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NVIDIA、第2世代Maxwellコア搭載のGeForce GTX 900シリーズを発表

2倍の電力効率! 既存ゲームの画質を高め、VRゲームを支援する新機能も

9月19日出荷開始



価格:
549ドル(GeForce GTX 980)
329ドル(GeForce GTX 970)
Maxwellチップイメージ

 9月19日、NVIDIAは第2世代Maxwellコアを搭載するGPU、GeForce GTX 900シリーズを発表した。搭載ビデオカードは同日16時より店頭販売が開始される。

 これについてNVIDIAオフィスで行なわれた説明会では、NVIDIAのテクニカルマーケティングディレクター、ニック・スタム氏が登壇し、第2世代Maxwellの特徴と搭載される新機能について紹介が行なわれた。

ハイパフォーマンスで驚きの低消費電力。メインストリームモデルが先行登場

NVIDIA テクニカルマーケティングディレクター ニック・スタム氏
GeForce GTX 980の実物。放熱ファンが1つとなっている

 第2世代Maxwellアーキテクチャ(内部コード名 GM204)は、今春リリースされたGeForce GTX 750 Tiに搭載された第1世代Maxwell(GM107)の改良版。Maxwellは前世代のKepler(GK104)アーキテクチャ(Geforce 600/700シリーズに搭載)に比べて大幅な電力効率の改善を果たしたことが大きな特徴のひとつだ。

 今回発表された採用GPUは、ミドルハイクラスの型番となるGeforce GTX 980/970。第1世代Maxwellは前述のGTX 750Tiやモバイル向けのGTX 850/860MといったミドルクラスGPUへの採用に留まっていたが、第2世代Maxwellではコアゲーマーのメインストリームであるミドルハイ~ハイエンドモデルへの搭載が可能になったということになる。

 最大の特徴はKeplerアーキテクチャの前モデルから大幅に向上した電力効率だ。GTX 980は、前モデルのGTX 780をTFLOPSで25%上回っているのにもかかわらず、消費電力は250Wから165Wへ大幅に低減。これにより、電力あたりの性能は前モデル比で200%にも達している。

GTX 980/970のスペック
Kepler世代との性能比較。GTX 680から電力あたりの性能は倍以上に
4xMSAAと4xMFAAの比較。品質は同等

 第2世代Maxwellでは電力効率の改善に加えて、様々な面で性能の向上が図られている。

 ひとつは、新しいアンチエイリアス方式であるMFAA(Multi-Frame Sampled AA)だ。これは標準的なアンチエイリアス方式であるMSAA(Multi-Sample Anti-Aliasing)を複数フレーム間に拡張したもので、2x精度のMSAA処理を、サンプルとするピクセル方向を縦・横に変えながらアンチエイリアスをかけることで、4xMSAAと同等の品質を実現するというもの。

 MFAAは前後フレームの映像がほぼ同等であるという前提で実装されているため、低フレームレート環境や動きの激しいシーンではうまく機能しないが、フレーム間の映像差分が少ない高フレームレート環境では2xMSAAと同等のパフォーマンスで4xMSAAの映像品質を実現できる。

MFAAの仕組み。2xMSAA相当の処理を2フレームに分けて行なう
既存タイトルでおよそ30%の性能向上
画素パターンを符号化してメモリ帯域を削減

 また第2世代MaxwellではGPU内でフレームバッファのロスレス圧縮機能“Third Generation Delta Color Compression”を搭載し、グラフィックス処理のボトルネックとなるメモリ帯域を節約する。大半のゲームで20~30%の帯域削減効果があるといい、DRAMの実効帯域を向上させる効果がある。特に、描画済みのフレームバッファを何度も再利用して最終的な映像を作り出すディファードレンダリングを採用した最新世代のゲームで効果が大きい。

圧縮の例。ピンクで示された領域がよく圧縮されている
高解像度環境ではGTX 680の3倍以上の性能

 こういった改良が行われた第2世代Maxwellでは、高解像度+アンチエイリアスという状況で性能向上効果が高く、4K+4xMSAAという映像品質ではGTX 680比で3倍以上のフレームレートを実現するという。

 この他、SM(Streaming Multiprocessor:32個のCUDAコアからなる基本ユニット)あたりのローカルキャッシュメモリを従来の64KBから96KBへ拡張、スケジューラーの改善などにより、CUDAコアあたりの実行性能も40%向上しているという。これらを総合して、GeForce GTX 980/970は4K解像度でのゲーミングを視野に入れる性能をアピールしている。

プレゼンテーションの冒頭ではPCゲーミング市場の拡大ぶりにも言及。現在世界で2億台のGeForce搭載ゲーミングPCがあるという。コンソールに注力するAMDとは対照的に、NVIDIAのはPCプラットフォームに力を注ぐ

既存のゲームもさらに品質向上。第2世代Maxwellが実現する新機能

DSRの効果
GeForce Experience上ではデフォルトでONになるという。調整可

 GeForce GTX 980/970が提供する4Kゲーミングも視野に入れた高い性能は、既存のゲームにも恩恵がある。それが第2世代Maxwell搭載GPU向けに提供されるDSR(Dynamic Super Resolution)だ。

 DSRは平たくいうと「4K解像度の品質を既存の1080pモニタで得る」という効果を狙う機能だ。仕組みとしては、ゲームを1080pを超える仮想解像度で実行させ、高解像度のレンダリング結果をGPU側でダウンサンプリングしてモニタ上に表示するというものになる。

 DSRが既存のスーパーサンプリング方式と異なるのは、ダウンサンプリング時の処理がフレームバッファ内で完結するため遅延を生じないことと、サンプリング方式として13タップのガウシアンフィルターという、高品質な方法を取っていることだ。CPUでこれを行えばあまりにも負荷が高くなるが、DSRではGPU処理となるため5~10%程度のパフォーマンスロスで済むという。

 この効果が紹介された「ダークソウル2」の例では、1080pモニタ上でゲーム解像度3,840×2,160で実行。シーン各部の細かい凹凸、とくに地面に生える草などの細長いオブジェクトからジャギーやドットのかすれが完全に消え、非常に高品質な画面となる。動作パフォーマンスは「ダークソウル2」の上限である60fpsを維持しており、PS3/Xbox 360マルチプラットフォーム世代のゲームで効果が高いことがわかった。

通常の1080Pレンダリング
DSRで4Kレンダリングをダウンサンプル
VRゲーミングをGPUで支援する「VR DIRECT」
レンダリング中に映像をワープさせ、ヘッドトラッキングの遅延を減らす機能
左はVXGIにて照光処理されたCG。左は実写画像
VXGIではオブジェクト表面にボクセルを配置して照光や反射を処理する

 このほか、第2世代MaxwellではVRヘッドセットOculus Riftでの利用を前提に、「VR DIRECT」という機能を搭載する。これはGPUとドライバー側でVRヘッドセットに求められる表示を支援する総合的な機能パッケージになるようだが、特に特徴的なのはAsyncronous Warpingという機能だ。

 VRヘッドセットではわずかな表示遅延が不快感の原因となるが、第2世代Maxwell GPUでは遅延を最小限に抑えるため、グラフィックスの描画途中でヘッドトラッキングセンサーの入力値を読み取り、最新の視線方向に合わせて描画途中の映像をずらす(ワープさせる)機能を提供する。このアルゴリズムはOculus VRの開発者マイケル・アブラッシュ氏が考案し、GDC2014で発表したもので、現在すでにOculus Rift開発キットに搭載されているが、これをGPUでも支援するというのが目新しい点である。

 また第2世代Maxwellでは新しく搭載されたラスタライザーにより、NVIDIA GAME WORKSで開発中のリアルタイム大局照明(GI)アルゴリズム「VXGI(Voxel Global Illumination)」を非常に高効率で実行できる。詳しいアルゴリズムの紹介は割愛するが、リアルな照明効果により実写さながらの映像が60fpsで動作する。この機能は今年の第4四半期中にUnreal Engine 4やその他のメジャー系ゲームエンジンに統合予定だ。

 第2世代Maxwellを搭載するGeforce GTX 980/970は以上のような特徴を有し、非常にパワフルだ。にも関わらず消費電力は前モデルから大幅に軽減されており、ゲーミングPCの小型化と高性能化をさらに推進する存在になるだろう。ハイエンドモデル(Titan系統)、ミドルクラス(50番代、60番代)も出揃えば、PlayStation 4、Xbox One相当といった最新世代のゲームを最高の品質でプレイするのに最適な選択肢が広がりそうだ。

VXGIの基礎となった“保守的な”ラスタライザーモード
第2世代MaxwellによりVXGIは3倍に高速化

(佐藤カフジ)