★ PS3/Xbox 360ゲームレビュー★
失われた母国を取り戻すために!
数多の武器・装置を駆使して戦う骨太のFPS
「 HOMEFRONT」
ジャンル:
  • FPS
  • SFアクションシューティング
発売元:
  • スパイク
開発元:
  • KAOS Studios
プラットフォーム:
  • PS3
  • Xbox 360
価格:
7,770円
発売日:
2011年4月14日
プレイ人数:
1~32人
レーティング:
CERO:D(17歳以上対象)

 西暦2027年。アメリカ合衆国は、国土の大半を喪失していた。敵の名は「大朝鮮連邦」。この北朝鮮を母体とする大勢力は、占領地域を武力と恐怖で支配する体制を確立、アメリカ全土には粛清の嵐が吹き荒れ、国土は荒廃を極めていた。プレーヤーはレジスタンスのひとりとなり、故郷を取り戻すために立ち上がる。

 このような世界観を持つ本作「HOMEFRONT」は、近未来の武器・兵器が多数登場しながらも、非常に泥臭い雰囲気を持つFPSだ。インフラが完全に崩壊し、武力によって隅々まで抑えつけられた厳しい環境の中でどう戦うか?というシナリオとともに、近未来の兵器を駆使したダイナミックな戦闘行為という、2つの主題が交差している。

 また、マルチプレイモードではプレイステーション 3/Xbox 360ともに最大32人という大人数の参加をサポートするゲームモードを搭載し、戦略性の高いバトルを体験できる。多数の兵器と、プレーヤーのカスタマイズ・成長要素もあり、オンライン対戦型のFPSとしても大注目の作品だ。


■ 「大朝鮮連邦」VS「レジスタンス」という構図に隠された意図

舞台は近未来、アメリカ。レジスタンスの戦いを描く
敵は、占領地に恐怖支配を敷く「大朝鮮連邦」
随所に苛烈な表現が見られる

 本作を開発したKAOS Studiosは、2008年に「FRONTLINE: Fuel of War」という50人以上での対戦が可能なFPSを開発した経験を持ち、特にFPSのマルチプレイモードの作り込みに定評のあるスタジオだ。もちろん今作でもマルチプレイモードに力が入っているが、同時に、シングルプレイキャンペーンで描かれる世界観も強烈だ。

 本作は北朝鮮を母体とする「大朝鮮連邦」という架空の勢力を作品における主敵に設定している。作中での描かれ方はヒールとして徹底したもので、武力と恐怖によって社会を破壊しつつある邪悪な支配者として描かれており、その表現には容赦がない。

 例えばシングルプレーヤーキャンペーンの冒頭では、占領地域に住む主人公がレジスタンスに参加するまでのいきさつが描かれるが、そこで恐怖に支配された社会の様子をみることができる。「大朝鮮連邦」の憲兵に徴兵され連行される間、バスの窓からは悲惨な風景が映しだされる。破壊されインフラを失った街、殴打されながら連行される市民の群れ、子の前で処刑される親、泣き叫ぶ子供……地獄そのものだ。

 作品全体に漂う苛烈な表現は、プレーヤーの身を故郷奪還の戦いに奮い立たせる。本作ではそのためにも「邪悪な支配者」という存在と、その表現が必要だったのだろう。その対象が「大朝鮮連邦」という架空とはいえ現実の政治勢力を元にした名称となったことには、作品世界の現実感と、ヒールとしての徹底した表現を両立させるために、消去法の選択が行なわれたに違いない。

 例えば「日本」では同盟国であることもあり現実感が希薄。「韓国」も同様に同盟国であり敵対感覚に欠ける。いちばんありそうな「中国」や「ロシア」でここまでひどい表現をしてしまえば大きな批判が避けられず、スタジオに汚名が着せられる恐れがある。そこで、現実に外交上の大きな緊張を抱えつつも、民間レベルでは交流が無いに等しい「北朝鮮」がネタとして選ばれたわけだ。

 実際、作中では、上記以外の理由でヒール役の勢力が「大朝鮮連邦」である必然性はほとんどない。敵方の兵器類はほとんどロシアか中国軍がらみのものだし、指導者の名前としてチラホラと金正恩の名が登場する以外、「大朝鮮連邦」はとにかく冷血で残酷で暴力的で、話の通じないエイリアン的な支配勢力として描かれるのみだ。

 つまり本作のテーマとして本当に描かれているのは、「故郷を取り戻すための英雄的な戦い」そのものだ。アメリカという舞台を取ることで話のスケールが大きくなり、本作の主要市場である北米でのウケが狙える。また、アメリカ軍がらみの最新兵器も説明なしに武器レパートリーに加えることができる。そういうわけで、本作は意外にFPS「製品」として現実主義的なゲームなのである。


シングルプレーヤーキャンペーンでは、占領軍を倒さんとするレジスタンスとしての戦いが描かれる
マルチプレイでは「大朝鮮連邦軍」VS「米軍」という構図で、正規軍同士の戦いという設定。互いに兵器類の性能差などはなく平等なシチュエーションで対戦できる


■ 攻撃を交わして、狙って撃つ。基本に忠実な骨太のゲーム性

元パイロットの主人公は、レジスタンスに身を投じていく
弾薬は少ない。常に節約するべきだ
随所にドラマチックな展開も

 本作には各種のマルチプレイモードとシングルプレーヤーキャンペーンの2系統のゲームモードが搭載されている。シングルプレーヤーキャンペーンは短いが濃密な構成になっており、苛烈なレジスタンスとしての戦いを重厚に描く内容だ。

 ストーリー冒頭の出来事によってレジスタンスに参加することとなった主人公は、元米軍パイロットという経歴を持つ人物。その能力を求められて参加した戦いには、2人のベテランレジスタンス、コナーとリアンナが同行してくれる。同行するキャラクターのAIは優秀で、状況に応じて先導してくれたり、あるいは縦列を組んで移動したりと、ゲームの雰囲気を高める効果も果たしてくれている。

 シングルプレーヤーキャンペーンを通じてプレイ上のテーマとなるのは、いかに武器弾薬を管理しながら戦うか、ということだ。なにしろロクな補給を受けられないレジスタンスである。大抵の場合、倒した敵の武器を奪って戦う状況が続き、弾が切れたら次の武器を拾って……と、序盤から多数の武器を使える反面、好みの武器を使い続けることは難しい。

 本作にはM4、SCAR-Lといったアメリカ軍がらみのライフル銃を始め、AK-47をベースとした近未来ライフルなど、旧東側に絡んだ武器類も多数登場する。それぞれダメージ、連射性能、精度、連射時の挙動などに細かく違いが付けられており、使用武器の選択は意外と重要だ。

 そこで大切になるのが、しっかりと狙って確実に敵を倒すという、FPSの基本に忠実にプレイすること。本作では弾がほとんど狙い通りに、正確に照準点の中心に向かって飛ぶようになっているため、しっかり敵の弱点を狙って狙撃すれば弾薬を大幅に節約できるのだ。このあたりは、ただ1発の弾丸さえも貴重という、孤立無援のレジスタンスの戦いを表現しているとも言えそう。

 また、作中では様々な戦闘のシチュエーションが用意されている。強力な火力を誇る自動戦車へのターゲット指示、ヘリコプターに搭乗しての地上支援や空中戦。また、大規模なレジスタンス部隊との共同作戦。これらを体験するのもシングルプレーヤーゲームの楽しみだ。

 やがてレジスタンスとしての戦いが佳境へ入っていくと、作中でアメリカの置かれた状態が次第に明らかになっていく。レジスタンスとしての活動が市民への残酷な支配をエスカレートさせていくという現実がある一方、少なくない味方も存在しているという状況。祖国奪還の戦いは、小規模な破壊活動から次第に、大規模な決戦の様相を呈していく。

 本作のシングルプレーヤーキャンペーンは一気にプレイすると短いが、その密度は濃い。プレイ後しばらく忘れられないような、強烈な印象をプレーヤーに残してくれることだろう。


近未来ならではの特殊な兵器を使った戦闘も魅力のひとつ。また、元パイロットならではのスキルを生かしたシーンも
敵は正規軍、圧倒的な数で押し寄せてくる。有利に戦うためには地形を生かした立ち回りも重要というFPSの基本に忠実なゲーム性をとりつつ、随所にダイナミックな展開が織り込まれている


■ 繰り返しプレイしたくなる、魅力あるマルチプレイモード

「グラウンドコントロール」では拠点を巡って占領戦が展開
予め自分に最適な装備セットを組んでおこう
レベルが上がれば新たな武器がアンロックされていく

 「FRONTLINE: Fuel of War」で名を馳せたKAOS Studiosの作品ということもあり、本作のマルチプレイモードは本当に魅力的な内容に仕上がっている。対戦人数は最大32人をサポートし、基本となるゲームルールは「チームデスマッチ」と独自ルールの「グラウンドコントロール」の2系統があり、また、それぞれに「バトルコマンダー」という変形ルールを付加できるようになっている。

 「チームデスマッチ」はその名のとおり、2チームに別れてのKILL数競争だ。「グラウンドコントロール」は本作独自のルールで、2チームがマップ中に3つある「拠点」の占領を巡って戦うもの。占領維持によるチームスコアが一定に達するとそのラウンドの勝敗が確定するが、ゲームが途切れることなくそのままマップ中の次の領域に戦線が移り、新たな「拠点」を巡って次のラウンドが戦われるという仕組みだ。最大3ラウンドが連続的に戦われ、ラウンドを2本先取したチームが勝利となる。

 各ゲームルールに共通して、プレーヤーは敵を倒すなどの行為で「バトルポイント(BP)」という、セッション内で消費するポイントを獲得できる。「BP」は様々な特殊兵装をアクティブにしたり、搭乗兵器を出現させるために使用する。特殊兵装というのは、例えば対戦車ロケットランチャーや、各種のドローン、ヘルファイアのような航空支援、防弾ベストや弾薬補給といった多種多様なものがある。

 特殊兵装は最大6つ定義できる「装備セット」に、それぞれ2つづつ設定しておくことが可能だ。例えば「ASSAULT」という装備セットには、装備セットとしてRPGランチャーと何らかの航空支援攻撃を設定しておけば、あらゆる状況でそれなりに戦える。「SNIPER」という装備セットなら、対人用のドローンを特殊兵装としてセットしておけば、キャンプ地点に近寄ってくる敵をうまく排除できるかもしれない。

 こういった戦略の幅を広げてくれる特殊兵装のそれぞれには、それに見合った「BP」が必要だ。例えばRPGランチャーは250BPでアクティブ化できるが、一定範囲の歩兵を一網打尽にできる航空支援の「白リン弾」は、1,600BPも必要。敵をひとり倒して得られるBPは130。ヘッドショットで倒せばさらに30BPといったボーナス効果も複数あるが、やはり、BPをどこまで溜めるか、いつ使うかという判断は常に重要なポイントになってくる。

 また、ゲーム中に獲得したBPは、セッションが終われば失われてしまうが、プレーヤーはそれに見合った「経験値」を獲得し、永続的なプレーヤーレベルを向上させることができるようになっている。プレーヤーレベルは新たな武器や特殊兵装のアンロックにつながる要素で、やはり強力なものほど高いレベルが必要だ。

 レベルが高まってくると装備の選択肢が広がってくるため、あらかじめ装備セットを熟慮して設定しなおすことも大事。装備セットはリネームすることもできるので、例えば突撃兵スタイルでしかプレイしないプレーヤーなら、武器・兵装の組み合わせの違いで「ASSAULT1」、「ASSAULT2」……といった複数の「突撃兵セット」を作っておくのも面白い。

 こういったカスタマイズ要素のおかげで、各ゲームセッションで上手くいった部分、上手くいかなかった部分をじっくり考えて改良したり、プレイを続けることで新たな戦術を編み出したりといった遊びの幅が拡がっている。このおかげでついつい繰り返しプレイしてしまうのだ。


「デスマッチ」、「グラウンドコントロール」いずれのルールでも、特殊兵装の使用にはBPが必要。チームに貢献してBPを稼ごう
BPを使えば強力な支援攻撃を呼び出したり、搭乗兵器を使うことができる。高価なものほど強力だ
近接戦闘では正確な照準能力が必要。レベルアップでアンロックされる「歩兵スキル」をうまく組み合わせて、少しでも有利な状況を作りたい


■ 「優先脅威」を目指せ! 強いプレーヤーがどんどん強くなる「バトルコマンダー」ルール

敵を倒しまくって「優先脅威」に! 1段階毎にパワーアップがひとつ貰える
「優先脅威」を追う側には、敵のだいたいの位置がマップ上に表示される仕組みだ
乗り物を上手く活用すればすぐに「優先脅威」になれる。しかし集中的に狙われるという恐怖も……

 本作のマルチプレイモードで人気なのは、やはり独自ルールで戦略性の高い「グラウンドコントロール」ルールだ。その上で、ある程度のプレーヤーレベルに達すると参加できるようになる「バトルコマンダー」追加ルール付きのゲームセッションでは、さらに戦略性の高いプレイが楽しめる。

 「バトルコマンダー」ルール付きのセッションでは、ゲーム中に「優先脅威」という概念が付加される。これは、倒されることなく敵を連続で倒し続けたプレーヤーが特別な存在に指定されるものだ。

 まず連続で4人の敵を倒すと、そのプレーヤーは「優先脅威」レベル1になる。このプレーヤーには「防御力アップ」といったパワーアップが付与されさらに強力になるかわりに、敵チームのうち2人にその存在が通知され、それらのプレーヤーのマップ上にだいたいの位置が表示されるようになるのだ。さらに敵を倒し続け、「優先脅威」のレベルが上がる度にパワーアップが増え、通知される人数も増えていく。

 こうして高い優先脅威レベルになったプレーヤーは、大勢の敵プレーヤーにその存在を知られることになるわけだ。なにしろ、高い優先脅威レベルのプレーヤーを倒せば、莫大なBPボーナスを得られるので、強力な特殊兵装を早く使いたい敵プレーヤーは血眼になって倒しにくる。

 優先脅威に指定されたプレーヤーがそれをうまく待ち伏せて撃退し続けることができれば、大きくチームに貢献することになるだろう。なにしろチームの勝利目標はあくまで拠点の占領と維持なのだ。優先脅威の存在によって敵チームの戦力が分散することになれば、他の味方はよりいっそう楽に拠点を確保できるというわけ。

 そういう意味で、「バトルコマンダー」ルールは基本ゲームルールにさらなる戦略性を加味するものになっている。上手なプレーヤーならば自分が優先脅威となることがプレイの目標になるし、そうでもないプレーヤーにとっては、なかなか稼げないBPを一気に稼ぐために、優先脅威を倒すことを狙う、という2通りの遊び方が生まれる。なかなかよくできたシステムだ。

 もちろん、マルチプレイで戦績を高めるには、いかにBPを稼いで強力な攻撃手段を手に入れるかという側面もあるため、そもそも敵をほとんど倒せずにBPをからっきし稼げないというプレーヤーにとっては、本作は非常に厳しいゲームだ。撃ち合って倒され、支援攻撃で倒され、倒され続けて占領にもほとんど貢献できず、BP不足のために逆転も狙えない……となってしまう。

 このような「強い者がさらに強くなる」というゲーム性のため、チームレベルでも片方が有利に展開すると、さらにその有利が広がり、最後は目も当てられないほどの一方的な展開になるという流れが確かにある。片方のチームだけに大量の戦車・ヘリ、支援攻撃が登場して、他方のチームは生きるヒマすらない、という状況だ。勝ち馬に乗れれば楽しいが、やられるほうは悲惨である。

 こういったゲーム性のため、本作のマルチプレイでは序盤でいかに有利な展開を演出するかが重要だ。そのためにもチームメンバーとの連携が非常に大事になってくるので、敵味方の動きをよく見ながら、注意深くプレイすることが大切。この点では、玄人好みのゲーム性と言えるかもしれない。だからこそ本作は、繰り返しプレイすることで新たな魅力に気づくことができる、深みのある作品に仕上がっているのだと思う。




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(2011年 4月 14日)

[Reported by 佐藤カフジ ]