「セインツ・ロウ:ザ・サード リマスタード」日本語版レビュー
ブッ飛んだノリが最高! 思う存分暴れたい人にオススメなオープンワールドアクション
- 【セインツ・ロウ:ザ・サード リマスタード】
- ジャンル:アクションアドベンチャー
- 開発元:Volition Inc.
- 発売元:DMM GAMES
- プラットフォーム:PS4
- 発売日:10月29日
- 価格:5,280円(税込)
2020年10月28日 00:00
「セインツ・ロウ:ザ・サード リマスタード」の日本語版が10月29日に発売される。先日は本作の最大の魅力の1つである「アクティビティ」について語らせてもらったが、今回は「セインツ・ロウ:ザ・サード リマスタード」の全容について語っていきたい。
筆者はこれまで多くのオープンワールドをプレイしてきた。中でも「グランド・セフト・オート」シリーズのようなクライムアクションが大好きだ。実在のアメリカをモデルとした、ビジュアル的にはリアリティがありながらもどこか非現実感のある街を模した箱庭の中で、やりたい放題できるクライムアクションは気分爽快でストレス発散にもってこいなのだ。重火器を思う存分ぶっ放して、敵との銃撃戦を楽しんだり、戦車や戦闘機などの兵器を駆使して、敵を次々と蹴散らしたり、ゲームならではの大活躍を満喫できる。
「セインツ・ロウ:ザ・サード リマスタード」は、そんなクライムアクションのジャンルにおいて、主人公を人間以上の存在に強化したり、いきなり戦車を乗り回して大暴れしたり、といったハチャメチャな舞台設定が魅力の1本だ。
筆者は当時「セインツ・ロウ」のシリーズの存在を知ってはいたが、ちょっとはっちゃけすぎているように感じられて遊んでいなかった。今回機会を得られたので改めてプレイしてみると、単なるハチャメチャなゲームというだけではない事に気が付かされたのだ。
まずテンポよく進むストーリーがメインとして用意されており、そのストーリー自体はシンプルな展開なのだが、ピンポイントにグッとくるカッコいいカットシーンが入ったりするので予想以上に盛り上がった。かと思えば、明らかにふざけたエピソードも随所に散りばめられており、そういうギャップが笑いに繋がるのも印象的だった。
また、街中をおもちゃで好き放題に暴れまわれる楽しさをより抽出した感じのアクティビティの数々など、純粋に遊んで楽しいというシンプルな魅力もそこにある。
車両のカスタムやコスチュームなどカスタム可能な要素の数々、そしてギャング同士の縄張り争いなど、ゲームとしてかなり多方面に遊べる仕上がりになっている。結果かなりのめり込んで楽しむことができた。そんな本作の魅力について、紹介していこう。
意外と熱いメインストーリーとふざけたミッションの絶妙な笑いのハーモニー
「セインツ・ロウ:ザ・サード リマスタード」は2011年にPS3、Xbox 360向けに発売されたオープンワールドのクライムアクションゲームをPS4向けにビジュアルなどを向上したリマスタード版だ。オリジナル版ではDLCとして提供されていた追加ミッション「ゲンキボウル VII」、「スペースギャングスタ」、「クローンの災難」の3本も最初から組み込まれた完全版となっており、携帯電話のミッションメニューからいつでも遊ぶことが可能になっているのも嬉しいポイントだ。
本作のざっくりとしたストーリーは、これまでのシリーズで「スティルウォーター」の地域を支配していた主人公「ボス」の率いるギャング集団「サード・ストリート・セインツ」が、国際犯罪組織「シンジケート」の本拠地である大都市「スティールポート」にやってきて、シンジケート壊滅に向けて行動を開始する、というもの。
こうしたバックグラウンドはゲーム開始直後に語られるので、シリーズ未プレイの人でもすんなりとゲーム世界に入っていけるだろう。そしてクライムアクションではお馴染みとも言える「銀行強盗」から物語は始まり、チュートリアルを兼ねたド派手なファーストミッションをこなしていくこととなる。
銀行強盗に挑んだはいいが、最終的に銀行強盗は失敗に終わり、主人公「ボス」含むメンバーたちは全員捕らわれの身となってしまう。ボスたちを捕らえた敵は、国際犯罪組織「シンジケート」だったのだ。そして「サード・ストリート・セインツ」は、シンジケートの拠点である。「スティールポート」に拉致されてしまう。
主人公達を捕らえ堂々と姿を見せる渋いビジュアルの会長「フィリップ・ローレン」は両サイドに強そうな美人「ヴィオラ」と「キキ」を配置しており、実にラスボス感がすごい。ここでローレンはセインツたちの支配地域である「スティルウォーター」での活動利益の66%をシンジケートに収めろという、理不尽な取引を要求してくる。よりシンプルに見た目だけで分かるように、巨大な円グラフで表示するプレゼンテーションがおふざけ感をさらに演出している。ここでセインツたちはローレンの申し出を拒否をし、敵の隙をみて、脱出する事になる。
ただ、ここで2作目でも登場していた仲間の1人、ジョニーは腹を刺された上に、主人公のボスともう1人の仲間「ショーンディ」を逃がすために追っ手を防ごうと奮戦してくれるのだ。本作ではこれ以降ジョニーは登場しないため、生死は不明のままという、いきなり熱い展開だ。
かと思えば、飛行機内で派手に暴れまわったせいで、飛行機は墜落してしまう。墜落前に脱出するボスとショーンディだが、落下中はパラシュートなしでスカイダイビングしながらの敵とのバトルとなるのだが、この空中バトルの動きがどうにも間抜けなのだ。こうした熱いストーリー展開の後に見せる間抜けなバトルのギャップが本作をおバカたらしめている所以なのだ。
脱出に成功した2人は無事にスティールポートに降り立ち、アジトを1つ手に入れ、自由行動が可能となる。最初に手に入るアジトはオンボロアパートの2階という正直狭苦しい場所だが、身寄りのないスティールポートではこうしたアジトがあるだけでもありがたい。こうしてこのちっぽけなアジトを拠点として、シンジケート配下のギャング団たちとの戦いが始まるのである。
このようにシリアスなストーリー展開があったかと思えば、ふざけたようなミッションが間に挟まることで、本作は絶妙なおバカさとカッコよさを同時に見せる事に成功している。例えば本格的な銃撃戦が連続するようなミッションがあったかと思えば、いきなり覆面を装着してプロレスの試合に参加する羽目になったりなど、とにかく先の読めないストーリー展開で、初見プレイなら時には驚き、時には爆笑の連続だ。
また、メインミッションの節目では選択肢が登場する事が多いのもユニークな特徴だ。ギャング団とのバトルでも、それぞれのリーダーを倒した後は、その多くで2択が迫られる事になる。とは言うものの、こうした選択肢については、どちらを選んでもそれほどストーリーに大きな影響を与える事はなく、終盤のミッション「三つ巴」のみ、その選択によってゴールが異なるという仕組みとなっている。
このようにおふざけとシリアスが絶妙に融合した本作のストーリー展開こそおバカなビジュアルの影に隠れた本作の魅力の1つと言える。