★ DSゲームレビュー★
あの感動が再び!
想いを伝えるピュアアドベンチャー
「君に届け ~伝えるキモチ~」
ジャンル:
  • 想いを伝えるピュアアドベンチャー
発売元:
開発元:
アクリア
プラットフォーム:
  • DS
価格:
5,040円 [通常版]
6,615円 [スペシャル (限定版)]
発売日:
2011年4月7日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:A(全年齢対象)

 4月7日、株式会社バンダイナムコゲームスから「君に届け ~育てる想い~」の続編となる「君に届け ~伝えるキモチ~」が発売された。開発は前作に引き続き株式会社アクリアが担当している。

 通常版(5,040円)、限定版 君に届け スペシャル(6,615円)の2つがあり、限定版は本作に加え、前作「君に届け ~育てる想い~」と「LIZ LISA特製 春色リボントートバッグ」(非売品)が付いてくるお得なパッケージとなっている。約1,600円を足すだけで前作も遊べるので、前作をプレイしていないなら限定版がオススメだ。

 早速、前作との違いや遊び方などを紹介していきたい。



■ 2年生に進級した春から始まる心温まる黒沼爽子の物語

黒沼爽子16歳。
長い黒髪と陰気な容姿のせいで誤解され、小学校以来のあだなは「貞子」。
いつの間にか本名を知るものはほぼいなくなり、霊感キャラとして恐れられる毎日……。

きっかけは高校入学の、その日。
道に迷う風早翔太に勇気を出して声をかけたこと。
それまでになかった友情の輪がひろがり、爽子の毎日が少しずつ変化していく。
そして、2年生に進級した春、つきあいはじめた爽子と風早の新学期がはじまる。

 物語は、2年生に進級した春から始まり、学校祭終了となる秋の終わりまでが描かれる。後ほど紹介するが、学校祭に関連する要素は新システムとして組み込まれている。原作が原作だけに、そのストーリー性は秀逸で、心温まる感動のストーリーが展開されていく。簡単ではあるが、本作の主な登場人物を紹介したい。

黒沼爽子 CV:能登麻美子
陰険な容姿から「貞子」と呼ばれている女子高生。でも、本当は前向きで感動屋。同じクラスの風早に告白、つきあうことに
風早翔太 CV:浪川大輔
明るく爽やかなクラスの人気者。入学式の出会いから何かと気にかかる存在だった爽子とつきあいはじめる
矢野あやね
恋愛経験が豊富。勘が鋭く、冷静なツッコミ役。美を探求するのが趣味
吉田千鶴
義理と人情に厚く、感動し易い性格。熱血型でケンカが強い。クラスメイトの龍とは幼なじみ
真田龍
マイペースで、人の名前を覚えるのが苦手。野球部に所属している
荒井一市
爽子たちのクラスの担任で、野球部監督。通称「ピン」。教師とは思えないほど横柄で強引
胡桃沢梅
ニックネームは「くるみ」。「うめ」と名前で呼ばれると怒る。風早に告白したがふられる。爽子とはライバル関係
三浦健人
自称、女の子の気持ちがよくわかる博愛主義者。爽子が“師匠”と慕う存在
遠藤朋美&平野依里子
爽子のクラスメート。仲が良く2人でいることが多い

 ※黒沼爽子と風早翔太のみ、システムボイスや一部のシーンでボイスがつけられている



■ 前作と同じ感覚でプレイ可能ながら、新要素が追加されたゲームシステム

 「きっかけセット」→「目標設定」→「こころがけの実行」→「きっかけ花だん」というゲーム流れは前作と同様ながら、学校祭の準備という新要素が追加された。また、従来のシステムにも一部変更が入っている。ゲームシステムについては前作のレビューでも詳しく紹介しているので、あわせてご参照いただければ幸いだ。

● イベント発生の第1条件となる「きっかけセット」

 イベントが発生させられる相手にきっかけの種を渡す「きっかけセット」。遊び方は前作と同様だが、大きく2つの変更が加えられている。

 1つ目が渡せる種の数。前作では1週間毎の進行であったが、本作では1日毎になったことで、1度に渡せる種の数が5→4に減っている。渡せる数が減ったことで、1度にできることが減り、遊びやすさが向上したという見方もできる。

 2つ目が渡せる種を渡せる相手。前作ではイベント進行に応じて渡せる相手が増えていったが、最初から全員が登場している状態でゲームがスタートする。なお、種を渡せる相手は前作と同様に「黒沼爽子」、「風早翔太」、「矢野あやね」、「吉田千鶴」、「真田龍」、「荒井一市」、「胡桃沢梅」、「三浦健人」、「遠藤朋美&平野依里子」の9人。

 上画面に表示されたきっかけを待っている人物(=種を渡してイベントを発生させられる相手)に、下画面でイベント発生に必要な「がんばる」、「きがつく」、「いたわる」、「よくばる」のいずれかの種を渡すと上画面の人物にふきだしが付く。ふきだしが付けば、イベント発生の第1条件クリアとなる。

 Rボタンor画面右上のヒントをタッチするとイベント発生の条件となる「こころがけ」(赤字の「思考」、緑字の「行動」、「条件なし」のいずれか)が確認できる。この条件に合わせて、次の目標設定で「こころがけ」を設定すれば、イベント発生が確定する。

きっかけの種を渡して、第1のイベント発生条件を満たすヒントではイベント発生に必要な「こころがけ」が確認できるクラスの評価や爽子との関係、学校祭の準備の進行状況もチェックしておきたい

● イベント発生の第2条件となる「目標設定」

 目標設定では「こころがけ」を設定する。「思考」と「行動」の2つの「こころがけ」が、イベント発生条件とあえばイベント発生が確定する。なお、「きっかけセット」での条件にあわせて自動で設定されるので、何も設定せずに進んでしまっても問題ない。

 この目標設定は、イベント発生条件だけでなく、爽子のパラメーター(「がんばる」、「きがつく」、「いたわる」、「よくばる」)の増減にも影響する。「思考」や「こころがけ」が、イベント発生条件に関わらない場合、パラメーターの増減を考えて設定するといいだろう。

「きっかけセット」での条件にあわせて「こころがけ」を設定。自動でセッティングされるが、イベント発生に関係のない「こころがけ」は、どれを選んでも問題ない。特定のパラメーターを伸ばしたければ、自分で設定するといいだろう。なお、ゲーム中のセーブ・ロードもここで行なう

● 設定に応じてイベントが発生する「こころがけの実行」

 基本的にイベントを楽しむ、見るフェーズの「こころがけの実行」では、「きっかけセット」と「目標設定」に応じてイベントが発生し、爽子のパラメーターが増減する。発生させたイベントに応じて新たな「こころがけ」を習得することができることもある。新たな「こころがけ」や一定値以上のパラメーターでなければ発生させられないイベントも存在する。

 一部のイベントでは、会話での返答を選択するものがある。選択肢は2つながら、Xボタン or 該当部分をタッチすることでフラッシュバックイベントが発生し、選択肢の数や内容が変化する。なお、フラッシュバックイベントで登場した選択肢を選ぶのが常に良い結果を生むとは限らない。

 ここでは、本作での新要素「学校祭の準備」の進行状況も表示される。進行状況により、エンディングが異なるもので、イベントや「こころがけ」によって進行させられる。

イベント内容に応じて、友好度や学校祭の進行状況が変化。ハート(友好アイコン)が友好度、トンカチ(学校祭進行アイコン)が学校祭の進行度を表している。イベントによっては、新しい「こころがけ」が得られることも
イベントの最後には学校祭の進行状況が表示される。進行状況を考えて、イベント発生させたり、「こころがけ」をセットすると効率良く、進行させられる
会話で選択肢が選べるイベントではフラッシュバックイベントが発生させられる。フラッシュバックイベントでは、過去を振り返り、選択肢の数や内容が変化する

● 「きっかけセット」で渡せる種が得られる「きっかけ花だん」

 「きっかけ花だん」では、きっかけ苗に水を与えることで、「きっかけセット」で渡せるきっかけ種が得られる。与える水の量に応じて得られる種の数は変化する。また、与えられる水の量は爽子のパラメーターや周囲からの評価によって増減する。

 1周目のプレイでは任意の苗に水を与えることはできず、自動的に全ての種の数が同じになるように水が与えられる。2周目からは任意の苗に水が与えられるが、おまかせを選択すれば、1周目と同様に自動で水を与えてくれる。

きっかけ苗に水を与えて成長させるとイベント発生に必要なきっかけ種が得られる。おまかせは全ての種の数が同数になるように自動で水をまいてくれるので便利だ

● 遊び方の例

 ここまで紹介したように「きっかけセット」→「目標設定」→「こころがけの実行」→「きっかけ花だん」からなる4つのフェーズを繰り返して、1日ずつ進めて行き、春20日、秋20日をこなせばゲームクリアとなる。遊び方はそれぞれだが、筆者の例を紹介したい。

○ きっかけセット

 まず、上画面の人物(=種を渡してイベントが発生させられる相手)を記憶し、上画面をヒントに切り替える。次に記憶した人物に下画面で4種類の種を1つずつ渡し、上画面のヒントでイベント発生条件となる「こころがけ」を記憶。全種類の種を渡し終えた後、発生させたいイベントを考慮して、渡す相手と種を決定する。

 「思考」と「こころがけ」は1回の目標設定で、1種類しか選択できないので、「思考」と「こころがけ」が2種類以上になってしまうと渡した種が無駄になってしまう。1度に多くのイベントを発生させたい場合は、条件となる「思考」や「こころがけ」を1種類にする。

 2周目以降、体験済みイベントの場合、ヒントに“再”と表示される。これまで体験したことのないイベントを発生させたい場合は、これを避けるように種を渡せばOKだ。

○ 目標設定

 「きっかけセット」でのイベント発生条件に応じて、自動的に2種類の「こころがけ」が設定される。だが、イベント発生に関係のない「こころがけ」は変更してしまって構わない。「こころがけ」に応じて爽子のパラメーターが変化するので、上げたいパラメーターが上がるようにしたり、「学校祭の準備」で滞っている部分を補うように「こころがけ」を設定するのもいいだろう。

○ こころがけの実行

 基本的に見るフェーズだが、プレーヤーが介入できる要素として、会話の選択肢を選ぶイベントがある。2周目以降、選択済みの選択肢には“済”と付くので、これまでに選んでいない選択肢を選びたい場合の参考になる。

○ きっかけ花だん

 1周目は自動で水が与えられるので、何もすることはないが、2周目では任意の苗に水が与えられるようになり、特定の種を狙って増やすことが可能に。ただし、イベント発生に困らないようにどの種も最低1つ以上になるようにしておくのが無難だ。何周かプレイしたが、おまかせでも種が足りなくなることはなかったので、よほど同じ種を使用しない限り、2周目以降もおまかせで問題ないだろう。

プレーヤーが介入できる要素の中で、最も重要で、悩むべきなのが「きっかけセット」。ここで誰にどの種を渡すかで1日で発生させられるイベントが決まる。1週間で設定できる「こころがけ」の「思考」(赤字)と「行動」(緑字)は各1種類までなので、同じ色で別の「こころがけ」の場合、どれか1つしかイベントが発生させられず、種が無駄になってしまう。中央がNGの例、右がOKの例だ。どの組み合わせならOKなのか、渡せる相手全てに4種類の種を渡して確認しよう


■ 新たなイベントやおまけ要素が楽しめるクリア後の要素

 ゲーム本編をクリアすると「こころがけ」の引継ぎ、タイトルデモが2種類に、システムボイス選択などのクリア特典が得られる。

 ゲーム本編で最も大きいのが、「こころがけ」が引継がれることによる2周目以降限定イベントの追加。1周目のプレイ内容にもよるが、2周目以降のプレイでは、これまでに獲得した「こころがけ」を持った状態でゲームがプレイできるため、1周目では体験できないイベントが発生させられる。新たな「こころがけ」が欲しければ、“再”と表示される体験済みイベントを避けて、体験していないイベントを優先しよう。

 クリア後、タイトル画面から「きせかえ」が選択できるようになる。前作同様、相手、場所(+季節)、服を選んでおでかけする専用イベントが楽しめる。おでかけできる相手は、クリア時に最も仲良くなった1名が追加され、服はゲーム本編のイベントで追加されていく。全キャラクターとおでかけしたければ、最低でも8回のクリアが必要だ。

 また、前作にはなかったクリア特典も存在する。プレイして確認してもらいたい。

タイトル画面のおまけからは、体験済みイベントの画像が閲覧できる「アルバム」、仲良くなった相手と好きな服でおでかけできる「おでかけ」、システムボイスを黒沼爽子と風早翔太のどちらかに変更できる「システムボイス」が利用できる
おでかけでは、相手、場所(+季節)、服を選んで専用イベントが楽しめる。服は場所(+季節)にあわせて選択したい。全キャラクターとのおでかけを堪能したいものだ


■ 最後に

 講談社漫画賞少女部門受賞、アニメ化と、もはや説明するまでもないほど有名となったマンガ「君に届け」のゲーム化第2弾となる本作。新要素として「学校祭の準備」を追加しながらも、これまで通りに遊べるので、前作をプレイしたことがあれば何も迷うことなく進められる。「こころがけ」引継ぎによる新イベント、「おでかけ」など、クリア後に楽しめる要素も備えている。

 心温まる感動のストーリーは本作でも健在。「君に届け」のファンだけでなく、良質のアドベンチャーゲームを求める方にもオススメ。前作をプレイしていないのであれば、お得な限定版をチョイスするのがいいだろう。

 操作、機能などは基本的に前作と同様で、既読スキップ機能の追加などはない。Bボタンを押し続ければスキップはできるが、何度もプレイする本作だからこそ欲しい機能だった。また、「きっかけセット」では渡せる相手とイベント発生に必要な「こころがけ」が確認できるヒントを切り替えなければならないので、種を渡してイベントを発生させられる相手とイベント発生条件となる「こころがけ」を同時に確認できない。多少味気なくなるかもしれないが、種を渡せる対象以外はグレイアウトした状態になり、種を選択すると、その種でイベント発生できる相手が点滅するなどすれば、上画面の切り替えは必要なくなり、より快適に遊べるのではないだろうか。「きっかけセット」でどのようにイベントを発生させるかを考えるのが楽しい分、少々気になった。


(2011年 4月 12日)

[Reported by 木原卓 ]