レビュー
「ペーパーマリオRPG」レビュー
あの名作がリファインされて再登場! 紙ならではの表現や仕掛けが満載
2024年5月21日 23:00
- 【ペーパーマリオRPG】
- 5月23日 発売予定
- 価格:
- 6,578円(パッケージ版)
- 6,500円(ダウンロード版)
5月23日にNintendo Switchで発売予定の「ペーパーマリオRPG」。インテリジェントシステムズ開発、任天堂発売のアクションRPGである。
本作は、2004年にニンテンドーゲームキューブソフトとして発売された「ペーパーマリオRPG」のグラフィックや遊びやすさを向上させたタイトルだ。
その名の通り、本作の舞台は基本的に全て紙でできている。もちろん、マリオも紙で描かれているし、登場する舞台も紙。ぺらぺらの紙でできている世界だからこその表現が魅力的な作品だ。
ゲームキューブ版は「ペーパーマリオ」シリーズとしては第二弾にあたるが、シリーズをプレイしたことがなくても全く問題なく遊べるタイトルとなっている。前作の「マリオストーリー」をプレイしたことがあればシステムにより馴染みやすいという部分はあるが、ストーリー自体のつながりはほぼないと言って良い。その点はまったく気にする必要はないだろう。
本稿では、そんなSwitch版「ペーパーマリオRPG」のレビューをお届けしていく。
ちょっぴりブラックで、異色な作品
遠い昔、あるところにとても栄えた街があった。しかしあるとき、大きな災いが降りかかり、街は一夜にして地の底へ沈んでしまった。
そしてそれから年月がながれ、全てがおとぎ話となった頃、何もなくなったその地に人が集まり新たな街が形成された。
その新たな街には「地下にはむかしの街のお宝が今もそのまま残っている」という言い伝えがあった。これが港町「ゴロツキタウン」に伝わる1000年の扉の財宝伝説である。
ある日、キノコ王国を巡る旅の途中だったピーチ姫は、ゴロツキタウンで物売りのおばあさんから綺麗な箱をもらい、それを手にすると突然光りだした。
そして、マリオの家にピーチ姫から手紙が届く。それはふしぎな宝の地図を手に入れたので、マリオにも手伝ってほしいというものだった。
マリオはゴロツキタウンの港へとやってきたが、ピーチ姫の姿が見当たらない。
ピーチ姫を探していると、クリボーの女子大生、クリスチーヌに出会った。そしてクリスチーヌに地図のことを話すと、彼女の恩師の考古学のフランクリ先生に会うことになる。
フランクリ先生によると、伝説の宝を手にするためにはゴロツキタウンの地下にある「1000年のトビラ」の封印を解かなければならず、 封印を解くカギとなるのが「スターストーン」と呼ばれる宝石であること、この地図は7つのスターストーンのありかを示しているのだという。
宝を追っていけばピーチ姫と再会できるのでは、というフランクリ先生の助言に従い、マリオはスターストーンを巡る冒険の旅に出るのだった。
……というプロローグを経て、マリオの新たな旅が始まる。
この本作の最大の特徴と言えるのは、「マリオ」シリーズの中でもちょっとブラックなところだろう。それは各所のセリフやマップにも表れている。
さらに、全体的にセクシー系な要素も含まれている(セクシーというには充分まろやかではあるのだが……あくまで全体的な「マリオ」シリーズと比較しての話である)。
このように、これまでのまろやかな「マリオ」シリーズを想像しているとちょっと想像と違うということになるのだが、ブラックと言ってもあくまでクスっと笑える程度の内容だ。ただし小さな子供に遊ばせたいという時は、一応親御さんのほうでこういう作品であることは知っておきたいところである(なお、本作は「CERO B[12才以上対象]」である)。
内容はシリアスだが、緩急があり楽しめる。謎解きの難度は高め
本作は、ステージ1から始まり、基本的に1ステージでスターストーンを手に入れたらクリアして次のステージへ……という流れになっている。今回、マリオの表立っての敵となるのはクッパではなく、「メガバッテン」という組織のバツガルフという人物だ。
本作はなんだかんだとどこかブラックジョーク的な笑いがある作品なのだが、このバツガルフは非常に非情なキャラクター。冷酷で、ジョーク的な要素が一切ないので、こちらも「マリオ」シリーズの中ではなかなか異質なキャラクターとなっている。
とは言え、バツガルフの配下の者たちはなんだかんだとジョーク要素が練り込まれており、物語としてはシリアスなバツガルフとドタバタな配下たちと緩急がついているので、ずっとシリアスな物語でシリアスな気分のまま進んでいく、ということはない。
また、「ペーパーマリオ」ならではのマリオの飄々とした表情が、シリアスな雰囲気をシリアスにさせないという面もあり、マリオのおかげで重い話も重く感じずにライトに遊べてしまうのは良い点だ。
なお、本作は「RPG」という名がついているように、「RPG」といえばやはり重要なのはストーリーである。そのストーリーはかなり練り込まれており、2004年の発売当初から非常に評価が高い。
ちなみに本作は2004年発売当初は「CERO A(全年齢対象)」だったのだが、今回のリファイン版は「CERO B(12才以上対象)」となっている。少々ブラックな要素があるためなのもレーティングが上がった要因の一部だと思うが、物語自体、小さな子供には少々理解しにくい複雑さがある。
特に謎解きは大人でもなかなか難しく(これはむしろ凝り固まった頭のせいかもしれないが……)、必要に応じて様々なアクションを駆使して進んでいく必要がある。それはマリオの持っている能力だったり、仲間の持っている能力だったりする。さらに仲間も7人まで増えていくので、その仲間の持つ能力を上手く切り替えて使用していかなければならない。
謎解きの詳細についてはネタバレになるので語れないが、筆者の頭ではなかなか解が出てこず、30分ウロウロしまくった場所などもあった(ちなみに基本的な攻略は2004年に発売されたオリジナル版から変わっていない。単純に思い出せなかっただけなのもあるのだが……)。
一応ZLボタンで仲間がヒントをくれたりするのだが、そのヒントを見てもさっぱりわからない場面もあったりする。
ただ、謎解きについては「理不尽」と感じる場面はほぼなく、大体は発想力の問題だけである。そういう意味では、発想が柔軟な人にほど向いているタイトルだと言えるだろう。前述の通り、基本的な攻略はオリジナル版から変わっていないため、最悪攻略を見てしまうなんてこともできなくもないのだが、「自分の手で解き明かす楽しみ」はやはり任天堂のタイトルらしさがあり、できれば何十分迷っても自力で解にたどり着いてほしいところである。しかし中にはメモを取っておかなければ少々厳しい謎解きなどもある。そんな時はスクリーンショット保存機能も活用したい。
バトルはアクションで、慣れるまでは少々難しい
バトルはターン制のコマンドバトルにアクションが加わったものになっている。
基本は、マリオ+仲間ひとりのふたりで戦うことになり、一応レベルはあるもののレベルであがるのは、HPか、FP(フラワーポイント。一部の技を使うために必要)、BP(バッジポイント)の3つのうちいずれかを自分で選択してアップさせるだけで、マリオの攻撃力はレベルアップでは上がらないようになっている。
マリオの攻撃は主にジャンプとハンマーのふたつ。空中に浮いている敵などにはジャンプを、ジャンプで踏むとダメージを受けるような敵にはハンマーを使って攻撃するなど、うまく使い分けていく必要がある。
ちなみにジャンプでは、タイミングよくAボタンを押すことで2連続攻撃ができたり、ハンマーでは入力に成功しないと攻撃力が上がらなかったりする。ハンマーは使う技によって入力タイミングが異なるので、画面をよく見ておこう。
他にも仲間の技はいずれも様々なアクションを求められる。決して難しい入力ではないが、仲間や技によってコマンドが異なるので、咄嗟の時に慌てないようにしたい。
また、敵の攻撃時にタイミングよくAボタンを押すことでガードをしてダメージを減らすことができたり、タイミングよくBボタンを押すことで敵の攻撃を無効にできるスーパーガードを使えたりする。
なお筆者はアクションはあまり得意ではないので主に通常のガードのほうを使っているが、全く問題なく進めることができた。敵によっては攻撃タイミングの見極めが難しく、ガードに失敗することも多々あったが、「できるときにガードする」ということを心がけているだけで充分だ。
アクションが上手い人には嬉しく、苦手な人にもきちんと救済があるというのが、非常に親切。それも決して押しつけがましいものではなく、「やれる人はやってくれるといい」くらいの塩梅に抑えられているので、やらされている感が全くないのが嬉しい。
さらに本作は「劇場システム」というものがある。本作のバトルは劇場の舞台で繰り広げられているという設定で、上手くアクションを決めれば観客が喜んで、スペシャル技を使うための「スターパワー」が増えていく。しかしアクションに失敗すると観客数が減ってしまい、得られるスターパワーも減ってしまう。
スターパワーを使用して使うスペシャル技はマリオと仲間のHPを回復する効果があるものなど強力なものが多いので、この劇場システムも上手く活用していく必要がある。
ルイージやクッパももちろん登場! 他にも探索系の要素などRPGらしさアリ
本作にはルイージやクッパなどのお馴染みのキャラクターも、もちろん登場する。
ルイージはゴロツキタウンにいて、エクレア姫という人物を救う為に冒険しており、マリオがステージをクリアする度にゴロツキタウンで話を聞く事ができる。
そしてクッパはかなりのギャグ要員となっており、クッパを操作するクッパパートがある。フィールドを探索したりするだけでなく、特定の箇所では「スーパークッパブラザーズ」をプレイすることも可能。宿敵マリオが集めているスターストーンに興味を持ち、そしてピーチ姫が自分以外の何者かにさらわれたと知って、クッパも冒険に出ることになるのだ。
他にもゴロツキタウンでは「おなやみセンター」なるものがある。各地で困っている人を助けるという、いわゆるサブクエストである。やらなくても全く問題ないのだが、報酬は良いものが用意されているので、やれるのならやっておきたい要素だ。
しかしおなやみセンターに寄せられている依頼は、結構面倒なものが多いと感じた。特に本作は各ステージのマップを行き来するのが、少々面倒な作りになっている。一応ストーリーが進むごとに各エリアへのショートカットの土管が開通するようになっているのだが、それでもまずゴロツキタウンの地下までは行かなければならず、エリアごとの行き来は結構手間だ。ストーリーを進めるだけであればほぼ問題ないのだが、クエストであちこち行き来するにはちょっと億劫である。
ただ、全体的なボリュームとしては、おなやみセンターに寄せられている依頼をやってちょうどいい、くらいのボリューム感。各ステージは(迷いさえしなければ)結構あっさりと終わるので、若干おつかい感は強いものの、おなやみセンターの依頼もこなしていきたい。
他にも、地下100階まであるダンジョンなどもあり、やり込み要素もある。地下100階ダンジョンには超強い雑魚敵なども登場するので、挑み甲斐がある。我こそは、という猛者はぜひチャレンジしてみてほしい。
個性的なキャラクターが多く、総じて魅力的な作品
本作で仲間になるキャラクターたちは、いずれも独自の能力を持っていて、様々な場面で活躍してくれる。
「●●が仲間になれば、このキャラクターは不要」といったことがなく、ギミック、バトル、探索とあちこちで見せ場があり、全ての仲間が平等に扱われていることがとても嬉しい。こういった細かい部分でのキャラクターの活かし方には、任天堂魂を感じる。
もちろんその中でも自分なりのお気に入りの仲間というものはできるもので、筆者は特にクラウダとチビヨッシーを連れて歩くことが多く、必然的にバトルで活躍する機会も多かったが、バトルでも敵との相性があるため、このふたりだけで全てを切り抜けられるというわけではない。
それに仲間の強化はマリオの強化よりも厳しいため、残りHPの管理なども含めて上手くパーティを回していく必要もある。そのため、戦略面からも本当に不要なキャラクターがいないという、実に絶妙なバランスが保たれている。
ストーリー面でもどのキャラクターにもきちんとドラマがあり、思わず笑ってしまうものもあれば、驚きの設定が飛び出すこともある。メインパーティだけではなく、いずれのキャラクターも、マリオの冒険を素敵に彩ってくれることだろう。
確かにこれまでも語って来たとおり、ブラックな部分もあるマリオで、シリーズの中では異色作だ。だが、細部は非常に丁寧に作られている。
マップ作りなども「RPG」というジャンルを意識したものになっていて、一風変わった「マリオ」シリーズを堪能することができること、間違いなし。
発売から20年経った今でもファンの多いタイトルで、一度プレイすれば、ペラペラの紙マリオならではの冒険に虜になってしまうはずだ。
20年経っても色あせない名作を、ぜひプレイしてみてほしい。
(C) Nintendo. Program c Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS.
(C) 2004 Nintendo. Game Developed by INTELLIGENT SYSTEMS.