【特別企画】

セラーノ選手が圧巻の走りで2冠達成! 「グランツーリスモ ワールドシリーズ」福岡大会、ネイションズカップを現地レポート

【グランツーリスモ ワールドシリーズ 2025 ワールドファイナル -福岡】
開催期間:12月20日〜12月21日
会場:福岡国際会議場 メインホール+多目的ホール

 福岡で開催されたレースゲーム「グランツーリスモ」の世界大会「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2025 ワールドファイナル」。12月20日に開催されたメーカー対抗戦「マニュファクチャラーズカップ」はポルシェが初優勝を飾り、12月21日に個人戦の「ネイションズカップ」を迎えた。

 ネイションズカップは、文字通り「グランツーリスモ」最速のプレーヤーを決めるチャンピオンシップ。今回、福岡で開催された「ワールドファイナル」は、年間チャンピオンが決まる最も重要なレースイベントであり、世界各国から全12選手が福岡国際会議場に集結した。

 本稿では、12月21日に開催された「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2025 ワールドファイナル」ネイションズカップの大会レポートをお届けしていく。なお、GAME Watchでは前日に行なわれたメーカー対抗戦「マニュファクチャラーズカップ」の現地レポートや「グランツーリスモ」シリーズのクリエイター・山内一典氏のインタビューも掲載している。こちらも併せてご覧いただきたい。

【[日本語] GTワールドシリーズ 2025 | ワールドファイナル | ネイションズカップ | グランドファイナル】
「ネイションズカップ」会場の様子

全12選手が出場するネイションズカップ。宮園選手の2連覇に期待がかかる

 2025年の「GTWS」ワールドファイナルは9カ国から全12選手が出場。ラウンド3終了時点のランキングは、スペイン代表のホセ・セラーノ選手が1位、同じくスペイン代表のポル・ウラ選手が2位、イタリア代表のヴァレリオ・ガロ選手が3位と、スペイン勢がトップを占めていた。

 日本からは宮園拓真選手(4位)と佐々木拓眞選手(6位)の2名が出場する。中でも宮園選手は昨年の「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2024」の年間チャンピオンであり、2連覇が期待されていた。

「GTWS 2025」は全9カ国から選手が集った
日本からは宮園拓真選手と佐々木拓眞選手が出場
ラウンド3の終了時点で、ホセ・セラーノ選手が1位、ポル・ウラ選手が2位とスペイン勢がランキング上位を占めていた
ワールドファイナルではレースごとにポイントを多く獲得でき、状況によっては大逆転も狙える

 今回は「ジャパンモビリティショー福岡2025」の併催イベントとして、ワールドファイナルを初めて日本で開催。世界各国から「グランツーリスモ」ファンが集まり、会場は満員となった。

 大会に先駆けて、韓国の自動車メーカー・ヒョンデで高性能ブランド「N」を担当するパク・ジュン氏と、「グランツーリスモ」シリーズのクリエイターである山内一典氏が登壇。2026年に向けて新たなコラボレーションを実施することが明かされた。詳細はまだ発表できないとしており、こちらの続報も期待されるところだ。

日本初のワールドファイナルは福岡国際会議場で開催された
試合前にヒョンデのパク・ジュン氏、「グランツーリスモ」クリエイターの山内一典氏が登壇し、2026年に新たなコラボレーションを実施すると発表した

大会前に行なわれた予選タイムトライアル。オランダのブラン選手がポールポジションに

 大会前に行なわれた「予選タイムトライアル」は、大型アップデート「Spec III」で追加されたばかりの新コース「ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット」が舞台となった。使用車両も新しく追加された「グランツーリスモ F3500-B」で、タイヤはレーシングソフトが装着され、全12選手が最速ラップを競い合った。

 結果はオランダのカイ・デ・ブラン選手が1分15秒202でポールポジションを獲得。フロントローとなったカナダのサミュエル・カーディナル選手とは0.053秒差という僅差だった。日本勢は宮園選手が6番グリッド、佐々木選手が9番グリッドという結果となった。

大会前に非公開で行なわれた予選タイムトライアル
カイ・デ・ブラン選手がポールポジションを獲得。フロントローのサミュエル・カーディナル選手とは0.053秒差だった

スパで行なわれた第1レース。熾烈な3位争いを宮園選手が制す

 レース1では、ベルギーの歴史あるサーキット「スパ・フランコルシャン」を8周する。車両は全12台のプロトタイプカーから選択可能。タイヤコンパウンドはレーシングソフトで交換義務はない。車両は最高速性能、加速性能、コーナリング性能などがそれぞれ異なるため、どの特性に重きを置いて選手たちが走るのかが注目された。

 レースは序盤からオーバーテイクラッシュとなり、順位が目まぐるしく変動する展開となった。1周目は最初のヘアピンコーナーでトップのカイ・デ・ブラン選手が宮園選手に追突されコースアウトしてしまう。この一件について、大会後のインタビューで宮園選手は「レースを壊してしまって、カイ・デ・ブラン選手には申し訳ない」と語っていた。

 混乱の最中、トップに立ったのがスペインのホセ・セラーノ選手。その真後ろに2位のキリアン・ドルモン選手(フランス)が続き、この2名はファイナルラップまでバトルを繰り広げたが、スパではセラーノ選手が乗る「プジョー 908 HDi FAP」が有利に働き、ドルモン選手はなかなか追い越すことができない展開が続いた。

 日本勢2人を含む3位から6位は集団が形成され、抜きつ抜かれつの戦いで会場を大いに沸かせた。5周目に先の一件で宮園選手には1秒のペナルティが科され6位となってしまうが、その後も粘り強い走りを見せ、オーバーテイクを決めると会場からは大きな拍手が送られた。

 結果としてレース1は、セラーノ選手がそのまま勝利を飾り、ドルモン選手が2位となった。激しかった3位争いはペナルティを食らいながらも宮園選手が制した。

レース1は「スパ・フランコルシャン」を8周する
各選手が選択したクルマ
1周目に宮園選手がカイ・デ・ブラン選手と接触。この一件で宮園選手は1秒ペナルティが科せられる
宮園選手や佐々木選手がオーバーテイクすると、会場からは大きな拍手が送られた
トップ争いはセラーノ選手とドルモン選手の一騎打ち。約0.5秒差をなかなか縮められない
結果はセラーノ選手が勝利。ドルモン選手は惜しくも2位となり、熾烈な3位争いは宮園選手が制した

新コース「ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット」での第2レース。日本勢が大健闘

 レース2は、予選タイムトライアルと同じ「ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット」と「グランツーリスモ F3500-B」によるレースフォーマットになった。タイヤコンパウンドはレーシングソフト・ミディアムの2種で、全てのコンパウンドを使用する必要があるため、1回のピットストップが義務となる。

 スタート時のタイヤはソフトが4台、ミディアムが8台という構成となった。レースは1周目からウラ選手とドルモン選手が接触し、多重クラッシュが起きる波乱となった。この中でセラーノ選手は1位をキープしつつ、2位に宮園選手、3位に佐々木選手という展開となり、日本勢が上位に食い込んだ。

 その後、ウラ選手には3周目に3秒ペナルティが科せられ一時は5位に後退するも、ソフトタイヤで追い上げをみせ、5周目には3位に返り咲いた。その間にセラーノ選手は驚異的な走りを見せ、8周目の時点で2位の宮園選手に4秒近い差をつけた。

 9周目までに多くのクルマがピットインし、タイヤの交換義務を終えた後は、13周目にソフトタイヤを履いたヴァレリオ・ガロ選手が、ミディアムタイヤのウラ選手をオーバーテイクし、3位に浮上。結果はセラーノ選手が余裕の勝利を飾り、2位に宮園選手、3位にガロ選手という順になった。

レース2は「ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット」を17周する
レース開始時点での各車のタイヤ選択
スタート直後にウラ選手とドルモン選手が接触
ウラ選手はペナルティもあり、一時は5位まで後退するも、ソフトタイヤで追い上げ3位に返り咲いた
9周目までに全車がピットインを完了
13周目にはソフトタイヤを履いたガロ選手が、ミディアムタイヤのウラ選手をオーバーテイク
結果は1位がセラーノ選手、2位が宮園選手、3位がガロ選手となった

決勝レースは伝統の「ニュルブルクリンク」。驚きのマネジメントでセラーノ選手が初優勝

 グランドファイナルとなる決勝レースは、“緑の地獄”とも呼ばれているドイツのサーキット「ニュルブルクリンク 24hコース」で行なわれた。多くのレースファンから恐れられているニュルをなんと7周もするというまるで修行のようなレースフォーマットだ。

 使用車両は「グランツーリスモ レッドブル X2019 Competition」で、タイヤはレーシングソフト・ミディアム・ハードの3種。全てのコンパウンドを使用する必要があるため、2度のピットストップが義務となる。ニュルを7周する集中力、タイヤと燃料のマネジメント、ピットインのタイミング、全てが重要となるファイナルに相応しいレースだ。

 スタート時のタイヤは、1位から4位がソフト、5位から8位がミディアム、9位から11位がハードで明確に分かれた。ニュルは道幅が狭いためオーバーテイクが難しいサーキットだが、2位でスタートした宮園選手はあえてペースを落としたのか、後続のガロ選手とウラ選手を先に行かせ、4位となった。

 その間にもセラーノ選手は快走し、悠々と1位で走っていたが、1周目中盤でミスをして、それを避けようとしたガロ選手がダートに入ってしまった。また、セラーノ選手は2周目にもカルッセルでミスをしてしまい、ウラ選手に抜かれてしまう場面もあったが、すぐに抜き返して1位をキープした。

決勝レースは「ニュルブルクリンク 24hコース」を7周する
スタート直後のタイヤ選択
セラーノ選手は1周目の中盤で大きくミス
2周目にもセラーノ選手はミスしてしまうが、リカバリーして1位をキープした

 3周目に入る前に多くのクルマがピットインし、セラーノ選手はハードタイヤで給油量は抑えめ、宮園選手とウラ選手はミディアムタイヤで給油量を多めにした。これによって、最初にミディアムタイヤを履いていたドルモン選手、佐々木選手、バーバラ選手が上位となるが、これらの選手は4周目に入る前にピットインした。

 給油量を抑えたセラーノ選手は、4周目の終盤までに燃料をかなり消費してしまい、ガス欠する可能性もあったが、驚きのマネジメント力を見せ、メーターが「0」になった直後にピットインすることができた。その後、5周目までに全車がタイヤ交換義務を終える。

 6周目の時点でトップはハードタイヤを履いた宮園選手、2位はハードタイヤを履いたウラ選手、3位はミディアムタイヤを履いたセラーノ選手となった。基本的にソフト>ミディアム>ハードの順で速く走ることができ、7秒あったタイム差をどんどん縮め、セラーノ選手が宮園選手に近づいてきた。

 そしてファイナルラップに入った直後、セラーノ選手が宮園選手をオーバーテイク。前半に2度の大きなミスをしつつも、中盤以降は落ち着きを取り戻し、観客を驚かせるタイヤと燃料のマネジメントによって、見事に決勝レースも勝利し、ワールドチャンピオンの座に輝いた。

 2連覇が期待された宮園選手は2位でゴールし、年間ランキングも2位を確定させた。ウラ選手は3位でゴールし、こちらも年間ランキング3位を確定させ、ネイションズカップは幕を閉じた。

3周目前に上位陣が相次いでピットイン
3周目前のピットインで給油量を抑えたセラーノ選手は、4周目終了直前で燃料が0になるもガス欠にはならず、驚きのマネジメントを見せた
6周目時点でトップの宮園選手と3位のセラーノ選手は7秒差あった
ミディアムタイヤで追い上げを見せるセラーノ選手は、2位のウラ選手をオーバーテイクすると……
ファイナルラップで宮園選手を追い越し、トップに返り咲いた
そのままセラーノ選手が勝利を飾り、ワールドチャンピオンを獲得した
ワールドファイナル終了時のランキング

セラーノ選手の燃料マネジメントは「計画通り」。宮園選手は悔しさをにじませる

 優勝後のインタビューで、マニュファクチャラーズカップとネイションズカップの2冠を達成したセラーノ選手は「本当に言葉が出ない」と嬉しさを噛み締めた。決勝レースでの燃料マネジメントは「計算通りだった」とのことで「去年は間違った戦略をやってしまったので、今年は戦略を練り直して完璧なレースになった」と語った。

優勝インタビューで喜びを噛み締めたセラーノ選手

 大会終了後のインタビューで、宮園選手は今年を振り返って「2位だったが、自分なりにいい結果になった」と語った一方で、ワールドファイナルを全勝したセラーノ選手には「正直、今はどうやったら勝てるのかわからないので、これから考えていきます」と悔しさをにじませた。

 2026年シーズンについては「スケジュールが合う限り出たいので、引き続き頑張っていきます」とコメント。アブダビから始まる2026年、より強くなった宮園選手の姿に期待したい。

悔しさを滲ませた宮園選手。2026年、より強くなった姿に期待したい

来年はアブダビから始まる! 予選は「GT7」で誰でも参加可能

 ここまで「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2025 ワールドファイナル -福岡」よりネイションズカップの大会レポートをお届けしてきた。今回はセラーノ選手が圧巻の走りを見せ、ポルシェチームで「マニュファクチャラーズカップ」を優勝したあと、個人でも「ネイションズカップ」を優勝し、宮園選手以来2人目となる2冠を果たす結果となった。

 既に「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2026」の開催も決定しており、2026年1月14日からオンライン予選がスタート。2026年3月28日にはアブダビで「ラウンド1」が開催される。「GT7」プレーヤーであれば誰でも予選に参加できるため、気になる方はぜひ参加してみてほしい。