PCゲームレビュー「Civilization: Beyond Earth」
Civilization: Beyond Earth
作品全体を彩る和戦両面の戦略性と、AIまわりの一抹の物足りなさ
(2014/10/23 22:00)
作品全体を彩る和戦両面の戦略性と、AIまわりの一抹の物足りなさ
プレイを通じて「アフィニティー」が及ぼす様々な作用を内政・軍事・外交にうまく利用することができるようになれば、初心者卒業だ。そのほかにも本作には、序盤から大きな役割を果たす交易や、周辺タイルに追加資源を加える各種の軌道ユニット(人工衛星)の活用、中盤以降の大きな収入源となる諜報要素など、ひとつずつ押さえていくべき要素は多い。
特に諜報要素は「Civilization IV:Beyond the Sword」におけるものと同じくらいか、それ以上に重要だ。関連技術を取得することにより雇用が始まる諜報員は、他国の都市に送り込むことでエネルギーや研究力の横領、技術の窃盗、軍事ユニットの勧誘に、クーデター、シージワームの都市への誘導など様々なタスクを行なえる。そしてそのどれもが大きな効果がある。
たとえばエネルギーの横領は、大都市でやれば1回500~1,000の収入になる。軍事ユニットの勧誘も1体ずつとかのケチな内容ではなく、相手文明から3~4体をいっぺんに奪える。奪った中に強力なユニークユニットが混ざっていることもあり、1発で戦力バランスがひっくり返るほどの威力だ。
そんなことができる諜報員を、本作では何かにつけて増やす機会があり、最盛期には10人近い諜報員を世界中に送り込める。本国の内政が大赤字でもノープロブレム、スパイ経済戦略の成立だ。本作の勘所をだいたい把握したのち、何度目かのプレイでこれを試してみると実に面白い。
そういう意味で本作は、シリーズに求められる和戦両面の幅広い戦略性というのを、期待どおりには持っている。ただ、それだけでは充分ではない。AIの賢さや個性、時代が進むことによるエスカレート感など、シリーズ作を通じて面白さを感じられた部分が、本作ではまだ弱い。
たとえばAIは戦争がものすごくヘタである。試しにOCC(One City Challenge)をやっていたところ、2倍は国力のある隣国が戦争をふっかけてきた。しかし騎兵相当の機動力系ユニット、主力の歩兵系ユニット、後衛の遠距離射撃ユニットがそれぞれ行儀よく間隔をあけてバラバラに攻めてくるものだから、1/4程度の戦力で簡単に撃退できてしまった。これではちょっと緊張感が薄い。
地球版でゲーム終盤となれば、ICBMの恐怖やステルス爆撃機の猛襲、小都市を一撃で落としに来る高機動力な現代機甲部隊、果ては青天井の戦闘力を持つ殺人ロボットといった戦力が入り乱れ、戦士や斧兵が徒歩で進軍していた紀元前の風景と好対照になってある種の世紀末感を醸し出すが、本作ではそこまでのエスカレート感がない。
理由としては、各文明の最上位ユニークユニットは確かに強力だが、生産に必要な条件が厳しく数が出せないのと、ICBMに相当する相打ち覚悟の最終決戦用兵器が存在しないことが大きい。文明のあけぼのから人工衛星を打ち上げる技術力はあるため、あまり進歩してない感があるのだ。新惑星にシンギュラリティー(技術的特異点)は来なかったのである。
従来作では楽しめたゲーム終了後の高速リプレイ機能や各種の統計で振り返る機能もなく、誰かが勝利条件を達成したら1枚絵が出て即タイトル画面行きである。あまりにもそっけなくて、もしかして本作はまだ完成していないんじゃないかと疑ってしまうほどだ。
思い返せば「Civ5」のリリース時もこんなものだったかもしれない。「Civ5」は複数の拡張パックを通して、ゲーム的な深みと各種の物足りない機能を次第に補完してきた。本作でも同じことが起きるのだろう。
とはいえ、ゲームの本筋は各要素を覚えるのが面倒ながら充分に面白いし、“もう1ターンだけ”を繰り返してしまうだけの魅力はある。今作で新たに「Civ」に触れてみようとするひとにはあまりおすすめできないが、シリーズのファンなら過去の経験とプライドを活かし、未知だらけの最初の数ゲームを乗り越え、本作を充分に楽しむことができるだろう。