レビュー
スペースオペラRPG「Starfield」レビュー
海賊、貿易、開拓そして未知との出会い……。無限の大宇宙が待っている!
2023年9月1日 01:00
- 【Starfield】
- 開発元:Bethesda Game Studios
- 発売元:ベセスダ・ソフトワークス
- ジャンル:RPG
- プラットフォーム:Xbox Series X/S/Steam(PC)
- 発売日:9月6日
- 価格:
- 9,680円(通常版)
- 12,870円(プレミアムエディション)
もう本当にこの世界にずっといたい……。「Starfield」はいつまでも探検が楽しめ、さらに様々な道を究めたくなるRPGである。「The Elder Scrolls」でファンタジー世界の冒険を、「Fallout」シリーズでポストアポカリプス世界でのサバイバルを描いてきたBethesdaが「宇宙での冒険」をテーマに新しいゲームを見せてくれる。
本作の舞台となる年代は西暦2230年、人々は地球から離れ、様々な惑星に広がっている。開拓された惑星はそれぞれの文化を発展させている。宇宙船には数光年を一気にジャンプする"グラヴドライブ"が搭載され、様々な星を駆け巡る商人、彼等や資源惑星を狙う海賊、住民を守る軍隊などが宇宙を闊歩している。
主人公は宇宙の謎を探索する「コンステレーション」のメンバーの一員として。1台の宇宙船を手に入れ、無限の宇宙へと旅立つ。プレーヤーの前には未知なる大宇宙が広がる。謎を追い求めるもよし、賞金稼ぎとして戦いに明け暮れるもよし、ひたすら異星生物と環境を調査することもできる。そしてメインストーリーは"謎めいた異星文明"である。そう、「Starfield」は地球を祖とする人々が広がった世界であり、コンステレーションはいまだ姿を見せない異文明を探す人々なのだ。壮大な冒険に今こそ旅立とう!
広がる大宇宙に輝く星々。異星文明の痕跡を探すコンステレーションの一員となる!
プレーヤーキャラクターは"炭鉱夫"としてスタートする。宇宙を船が行き交い、何光年も離れた星々に入植が行われる時代でも、採掘現場から資源を掘り出し、文明の基礎を支える人々の生活は過酷なものなのだ。主人公は口うるさい現場監督に小言を言われながら、レーザーで鉱石を掘っていく。
主人公達は採掘現場の奥で不思議な光景を見かける。石柱の周りだけ重力に逆らって岩が浮いているのだ。その中心には鉱物に覆われた金属のプレートのようなものが埋まっている。鉱物を取り除き金属を触った瞬間、主人公は"ビジョン"を見る。気を失った主人公はベッドの上で目覚める。主人公は掘り出したものこそがリーダーが探していたものであり、これを引き取りに男が1人やってくるという。
男は宇宙船に乗って現れた。彼は「バレット」と名乗った。バレットは宇宙海賊に追われており、採掘工場で戦闘になる。海賊は撃退したものの追撃がある恐れがあり、バレットは自分が採掘工場に残り彼等と戦うという。主人公にはバレットが乗ってきた宇宙船「フロンティア号」に乗り、掘り出した金属板「アーティファクト」をアルファケンタウリにあるニューアトランティスという場所へ持って行き、仲間に会って欲しいというのだ。
ニューアトランティスでは「コンステレーション(星座)」を名乗る探検家達との出会いが待っている。彼等の前で主人公が持ってきたアーティファクトはもう1つと反応。宙に浮き光を放つ。主人公だけでなくメンバーもその事象に驚く。アーティファクトは人類が宇宙に進出していまだ見つけられない「異星文明の手がかり」なのだという。アーティファクトを手にしたときのイメージ、それはメンバーの中でもバレットしか体験していない。主人公はアーティファクトを探し出し、集めることで宇宙の謎に迫っていくコンステレーションのメンバーとして探索を続けて欲しいというのだ。
「Starfield」ではこのようにいきなり宇宙船・フロンティア号を与えられ大宇宙への冒険の扉が開かれる。いきなり宇宙船が入手できるのはちょっと性急かなとも感じたが、開発者達の「とにかく一秒でも速く大宇宙に旅立って欲しい、このゲームの本質に触れて欲しい」という想いを強く感じた。
フロンティア号を手にした主人公の行き先は自由だ。チュートリアル的なミッションをいくつかこなした後はメインストーリーを進めるも良し、気の向くまま大宇宙に飛び立ってもいい。酒場にあるミッションボードから、輸送や賞金稼ぎのミッションを受けてもいい。また、ニューアトランティスだけでも様々なミッションを受けることができる。シティーアドベンチャーも本作の大事な要素だ。
プレーヤーは大宇宙のどこにでも超空間航法「グラビティドライブ」で移動ができる。ほとんどの星は未開だったり、放棄された施設があったりだが、軌道上で救難信号を受け取ったり、気まぐれで訪れた星が海賊の拠点になっていたりと思わぬ冒険が始まることが多い。
大きな都市であるニューアトランティス、犯罪渦巻くはなやかな街ネオン、まるで西部劇のような街アキラ・シティ……。これらの都市は人も多く様々な問題を抱えていて多くのミッションが用意されている。このほかにも農業や工業惑星、研究所、残骸や廃墟など多くの惑星に人類の足跡が刻まれている。さらに企業のコロニーや、事故に遭った宇宙船、宇宙ステーションなどもあり、宇宙を探索するだけでも楽しい。
無限の宇宙が広がる感覚は「The Elder Scrolls V: Skyrim」でのチュートリアルミッションが終わった感覚に近い。はじめたばかりのスカイリム地方の広大なマップには何も情報がない。プレーヤーはこの地方を探索し、その地図を埋めていく。歩いて行くほどに様々な場所が見えてきて出会いがある。都市や村、ダンジョンがわかってきて、目的のために飛び回ったり、再び訪れたときの変化を味わえたりする。未知の世界を探索し、広大な世界を徐々に理解していく感覚。「Starfield」では舞台は宇宙となる。これまでの冒険を大きく越える広大な大宇宙での冒険が待っているのだ。
筆者はメインミッションもそこそこにいきなり宇宙に飛び出した。都市の特徴も、各都市の昨日やお店の特徴もわからない、気の向くままに惑星に降り立ち、様々なミッションをクリアし1つ1つ体験してゲームのルールを覚えていった。
実はメインストーリーはコンステレーションの仲間と共に主要な都市を旅したり、宇宙航行の基本ルールを学べたりとチュートリアル要素もある。Bethesdaのゲームははじめて、という人はメインミッションをある程度薦めるのもオススメだ。しかし、筆者が大好きでオススメなのは気の向くままミッションを進め、無限に寄り道をして大宇宙を旅するプレイである。
「スペースオペラ」という言葉は西部劇を指す「ホースオペラ」から生まれた言葉だ。開拓時代の大西部を馬に乗ったガンマンが様々な冒険を繰り広げる。その馬を宇宙船に、舞台を大宇宙に変えたドラマがスペースオペラである。流れ者の宇宙船のパイロットが、開拓民を助け、無法者と対峙し、時には都市を覆う大きな陰謀や、宇宙の神秘に向き合う。これほど大きなスケールでスペースオペラを題材にしたゲームはかつてない。ぜひ大宇宙へ旅立って欲しい。
成長することでさらなる個性が発揮できるキャラクタービルド
ここからは「Starfield」のゲームシステムを紹介していこう。本作のキャラクターはスキルで表現される。キャラクター作成では外見を決めた後、「素性」と「特徴」を決めていく。素性と特徴は「キャラクターはどういう前歴を持つのか?」を設定することとなる。
素性は「ギャングスター」、「兵士」、「探検家」、「巡礼者」など様々なものが用意されている。各素性は3つのスキルで表現されている。「Starfield」はレベルを上げスキルポイントを取得することで様々なスキルを入手より多彩なキャラクターへと育て上げていく。
特徴は両親が健在な「子供」ややっかいなファンが現れる「崇拝される英雄」、宇宙で能力が上がるが地表では制限を受ける「宇宙」など、その生い立ちで得た特徴を追加できる。これらはゲーム内での選択肢も影響してくる。なお外見はクリニックの「エンハンス」で変更できるし、特徴もゲーム内の行動で変えることも可能だ。
スキルにはランクがあり、例えば「ピストル」のランクを上げればピストルでのダメージが増加するが、ランクを上げるためには「ピストルで敵を10人倒す」といった条件をクリアしないと次のランクに上げることができない。
さらにスキルには「身体」、「ソーシャル」、「戦闘」、「科学」、「技術」の5つのカテゴリがある。各カテゴリーにある程度スキルポイントを割り振れば、より高度なスキルを取得できるようになる。2段目の「エキスパート」のスキルを取得するためには、1段目のスキルに4ポイントを割り振らなくてはいけない。1つのスキルに集中して取るか複数を取るかでキャラクターの能力は大きく変わっていく。
「説得」のスキルを取ることで様々な交渉がしやすくなる。戦うことなく物事を収めることが可能だ。戦闘スキルの場合、「ピストル」や「レーザー」などいくつものカテゴリーがあり、自分が好む武器をどう上げていくかは悩ましいところだ。「身体」にはアイテムをより多く持ち運べるようになる「重量上げ」があるし、科学には回復パックの効果を上げる「医療」がある。スキルポイントをどう割り振っていくかはとても悩ましい。
武器や宇宙服にはモジュールの概念があり、手に入るアイテムには追加効果がもたらされる。一定確立で敵を発火させる「発火」の能力や、銃の射撃音を低減させる「サイレンサー」、倍率の良いスコープなど敵からのドロップや、ミッションの報酬で良いものが入手できる場合があるが、これらはランダムだ。「武器デザイン」、「宇宙服デザイン」のスキルを取ることで、これらに効果的なモジュールを付けることができる。
しかしモジュールを使いこなすにはかなりのスキルポイントが必要な上、色々な資源を集め「研究」することでモジュールが使用可能になり、さらにモジュールを付けるためにも資源が必要だ。「Starfield」では50を越える資源が設定されている。これらは普段の冒険では倉庫を圧迫する。これらの資源を収納しておくのに最適な場所は、コンステレーションの拠点であるロッジだ。ロッジには生産設備もそろっており、資源を保管するのにぴったりだ。
ゲームに慣れてくれば、どの惑星に資源を多く売っているベンダーがいるかがわかってくる。必要な資源を求め星々を巡り、必要な武器をカスタマイズするのは楽しい。ゲーム中盤からの要素となるだろう。冒険をたっぷり楽しみながら、徐々に知識を増やしていきたいところだ。
「Starfield」はさらに宇宙船でデザイン、拠点管理といった要素もある。これらはさらにゲームを極めていく楽しさの要素で、筆者自身も今後体験していきたい要素だ。都市にある酒場には仕事を求めた専門家がいるし、冒険の合間で様々な人物が協力を申し出てくる。彼等と協力し巨大な宇宙船を運用したり、一大拠点を作り上げ、経済を回すこともできるようになるのだ。この宇宙で様々な生き方ができる。それは「Starfield」の大きなセールスポイントなのだ。次ページでは大きな楽しさである「冒険」を掘り下げていきたい。
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