レビュー
スペースオペラRPG「Starfield」レビュー
2023年9月1日 01:00
陰謀に立ち向かい、難民を救い、未知の惑星を調査せよ! 無限の冒険が待っている
無限の宇宙を自分の宇宙船で旅し、困っている人達に手を差し伸べる。非常にわかりやすく、カッコイイヒーローになれるのが「Starfield」の最大の魅力だろう。もちろん海賊行為を繰り返しアウトローを気取り、自らが賞金首になるようなことも可能だ。
コンステレーションの本拠地があるニューアトランティスは最大の都市で、美しいオフィスビルや、豊かな自然のある地域、さらには薄暗いスラムまであり、住人達は様々な依頼をしてくる。街の役人が漏電事故をきっかけに、貿易管理局が関わっていた不正事件に迫るような大冒険のクエストもある。「シティアドベンチャー」をたっぷり楽しめる街だ。
他の都市も個性的だ。惑星ヴォライにある都市・ネオンは「オーロラ」という他の惑星では禁制とされるドラッグが出まわっている。ネオンは大企業がビルを持っていたり、警備機構が不正を働いていたりと、犯罪に染まった街だ。火星の「シドニア」には大きな規模の資源採掘場がある。住人にどこか荒々しい雰囲気があるのが面白い。
一方で、人類すべての出発点である地球はどうなっているのか? 地球は居住可能な環境を失っている。どのような惑星になっているかはぜひゲーム内で確認して欲しい。「Starfield」では施設のある惑星だけでなく、全くの未開の場所でも降り立ち、探索することができる。うち捨てられた工業地域に巣くう宇宙海賊と戦ったり、海賊に襲われた農場を救うなどドラマが生まれる場合もある。
大きな都市の酒場にはミッションボードがあり、賞金稼ぎや配送などができる。最初の船フロンティア号は小回りがきく上に波の宇宙海賊に負けない戦闘力を持っているが、貨物室は小さい。大口の運送ミッションには別の宇宙船を買う必要があるだろう。宇宙を巡る運送業というのも楽しそうなロールプレイだ。
筆者は小口の運送で惑星を移動したあと街で殺人事件に遭遇、その調査の間に救難信号を受信し、ある惑星の工業地域を攻め込んでいた宇宙海賊を撃退した。このように冒険が連続した経験がある。まるで映画の主人公になったようにトラブルが次々と舞い込むこの体験は「Starfield」の重要な楽しみだと感じた。もちろん適当に選んだ星を訪れて何もなかったという経験もある。こういう"空振り"の経験も面白い。
連れて行くパートナーとのドラマも面白い要素だろう。主人公はコンステレーションのメンバーだけでなく、酒場や冒険で出会ったキャラクターと一緒に冒険ができる。彼等は独自の価値観を持ち、主人公の選択によって共感した場合、心を開いていく。パートナーは徐々に自分が隠していた想いを打ち明けはじめ、彼等固有のミッションを受けることも可能となる。もちろん親密になれば恋愛も可能だ。
一方であえてパートナーを付けないという選択肢もある。「独立行動」というスキルを取ると1人でいるときにボーナスがつく。ステルスで行動するときなどはパートナーが見つかってしまうこともある。あえて1人でプレイするというスタイルも面白そうだ。
ミッションボードでは「惑星探査」というミッションも受けられる。他のミッションに比べ報酬が高額だが、受けてみるとかなりきついことがわかった。惑星に降り立ち、スキャナーで惑星の資源、動物、植物を調査するのだが、1体の動物でも複数のサンプルを調べなければ調査完了にはならない。動物には攻撃的な種類も存在するし、見つけにくい動物などもある。
惑星には洞窟も存在するので「この中にしかいない動物が?」と思って潜ってみたが空振りに終わった。正解は「緯度と経度による植物相」だった。惑星状の生物は均一に存在するのでは無く、植物相で変わるのだ。着陸地点を工夫し広い地域を歩き回って探さなくては惑星上のすべての生物を把握できない。これはなかなか大変だが、やりがいがある。学者になったかのような感覚が味わえるミッションだ。
「The Elder Scrolls」、「Fallout」を進化発展させた”星の世界”をいつまでも冒険したくなる作品
今回は先行プレイのため、何もかもが手探りだった。このため困ったこともいくつかあった。最初に困ったのは「回復パックが足りなくなる」ということだった。戦闘ですぐ体力を回復してくれる回復パックだが、どこに売ってるかがわからない。最初は大きな都市も、そのベンダーも把握できなかった。
もう1つ多くの人が直面するのが「弾薬の種類の多さ」だろう。「Starfield」は様々な銃器が存在するが、これらの口径が違う。敵がドロップしやすい武器を使うか、意図して弾を買わないと他の弾は持っているのにメインの武器が足りなくなる、といったことにもなりかねない。そして資源も同様だ。資源は研究やモジュールに使うが、確保しようとすると結構煩雑で戸惑うだろう。
こういった問題は「Fallout 4」で経験した人も多いだろう。「Starfield」の基本システムは「Skyrim」や「Fallout」シリーズを発展させている一方で、リアリティのある”煩雑さ”が増している部分もある。はじめてプレイする人にはとっつきにくい部分もあると思う。冒険を進めることで様々なこつを学んでいける。焦らずこの世界を探索していって欲しい。
このほか、宇宙船のカスタマイズや自分なりの船を求める「シップビルダー」、拠点を作ると言った要素は今回のプレイでは到達できなかった。スキルに加え、資材や資金も膨大な量が必要となる。ゲームとして”極める”方向の要素だと感じている。多数のクルーが作業を分担する宇宙戦艦も作ってみたいところだ。また自分たちの拠点として宇宙船の"基地"も作りたい。これからさらにじっくり本作にのめり込んでいきたいと思う。
繰り返すが「Starfield」は本当に何時間もこの世界にいたくなるゲームだ。まだまだ探索していない星は多く、特にメインストーリーはこれまで以上に驚きの展開が待っていそうで楽しみである。筆者は40時間以上このゲームをプレイしているが、全貌を見ているとは言いがたい。このボリューム、スペースオペラというテーマが、本作の最大の魅力だ。じっくり楽しんで欲しい。
正直「Starfield」というタイトルが発表された時、「『The Elder Scrolls』、『Fallout』の続編じゃなくて、新規IPなのか」と意外に思った。しかしプレイしてわかったことがある。本作は「The Elder Scrolls」、「Fallout」での要素を盛り込みながら、スペースオペラでしかできない要素を多数盛り込んでいる。思えば「Fallout」には濃厚な宇宙への憧れを感じさせる要素もあった。「Starfield」は「こう言うゲームが作りたかったんだ!」という開発スタッフの想いを強く感じた。
「重厚なファンタジー世界」、「文明が崩壊した未来世界」での冒険を描いたBethesdaが挑戦するスペースオペラ。これまで同テーマを扱った作品は多数あるが、これほど圧倒的なボリュームで、勝つ様々な冒険が楽しめる作品は例がないだろう。超弩級のスペースオペラRPGである。ぜひ挑戦して欲しい。
「Starfield」に関しては編集担当と「この世界はぬるすぎるのではないか?」という議論になった。確かに本作の宇宙船にはエネルギーの概念も、酸素残量といった要素もない。「Starfield」では宇宙の厳しさ、地球との環境の違い、人を拒む冷たい宇宙、というイメージをあえて抑えている部分がある。多くの惑星に同じ宇宙服で降り立てるし、未知の感染症の恐ろしさもない。SFとしてはかなりふわふわした世界であると言えるかもしれない。
ここは賛否があると思うが、筆者はだからこそ本作は「スペースオペラ」なのだと思う。光線銃を手に、宇宙船を乗り回し星々を駆け巡る英雄の姿。このシンプルな物語をしっかりとゲームで表現したいからこその「Starfield」だと思うのだ。過酷な宇宙を描くSFは面白い一方で科学に興味のないユーザーにはハードルが高い。また、ゲーム的に「The Elder Scrolls」や「Fallout」以上に自由度の高い作品を目指したのではないか? 本作は難しい考察をあえて設定などに押し込み、ゲームプレイの部分ではとことん遊びやすく、エンターテイメントに振り切った作品なのだと感じた。だからこそ、多くの人に本作に触れて欲しい。ワクワクする宇宙の冒険が待っている。
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