の裏にある「冥途通いの井戸」を通って篁は夜な夜な地獄へ下り閻魔大王の裁きを助けていたという伝説がある。

 試遊時間の都合でゲーム内の冥途通いの井戸は確認することはできなかったが、しっかりと再現されているようなので本物と比較するのが今から楽しみである。

今回特別に見ることができた小野篁の像
本作に登場する小野篁。冥界へ通うという伝説がゲームの設定にも活かされている
冥界への入口といわれている冥途通いの井戸。非常に存在感がある

 縁切り神社として有名な安井金比羅宮にも訪問した。本作ではここは楽園の様な異質な空間になっている。本来は悪縁を切るという意味の“縁切り”なのだが、人々の断ち切りたい縁を幻魔が切っているといった設定に落とし込んでいる。

 縁を切っているのが幻魔だけあり、そのやり方もかなり強引だ。脚の痛みとの縁を切りたいと願った老人に対して、脚そのものを切れば痛みも無くなるというダークなパワープレイを見せる。実在する史実や伝承などを拡大解釈してゲームに盛り込んでいるのはカプコンらしいユニークな手法である。

悪い縁を切り、良縁を結ぶといわれる安井金比羅宮
強引に悪縁を断ち切る幻魔・羅掌願
脚を切られたら、また別の形で脚が痛くなる気もするが老人は満足の様子

 切りたい縁・結びたい縁などの願い事を書いた「形代」を張り付ける「縁切り縁結び碑」が神社中央の目立つ場所に設けられているが、この碑は実はゲーム内の安井金比羅宮には存在していない。

 その理由は、縁切り縁結び碑は1980年にできたもので、江戸時代初期の「鬼武者」の世界には存在しないものなので入れなかったという。その代わりに創作で幻魔が作ったような花の様なオブジェが置かれているのだそうだ。

縁切り縁結び碑。表の穴をくぐって悪縁を切り、裏から穴をくぐって良縁を結ぶ
画面右側にあるのが、縁切り縁結び碑の代わりに存在する幻魔アート

 ゲームでは腕覚醒を授ける「八大力尊」もこの地に祀られている。八大力尊は元々は地面の柱の下の土台として埋まっていたものを掘り起こして出てきたといわれている。

 そこから、何かを支える力や、力を得られるといったご利益があるとされ、この要素をゲームに落とし込んでパワー系の腕覚醒を授かるという形にしたとのこと。

 8体もいるならばと、いなくなった力尊を探した方が楽しいだろうとなり、ただ石像を探すだけだと味気ないのでこの8体は兄弟ということにしようという解釈で兄弟設定が生まれた。

こちらが実物とゲームの八大力尊。見た目からポーズまで完全再現している

 京都巡りの最後にやってきたのは、800年以上の歴史をもつ京都最古の禅寺・建仁寺。特徴的な庭園や、国宝の「風神雷神図屏風」を所有している。

 この場所が「鬼武者」でどのようになっているのか――と説明したいところだが、今回はゲーム内で建仁寺まで行けなかったので、残念ながら取材時点ではゲームとの比較はできなかった。

 しかし開発陣の話によると、現在の建仁寺法堂に描かれている天井画「双龍図」がある場所で激しい戦いが繰り広げられるとのこと。

 そしてこの双龍図だが、実は描かれたのが2002年とかなり最近の事らしい。先ほどの縁切り縁結び碑を考えると、こちらもゲームでは存在しないかと思われたが、なんと双龍図はゲーム内でもしっかり描かれているようだ。

 これは少し矛盾しているようにも思えるので、それでも双龍図をゲームに出した理由をうかがうと「カッコ良かったから」だそうだ。とてもシンプルな答えだ。

 筆者も実際に双龍図をこの目で見たが確かにカッコ良い。カッコ良いものをあえて出さない意味が分からないので、双龍図を出すことは全く矛盾していない。天を泳ぐ双龍図をバックに武蔵が戦うシーンを早く見てみたいものだ。

風神雷神図屏風。展示はデジタル複製ではあるが、国宝だけにオーラがすごい
庭園の美しさも建仁寺の特徴である
ふすまにも迫力の龍が描かれている
建仁寺法堂。天井一面に描かれた双龍図のインパクトは凄まじい

 今回、カプコンサウンドの開発の裏側や綿密な取材による京都の町の再現、伝承を活かした「鬼武者」ならではの新解釈などを知ることができ、「鬼武者 Way of the Sword」の魅力により深く触れられたと同時に、開発サイドの本気も間近で感じることができた。約20年振りの完全新作となる本作、シリーズのファンはもちろんのこと、すべてのゲームファンにプレイしてもらいたい作品だ。