★オンラインゲームレビュー★

鉄や巻物を土に埋め、絵札を作って冒険に出よう!
シリーズのノリと、挑戦心に満ちたブラウザゲーム

「天外魔境 JIPANG7」

  • ジャンル:戦乱ソーシャルオンライン活劇
  • 開発・運営元:アルケミア
  • 対応OS:Windows XP/Vista/7
  • 利用料金:無料(アイテム課金制)
  • 発売日:サービス中(4月12日より正式サービス開始)


 「天外魔境 JIPANG7」(以下、「JIPANG7」)はPCエンジンで1989年に発売された、「天外魔境 ZIRIA」から始まる「天外魔境」シリーズ最新作だ。西洋から見た誤った日本観をベースとしたユニークな世界「ジパング」を舞台に、プレーヤー達はこの世界を覆い尽くそうとする「暗黒ラン」を育てようとするヨミ一族に対抗する者達として、立ち上がることになる。

 本作は「従来のブラウザゲームと違うものを作ろう」という意気込みを強く感じる作品である。RPGの冒険の楽しさ、何でも育つ“火田”に作物を植え、ほこらでそれを組み合わせる面白さ、攻略の必要な戦闘要素……プレイすることで、ゲームを楽しんでもらいたい、試行錯誤しながら取り組んで欲しい、という開発者の想いが伝わってくる。荒削りな部分はあるが、今後どうなっていくか、そしてプレーヤー達がどんな社会を形成していくかが楽しみな作品だ。


■ ジパングを覆い尽くす暗黒ランに、力を合わせて立ち向かえ! ソーシャルオンライン活劇始動

オープニングムービー。辻野寅次郎氏のイラストと、田中公平氏の音楽がプレーヤーの心を盛り上げる
暗黒ランが行く手を阻み、魔物が闊歩するジパング

 「天外魔境 JIPANG7」(以下、「JIPANG7」)はRPGの楽しさと、育成系シミュレーションゲームの要素を併せ持つブラウザゲームだ。プレーヤーはフィールドを探索し、魔物と戦い、得たアイテムを“火田”という畑に植える。この畑では、野菜などではなく、鉄の固まりや巻物、ダンゴなどを植えることができ、それが豪華な物に成長するのだ。この“何が育つかわからない感じ”が楽しい。

 火田で育ったアイテムは、かまどで合成することで「絵札」となる。プレーヤーは絵札でデッキを組み、フィールドの魔物と戦っていく。プレーヤーの大きな目的は、この世界を覆いつくさんとする「暗黒ラン」とそれを育てようとする根の一族と戦うことにある。このままでは暗黒ランにこの世界は滅ぼされてしまう。プレーヤー達は自分の力を鍛え上げ、力を合わせて根の一族に対抗するため、旅立つのである。

 ストーリー性と、ユニークなシステム、そしてイラストに辻野寅次郎氏、音楽に田中公平氏というクリエイターが参加する本作は、これまでのブラウザゲーム以上に豪華な雰囲気を持つ作品だ。対戦ではなく、力を合わせ、育成した物が自分や友人の力になるという、本作の基幹システムに筆者は強い魅力を感じた。

 もちろん、「天外魔境」シリーズファンにはたまらない要素が随所にこめられている。本作は「天外魔境II 卍MARU」で語られた“千年前に行なわれた、火の一族と根の一族の戦い”というエピソードをベースとしている。「JIPANG7」ではチュートリアルが終わるとオープニングムービーが始まる。

 オープニングムービーでは、最初に、「マリよ、ヨミよ、私のかわいい子。お前達2人の力を合わせ、この世界で最も美しき地に、何者にも屈せぬ強き命を産み落とし、そして育てなさい」という謎の人物の言葉が表示される。この言葉は「天外魔境II 卍MARU」の、オープニングの岸田今日子さんのセリフと同じものだ。シリーズファンならば作り手のこだわりをさらに感じられるだろうし、そうでない人も、深い作品世界にのめり込んでいくだろう。

 「JIPANG7」の世界は、根の一族によって暗黒ランの根が張り巡らされている。プレーヤー達は、魔物だけでなく、暗黒ランの根を切り払い、行動範囲を広げて交流していくことになる。火田のある「あばら家」はプレーヤーの拠点だ。他のプレーヤーのあばら家をを訪れることで交流が可能で、パーティーを組むこともできる。パーティーを組むと戦闘力が増し、徳(経験値)にもボーナスが入る。

 プレーヤーキャラクターは根の一族に対抗する「火の一族」だけでなく、「ジパングの民」、「鬼」、「人魚」、「天狗」といった種族でも作成することができる。人間の生気を吸い、世界を覆い尽くそうとする暗黒ランを育てようとする根の一族に、様々な種族が力を合わせて立ち向かっていくのだ。

 各種族には特性があり、火の一族は力の値が高い。ジパングの民は平均的だが、作物を育てるのが速い。鬼は体力と力は高いが、術や召喚が苦手だ。人魚は精神値が高く、召喚が得意。天狗は術が高く、攻撃術と回復術が得意だ。これらの特性はプレイしていくことでより明確になっていく。自分のキャラクターにはどんな絵札と戦い方が合っているいるか、模索していくことになる。


オープニングムービーでの、プレーヤーキャラクターのイラスト。辻野寅次郎氏デザインのキャラクターが楽しい
フィールドを探索し、戦闘を行ない、火田で作物を育て、合成により絵札を作っていく。新しいブラウザゲームを作ろうという意気込みと、ゲーム性が感じられる

■ ダンゴや巻物を地面に植えて育成? ジャンケン要素が絡む戦闘など、ユニークなシステム

足下商店ではクエストがもらえる。課題をクリアすることでゲームの基礎がわかってくる
パーティーを組んでいると、ボーナスの徳が入手できる

 「JIPANG7」では、フィールドとあばら家でゲームが進行していく。あばら家には、様々な素材を植える火田、素材をほこらにくべることで絵札を作り出すほこら、材料を補完しておく倉庫がある。火田では、団子の粉を植えると団子になったり、紙を植えると札になったりする。無機物でも、何でもかんでも成長するのが楽しい。

 紙を植えると札になり、そこから、召喚の札や、武具の札になったりする。巻物を植えると内容が変化する。素材に関しても、鉄を植えると鋼になったりする。これらは、ほこらで組み合わせることで「絵札」にできる。絵札にはレシピが設定されていて、何も考えず火田に植えていけばいいのではなく、鉄で成長を止めるなど、どの成長過程で使うかも重要となる。また、ほこらでは「ランダム合成」もできる。何でもいいから色々な素材を放り込むことで、絵札を作ることが可能だ。

 フィールドは暗黒ランの根が張り巡らされていて、プレーヤーの行動範囲を限定している。これを切り払うことでキャラクターはフィールドを動き回ることができる。フィールドにはモンスターが多数配置されており、戦い、勝つことでキャラクターを成長させられる。戦いは絵札戦となる。モンスターは1、2、3といった等級が設定されており、1の敵が最も弱い。フィールドにはモンスターの他にも、他プレーヤーの家や、洞窟などがある。

 戦闘は絵札によるカードバトルになる。絵札にはグー、チョキ、パーの3つの特性があり、ジャンケンで勝つと、先攻できる上、効果が1.5倍になる。アイコの場合はどちらも効果を現わさない「相殺」となる。弱い敵の手札はある程度固定されており、法則をつかむことで勝つための道筋が見えてくる。特に敵の手札が自分より少ない場合は、相殺で敵の攻撃を全て封じ、なくなった時点で攻撃を集中するという戦い方が有効だ。

 このほか「足下商店」では、課金アイテムが買えるだけでなく、クエストを受けることができる。「暗黒ランの根を切り落とす」といった目標をクリアすることでボーナスがもらえる。チュートリアルで学んだことと、クエストで提示された目標をこなしていくことで、ゲームの基本的な流れはわかるようになっている。まずはこのクエストをヒントにゲームを進めていくといいだろう。

 また、「暇設定」もユニークな要素だ。ログアウトするときこの暇設定を「旅立ち準備にする」に設定しておけば、他の人がプレーヤーのあばら家を訪れたとき、パーティーに入れてもらえるのだ。パーティーに入れてもらえれば、次にログインするとその間の戦闘により徳が得られる。一方、パーティーに加えた側は体力が増し、戦闘は手札を交互に出す形になる。勝利の時に得られる徳にもボーナスが付く。

 パーティープレイはゲームを有利にする大事な要素だが、暇設定の説明がないためか、筆者の回りにはほとんど暇設定をしているプレーヤーがいないのが残念だった。暇設定はプレーヤーに手動でさせるのではなく、ログアウトしたら自動的に設定されるほうが、「偶然の出会い」を作れると思う。パーティープレイは魅力的な要素なので、積極的に行なえる施策を提示して欲しい。


火田では物を植えるとドンドン育つ。ダンゴや鉄、札や巻物などが“成長”するのが面白い
アイテムを合成するほこら。ランダム合成の場合でも、グーチョキパーの属性が選べる。ただし、強い絵札を作りたければ、レシピで確実に作るのが良いだろう
ジャンケンの駆け引きも重要となる絵札戦。アイコは相手の手を減らすのに重要なテクニックだ
フィールドにいるモンスターを把握し、暗黒ランの根を切って行動範囲を広げていく。人のあばら家をのぞいて、友達申請するのも面白い


■ 勝つために何をすべきか? 試行錯誤で学んでいくゲーム性。今後は協力要素がクローズアップ

徳を積むと段が上がっていく。段が上がれば能力値が上がり、持てる絵札も多くなる
序盤の敵の手札はかなり固定されている。把握しておけば有利に戦える
足下商店では、作物を増やす資料や、素材、倉庫の増加といったアイテムが入手できる。能力値を上げる装備も用意されている

 掲載したインタビューで触れた部分ではあるが、筆者はプレイの最初の頃、本作のプレイにかなり手間取った。何をしていいのか、今やっている行動は将来的にどう発展するのか、ガイドラインが足りなく感じた。そして、“重さ”が筆者のやる気をスポイルした。何よりも戦闘は、作物の成長が早い代わりに戦闘力の低い「ジパングの民」を選んでしまったためか、最初はとにかく勝てなかった。

 オープンβテスト(OBT)時は、敵の強さがアルファベット表記だったため、敵の強さの下限がわからなかった。周りには多くのGの敵がいるが、これと戦うと1撃で倒されてしまう。まずはフィールドを探索して、Iの敵を探していくのだが、その次のHの敵もGに比べると極端に少ない。何もわからないとき、誰もがまず手近の敵に戦いを挑むだろう。周りに沢山いる敵は、いきなり1撃でユーザーを倒してしまう敵ばかりなのだ。

 この戦闘バランスは、「ちゃんと勝てる敵を探そう。自分で勝ち方を模索して欲しい」という開発者のメッセージなのだのだが、まず最初に叩きのめされ、敗北から学ぶというのは、げんなりする。この問題は、4月12日のアップデートで、Iが1になり、Gは3になるという、等級が数字になったことでかなり解決したと思う。バランスも調整され、徳が多くはいるようになったため、段を上げやすくなった。

 特にアップデートで重さが解消され、プレイしやすくなった点は評価したい。また、道具箱、倉庫の容量アップなど、プレイしやすくなった。アップデート作業はかなり難航したようで、課金システムの稼働は13日からになってしまったが、今後もさらにプレイしやすくなるだろう。

 戦闘に関しては、ちょっとした“コツ”を提示しておきたい。本作は、「攻略」が楽しいゲームだ。1の敵は手札を2枚しか持っていない。それでも序盤は強敵だが、実は彼等のカードは固定なのだ。しかもジャンケンに勝つのではなく、アイコに持ち込むことでカードの効果を相殺(無効化)できる。コストを調節して、相手より手札を増やせば、3枚目以降はノーリスクで攻撃できる。

 2の敵は最初の壁であり、倒すことで大きな爽快感が得られるだろう。2では敵の手札が5枚に増える。何度か負けることを覚悟で手合わせし、敵の手をメモしておくのだ。きちんとメモをすれば、全ての手札を相殺できる。その上で自分の得意な攻撃を後半にたたき込めば、勝率は上がる。本作は敵のリポップ(再出現)も早いので、うまい場所を見つけそこを巡回すれば段上げもスムースに行くだろう。

 コストの低い絵札はランダム合成で作っていくのも有効だ。同じ敵を倒し続けていると、得られる材料が余り気味になる。それらをどんどんほこらでランダム合成させ、コストをうまく調整しつつ枚数が多めのデッキを組んでいく。敵の強力な攻撃カードをコストの低い絵札で無効化するのは爽快だ。

 以下、スタートの時に推奨したいポイントをまとめておこう。

1. 最初に「受信箱」にスタートのガイドがある。画面右下に注目しよう。

2. おかえし台に入っている初期アイテムは、チュートリアルで教えられたとおりにいきなり火田に植えるのではなく、実はレシピ調合に使えるものがある。まず、かまどのレシピを見て、必要なアイテムを把握しよう。

3. 移動はまず自分のキャラクターをクリック。いくら移動しても行動値は消費しない。敵の強さはわかるので周りを見回し1の敵を探そう。

4. あばら家の中央のかかしは、伝言板になっている。来訪者へのメッセージに使おう。

5. ログアウトするときは、暇設定をしよう。友達を増やし、コミュニケーションを楽しもう。

 今後、「JIPANG7」は“プレーヤーの繋がり”が大事になるという。正式サービスが始まり、「暗黒ラン発動」の時期のカウントダウンが始まった。プレーヤー達が力を合わせて根の一族に対抗しなくては、この世界は暗黒ランに覆い尽くされてしまう。この協力要素を運営側がどう提示していくのか、プレーヤーがどう応えていくかは、注目したいところだ。

 全体的に、「JIPANG7」は強い魅力を持つ一方で、荒削りな作品だと感じた。海外のオンラインゲームはクローズドβテストを繰り返し、完成度を上げてからOBTを行なう作品が多い。それに比べると、「JIPANG7」は正式サービスまでの期間が短く、テスト、調整が足りない印象を受けた。重さの問題や、ユーザーの誘導の足りない点などは、できればOBT前に問題を洗い出し、直して欲しかった点だ。とはいえ、本作の本当の魅力は、これから発揮されるのは間違いない。ユーザー達がどんなゲーム社会を作っていくか、これからの動きに注目したい。


コストの少ない札を多く持つことで相手の手札をなくしてしまう。後は全てこちらの攻撃が入る。また、絵札によっては種族制限がされている物もある
毎日ストーリーが語られる「京スポ」。展開するストーリーでは、各国によって違うボスが立ちはだかる。このほか、ギルドに当たる団を作る要素や、クエストなど様々な要素が盛りこまれている

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(2011年 4月 13日)

[Reported by 勝田哲也 ]