先行体験

「Clair Obscur: Expedition 33」先行プレビュー

「FF」シリーズなどJRPGの影響を色濃く感じるフランス在住クリエイターの新作

【Clair Obscur: Expedition 33】

4月24日 発売予定

価格:7,480円

「Clair Obscur: Expedition 33」

 Kepler interactiveは、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC(Steam)用RPG「Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション サーティースリー)」を4月24日に発売する。開発はSandfall Interactive、日本でのパッケージ版はセガが販売を行なう。

 本作はフランスの“ベル・エポック”(19世紀末よりパリが繁栄した時代 など)からインスピレーションを受けたとされる、幻想的なファンタジー世界「ルミエール」での冒険を描くRPG作品。「ファイナルファンタジー」など、日本のRPGから影響を受けているという「リアクティブターン制バトル(アクティブタイムバトル)」を採用し、従来型のターン制バトルにタイミングアクションの要素が取り入れられているのが特徴的だ。

【Clair Obscur: Expedition 33 | タイトル発表トレーラー】

 2月25日、発売を控えたタイミングに渋谷では「Clair Obscur: Expedition 33」をいち早く体験できるメディア向けのプレビューイベントが開催された。当日はゲーム開発を行なうフランスのスタジオSandfall Interactiveから、CEO兼クリエイティブディレクターのギヨーム・ブロッシュ氏、COO兼プロダクションディレクターのフランソア・ムーリス氏らが来場し、プレゼンを実施した。本稿では開発プレゼンの内容に触れつつ、実際のプレビュービルドを触って感じられたゲームの所感をまとめてお届けしていく。

右:ギヨーム・ブロッシュ氏 左:フランソア・ムーリス氏

「JRPG」が好きなチームメンバーたちによるプロジェクト

 フランソア氏によると、「Clair Obscur: Expedition 33」は元々ギヨーム氏が1人で手掛けていたプロジェクトなのだという。ギヨーム氏がゲーム会社から独立する以前より手掛けていたもので、Sandfall Interactiveが創立されてからチームメンバーを拡大しつつ、現在は30人ほどでゲーム開発が進められている。2019年ごろから開発がスタートし、その翌年にはSandfall Interactiveを設立。そして、今年4月24日の正式リリースを迎えるための準備を進めているというワケだ。

 本作は「ストーリー」、「ゲームプレイ」、「世界観」と、主に3つの柱で構成されている。中でも重視しているというのがストーリーで、感動的な物語にするため、一人ひとりのキャラクターを本気で作り込んでいるとのこと。また、JRPGが好きなチームメンバーで開発を進めており、ゲームプレイについては伝統的なコマンドバトルを採用した。世界観はJRPGには見られないフランスのベル・エポックで、華やかさを感じさせる独自の空気を持つ。

「日本が好きで旅行では何度も来日したことがあるが出張は初めて」と語るフランソア氏
本作はギヨーム氏がUbisoftに勤務していた時期から1人で開発を進めていた
JRPGでお馴染みのキャラクターが横並びで戦うターン制のコマンドバトル

 「Clair Obscur: Expedition 33」の世界は、年に1度「ペイントレス」と呼ばれる存在が、呪われた数字を石碑に描くことで、その数字の年齢の者たちが消え去ってしまうというもの。数字は年々減っていき、既に多くの人々が消えている。ゲームでは呪われた数字として「33」が描かれた年に、ペイントレスを倒すための部隊「Expedition 33」が結成されたといった設定になっている。

 ストーリーをドラマティックに描くため、作中に登場するキャラクターには実力のあるキャストが揃えられた。主人公・ギュスターヴを演じるのは、Marvel作品「デアデビル」でも知られるチャーリー・コックス氏。他にも「バルダーズ・ゲート 3」や「サイバーパンク 2077:仮初めの自由」、「ファイナルファンタジー XVI」に出演した声優陣を起用している。本作は現状日本語吹き替えに対応していないものの、英語版とフランス版にはこうした名のある俳優たちがキャスティングされている。

 バトルシステムはコマンドバトルがベースになるが、本作においては“アクション要素”も取り入れられている。敵の攻撃に対して回避、パリィといった行動を取ることができ、ギヨーム氏によれば「ノーダメージでのクリアも可能」とのこと。他にもキャラクターのカスタマイズ要素やゲーム内の楽曲にも力を入れており、楽曲に関してはSpotifyでの全曲公開も発表されていた。

プレビューイベントの様子

プレビュービルドで感じられた“JRPGらしさ”。シリアスな世界観にぴったりなリアルタイム操作も奥深い

 ここからは実際にプレイしたプレビュービルドのレポートをお届けしていきたい。プレビュービルドはゲームのプロローグ部分かいつまんだ内容となっている。このため物語のあらすじを冒頭から紹介することはできないが、ゲームは作中で主人公たちがペイントレスの脅威に立ち向かうため、目的地へと遠征してきたところから始まる。

 主人公・ギュスターヴの部隊は、ペイントレスの呪いを退けたと思われる壮年の男と出会うものの、何らかの事情によってその男と敵対し、さらには敵の攻撃を受けて部隊そのものが壊滅状態に陥ってしまう。仲間たちの亡骸で築かれた山を前にして、絶望に打ちひしがれたギュスターヴは、銃を手に取り自身の命をも絶とうとしていた。そんなところに生き残っていた仲間の1人ルネが現われて、ギュスターヴに再起を促す。自分にはもう無理だと話すギュスターヴだが、ルネとの言い合いも束の間、敵の襲撃を受け、渋々と剣を手にして立ち向かっていく。

 前項でも紹介している通り、本作のバトルシステムはターン制のコマンドバトルだ。今回試遊しているのはPC版だが、コントローラーによる操作では各ボタンに基本的なコマンドが割り当てられている。本作ならではの点としてはアイテムコマンドから使える回復システム「クロマエリクサー」の仕様だろう。アイテムコマンドからは3種類のクロマエリクサーを使用できる。この入手方法が特殊で、道中で購入したり拾ったりするわけではなく、フィールドで度々見かけるチェックポイントにて、お金を消費することなく補充可能。そのため、バトル中は積極的にアイテムコマンドからクロマエリクサーによるリカバーを行ないやすい。

 本作はコマンドバトルながら、敵の攻撃に対してリアクションすることによって、その攻撃を避けたり、パリィでのカウンターを発生させたりできる。だが、それには敵の攻撃タイミングに合わせたボタン操作が必要になり、プレーヤーの判断が遅れて操作に失敗すれば、ダメージをそのままもらってしまうことになる。しかも1度で複数回の攻撃を行なう敵もいるので、バトルではダメージを受けやすい設計になっている。そのため、クロマエリクサーの補充が効く仕様はある意味、こうしたバトルシステムにおけるプレーヤーへの救済措置のような役割と考えられそうだ。

 なお、パリィはタイミングがややシビアだが、防ぐと行動用コストである「AP」の回復も可能だ。さらに全ての攻撃を防ぐことに成功すれば、パーティ全員で連携して反撃するカウンター攻撃が発生する。パリィはプレーヤースキルが求められはするが、挑戦するメリットも大きい。回避はパリィよりも無敵時間に少しの猶予があって、攻撃は避けやすい。強敵相手にはパリィのタイミングを掴むため、予行練習として回避行動で様子を見ておくのが賢い使い方だと思える。

「クロマエリクサー」は3種類
「パリィ」は敵の攻撃を全て防ぎ切るとカウンター攻撃を発生させられる
失敗して一気にピンチになることもしばしば。こういう局面でクロマエリクサーが活躍
パリィが難しいと感じたらタイミングが少し緩めな「回避」を選択するのもいい

エイムやQTEなど細かい操作も重要に

 ユニークな点はほかにもある。それが「エイム」コマンドで、キャラクターが遠距離武器を用いた射撃攻撃を行なうというものだ。本作はスキルを使うためのコストとして「AP」が存在しており、これは毎ターン自動的に回復していく。しかし、多くのAPを消費して強力なスキルを放ったとしても、空中を飛んでいる敵には回避されてしまう。そんなときエイムによる射撃攻撃が有効打となる。

 もちろん地上にいる敵に対してもダメージソースとして有用だ。スティック操作で“弱点部位”に照準を合わせて射撃すると、高いダメージを叩き出せるシューティング要素もある。また、エイムは攻撃であっても、通常の攻撃コマンドのように、キャラクターのターンが終了しない。エイムは1発射つたびにAPを1つ消費されるので、もしAPが大量に余っているのであれば、エイムコマンド→攻撃コマンド、あるいはエイムコマンド→スキルコマンドのように、1ターンの中でAPのリソース分だけ火力を伸ばすような戦い方もできる。

「エイム」コマンドを仕様するとTPSのような視点に移行する
プレビュービルドで触れた範囲では、弱点部位への直接攻撃はエイムでしか行なえなかった
ちなみに「スキル」ではQTEによるボタン操作が求められた

 ここまで紹介している通り、素早いコントローラー操作などプレーヤースキルも要所的に絡むコマンドバトルがゲームの特徴となっているが、シンボルエンカウントを採用しているので、戦闘を極力避けるような遊び方もできる。といっても、キャラクターを成長させる上では、やはり戦いをある程度こなしてレベルを上げる必要性があるので、敵を避けてばかりいると、強敵相手に想像以上の苦戦を強いられる可能性がある。

 キャラクターのスキルはレベルアップで獲得する「スキルポイント」を消費して解放するスキルツリー方式。縛りプレイでもしない限りは、レベルを上げることが基本的な攻略の指針になることから、適度に戦っていくことも視野に入れるべきなのだろう。

 フィールドは道が分岐している場所もあり、メインルートから外れた箇所にレアアイテムが眠っている場合もあった。しかしながら、この手のRPGとしては“お約束”というべきか、そのマップのストーリーボスよりも強力な敵が待ち受けている。シンボルエンカウントなので敵を上手く誘導できれば、もしかするとアイテムだけ獲得する方法があるのかもしれない。

 さらに本作はJRPG作品でお馴染み(最近は見かけることもやや減ったが)「ワールドマップ」が存在している。本筋とはあまり関連性を感じない寄り道できそうな場所も見受けられ、ここも探索する意欲が掻き立てられる魅力になりそうだ。

“JRPGらしさ”を盛り込みつつ大人向けなストーリーが展開

 今回のプレビュービルドでは2人目の仲間・マエルが加入して、ストーリーボスを撃破したところで終了した。プレイ時間は2~3時間程度だが、クリアして感じたのは“JRPGらしさ”をゲームの随所に感じられたことだろう。だが、主人公たちはマエルを除いて基本的に成熟した大人であるため、精神的な未熟さが招く挫折だったり、葛藤だったりを描いている作品ではなさそうだ。JRPGで多く見られてきたボーイ・ミーツ・ガールな作風では全くなく、世界観の様相からも手に取ってわかるほど、重厚なファンタジー文学のテイストでストーリー描写も大人向け。

 こうした作風のテイストを崩すことなく「コマンドバトル」、「シンボルエンカウント」、「ワールドマップ」といった、ギヨーム氏が影響を受けている「ファイナルファンタジー」シリーズに通じるJRPG要素を、ゲームのフォーマットに据えている。それが、いちプレーヤーとしてはなんとも不思議な感じである。

 ハードスペックの進化に伴い、表現力への挑戦と新基軸のバトルシステムで多くのJRPG作品が、独自の進化を遂げてきた。「Clair Obscur: Expedition 33」は、そんな時代にあってなお、我々のDNAに刻まれた“ターン制コマンドバトル”の魅力を抽出し、リアルタイムの性質を加えてバトルの緊張感を高めている。それはどこか懐かしくもあり、シリアスな世界での厳しい戦いをシステム的に演出する真新しさも内包している。ビジュアルの完成度もAAAクラスに比肩する見栄えで、たっぷりと世界観に浸ることができそうだ。