レビュー

「NACON DAIJA アーケードスティック」レビュー

圧倒的な使い心地の良さに、格ゲーライフが充実! PS公式ライセンスを取得したハイエンドアーケードスティック

【NACON DAIJA アーケードスティック】

5月23日 発売予定

価格:43,890円(税込)

 昨年6月に発売された「ストリートファイター6(以下、スト6)」をきっかけに格ゲーファンだけではなく、多くの新規ユーザーを巻き込んで格闘ゲームが熱く盛り上がっている。今年の1月には3D格闘ゲームの覇者である「鉄拳8」もリリースされ、もはや勢いは止まることを知らない。現在では少しずつ解消されつつあるが、少し前まではブームの影響で格闘ゲーム用のパッドやアーケードスティックが入手困難という事態まで起こっていたほどだ。

 格闘ゲーム用のデバイスはアーケードスティックだけではなく、昨今ではパッドやレバーレスコントローラーなどプレーヤーのスタイルに合わせて選べる時代だ。近年のタイトルは格闘ゲームに特化したデバイスでなくても問題なく遊べる仕様になってはいるが、激しく動き回る「GUILTY GEAR」シリーズでのレバーレスコントローラーや、正確かつ機敏な動きを要求される「鉄拳」シリーズをパッドでプレイするにはそこそこ練習が必要になってくる。

 デバイスによって一長一短あるが、アーケードスティックは古くから格闘ゲームの王道デバイスだけあり、圧倒的な安定感でどんなタイトルであろうと遊びやすいのが魅力である。

 そんなアーケードスティックの新作で、発表から注目を集めているのが3goo(サングー)より5月23日に発売されるプレイステーション 5/プレイステーション 4/PC向け「NACON DAIJA アーケードスティック」だ。プロゲーマーのKAYANE氏と共同開発、そして旧バージョンを使用していたプレーヤーからのフィードバッグも取り入れているだけあり、性能と使いやすさはお墨付き。PS5/PS4の公式ライセンスを取得しているので動作保証や大会での使用も問題なしだ。

 発表されている情報だけでかなり良い仕上がりを感じさせる「NACON DAIJA アーケードスティック」だが、今回実際に触る機会をいただいたので、本製品の機能や使用感など気になるポイントを紹介していこう。

【NACON DAIJA アーケードスティック トレーラー】

ほしい機能が全て完備! 使いやすさを追求したアーケードスティックの理想形

 まずは「DAIJA」の外観から見て行こう。本体は白と黒を基調としたカラーリングで、天面の絵柄はまさに商品名の通り“大蛇”をイメージした高級感のある蛇柄デザインとなっている。また、差し替え用の天面シートに蛇柄のブラックと、何も描かれていないブランクシートが付属している。

 本体サイズは横幅約380mmの縦幅約260mm。横幅は大きすぎないスッキリとした形状で、それでいて縦幅はゆとりが十分にある設計となっているため、プレイする際に手首を本体の上にしっかりと置くことができる。

 手首にフィットするように天面の下部には手触りの良いリストレストが付いており、長時間プレイする際の手の疲れを緩和させてくれる。

横幅は無駄なラインを削いでおり、使い心地とコンパクトさを共存させた作りになっている
差し替え用のシートが2枚付属。ブランクシートに直接デザインを描くことも可能
天面下部のリストレスト。クッション性は特にないが、アクリルの上に手を置くよりも置き心地は格段に良い

 天面8ボタンで、右肩上がりのビュウリックス配置に近いボタンの並びになっている。ビュウリックスと比べてレバーとボタンの距離が少し離れているのと、ボタンとボタンの間が少し空いているのがポイント。

レバーとボタンの隙間の空き方が「DAIJA」ならではの個性を出している

 天面の中央上部には、左からプロファイルの切り替えボタン、PSボタン、そして大会などで重宝する、PSボタンやオプションボタンにロックを掛けるスイッチが付いている。

 ロックを掛けていない状態だとランプが青く点灯し、ロックが掛かっていると赤いランプが点灯する。これのおかげでパッと見で現状のロックの状態がどうなっているのかが直感的に分かる構造になっている。

上がロック解除、下がロックされた状態。ロックの状態が一目で分かるのでオフライン大会などでも慌てることがなさそうだ

 本体上部にはType-CのUSB端子。個人的にはアーケードスティック本体とケーブルが一体型になっていないこの着脱式のタイプがとても好みである。理由は2つあり、一体型だと他のケーブルとアーケードスティックのケーブルが絡まったときにものすごい大変。着脱式ならケーブル同士が絡まった場合もアーケードスティックからケーブルを外してしまえば即解決する。

 もう1点は、着脱式ならケーブルの断線に怯えなくて済むという安心感があるからだ。一体型になっているとケーブルが断線してしまった瞬間に本体がオシャカになってしまう。アーケードスティックは安い物ではないだけにこれが非常に怖い。本体とUSBケーブルが別なら、断線してもUSBケーブルを新調するだけでいいのでとてもユーザーフレンドリーな設計である。

 本体下部を見ると、PS公式ライセンス商品ということを強く主張するように堂々とPSマークがプリントされている。その横には有線のヘッドセットを接続する3.5mmジャックが搭載。ここもユーザーのことをしっかり配慮されており、ジャック部分がくぼみになっていることでヘッドセットを付けてもプラグが飛び出さず、膝置きしても全く邪魔にならないのは素晴らしい。

本体上部中央にUSB端子が備わっている
本体下部中央の目立つ部分にPSマークがプリント
ヘッドセットを差すジャック部分がくぼんでいるのは、ユーザーの使い心地を配慮した設計である

 本体右側面にも各種ボタンやスイッチがズラリと並んでいる。R3とL3、オプションボタンにクリエイトボタン、中央にはタッチパッドが備わっている。オプションボタンやクリエイトボタンなどは大会の試合中に押してしまうと負けになってしまう場合があるので、間違えて押してしまうことのない側面に付いているのはナイスである。

 右端に2つのスイッチがあり、これはレバーの入力を左スティック、右スティック、方向キーのいずれかに切り替えることができる。「スト6」のワールドツアーモードやバトルハブでは右スティックのカメラ移動を結構使うので、これは地味にありがたい。

 もう1つのスイッチは、PS5、PS4、PCの切り替えスイッチで、使用するハードによって簡単に切り替えが可能だ。

本体の右側面。サブのボタンやスイッチ、タッチパッドなどPSで使うものはすべて揃っている
使用するハードの切り替えと、レバーの入力を左スティック、右スティック、方向キーから選択可能

 本体左側には天面を開くためのスイッチがある。このスイッチは右側にも付いており、左右のスイッチを同時に押すことで天面を開いて内部へアクセスできる。近年のアーケードスティックの主流である内部へのアクセスのしやすさはしっかり押さえてある。

 本体内部を開けると、接続用のUSBケーブル(3m)、メンテナンス用の工具、そして付け替え用のレバーボールが収納されている。デフォルトで付いている球体のボールに対して、こちらはナスビ型と呼ばれる長細い形状のものになっている。

 内部はゆとりのある設計になっており、最初から備わっている物以外にも、予備パーツなどを収納しておくことができそうだ。オフライン大会などに赴く際には、予備のボタンやUSBケーブルなどを入れておけば万が一のときにも安心だ。

天板を開けるスイッチは左右に付いている。2つのスイッチを押すだけで簡単に開く
内部にはメンテナンス・カスタム用の工具とUSBケーブルが備わっている
付け替え用のレバーボール。このナスビ型は海外では一般向きだが、日本ではやや馴染みが薄い
内部は予備パーツを収納する余裕すらある

話題沸騰の「スト6」&「鉄拳8」の2タイトルを「DAIJA」でプレイ!

 ここからは「DAIJA」を実際に触っていこう。まず最初に本体を持ったときはズッシリとした重量感を感じた。それもそのハズ、重量を計ってみるとその重さ約3.5kg。アーケードスティックの中でも結構重い部類に入る。

 持ち運ぶことだけを考えたら重さはマイナス要素になるが、プレイ時のことを考えると重ければ重いほど安定感が増すというプラスがある。基本的にアーケードスティックでの操作はガチャガチャとかなり激しい動きになるので、本体が軽いとプレイしているうちに元の場所から徐々にズレていってしまうのだ。

 この「DAIJA」はそんな心配は一切無用の重さで安定性は抜群。本体の裏一面に貼られているラバー製の滑り止めの効果も相まって机の上でどれだけガチャガチャ動かしても微動だにしなかった。

 あまりにも動かなさ過ぎるものだから“こいつをどうにか動かしてやろう”という謎の衝動に駆られ、普通にゲームをしているだけだったらここまで激しくレバガチャしないだろうというレベルで過剰にガチャって検証してみたが、それでも本体がズレそうな気配が微塵もしなかった。

 オフライン大会などでは机の上ではなく、アーケードスティックを膝置きでプレイしなければならない場合が多い。なので膝に置いてのプレイも試してみたが、机の上ほど微動だにしないという訳ではないが、通常のプレイではズレて膝から落ちそうになるなんてことはまずない。

裏面は贅沢に一面ラバー製の滑り止めが貼られている
重量があるだけに、机置きも膝置きも安定性が高い

 ここからは現在の格闘ゲームの二大巨頭である「スト6」と「鉄拳8」を「DAIJA」でプレイしていく。本機に使われているレバーとボタンはどちらも三和電子製の物が使用されている。三和のレバーとボタンはゲームセンターのアーケード筐体で広く使われており使用感や操作性は折り紙付き。

 まずは「スト6」をプレイしてみてだが、シンプルに言ってもの凄く操作しやすい。筆者の持っているアーケードスティックが三和ではない別のレバーとボタンなのだが、比較してみて三和の方が軽い力で素早く入れたい方向に入力できるのがかなり快適。軽いながらも“カチカチ”という入力感はしっかりあるので、どこの方向にキー入力が入っているかを肌で感じることができる。

 「スト6」の新システムで「キャンセルドライブラッシュ」という、攻撃をキャンセルしてコンボに繋ぐ重要なシステムがあるのだが、やり方は攻撃をヒットorガードさせた瞬間に前方向を2回入力するというもの。この入力がなかなかシビアで、筆者の持っている固いレバーだとミスすることが結構起こったが、「DAIJA」でほ実戦でもほとんどミスすることなくコンボに繋ぐことができて爽快であった。

キャンセルドライブラッシュからのコンボが優雅に決まる

 そしてレバー同様に、三和ボタンは“押し感がかなり軽い”。筆者が使うアーケードスティックの静音ボタンは非常に固く、押したときの音(衝撃)を吸収している都合上しょうがないが、ボタンを叩く打鍵感が鈍く全くと言っていいほど気持ち良くないのだ。

 コンボを決めているときの“パチパチ”、“タン”と子気味良い打鍵音に酔えるのもアーケードスティックの魅力で、パチパチ感の強い本機のボタンはゲームプレイ時の気分を大いに盛り上げてくれる。

 ストロークは特段短いという訳ではないが、ボタンを押したときに反応が遅いと感じることもなく、瞬発力が問われる「ドライブインパクト」も難なく返すことができ非常に良好だ。

相手が打ってきたドライブインパクトを瞬時に返すことができ、ボタンの軽さが上手く機能している

 続いて「鉄拳8」をプレイしていく。「鉄拳」シリーズといえば慌ただしくやたらとカクカク前後移動をしている印象があると思うが、アレは別に相手を煽っているのではなく、真面目に間合いを取り合っているのだ。機敏な動きで相手の攻撃を空振りさせて、そこに強力なコンボを叩き込むというのが「鉄拳」の醍醐味。相手の攻撃をスカらせる行動が非常に重要なのだがこの操作が結構忙しく、そして難しい。

 自前の固いレバーでプレイしたときは方向キーの上を軽くチョンと入力する横移動が難しく、力が入り過ぎているせいか上長押しのジャンプに化けることが結構あった。しかし三和のレバーは軽い力でレバー入力ができるので、ストレスなく滑らかに回避行動をとることができる。

相手の攻撃をスカらせられれば確定でコンボを決められるので、回避行動はかなり重要
操作が化けることなく、思った通りに動かせられるのはかなり爽快だ

 「鉄拳」シリーズの代名詞ともいえる“最速風神拳”という必殺技があるのだが、右向き状態で“6N23RP”というコマンドで、斜め下の3と同時にズレることなくRPボタンを押さなければいけない難易度の高いコマンドである。

 パッドだと斜め下で止めるという繊細な入力が非常に難しく、勢い余って前入力まで入ってしまい技が上手く出せないことが頻発する。そんな複雑なコマンドの必殺技も「DAIJA」では気持ち良いほど連発することができた。綺麗で正確な入力が求められる場合も安心である。

複雑なコマンドの必殺技もとても出しやすい

 ボタンの面でもアーケードスティックにメリットがある。「鉄拳8」の必殺技コマンドの中にはPS版で例を挙げると「□ボタン+〇ボタン」、「△ボタン+×ボタン」といったようなパッドでは咄嗟に押すのが困難なボタン同時押しを要求されるものがある。

 ショートカットで同時押しボタンを作ることもできるが使用できるボタンは有限なので、どんな組み合わせのボタン同時押しも人力でできるアーケードスティックはまさに「鉄拳8」向きである。

デビル仁のコンボパーツに使う白鷺阿頼耶。□ボタン+〇ボタン同時押しというコマンドだが、アーケードスティックなら瞬時に繰り出せる

 「スト6」と「鉄拳8」の両方で数十戦ずつオンライン対戦を行った感想は、最初にも少し述べたがやはりアーケードスティックはタイトルを選ばず遊びやすいのだと改めて感じることができた。

 そして個人的に「DAIJA」でプレイして良かったと感じたポイントは“ボタン同士に少し隙間があった点”だ。筆者は手が大きい方ということもあり、押そうとしていたボタンの隣のボタンに触れて誤入力してしまうということを何度も経験していたりする。それがボタン同士に隙間があるだけで、格段に押し間違いが起こりにくい設計になっていたのは嬉しかった。

レバーやボタン、天面のデザインまで自分好みにカスタマイズ!

 デフォルトの状態でも全くといっていいほど問題はないのだが「レバーにもう少し固さが欲しい」、「ボタンはもうちょっとストロークが短い方が良い」というような、人によって好みがあることだろう。

 アーケードスティックの利点は、自分好みの性能や見た目にカスタマイズできるという点だ。アーケード関連のパーツショップなどではボタンやレバーは単体で販売されており、自分に合ったものを選ぶことができる。

 「DAIJA」はカスタマイズのしやすさも売りとなっているので、せっかくだからレバーとボタン、天面のシートを交換して実際にカスタムしてみよう。

今回カスタマイズに使うレバーとボタン

 まずはレバーとボタンを外していく。特に難しいことはなく、レバーは5本の配線が繋がっている白い端子を抜いて、固定されているネジをドライバーで外すだけ。ボタンも繋がっている2本のファストン端子を抜いてボタンを外すだけでOKだ。

 昔のアーケードスティックと違い、換装させるのを前提に作られているので、ボタンのケーブルはどれをどこに繋げば良いかが一目で分かる表が備え付けられていてとても親切だ。

レバーに付いている端子を抜き、レバーを固定している4つのネジを外していく
本機に使われているのは、ボタンを押した衝撃などでケーブルが外れにくいL字型のファストン端子
こちらはケーブルの収納スペース。×ボタンは赤、□ボタンは白のケーブルといった具合に、ボタンに対応したケーブルの色が丁寧に記載されている

 これでレバーとボタンの換装準備は完了。天面シートを差し替えるだけなら、ボタンは外さなくても、スティックヘッドとアクリル板を外すだけでいいので非常に便利。

 天面用シートのテンプレートデータは公式ページでダウンロードできるので、このテンプレートを使って自分で好きなデザインを作れるのだ。

付属している専用の工具で天板のネジを外す
アクリル板、天面のシートを外した状態
公式のテンプレートを使って天面のデザインを作成できる

 シートとパーツを差し替えるだけでオリジナルのアーケードスティックの完成だ。自分好みにカスタマイズした世界に1つだけのアーケードスティックだけに、使えば使うほど愛着が湧いてくる。このアーケードスティックはレビュー用に借りた物だが、愛着が湧きすぎて正直なところ返さないで自分の物にしたいくらいだ。

こちらが筆者がカスタマイズしたオリジナルのアーケードスティック。デフォルトの状態と比べてイメージがガラリと変わった
付属していた天面シートに差し替え、ナスビ型のレバーボールに付け替えた状態がこちら

 また、PC用のアプリを使えば、ボタンの割り当てを自由に変えることができる。本体には最大4つまでプロファイルを保存できるので、いろんなタイトルをプレイする人なら、ゲームごとに最適な設定を作っておくととても便利だ。

レビュー時点ではアプリが海外仕様の英語表記になっていたが、日本での発売されたタイミングではしっかり日本語対応しているとのこと

 最新のデバイスということで、ワクワクで今回触らせてもらった「NACON DAIJA アーケードスティック」だが、ハイエンドなアーケードスティックなだけに機能面と操作面のどちらも高水準で文句の付け所がなかった。

 価格は43,890円(税込)と声を大にして安いと言える価格ではないかもしれないが、パッドと違って使い潰すという物ではなく、レバーやボタンが壊れても自分で簡単にメンテナンスができるので長く使い続けることができる。長く使い続けるからこそ、性能がイマイチな安価な物よりもこういったハイエンドなデバイスを選ぶ方が長期で見ると結果的に得だったりする。

 最近格闘ゲームを始めてアーケードスティックに興味を持っているなら、本製品を選んでまず間違いはないハズだ。