レビュー
XRグラス「VITURE One」レビュー
Steam DeckもSwitchも没入感が一味違う。PS5リモートプレイも“条件付き”でイケる
2023年6月29日 12:00
- 【VITURE One】
- Makuakeにて先行販売中
- 価格:58,880円より
ゲームを遊ぶなら少しでも大画面が望ましい。特に近年リリースされてるゲームタイトルはいずれも、ビジュアルに注力している物が多いので、大型ディスプレイを使えばこうしたビジュアルの迫力や細部までこだわったディテールを堪能できるからだ。
一方で大型ディスプレイを設置するには物理的に広い場所が必要という課題もある。筆者のように実家の6畳部屋に大量のおもちゃやガジェットと共に詰め込まれている身分としては、とても大型ディスプレイを置くスペースが確保できない。結果として、小型ディスプレイを大量に配して多画面生活をエンジョイしているわけだが、時には大型のディスプレイを満喫してみたい時もある。そんな時、狭い部屋でも大型ディスプレイを設置できる方法がある。そのひとつが、グラス型のディスプレイデバイスを使うことだ。
目元に装着する事で疑似的に大型ディスプレイを楽しめるディスプレイデバイスは、近年はVRゴーグルの進化などもあり、そのベースとなるマイクロディスプレイの開発も進んでいる。そんな中、本体重量79gと非常に軽量なサングラス型のディスプレイデバイス「VITURE One」が海外で発売された。現在国内市場向けにはクラウドファンディングサイト「Makuake」にて先行販売が実施されている。
「VITURE One」は、VITUREから発売されるXR(拡張現実)グラスだ。ベースとなるセットの一般販売予定価格は74,880円。Makuakeでは21%オフの58,880円で販売されている。装着する事でどこでも大画面での映像体験を楽しむことができるサングラス型のディスプレイデバイスながら、外界が透けて見えるシースルー型を採用するのも特徴の1つだ。
本体の軽量さにも注目したいが、本製品はさらにゲームとの親和性も高いというので、今回はお借りした試用機を使ってゲームを中心に遊んでみた様子をレポートしていく。
Steam Deckを大画面で楽しめる!フルHDに解像度アップで没入感もハンパない!
「VITURE One」は、片眼1,920×1,080ドットのフルHD解像度のディスプレイが両目それぞれに2個用意され、それぞれサングラスの天面部から真下に向けて設置されている。本製品はその映像を斜めに取り付けられた拡大鏡を通すことで、視覚上は眼前に120型のディスプレイが置かれているようなビジュアルを実現している。
本体と各種デバイスの接続には、右の弦部分に備えるマグネットの専用コネクターを使用する。セットにはマグネット型端子に合う専用のUSB Type-Cケーブルが付属しており、これと各種デバイスを接続する。
マグネットの磁力はバランスのよい吸着力で、ちょっとの衝撃では外れないが、ケーブルに負荷がかかりすぎた際にはうまく外れるようになっている。
「VITURE One」のUSB Type-C出力は映像出力を行なうAlternate Modeに対応しており、同接続に対応するデバイスであれば、ケーブルを接続していきなり利用することができる。
例えば今回、ValveのモバイルゲーミングUMPC「Steam Deck」と接続して使用してみたが、接続すると何の前触れもなく、いきなり「VITURE One」の画面上にSTEAM OSのメイン画面が表示されて驚いた。筆者はVRゴーグル以外でこの手のデバイスを使ったことはあまりなかったが、眼前に普段見慣れた画面がドンっ!と置かれる状況は、確かに想像力を働かせれば、正面に16:9のディスプレイがいきなり置かれたような感覚で使う事もできるだろうなと感じた。
直接接続が可能なデバイスについてはUSB Type-C端子によるディスプレイ出力が可能なデバイスならなんでも利用できる。ちなみに同社では互換性を謳うデバイス一覧を公開しているのでこちらを事前に見ておくのがいいだろう。
□VITURE「Glasses Compatible Devices」
なお、一覧に記載のない製品であっても、互換性チェックの基準として「Alt DP over USB-C」または「DisplayPort over USB-C」または「Thunderbolt 4」の記述を確認するようにアドバイスが書かれていたので、購入を検討している場合は参考にしてみてほしい。
Steam Deckでは、先ずはタイトーの「ダライアス コズミックコレクション アーケード」を試した。アーケード版は横長3画面のディスプレイが特徴のシューティングゲームで、稼働していた頃はよくゲームセンターでプレイしていたタイトルだが、それが自宅で手軽に遊べるのがありがたい。腕前は何度プレイしても1コインクリアは夢のまた夢くらいのものだが、BGMが大好きなので上手いプレーヤーのリプレイをダウンロードして、それを再生しながらBGMをのんびり聴く用に使ったりもしていた。
今回「VITURE One」の疑似的な巨大な画面で「ダライアス」のゲーム画面を眺めつつ、久々にゲームもプレイしてみたが、Steam Deck上でプレイしている時とは映像の迫力が段違いだ。特に敵にやられて自機が爆発する時のグラフィックスが……(久しぶりすぎて、ステージAのボスまでもたどり着けなかった模様)。
Steam Deckで遊ぶ場合も、比較的目の前でディスプレイを直視しながら遊んでいたが、「VITURE One」のグラスは周囲の景色を遮断するため、より映像に集中できた。
シースルー型を謳う「VITURE One」だが、本製品には弦部分に備えるボタンでサングラスの暗さをワンタッチで簡単に調整できる機能も備える。こちらをポチっと押す事で、サングラスの色が一気に暗みを増す。また、輝度の調整も同じく弦部分のスイッチで調整が行なえるので、輝度を最大まで明るくして、サングラスの色を真っ黒にすることで、没入感をかなり高めることが可能だ。
Steam Deck以外にも、先日購入したばかりのASUS製モバイルゲーミングUMPC、ROG Allyでも動作をチェックしてみたが、こちらもスムーズにWindows画面が表示された。こちらでは試しにYouTube動画を全画面表示で堪能してみたが、こちらも大迫力で配信が堪能できた。
ここで1点、忘れずに報告しておくことがある。筆者はメガネ男子だ。そのためメガネを外すとほぼ何も見えず、あらゆる活動が停滞してしまうくらいである。コンパクトな「VITURE One」はメガネは外さないと装着できないが、それでも問題ない。
というのも本体上部のダイヤルで視度調整が行なえるからだ。ディスプレイの内容がはっきり見えない場合、映像がクリアになるように左右で調整可能だ。輝度調整も合わせれば、映像に関してはかなりクリアに楽しめるようになる。
なお、ピントが合っている場合でも、装着直後暫くは視差が発生しており、両目から見える映像がダブって見える場合がある。しかしゆっくりと視点を合わせていくと、うまく両目の映像が一致する。手前中央部に視点を合わせるような感覚で見るように意識するのがポイントだ。
正直、眼前にディスプレイ映像がドンッ!と置かれている感覚は非常に心地いい。特にモバイルゲーミングUMPCの中でもSteam Deckの場合、元々のディスプレイサイズが小さい上に解像度も低いため、普段持ち歩いて使う場合は、そこはどうしても妥協のポイントとなるわけだが、そんな妥協ポイントがなくなるわけだ。
また、個人的に一押しな使い道が寝る前の利用だ。左右に寝返りを打ってしまう人には向かないが、真上を向いて寝る場合、「VITURE OneE」の映像を楽しみながらゲームや映像が楽しめるのはかなり楽しい。寝るまでの時間を有意義に使える点もありがたい。ただし、寝落ちと寝不足には注意が必要だ。
「MOBILE DOCK」があればSwitchやPS5も楽しめる!
Nintendo Switchでテレビやモニターなどに映像出力する場合、本体に備えるUSB Type-C端子では映像出力を行なうAlternate Modeが動作しない。そのため、純正ドッキングステーションや、映像出力対応を明言しているサードパーティ製品のドックを使う必要がある。
実際に「VITURE One」のUSBケーブルを筆者手元にあるNintendo SwitchやNintendo Switch(有機ELモデル)で試したが、いずれも直接接続した場合は映像が表示されることはなかった。
そこで役立つのが、専用オプション品の1つ「MOBILE DOCK」だ。
「MOBILE DOCK」は端的に言ってしまえばUSBハブと容量13,000mAhのモバイルバッテリーの複合デバイスだ。本体には充電に使ったり、Nintendo Switchなどを接続して利用できるUSB Type-C入出力を1系統、「VITURE One」向け出力用のUSB Type-C端子を2系統備えるほか、HDMIの映像入力端子も備える。Nintendo Switchを接続する場合は、このUSB Type-C端子で接続する事で、HDMI接続なしでもNintendo Switchの映像が楽しめるのだ。
また、「MOBILE DOCK」のHDMI入力端子に接続可能な機器であれば、プレイステーション 5やXBOX Series Xほか、ありとあらゆる機器の映像を「VITURE One」で楽しむことができる。
今回、先ずはNintendo Switchを接続して、アーケードアーカイブスで発売したばかりの「超絶倫人ベラボーマン」をプレイしてみた。
そもそもベラボーマン自体、操作感にかなり癖があるタイトルのため、ベラボーマンを思う通りに動かすのも一苦労なわけだが、「VITURE One」を装着して天を見上げながらひたすらコインを投入して、プレイし続けるのがとても心地よい。連コインして無理矢理ステージを進めて、これまで見られなかった後半のステージを楽しんだり、ひたすら序盤をプレイしまくってベラボー魂を宿してみたりするのも面白い。
なお、オプションの中にはNintendo Switchと「MOBILE DOCK」を直結して持ち運べる専用マウンター「Nintendo Switch用モバイルドックカバー」も用意されている。「MOBILE DOCK」と「VITURE One」、そしてNintendo Switchを一緒に持ち運べるので、外出先などでも周囲の光を遮って、巨大なディスプレイを使ってのゲームプレイに没頭できるのは気持ちよさそうだ。
また「MOBILE DOCK」には最大2台の「VITURE One」が接続でき、映像を2人で共有できる。家族や友人たち、恋人と2人だけの世界が構築できるので、対戦プレイや2人協力プレイなどで遊ぶ際には重宝しそうだ。
Nintendo Switch以外にも汎用性の高いHDMI入力端子が利用できるため、プレイステーション 4やプレイステーション 5などの据え置き型ゲーム機を接続する事も可能だ。この場合、「MOBILE DOCK」に有線のHDMIケーブルを接続することになるため、場所が制限されてしまう難点があるが、高品質なプレイステーション 5の映像が「VITURE One」で楽しめるのはありがたい。
今回は久しぶりに筆者の個人的古巣である「GTA Online」のPS5版を初めてプレイしてみた。プレイするのは久しぶりだったが、訪れたロスサントスの混沌とした街は相変わらず賑やかだった。どこかで派手な爆音が響き渡り、のんびり街をうろついていると、突如PKなヤツが突撃してきたり、久しぶりにプレイしたので馴染みのNPCたちが次々と電話をかけてきて新たな仕事の依頼をしてきたり、毎日プレイしていた日々を思い出してほっこりした。
さらにPS5ならではの振動機能がGTA Onlineでもかなり楽しめるようになっていたのは驚いた。例えば車で道路を走っていると、路面の状態が振動で伝わってくるのだが、走る場所によってコントローラーから伝わる振動の伝わり方が異なっており、ドライブの楽しみが倍増する。「VITURE One」でプレイすることで、普段のモニターとは没入感が一味違うように感じた。
また、もう1つ没入感を高める要因として、「VITURE One」のスピーカーの音質の高さも挙げられる。「VITURE One」のスピーカーは本体の弦の部分に内蔵されているので、あまり大きな音が出ているわけではないのに、実際にゲームしていると、その臨場感のあるダイナミックなサウンドに衝撃を受ける。
同社によるとHARMANと共同開発した空間オーディオシステムが構築されており、音漏れを最小限に軽減しながら、没入的で立体的な音場を表現しているようだ。なお、音漏れを「最小限に軽減」と謳っている通り、確かにボリューム自体はかなり小さく、装着しているとあまり音が漏れていないように感じる。ただし、骨伝導のような振動による伝達ではないため、ボリュームを上げすぎるとかなりの音漏れが発生する場合もある。出先などで使う際には事前にどのくらいの音が周囲に聞こえてるかチェックするなどの注意が必要だ。
映像配信などが楽しめるAndroid端末「NECKBAND」も用意。リモートプレイは癖が強め
「VITURE One」のオプションにはもう1つ、「NECKBAND」と呼ばれる首に掛けて使用する文字通りのネックバンド型デバイスが用意されている。これを「VITURE One」とセットで使う事で、他のデバイスを接続しなくても、「NECKBAND」と「VITURE One」のみであれこれ楽しめるオプションとなっている。
「NECKBAND」は端的に言えば、OSにAndroid 11を搭載するクライアントデバイスだ。無線LANでインターネット接続することで、単体でYouTubeを含む映像配信サービスを楽しめたり、Android TV対応のゲームなども楽しめる。
「NECKBAND」には独自の3Dコンテンツや3Dブルーレイビデオなどが楽しめる「3D Player」もプリインストールされており、これまでディスプレイ表示中心で使っていた「VITURE One」で3Dコンテンツも楽しめてしまうのだ。内蔵ストレージは128GBあり、ローカルに保存した映像ファイルなどが楽しめる作りになっている。
本体の起動は電源ボタンを3秒間長押しする。すると振動とともに「NECKBAND」が起動する。起動時間はAndroidスマートフォンを電源オフの状態から起動するのと同じくらいかかるため、大体1分弱ほど。起動後は「NECKBAND」独自のホーム画面が立ち上がる。
起動中は、バンドの右アーム部に内蔵する冷却ファンがかなり高速に回転する。このファン音はコンテンツを再生して音声が流れている時はほとんど気にならないのだが、メニュー操作時など「NECKBAND」から音が発生しない状況では気になる人は気になるかもしれない。
「NECKBAND」の主な操作は左アーム部に備えるコントローラーを使用する。中央には円形の上下左右にカーソルボタンが配されているほか、中央の円形部は決定/再生ボタンになっており、四隅にホームボタンやGoogleアシスタント起動ボタン、戻るボタン、3Dプレーヤー起動ボタンが配置されており、基本操作はこれらのボタンを使用する。
コントローラーは左アーム部に備えられている事もあり、操作は右手で行なうのがいい。カーソル操作は固めの感触のため、ちょっとした操作なら問題ないが、無線LANのパスワードを入れたり、Googleアカウントを入力場合などソフトキーボードで入力を行なおうとすると、ちょっと疲れる印象だ。
コントローラー以外にもホームボタンをダブルクリックすると、画面上には丸いカーソルが表示され、これを頭の動きで操作できる「ヘッドコントロールモード」という操作も行なえる。頭を軽く動かすだけでマウスのように簡単に操作できるので、なかなか使いやすい印象だ。他にもGoogleアシスタント機能を備えるので、ちょっとした操作なら音声命令を使うのも近未来感があって面白い。
これでAndroid対応のゲームが色々遊べたら面白いと考えたが、「ウマ娘 プリティーダービー」を検索してみたところ端末が対応していないというメッセージが表示されてしまった。残念! なおスマートフォン接続にも対応しているので、スマートフォン用のゲームを遊ぶ場合は、対応スマートフォンを用意すればいい。
同社では「NECKBAND」を使ったPS5などのリモートプレイも特徴の1つとして謳っているので実際の設定や動作を試してみることにした。
ところが、ここでトラブルが発生した。「VITURE One」のマニュアルには「PSPlay」というアプリが記載されているが、プリインストールはされていない。Google Playストアで見ると、860円の有料アプリであるという。SIE公式アプリは無料のはずだが、どういうことだろうか。
結論から言うと、「PSPlay」はVITUREのオフィシャルパートナー社開発によるアプリのようだ。ポイントは、SIE公式アプリ「PS Remote Play」は「VITURE One」に対応していないが、「PSPlay」は対応していること。記事執筆時点では有料となっているが、製品がMakuakeサポーターの手元に届く頃には無料でダウンロードできるようになるという。
【7月5日編集部追記】
VITUREより、VITUREと「PSPlay」開発社がオフィシャルパートナーであるとの案内がありました。製品がMakuakeサポーターの手元に届く頃には、本アプリは無料でダウンロードできるようになるとのことです。これに伴い、記事内容の一部を修正しています。
「PS Play」をインストールしてみると、リモートプレイができるようになる。手順としては非常にシンプルで、「PSを登録する」ボタンを押すと、リモートプレイしたいハードの選択画面となる。ここでPS4かPS5のどちらかを選択したら、「NECKBAND」側での操作は一区切りし、実際にリモート操作するゲーム機側を操作する。今回はPS5で試したが、こちらの場合、[設定]-[システム]-[リモートプレイ]と選択し、リモートプレイを有効にした上で、機器リンクの8桁数値のコードを表示させる。
このコード表示まで終えたらコードを記憶して再び「NECKBAND」側の設定に戻る。ここで先ほどのコードを入力してから、初めての利用の場合はPSNアカウントで「PSPlay」にログインすることで、リンクは無事に成功する。
機器リンクのコードは時間制限があるため、時間内に設定を終える必要がある点には注意が必要だ。特にPSNアカウントでのログインが安定しない場合などは時間内に設定が完了できず、再度機器コードの入力が必要になるなど、トータルでやたらと「NECKBAND」上で文字を打ちまくるはめになった。なお、1度機器同士のリンクが成功すれば、以降は切断して再開する場合も、特に作業は不要でスムーズにリンクできるようになる。
ちなみにだが、リモートプレイの場合、あらかじめ「NECKBAND」側にコントローラーを接続しておく必要がある。有線接続ならスムーズに接続できるが、Bluetoothで接続する場合、ホーム画面の設定画面から可能だ。
こうしてPS5でのリモートプレイを堪能してみた。リモートプレイの感触は想像以上にラグや遅延が少なく感じられた。少なくとも映像や音声が突然乱れたり、遅延に起因するビットレート低下などは発生せず、総合的にはかなり快適。多少の遅延かな、と感じられる場面もあったが、あくまで体感であり、それもあまり気にならないちょっとした違和感程度のレベルだった。
なお当たり前だが、リモートプレイを快適にプレイする場合、ネットワーク環境はより高速な方がいい。「NECKBAND」の対応無線LANはIEEE802.11acなので、少なくともIEEE802.11ac以上の規格に対応するルーターを使って接続し、さらに室内の無線LAN機器の配置などにも配慮してベストな通信環境が得られる場所で使用するのが重要なポイントになる。
ARらしい「アンビエントモード」にも実用性あり
AR/XRグラスらしい機能の1つとして、「NECKBAND」利用時は「アンビエントモード」と呼ばれる、スクリーンを視界の隅に配置して、グラスの先の風景を確認しながらゲームや映像を楽しむことができるモードも搭載されている。
設定項目については、アプリページにある「設定」から調整が可能だ。スクリーンサイズは小/中/大の3サイズ、配置は右下や左下、左上、右上の4隅から選択できる。使い方も非常に簡単で、「NECKBAND」コントローラーの側面にある「設定」ボタンをダブルクリックするだけで簡単に使う事ができる。
実際に試してみたところ、これが予想以上に縮小されて表示されるようになった。メインの目線はグラスの外の風景に集中しつつ、左端に目をやると、映像が確認できるのは、普段では体験できない不思議な感覚だ。
ただし、難点は2つある。1つはメガネ装着者にとっては、外の風景にピントが合わせられない点だ。これについてはオプションの1つに用意されたマグネット式の「レンズフレーム」などを使ってメガネとしても使える状態で利用するのがベストだろう。
映像を端にやることで、たとえばスポーツや音楽などの映像を視界の中に入れつつ、ネット検索をしたり、慣れてくれば料理くらいの作業はできるだろう。集中したいときは大画面、並行して何かやりたいときはアンビエントモードにして、XRグラスらしい使い方が可能となっている。
没入感抜群のサングラス型XRグラス、豊富なオプションが特に魅力!
以上、ここまで「VITURE One」の基本機能やオプションとの連携などについて触れてきたが、ここでとても重要な注意ポイントがある。それが「3D酔い」についてだ。本製品はサングラスの内部に疑似的に大型のディスプレイを表示して、ゲームや映像を表示したり、Androidのインターフェイスなどを表示するため、VRゴーグルほどではないにせよ、軽い3D酔いが発生する場合があるのだ。
筆者は元々3D酔いには敏感な方であるため、今回製品を装着してSteam Deckの画面を見ながらあちこちキョロキョロとしていたところ、軽い眩暈を感じてしまった。軽度な酔いのため、少し休むことですぐ回復できたし、常用して慣れてくれば、より長い時間にも対応できると思う。さらに言うと、頭さえ動かさなければ3D酔いはほとんど発生しなかった。そのため、最初のうちは自宅での利用に留めておき、慣れてきたら少しずつ外で使うといった試し方もできるだろう。
また外界からの映像を一切遮断して自分の世界に閉じこもりたい場合は、「VITURE One」前面に装着する事で、外光を一切遮断できる「レンズフード」もオプションとして用意されているので、こちらを使えば没入感は最大だ。
また、長時間利用していると、「VITURE One」本体の右側の弦とメガネ部分との接続部付近がやや熱くなる。この位置は装着時に顔に触れない場所にあるため、着脱するまでは気が付かないが、数時間遊んでから触れると思った以上に熱くなっている場合がある。もちろん火傷をするほどの高温ではないものの、かなり暖かい温度になっているため、注意が必要なポイントの1つといえる。
改めてになるが、「VITURE One」の本体価格は早割価格56,880円で、「NECKBAND」セットで78,880円、代わりに「MOBILE DOCK」のセットにすると72,880円、全部入りは96,880円となっている。正直なところこの価格が高いか安いかという問いには、Nrealが展開する「Nreal Air」がスペック的に近いデバイスとなっているが、この辺りと比べるとやや割高なのは事実だ。
一方で「NECKBAND」や「MOBILE DOCK」といった専用オプションが豊富な点は無視できない。特に2台の「VITURE One」に同時出力が可能な「MOBILE DOCK」の機能はかなりユニークだし、単体で完結するための「NECKBAND」は製品を使って何をするかの用途提案も考えられており、好印象なソリューション展開といえる。
「NECKBAND」や「MOBILE DOCK」は単体で購入も可能なほか、iPhone用のアダプターや、レンズを入れることでよりクリアな視界で楽しめる「レンズフレーム」が用意されるなど、幅広い層へのアピールが感じられる。
普通のメガネやサングラスと同じくらいの見た目と軽さのこうしたディスプレイデバイスが今後増えてきて、洗練されてくれば、その先に待つのはVRやAR/XRの進化系の誕生だ。そんな未来への第1歩という意味で「VITURE One」は興味深いアイテムの1つと言えるだろう。
未来に備えて、今の内から「VITURE One」のようなアイテムを普段から常用して、ゲームや映像を屋外や電車内などで楽しむのは悪くない選択肢の1つだといえる。